第10話 声?
――ビシッ!
「……」
「切り替えが早い奴だ」
自分の攻撃が通らなかったことで一瞬躊躇いを見せた人型のブロンズスライムだったが、このまま押し切られるわけにはいかないと言わんとばかりに反対の腕を振り回すスピードを上げた。
俺としてはもっと今の攻撃をしてもらいたいところなんだけど……仕方ない、1回下がるか。
「――よっと。これで気兼ねなく撃ってこれるだろ?」
「き……ききぃっ!!」
俺を近づけたくないせいで鞭のような攻撃に集中してしまっていた人型のブロンズスライムの攻撃パターンを変えるために俺は後ろに飛んだ。
するとそれを見た人型のブロンズスライムは再びもう片方の手をあげた。
「よし。そうだ、攻撃してこ……。いや、だからってそこまでしろとは言ってないぞ」
そして防がれてしまったことを反省したのか腕を形状変化させ、管状の吐き出し口を複数作り出した。
その数は……10。
「きっ、ああっ!!」
「これは流石にまずい」
一気に吐き出されたブロンズスライムたち。
相変わらずの速さのせいで全部を掴むことは……不可能。
避けるにしたってまだ伸びる腕での攻撃が襲ってきている。
範囲攻撃を持っていないことがここにきてひびいてきてしまったようだ。
ヒュン。……パンッ!!
「ちっ! 結構いてえな」
「ききゃっ!!」
1匹は上手いこと掴み粉砕することはできた。
でも他9匹は命中。
威力は同じところに打ち込まれ過ぎたらあざだけじゃなく骨にひびが入りかねないほどだってのに。
せめて弾になって撃ち出されたブロンズスライムが残ってたらいいんだけど、着弾と同時に瀕死になって俺が握り潰そうとする頃には死んでしまってるんだよな。
多分この辺りの調整もあいつがしているんだろう。
「き、ききぃ……。きひひひひひ!!」
今の攻防で調子に乗ったのか人型のブロンズスライムは再びブロンズスライムを全弾発射。
やはり俺は1匹しか掴み殺すことができず、脚を多めに攻撃されてしまった。
『経験値を40000取得しました。レベルが49に上がりました』
「HPに余裕があるとはいえ……これだと動きにくくてしょうがない。力も込めにくいし――」
ビュン。
痛みで俺が脚を止めたその時、それをチャンスと見た人型のブロンズスライムは伸びた腕で殴る、ではなくて両脚にそれを絡ませてきた。
「しまった!」
「ききっ!」
そのまま俺の身体を持ち上げた人型のブロンズスライム。
頬に感じる冷たさと痛み。
俺は綺麗に整っていた床が割れる勢いで叩きつけられてしまった。
しかも人型のブロンズスライムの攻撃はこれでは終わらない。
再びブロンズスライムが撃ちだされて俺の背中を刺激してくる。
ひゅん、ひゅん、ひゅん……。
「う、があ!!」
「き、きき、きひひひいひひ……」
ドラミングを使ってなかったら死んでしまうであろう攻撃の雨。
もう立ち上がるのもつらい。
「あ、っが……。まさかこんなに、強いなんて……。でも、諦めねえ。だってその頭さえ握れれば俺の勝ち、なんだから!」
必死に視線を上げて人型のブロンズスライムを睨む。
すると人型のブロンズスライムは複数の管をまとめ巨大な、まるで砲台のようになった腕を俺に向けていた。
「き、ききっ!!」
「へ、へへ……」
絶望的な状況に笑いが零れ、その腕からは巨大なブロンズスライムが吐き出された。
多分ブロンズスライム10匹分以上を使ったとっておきなんだろうな。
「……可能性、あるのかな?」
それでも俺は一縷の望みにかけて右手を伸ばした。
握るにしたって大きすぎるそれをなんとか粉砕するために。
『が、頑張って。きっとやれるから』
「え?」
小さく聞こえた女性の声。
当然それを確認する暇はない。
だけどそれが俺を応援してくれていることは間違いなくて、たったそれだけで俺は力が漲ってしまう。
ぐぎ……。
ブロンズスライムと手がぶつかって手首と指から不穏な音が漏れた。
それでも俺は諦めず力を込める。
「割、れろ……」
バリ。
巨大なブロンズスライムに走るヒビ、食い込む俺の手。
俺の願いが叶ってくれたのかブロンズスライムは弾ける準備に入ってくれたらしい。
『経験値を400000取得しました。レベルが51に上がりました。握力の値が【V】に上昇しました。50レベルを超えました。共通スキルを付与。HPと状態異常が回復されました。職業【ゴリラ】が【ゴリラ=ゴリラ】に進化しました。筋肉量が増加しました』
パンッ!!
「きき!?」
「は、はは……俺もだけど、お前はそれ以上に舐めてたみたいだな。俺の握力は1000を優に超えるんだぞ?」
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