[第四十六話、君が俺を夢中にさせたんだ]


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--魔術学研究所--


「うぅぅ..」


「なんをうなされとると?」


「うぅぅぅ...」


「気持ち悪いちゃろ」


「うぅぅぅぅ....」


「うぅぅってうるさいよユウマ」


「だぁって〜」


「だってもあさってもないよ、用がないなら帰ってよ」


「なんでそんな冷たいこと言うのおぉ!?」


ジョンの身体を揺らし「この白状者め!」と涙を流すユウマ


「あれ?誰かと思ったらユウマじゃないか遊びにきたのー?冷たい飲み物でも入れようか?」


買い出し帰りのキースが荷物を机に起き手際よくみんなの飲み物を用意し始める。


「ホパはミルクがいいルー」


「ボクはかぼちゃジュースがいいココ」


「わかったよ、すぐに用意するね」


 

「どうせリンに無視されてるからダメージ受けてるだけでしょ」


「俺が悪いよ完全に俺が悪いのはわかってるんだけどさ俺の連絡先はブロックするし会ったら無視してくるしダメージ受けないわけないだろうがよー」


「なんの話なんの話?」


ジョンの机に2人分のコップを置きなにが起こっているか把握できてないキースはジョンに尋ねた


「実はですね…」


ゴニョゴニョ 


「それはユウマが悪いね」


「そうっすよね…」


「1つ気になるんだけど、ジュリアとはなにもなかったの?」


その言葉にユウマはギク!っとしたが冷静を保ち「なにもなかったですよ」と言った。周りから見れば怪しさマックスだが…


ジョンは疑いの目を向けるが嘘が下手なユウマの嘘をそのまま信じこんでいる人物がいるキースだ


「だったら素直に謝るしかないよね」


「そうだよユウマちゃんと謝ればなんとかなるよ!」


3人は他愛ない雑談をしていると奥の部屋から激しい音がすると部屋から乱暴にキースを呼ぶ声が聞こえる


「キース!!早く来い!!」


「いまいきまーす」


キースは一瞬驚いた表情を浮かべるが、すぐに笑顔で部屋に入っていった。


「シルベスターさん、なんであんなキレてんの?」


「僕達、魔術研究所はいまある依頼を受けててその依頼の内容がね」


ジョンは詳しく説明を始める


「ハートリッジという静かな街があってそこの住民たちはゆったりとした暮らしを送っている街なんだだけど最近、住民達の高齢化にともない生活の不便さが増してきているみたいなんだ。町の住民は、生活を支えるために新たな魔法具を必要としてるんだけど、問題点が1つそれは魔法石のエネルギーをあまり必要としない魔法具を求めるんだって」


「なんだよそのワガママ案件」


「シルベスターさんも最初は受けるの嫌がってたんだけどライラ先生がどうしてもって」


「どんな内容でも完璧にやり切るのがこの学校の方針みたいなもんだもんな」


座っている椅子をクルクルと回転させながら話すユウマ


キースが部屋に入ると机の上には散乱した材料や道具、床には試作品が散らばっている。シルベスターは苛立ちから、いくつかの道具を床に投げつけている。


「くそ!何故こうも上手くいかない!」


「シルベスターさん落ち着いてください!」


「あっ?落ち着けだと?お前誰に向かって口を聞いてる!」


キースを掴み息を荒げるシルベスターの目は完全に正気を失っている。


「ここ2、3日寝ずに作業なんかしてたら頭も回らないですよ」


「俺様にいつからそんな偉そうに話すようになった?あぁ?」


激しい怒鳴り声が研究所に響き渡っている。すると猛ダッシュで慌てて帰ってきたライラがシルベスターの部屋に駆け込んだ


「シルベスター!キースはいる!!ってなによこのめちゃくちゃな部屋は」


「すみませんライラ先生すぐ片付けます」


襟を掴まれ苦しそうな声を出しながらもキースはそう言った。


部屋をある程度片付け終わるとライラが口を開く


「シルベスター、あなた寝ない食べないとか不健康な生活してるから頭が回らんのでしょうがー」


「うるさい、黙れ」


「全くーアンタって子は」


「それはそうとライラ先生、慌てて帰ってきたのは何故ですか?」


キースの質問にえ?と不思議な顔するがすぐに要件を思い出したのか口早に話しだした


「よーく聞いてよ」


「早く言え」


「キースの作った魔法具がハートリッジの町長の目に止まったのよ」


「ライラ先生話しが飛びすぎです!確かに俺も魔法具は作りましたけど、誰にも見せてないですよ」


「うん、だってウチが勝手に送ったもん」


「なんでそんなことするんですかー!」


「ごめんごめん!だけどさキースが考えた簡易薬草調合器がすごいなって思って」


悪びれることもなくそう言うライラにキースは深いため息をついた


「それでね、この魔法具を作った生徒をハートリッジに招待させてくれませんかー?って連絡がきたの」


「えぇぇ?」


「よかったじゃないかキース」


「俺なんかよりシルベスターさんやジョンが開発した魔法具のほうがよっぽどいいと思いますけど」


「そんなことないない!ちなみに出発は明日ね!よろしくー!てことでウチは先に帰りまーす」


ライラは一方的に伝言を伝えるとさっさと帰っていった


ユウマやジョンも帰宅し残ったのはキースとシルベスター2人だけになった。


分厚い本に目をやり研究の続きをしているシルベスターに話しかけるキース


「あの、シルベスターさん」


「ん?どうした」


「俺勝手なことしちゃってすみません」


「謝ることなんかないだろむしろやっと解放されたって思うと気が楽だ」


「だけど俺...ここでは魔法生物の生態を知りたくて入ったのにこんな大きな依頼を中途半端な俺が引き受けた形になってなんか申し訳ないと言うか」


「俺様に喧嘩売ってんのか?そもそも申し訳ないと思うならなんで魔法具なんか作った?」


「それは……シルベスターさんの力になれるかなって」


「フ…人を見下すのも大概にしろよ」


「そんなつもりじゃ……!」


弁解をしようとしたキースが訴えようとしたとき、頬から血が垂れ落ちた。壁には腐食したような穴が空いており、シルベスターがキースに手をかざしていた。


「失せろ」


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--ハートリッジ行きの列車内--


「やっぱシルベスターさん返事返してくれない」


キースは呟きながら、ソサマを片手に画面をじっと見つめていた。


「ほっとくちゃろ」


「そういうわけにはいかないよ、俺があんな言い方しなかったらよかっただけの話しなんだし」


「愛だの恋だのって人間は意味わからん生き物ちゃろね」


「セレだって語尾にちゃろとか付いてる時点で結構意味わかんない生き物だけどな」


キースの膝の上で丸くなっているセレを撫で上げ雑談をしている。



やがて列車は目的地のハートリッジに着いた。


「ここからバスに乗ってまずは町長さんに会わないとだねセレすまいないけどペンダントの中に戻ってもらえる?」


キースに言われ渋々了解したセレをペンダントに戻し町長に会うためにバスを使い進むこと1時間


バスから降りたキースはぐったりとした顔をしている。


「バスに乗るだけでこんなに酔ったの初めてだ..道も整備されてないし結構ヤバめな街かも...」


そう独り言を呟いてると向こうから小太りの中年親父がトコトコとこちらに向かって歩いてくる。


「ようこそ!ハートリッジへ!長旅お疲れ様でした」


「ど、どうも」


「なんだか気分が悪そうですがもしや酔われましたかな?」


「えぇ、だいぶ...」


「ハッハッハ!いやーすみませんねこの道を整備する者もいなくて、なにせ高齢化が進んでる街ですからな」


町長は手を口にあて、周囲を見渡しながらヒソヒソとそう話す。


「立ち話もなんですから」と町長は少し歩いた先にある自分の屋敷に向かおうとキースを案内する。


(なにが高齢化で貧しい街だよ..一番ヤバいのこの町長さんなんじゃないのか?)


大きな真っ白い屋敷を見てキースは思いながらも屋敷に入る。


「あの町長さん俺の星獣も出しても大丈夫ですか?」


「もちろん構いませんよ、ただし物にだけは触れないようにお願いしますよ」


町長の言葉に軽く返事をしセレを呼び出す。


「やっと出れたちゃろー」


「大人しく俺の近くでいてろよセレ」


「わかったちゃろ」


「では後ほど学者の皆さんもお越しになりますので少しだけゲストルームでお待ちくださいな」


町長にそう言われゲストルームに移動する。                          


「やっぱこの街が問題なのって町長さんだと俺は思うな」


「そうちゃろ?」


「うん、だって他の家よりも圧倒的にお金がかかってそうな建物はここしかないもん」


「まぁセレ達には問題ないことちゃろ」


上手い上手いと用意されたお菓子をパクパク食べるセレを見て少し緊張が解れたキースは持っている鞄をソファに投げる。


すると


「痛!乱暴するのだれったい」


聞き覚えのある声が鞄の中から聞こえた、キースは目を丸くしながら鞄をジッと見つめた。


「い、いまのって俺の聞き間違いかな?セレ今の聞こえた?」


「んへ?」


クッキーを食べるのに夢中なセレにはなにも聞こえなかったようだ


「いやいやいや!念の為に確かめて見よう絶対ないとは思うけど...」


キースは鞄のファスナーをジーッと恐る恐る開けると


「なんでここにいるんです?リーナさん..」


鞄の中にはでっぷりとした体格の2本尻尾が特徴のリーナがバレたかと言った顔でこちらを見ている


「バレたらしゃあなかね!」


「しゃあなかね!じゃないんですよ!なんでいるんですか!?」


「面白かけんに決まっとるやろ」


「何事ちゃろ...あー!オババ猫!」


「誰がオババ猫や!」


両者睨み合いラウンドFight!にはならないようにキースが2人を抑え


「2人ともこんなとこで暴れるのはやめて、もし暴れたりなんかして高級そうな花瓶がもし倒れて割れたりなんかしたらどうするんだ!」


「キースに免じて今日は辞めてやるちゃろ」                     

 

「どうもありがとう..それでリーナさんどうしてここにいるのか教えてくれませんか?シルベスターさんはこの事知ってます?」



「シルベスターには何も言わず来たっちゃけど、あんたら2人が心配で勝手についてきたっちゃ!なんやどうにも怪しかとね」


「怪しい?なにがですか?」


「はっきりとは言えんばってん、ワシの感がそう言っとるけん。」


リーナがそんな事を口にしたからなのか突然扉が勢いよく開くと黒いスーツを着た男が数名ランチャーをこちらに構えている。


「なんですか!」


「そう怖がらさんな」


「町長さん!?これはいったいどういうことですか!?」


「いやはやこんな簡単に騙されてくれるなんてエンチャントレルムの先生もお人好しですな〜」


「ここは俺が相手をするセレとリーナさんはライラ先生かシルベスターさんに連絡を..」


キースの指示に従い、二匹は扉の間をすり抜けようと走り出した。しかし、その瞬間、スーツを着た男が目を光らせ、ランチャーを構えた。発射の音とともに、弾が二匹の方向へ飛んでいく。弾が爆発し、弾頭から広がったネットが二匹を覆った。


網が一瞬で広がり、二匹はもがきながら逃げようとしたが、すでに網に絡まって動けなくなっていた。男は冷静に近づき、捕まった二匹を見下ろし、にやりと笑った。


「逃げるつもりか?お前たちには無理だよ。」


「それは!?」


キースの言葉に町長はニヤリと笑い


「ご自分の星獣が自身の開発した魔法具で捕らえられる気分はいかがですかな?」


「その魔法具は怪我を負った野生の魔法生物を治療するために一時的に捕らえるための魔法具だ!その魔法具をそんな風に乱暴に扱うなんて!」


「うるさい小僧だおい!お前達アイツを捕まえろノースフューチャー様に届ける大事な商品だからな!丁寧に扱えよ!」


町長の言葉に男たちは頷き、キースの方へ向かっていく。キースは周囲の緊張感を感じ取り、すぐに双剣を呼び出す。


「来い!」


男たちが突進してくる。キースは双剣を構え、素早く一撃を振るう。ひとり目の男は彼の剣をかわそうとしたが、キースの動きは素早く、彼の腹部を一 閃。男はうめき声を上げて後ろに崩れ落ちる。


次に、もうひとりの男がキースの背後から襲いかかる。キースは素早く反転し、剣を振り上げる。斬撃が男の腕をかすめ、剣の刃が金属音を立てる。男は痛みに顔を歪めながらも後退するが、そこにもう一人が迫っていた。


その瞬間、特段大きな男が現れ、グロ ーブ型の力を増幅する魔法具を構え力強く殴りかかる、避けようとしたキースだが目の前が一瞬真っ白になる。強烈な衝撃が体を貫き、キースは地面に叩きつけられた。


「う...」


意識が遠のく中、彼は必死に立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。周囲の男たちがキースに近づき、キースは完全に捕らえられてしまう。


「さあ、さっさと運ぶぞ!」


「キース!キース!」


「とてもまずか状況やね...」


[おまけ]


「釣れないでごわすね〜」


「気長に待ってればいつか釣れるよ」


「そうは言ってもかれこれ5時間は釣れてないでごわす」


夏の晴れた日、青い空の下、波の音が心地よく響く防波堤で2人仲良く釣りを楽しむレオとエドワード


「何時間も粘って粘ってようやく釣れたときの嬉しさがたまらなくいいんじゃないか☆魚も女の子もね!もちろん早く釣れるときもそれはそれでいいけどね」


「全くおいどんの主は困った人でごわす...」


「ハハハ、まぁそう言うなって…おっ!ほらなにか引っかたぞ..これは大きいなもしや大物か?」


突然、竿が大きくしなり、引き込まれる感触が伝わってきた!レオは力を入れて引き上げる!!


「ヨッシャ!!ってあれ?」


「長靴でごわす...」


次回![第四十七話、目をキラキラさせて俺に語った君の将来図は]   

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