第14話 分かってる?

「え? シルバーランクに昇格、ですか?」


「はい。ある方から強力なモンスターのソロ討伐があったと報告がありまして昇格させて頂くことになりました。またこれにより入場規制のある一部ダンジョンへの侵入、クエスト報告が可能になります。シルバーですとランキングは圏外、こちらからメディアにということもありませんので特別報酬はお渡しできませんが……。とにかくおめでとうございます」


「あ、ありがとうございます」



 ダンジョンをあとにした俺は一先ず探索者協会にダンジョンの踏破を報告に向かった。


 というのもダンジョンのボスは数日おかないとリスポーンしないため、踏破した場合には報告が義務付けられているのだ。


 ただし、今回はブロンズスライムの出現が俺によってなくなってしまったとバレたくはなかったからレアボスについては黙っているつもりだったのに……。



 強力なモンスターの討伐、あくまでそれがレアボスでさらにはアナウンスされた特定のモンスターとは報告されていないものの……絶対この人察したよな。



「じゃ、じゃあダンジョン踏破の報告も済んだのでこれで――」


「あ、ちょっと待ってください!」



 大きめの声で引き留められてついつい身体がぴくんと跳ねてしまった。


 やっぱりブロンズスライムについて話さないといけないのか……。


 気が乗らなすぎる。


 こんなの探索者協会からしてみれば大きなニュースで、公式の動画配信のいいネタ。


 俺が目の敵にされるまで時間が掛からないのは分かりきってるから。



「な、なんでしょう?」


「これ、シルバーランクの証です!」


「あっ……」



 対応してくれていた探索者窓口のお姉さんが手に待っていたのは銀色のプレートがぶら下がったネックレス。



 俺はそれを会釈しながら受けとると早速ブロンズのプレートを外して身に付けた。



「お似合いですよ!」


「ど、どうも。でも俺にはまだ馴染んでるようには……」


「アナウンスにあった特定のモンスターを姫川さんが討伐している間、それの邪魔にならないようボス部屋からでようとした強力なモンスター、レアボスをたった1人で倒したんですよ!似合わないわけが……あ、あのぅ」


「やっぱりレアボスのことを知って……って姫、川さん?」


「は、はい。すみません、姫川さんからその人は目立ちたくないからあんまり持て囃したりしないようにって言われてたんですけど。ここで働く者として新しいランカー、しかも高ランクだって狙えそうな探索者誕生に興奮が抑えきれなくて……本当にすみません。あの、上にはレアボスのこと黙っておくので安心してください。あ、あとこの際素材も匿名にしますので、ここで買い取らせてもらえると……なんて」


「……」


「だ、駄目ですか?」


「い、いいえ。むしろ助かります。もうここで取り出しても?」


「あ、ちょっと目立ってしまうのでこちらまでお願いします!」



 引き続き興奮気味のお姉さんのあとを俺はついていくことに。


 匿名で買い取りをしてくれるのも、黙っててくれるのも嬉しいけど、それ以上に俺にとって嬉しいことが起きてしまった。



 あいつが俺のことを案じてくれたなんて……。



 そっか、あの時のあの言葉はあいつが……。



「でも、まだだ」



 直接声を掛けようとはしなかった、顔さえも見せてくれなかった。


 それはつまり完全に嫌われたってわけではないらしいけど、また元の関係になるための強さはまったく足りてないってこと。


 俺は強く、もっと強くならないといけない。


 当然家のことも考えてお金だって欲しいからレベル上げだけに明け暮れるってわけにはいかないのかもだけど……。



「強く」



 俺はそう呟くと自分の拳を見つめながらぎゅっと力を込めた。



 ……。あ、そういえば俺の見た目前と大分違うんだった。


 でもあれだけ一緒に居たんだからきっと分かる……。



「分かってくれた、よな?」

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