[第四十八話、忘れられた廃墟に住む女の子]
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「レイヴン先輩その仕事お断りさせてもろていいすか?」
「??」
「なぜだ?みたいな顔しやんでもわかりきってる事ですがな」
「あの場所はフェイ達医療ギルドの管轄区域と聞いてな、ではよろしく頼む。」
この人が頼み事をするときってNOって言葉はないんでしょうかね
あぁ..もう颯爽と何処かに行ってしまった。
「ユウマ..今の話し聞いてた?」
「はい、だってここには2人以外に俺しか見当たらないから自然と聞こえてきちゃいますよね」
「着いてきてくれる?」
普段は女の子らしい一面を見せることもないフェイ先輩だがそんな上目遣いで着いてきてと言われちゃあ断れないのが男ってもんだぜ..
ってダメだダメだ!俺はリンとジュリア先輩の一件があるからこういうお人好しな俺は辞めたんだ!
フェイ先輩には申し訳ないがお断りしよう
俺は子犬のような顔をして断りの言葉を述べることにした。
「実は俺もこの後用事が..」
「ジュリアのことみんなにバラすで」
「いぃ!?な、ななな、なんの話しですかなー?アハハ..」
焦る俺を見てフェイ先輩は俺の顎を指先で撫でジト目でこう言った
「うちにはぜーんぶお見通しやねんからな♡」
結局、フェイ先輩の脅しに負け俺は"あの場所"と
呼ばれているところに連行されるハメになる。
「ここがその"あの場所"」
「そう..ウチら医療ギルドが前につこてた病院…その名は」
『セプティマ療院』
それが"あの場所"の本当の名前だそうだ
かつてのセプティマ療院は、壮麗で堂々とした石造りの建物に。白い大理石の柱が正面を飾り、窓はアーチ状に美しく設計され、昼間は柔らかな自然光が院内を包み込み、夜には医療ギルドの紋章が施されたステンドグラスが幻想的に輝いているそんな素敵な建物だったと。そんな素敵な建物が何故廃墟になってしまったか?
セプティマ療院は何百年もの間、医療ギルドの技術と知識の中心地であった。しかし、ある時、療院内で病が突然発生し、その収束が不可能とされ。当時の医療ギルドはその原因を特定できず、次々と先生や生徒さらには患者が亡くなるという事大が起きる。そこで医療ギルドは病を封じ込めるため、最終的には療院自体が封鎖され、全ての記録と医療器具は封じられたそうだ。そして人々はこの場所を「呪われた病院」と恐れ、近づくことを禁じ。その後、療院は放置され廃墟と化した。
今はすっかり朽ち果て、かつての栄光の面影をわずかに残すだけの姿になってしまい。大理石の柱はひび割れ、屋根の塔は崩れ落ち、草木が絡まりつき放置されたままの荒れ地に姿を変え。ステンドグラスはほとんど割れるという典型的な廃墟となってしまった。
そこで今回の医療ギルドからサンクチュアリへの依頼は『かつての治療室や病室が無数に残されているのを回収してきてほしい』
だがここで問題点が発生するそれはあるばすのない怪奇現象が起きるという噂が絶えないことだ
「先輩帰りましょうよ」
「う、うちかてそうしたいわ!」
「俺マジで無理です」
手と手を握り合い廃墟の前でガタガタと震えている俺らを前にこちらは平常運転のご様子
「フン!なにが怪奇現象よ!そんなもんはこの最強爆裂美少女レイラと」
「正義の味方ホッパーと!」
「同じく美少女星獣フレイアと!」
「もこもこふわふわ〜のリエルと」
「ほら次ユウマとフェイ先輩よ」
「「やらんわ!」」
どうしてこんな恐ろしい廃墟を前にして1人と3匹は余裕なんだろうか..
「なんでもいいからちゃっちゃと入るわよ!」
「「ひぃぃぃ!おーたーすーけー!」」
こうして医療ギルドのメンバー+俺とホッパーでの奇妙でちょっぴりホラーな依頼が始まった。
中に入ると真夏だってのにクーラーガンガンにかけたかのように冷えきっていやがる。
足元には患者のカルテや多分当時のスローガンだろうか回覧板の隣には大きな紙に大きな字で『絶対にみんなでこの危機を乗り越えよう!』と書いてある。
「ちょっと!ユウマひっつきすぎ!歩きづらいじゃないのよ離れなさいよ」
「無理だよー無理だよー怖いよー怖いよー」
男のくせにだらしないとかホントにどうでもいい!強い女の子に抱きついていれば絶対安心!
するとフェイ先輩が黒い大きめのショルダーバッグからギルドに頼まれた薬品や医療器具が書かれている指示書に目を通す。
しばらく読み続けやっと読み終わったかと思うと顔を引きつらせこう言った。
「最悪や..手分けして探さな今日中に終わらへん..」
最悪だぁぁぁ!
「じゃあまた明日来ればいいじゃない」
「絶対に嫌や!今日終わらせよう絶対終わらせよ!」
そう連呼する先輩に俺も強く同意する。
「わかったわよーじゃあどう分かれるかじゃんけんで決めましょう!」
とにかく絶対にじゃんけんで勝って俺はレイラと組む!
いざ尋常に...じゃんけん!
ぎやぁぁぁぁぁ!
俺達はじゃんけんをしようとしたとき突然悲鳴が聞こえ声のする方を向くと
なんかよくわかんない、宙を舞い大きなハサミを持ち叫びなが全速力でこちらに向ってくる女の幽霊が視界に入る。
「「でたー!!!」」
「あのハサミ錆びてるアル」
「カッコいいルー!」
「えぇーなんか怖いピィー」
「と、とにかく逃げるでー!」
フェイ先輩の合図で星獣達を抱きかかえ逃げようとしたとき
またまたハサミを持った幽霊の後ろから今度はバカデカイ体格の男が白目を向きながら走ってくるぅぅ!
俺はホッパーをしっかりと抱き逃げる逃げる逃げる!どこまでも逃げる!とにかく逃げるー!!
「逃げる逃げる逃げる..」
「ユウマ下ろしてルーもう追ってきてないルー」
ホッパーの言葉に我に帰り足を止める、ここどこ?え?俺迷子?
「とにかく誰か近くにいないかな..おーい!レイラー!フェイ先輩ー」
俺とホッパーで2人を呼び続けていると角から全速力で走る音が聞こえる。
「ひぃ!なんかくる!」
「ホパに任せて!ホッパーパンチ食らわすルー!」
ッタッタッタ---
そして角から現れたのは!?
「なんやユウマやん!ってふごぉぉぉ!」
俺の名を呼んだその人はすぐにホッパーのパンチを顔面に食らった。
「フェイ大丈夫アル!?」
「フェイ!?それはごめんルー」
あたふたとフェイに近づき顔を覗かせるホッパーに「大丈夫やから心配せんでええよ」とホッパーの頭をしっかりチョップで返す。
「レイラは!?」
「うちも全速力で逃げたからレイラのこと気に留めてへんかったわごめんやで」
「それは俺も悪いので謝らないでください」
「ほな、ずっと怖がってるのもアホらしいしこの指示書通りに薬品とか集めていこか」
「ですね」
その頃フェイとユウマと逸れたレイラは3階にいた
「全くどうしてアイツらはあんなに怖がりなのかしら?さっきのはお化けなんかじゃなくてここに住む魔物でしょうに」
「魔物の気配には感じなかったピィあれはホントにお化けかもしれないピィ」
ブツブツと文句を言いながら歩きながらもとりあえず仕事を開始し、3階の部屋を1部屋ずつ周りながら新品の薬品や器具を鞄に詰めていく。
「この薬品今は作られてない激レアの薬品じゃない!?流石エンチャントレルムの医療ギルドだけあるわねー」
感心しながら部屋を出て次の部屋に入ろうとしたレイラだが
「あれ?この部屋だけ病室だ..」
先程まで薬品を管理する倉庫だったりナースやギルドの生徒達が休む休憩室だったのにとそう不思議に思った。
「なんか名前書いてあるけど字が薄すぎて見えないわね」
「レイラ..」
「んー?なによ?いまこの部屋を開けるのに忙しいの後にして」
「な、なにかそこの角にいるピィ」
「え?」
フレイアにそう言われ振り向くと
月明かりで照らされて明るいはずの廊下なのにその角だけ真っ黒な闇のような雰囲気を醸し出している。
「な、なに..なんかあの場所だけ暗くない?」
「壁で影になってる感じじゃないピィあれは髪の毛だピィ...」
ズルッ…ズルッ…大量の髪の毛が床を這いながら、じわじわと迫り来る音が耳に響く。
すると反対の角から見知った人物が現れた。
「ミシェル!アンタここでなにしてんの!?」
「レイラさんこそ何してるの?」
「アンタこの場所は立ち入り禁止よ!早くここから出なさいそしてその変な髪の毛から離れなさい」
「変な髪の毛だなんて失礼だなぁ、ちゃんとお名前あるのにね、ーーちゃん♪」
ミシェルが名前を呼ぶと髪の毛の中から人の肌とは思えないほどの色をした細くいまにも折れそうな腕が現れる..
「タスケテ...」
少女のようなか細い声でそうレイラに囁くように話しけるといきなり黒く太い髪の毛がレイラに向って襲いかかってくる。
「フレイア!魔法」
「了解だピィ」『
髪の毛は一瞬にして燃えて無くなるがすぐに次の髪の毛が襲いかかる。
「あぁ、もう!しつこいわね、この髪の毛!全部燃やし尽くしてあげるんだから!」『これで終わり!アビスフレイム!!』
レイラの手に炎が纏い、本体ごと燃やし尽くす勢いで手をかざす。一瞬、”空が暗くなるが”、すぐに明かりが戻り、レイラの手から激しい炎が噴射した。
炎を食らった髪の毛とその本体は、一瞬のうちに激しい炎に包まれた。束になった髪の毛は、もがき苦しむようにうねり、焦げた臭いが立ち上る。
「やったー!へへん!どんなもんよ」
クルクルと周りざまぁみなさいと言った顔で回っていると
「レイラ!後ろピィ!!」
突然フレイアの叫び声が聴こえ後ろから何者かに思いっきり殴られたような痛みが身体に走る。
視界が一瞬暗転する。しかし、レイラはすぐに意識を取り戻し、反射的に受け身をとる。肩を地面に付けて回転しながら、脚を使って勢いを逃がす。
「なにすんのよ!」
どんな相手かと見ると視界に入ってきたのは先程大きなハサミで襲いかかってきた女の幽霊だった
女は次こそは首を切り落とす勢いでハサミを開き攻撃を仕掛けてくる。
レイラも反撃するように戦鎚を呼び出し殴ってきた相手に襲いかかる。
こちらのフェイとユウマチームは1階から2階に移動していた。
「なんや3階が騒がしい気がするのは幻聴やろか」
「絶対そうだそうに違いない、早く目的の部屋に行きましょう」
「せやな、ええっと確かこの辺に...あった!この部屋や」
フェイ先輩が指差すその部屋は特別治療室と書かれた部屋だった。
「なにが特別治療室だよ..早く終わらせて帰りたい」
恐る恐る引っ付き合いながら部屋に入るそこに合ったのは大量の薬品とそして1人の人間のカルテがあった。
フェイ先輩が薬品を品定めしている間俺はそのカルテが気になりカルテを手に取り目を通し始めた。
「特別対象者ミラ・サリヴァン...こんな女の子まで奇病に苦しめられていたのか」
「これとこれ、あとはこれやな..リエルそっちはどやい?」
「ぼくちんの方もだいぶ揃ったアル!あっ!ホッパーそれで遊んだらダメアル」
「これホパ知ってるルー!ハートが止まったら電気でビリビリってしてハートを起こすルー!」
「ホッパーは物知りさんやなー!ユウマーこっちはもう終わったで後はレイラ探しに..って何読んでるん?」
熱心にカルテに目を通していたせいでフェイ先輩の呼びかけに全然気づかなかった俺に鋭いチョップを頭に食らわしてくる。
「いた!」
「何回も呼んでんのに気づかへんほど夢中ってどないやねん」
「すみません..けど見てください、この子特別対象者として、奇病を治すための試験体だったみたいなんです。」
「あーこの話しな…」
「なにか知ってるんですか?」
「この病院での一番怖い話があるねんけどなその話っていうのはな」
セプティマ療院にまつわる怪奇現象の中でも、特に有名なのが「長い髪の女の子」って言われてる話しがあるねんけど。
その昔、療院がまだ稼働していた時代、ある少女が奇病を抱え、この施設に入院してきてん。その病気が、ここを封鎖する原因となった厄介な病で、かかった患者はみんな、ほぼ例外なく頭の毛が全て抜け落ちてしもてん。けど、その少女だけは違っててな。同じ病を抱えてるはずやのに、毛が抜けるどころか、病が進行するにつれて彼女の髪はどんどん伸び続けていってん。
治療を施されても病状は悪化する一方で、最終的に彼女は特別対象者として、当時の医療ギルドの生徒や医師たちによって、奇病を治すための実験体にされてしもてん。けど、その実験も結局失敗して、彼女は亡くなってしまったんや。奇病を治す手がかりは見つからんままで、命を落とすことになってん。けどな、奇妙なことに、死んでからも彼女の髪は伸び続けて、焼かれる頃には棺桶に収まらへんほどになってたらしい。
そして、死後も彼女の魂はセプティマ療院内を彷徨い続けているという話や。今では、療院の廃墟に足を踏み入れた者が、ある特定の場所で「長い髪の女の子」に遭遇するとされてる。彼女は廊下の奥や、崩れ落ちた治療室の隅に、ぽつんと立っていることが多く目撃されててな。遠くから見る者は、長く垂れ下がった黒髪に覆われたその姿が、まるで壁に張り付いているかのように見えると言う。髪の毛は異常に長く、床を這うように動きながら、彼女は何も話さず、ただじっと見つめるだけや。
なぜ彼女が今も療院に留まり続けているのか、その理由は誰にもわからん。けど、一度でも彼女に遭遇した者は、その恐怖体験から二度と療院に近づかなくなるっちゅう話や。
「とまぁ、なんとも可哀想な話しやな」
「誰も悪くないのがまた後味が悪いですね」
「せやな..もしこの女の子がうちらの前に現れたらユウマうちの事守ってくれる?」
「そんなにお化けが嫌いなんて、意外だなー」
「うちにも怖いもんの1つや2つぐらいありますわい!」
「そうですねしっかり守らせていただきますよ」
そう言いながら微笑むユウマの顔を見て
ドキ...
(なにドキってしてんねん!アホか自分は!しっかりせんかい!ヤン・フェイ!こんなクズ男代表みたいな男に心奪われてしもうたら、もうウチは生きていかれへん..お母ちゃんにもお父ちゃんにも顔向けできひん!)
さっきからこの人はなにをジタバタ一人で悶絶してんだ?
「フェイなんかおかしいルー」
「まさか取り憑かれたアルか?」
1人ジタバタしているフェイ先輩をジーッと眺めていると突然扉が勢いよく破壊され俺達はその衝撃で吹き飛んでしまう。
「っゲホ!みんな大丈夫か!?」
「うえー口の中埃だらけやー」
砂埃で前が見えないがなにか大きな者がそこにいるのだけはわかる
「そこにいるのは誰だ!」
「コロス..人間..コロス」
ようやく視界がクリアになりそこにいたのはさっき下で襲ってきた大男がでっかいパイプ片手になんども同じ言葉を口にしていた。
「アイツってさっきおった奴やん」
「これはやるしかないようだな..行くぞホッパー」
「了解ルー!」
「ユウマうちも戦いたいけどうちあんまり戦闘とか得意じゃなくて...」
「大丈夫ですよ!フェイ先輩ここは俺がなんとかするんで!」
相手は筋肉ダルマみたいな奴だ...これなら俺だってやれる!
[おまけ]
ぎゃぁぁぁぁ!!
ドタバタ!ドタバタ!
「なんだ上が騒がしいな、侵入者か?」
「こんな療院の廃墟に侵入者だなんて余程、暇人なのですわね」
「私が見てこようか..」
「アリヤちゃんはまだ安静にしていて」
「んじゃ!私が見てくるよ!」
「誰も見に行かなくていいコン、なんたってここには本物の幽霊がいるんだコン」
「えぇぇぇ!そんな話しされると我一人で寝れないよー!」
魔王の言葉にダミアナ、雛音、アラビア三姉妹全員が口を揃えこう言った
「世界征服しようとしたお前が一番怖いわ!」
次回![第四十九話、ゴーストなんて信じてません]
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