[第四十四話、夏の星座にぶら下がらないし上から花火も見下さない]


ルーシーもまたレオを追いかけ天翔神社に向かっていた。


「ここが天翔神社ですか」


息を切らしながらようやく石の階段を登りきるとポツポツと人を見かける多分この人達も待ち合わせをしているのだろう…好きな人と


「レオ先輩は..どこに....あっ!」


後ろ姿ではあったがあれは確実にレオだ見る限りまだ刹那は来ていない様子


ルーシーは焦る鼓動を抑えレオに近寄る


「先輩探しましたよ」


「ルーシー……こんなとこでなにしてんだよ」


「これはこっちのセリフです、僕のメッセージを無視して心配したんですよ」


「すまん..返事を返す余裕がなくて」


「誰かと待ち合わせですか?」


「あぁ、ちょっとな」


早くどっか行ってくれそんな感じが滲み出てる、自分は多少なり空気が読める人間だレオがほっといて欲しいのにも気づいてるルーシー、だが今回ばかりは自分の気持ちに正直になりたいと彼女は思った。


「刹那さんですよね」


「知ってたのか..」


「ただの可愛い後輩なのは十分わかってます、本当は邪魔もしたくありません...だけど今回だけは僕のお願いも聞いてほしいです!」


「なんだよそんな改まって」


ヘラヘラした顔つきでルーシーの頭を撫でようとするレオの手を払い除けると顔を赤らめながら伝える


「僕と一緒に花火を見て下さい!僕レオ先輩のことずっとずっと好きなんです!!」


うつ向きながら勇気をだし告白をするルーシーにレオは驚きが隠せない   


「ホントに?だって今までそんな素振り一度も見せなかったじゃないか」


「先輩が気づかなかっただけです」


「それは悪かったごめん」


「謝らなくても大丈夫です…あの..もしよかったら花火」


「それはできない...俺は刹那先輩と花火が見たいんだ」


その言葉にチクリと胸が痛む


「僕だって先輩と花火が見たいです!僕のほうが先輩のこと大事に思ってるし誰よりも好きです!」


胸に手を当て思いの丈をぶつけるルーシーに 


「なんかそう言われると重いんだよな」


「重いってなんですか..僕は先輩のことを考えて言ってるんです!」


その言葉にレオは少し苛立ちを隠せずきっぱりと伝える。

 

「ハッキリ言うけど俺はルーシーのことただの後輩としか思ってない、そりゃあ毎日俺のこと考えて先に行動してくれたりとかは嬉しいけどなんかそういうのって家にいる執事となんにも変わらないんだよ」


「そんな言い方、わかりました..花火は一緒に見なくてもいいです..だけど刹那さんに会うのだけはやめてください」


「それもだよ別に俺の勝手だろ?なにがダメなんだよ、お前が俺を追っかけてきたように俺だって好きな人を追っかけたいよ!俺の気持わかるなら頼むからほっといてくれよ...」


レオにそう言われたルーシーはなにも言わず大粒の涙を流し無言でその場を立ち去った。


「おーい!レオ!こっちこっち」


刹那の呼び声に顔をあげ、少し笑みを浮かべ近寄る


「刹那先輩、遅いですよ」


「ごめんごめん(笑)あのね!レオに言わないといけないことがあるの、ほらほらこっちきて」


刹那が手招きする方に視線を向けるとそこには小さな子供と中年の男が視界に入る。


「先生..」


「久しぶりだなレオ」


「昨日話し合ってこの子の為にまた1から家族として頑張ろうって決めたの!昨日はホントに話しを聞いてくれてありがとう!」


「い、いえ…」


「私達家族はこれから花火を見に行くんだけど、レオは誰かと行くの?」


「俺は…先輩とって思って」


「そういうことだったの!?ごめん全然気づかなくて」


なんの悪びれもなくそう言うとさらに言葉を続け


「でも手紙には一緒に見ようって書いてなかったのになんかごめんね」


「大丈夫っす!お、俺も凛のお父さんの焼きそば屋手伝う予定だったのでそれじゃあ!」


レオの心に痛みが走った。彼女の無邪気な反応が、彼の思いを一層引き裂いていく。


刹那の顔も見ることもせずレオもその場から逃げるように去っていった。



ルナとジョンは大きな大木の枝に座り込んでいた。その木はまるで空に届くかのように高く、幹はしっかりとした太さで、彼らをしっかりと支えている。


「怖くない?」


「大丈夫です!僕高いところ得意なので」


「今日は一緒に花火を見てくれてありがとう」


「こ、こちらこそ男の僕から誘わないといけないのに誘えなくて..」


ジョンの緊張をほぐすようにルナはキラキラと光る屋台を指差し


「花火が終わったらアソコのお店に行きたい」


「行きましょう!」


話しがなかなか続かない、沈黙が続いてると突然、空が明るくなった。最初の花火が音を立てて打ち上げられ、真っ赤な光が夜空を照らす。大木の上にいるルナとジョンは、その美しい瞬間に息を呑む。


「うわぁ!凄いや」


目を輝かせているジョンを見て思わず笑みが溢れる。


「なに笑ってるんですかー?」


「楽しそうだなって」


次々と花火が上がり、響く音が胸の奥にまで届き、心が躍るような感覚に包まれる二人


ジョンはルナの手を握りしめ


「僕、先輩が好きです..」


「キスしたから?」


「ち、違いますよ!正直言うとルナ先輩のことあまりよく知りません、だけど先輩を見てると鼓動が早くなるんです。もっと先輩のことが知りたいもっと一緒にいたいって日に日にそんな気持ちが芽生えるんです。だから僕とお付き合いしていただけませんか?」


ルナはその言葉に心がキュンとするが少し寂しそうな顔をしてこう伝える。


「嬉しい、けど私は普通の人間じゃない…ジョンもわかってるとは思うけど私は竜人族だから..私といると嫌な事ばかりの人生になっちゃうよ」


「竜人族だからなんですか?僕はルナ先輩のことが好きで好きでたまらないんです!嫌な事?上等ですよ!アナタとなら僕はどこだってお供します。メンタルは豆腐ですけどね(笑)」


花火が上がった瞬間、彼女は心の中の高鳴りを抑えきれず、ジョンに顔を向けた。


目が合った瞬間、周囲の音が遠くなり、時間が止まったかのように感じた。彼女は思わず近づき、ジョンの唇に自分の唇を重ねた。火花が散る中、ふたりのキスは夜空の光に溶け込むように、永遠のように感じられた。



「これからよろしく、お豆腐くん」 



もう1段高い木の上でその様子を見ているのはモナークとアルイン


「ロマンチックココ...」


「おぅれも実はモナークのこと...」


「な、なにココ!?」


「好きなのだ」


「ごめんだけどボクは女の子が好きココ」


「おぅれは女の子なのだ」


「…………ココォォォ!!」



誠司が営業している屋台の裏の広い芝生で座り込みレイヴンとメリファ、後から合流したフェイとローザにそして星獣達が焼きそばを手に花火を見ていた。


「綺麗だ」


「ホントね」


「凄いルー!ドーンと身体に響くルー!」


「なんて綺麗なFirework花火なのかしら!ビューティーね」


「ええ花火やなー!ホンマは彼氏と見たかったのが本音やけどな」


シクシクと悔し涙を流すフェイ


「なに泣いてるのよヒーラーガール!泣いてる暇なんかないわ!さぁみんなあの花火に向かって走るわよー!」


ローザがそう言いながら走りだすと「走るルー!」とホッパーだけノリノリでついて行った。


「あの人のポジディブ差には敵わんわ(笑)」


そう言いながら焼きそばを食べているフェイの元に泣きながら現れたのは


「この焼きそば美味すぎ、ってどしたんや!?ルーシー」


「僕もう生きていけません」


涙に鼻水と折角の可愛い顔がグチャグチャになってるのを見たフェイは「なにあったか知らんけどこっちおいで抱きしめたろ」とルーシーを優しく抱きしめる。


「なんでこのアタシが一人寂しく花火見ないといけないのよ」


大勢の人がいる場所より少し離れた場所から一人で花火を見ているレイラ、泣くつもりなんかないのに無意識に涙が流れてくる。 


「悠馬なんか嫌い、嫌い!だいっきらい!」


「花火よりうるさい声ってどんだけだよ」


レイラはハッとした顔で声のする方を見るもしかしたら悠馬かも!


「なーんだ悠馬かと思ったら、凛の幼馴染のコウだった?」


「わたるだよ」


「そうそうそれ、なによアンタも一人なわけ」


「そんなところかな、花火なんてホントは見たくなかったけどまぁ一応毎年見てるから少しだけ見て帰ろかなって思ったら君がいたから」


航も一人だとわかり少しだけ気持ちが落ち着いたレイラは少しの沈黙の後花火を眺めながらこんな事を言い出す。


「アタシ達結局のところどんなに頑張っても好きな人に選んでもらえる人生じゃないのかな..」


「諦めるのはまだ早いと思うけど」


「だって今頃一緒に花火見てイチャイチャしてるって思ったら悲しくなってくるんだもん」


「そんなに悲観的になるなよ、結果はその人を好きになれたこと自体奇跡だと思ってればいつか良いことあるよ」


落ち込んでいるレイラを慰めるように航が言葉を紡ぐとさらに手に持っている袋から焼きそばを取り出し


「凛のお父さんの屋台で買ったんだけど食べる?新メニューだってさ『ローザ特製パッション焼きそば』と『商売繁盛間違いなし!ご利益モリモリフェイの焼きそばやでー』のどっちがいい?」


「消去法でフェイ先輩のほうで…」


「それってどういう意味?ま、まぁいっか..はい、どうぞ」


「あ、ありがとう、アンタが嫌じゃなかったらアタシの横座ってその焼きそば食べてもいいわよ...//」                 


 


もうすぐ着きそうだなんとか花火には間に合いそうだな


時間をみるとまだ10分も余裕がある、全速力で走って正解だったーと安堵しながら歩いてると目の前で誰かが襲われている。


「やめてよ!離して」


「グヘヘ..こんなところで可愛い女の子が一人で歩いてるなんて男にでも振られたんかい?おっちゃんが慰めてやるよ」


男はズボンのベルトを緩め女の子に覆い被さり襲うとしている。


「いや!辞めて!気持ち悪いから離してよ」


男は嫌がる女の子を抑えつけものすごく興奮しているようだ。


「ほら♡入るぞ♡…………ぐへ!」


俺はその男を思いっきりぶん殴った

男は予想外の一撃に吹き飛び地面に叩きつけられた。


「痛ってぇな!なにしやがる!?」


「もう一発殴って大人しくなっとくか?俺はいまとにかく急いでるんだ次は容赦しねぇぞ」


おっさんは俺の脅しにビビってズボンも履かずそのまま逃げていった。


「大丈夫ですか!?あれ?なんでここに?」


俺の視界に写ってるのは淡いピンク色の浴衣を着たジュリア先輩


「やっと会えた♡」


「まさか俺を探してたんですか?」


「うん!そうだよ一緒に花火見ようと思って」


「あの実は俺約束してて...」


「そうなの!?なーんだそれなら仕方ないね」


「ごめんなさい」


「全然いいよ!私もフェイちゃん達の元に戻るから…痛!」


ジュリア先輩は立ち上がり歩き始めようとしたがさっきおっさんに襲われたときに足を捻ったのか足首を抑えうずくまってしまった。


「先輩大丈夫ですか?」


「ちょっと捻ったみたい…大丈夫だから…っつ!」


「全然大丈夫じゃないですかとりあえず一緒に天翔神社まで行きましょう歩けないなら俺がおんぶするので」


「ありがとう..でもホントに悪いよ」


「だったら」


周りをみるとポツンと蔵らしき建物が目に入る、とりあえずそこに行きましょうと俺はジュリア先輩をおぶさり蔵に向かった。

                        


お祭り中だからなのか蔵には鍵がかかってなく誰でも入れそうだったので恐る恐る戸を開け蔵で休ませてもらうことにした 


蔵の中は、湿気がこもっていて暑い。俺は先輩を降ろし、たまたま持っていた魔法の杖で先輩の捻った足を治す魔法を唱える。


「どうですか?まだ痛みます?」


「まだちょっとだけ」


しばらく治癒魔法を続けているとジュリア先輩がふと口を開いた


「この前聞いたけど、悠馬くんって好きな子いるの?」


「へぇ!?好きな子ですか」


「そう好きな子」


「いないってなると嘘になるけどいるっていうのも違いますね」


「もしかして複数人いるとか?」


「ま、まぁそんな感じですかね//可愛いなって思う子は何人か」


「その中に私もいる?」


「もちろんですよ!ジュリア先輩が可愛くなかったら世の中の女の子みんな可愛くないですよ、アハハ」


「でも私のことは好きじゃないんだ」


「うぅ..そう言われるとグサッときますね」


なんか今日はいつもと雰囲気が違うな…浴衣のせいだろうか?いや、そうじゃないよな


「これで治療は完了です!どうですか?」


「ありがとう!もう痛くないよ」


「よかった!じゃあ俺は約束があるのでこの辺で」


俺は先輩に別れを告げ蔵を出ようとしたとき


「待って!」


先輩が俺の腕を強く掴んできた


「どうしたんですか?」


「私本当に悠馬くんが好きです」


「ジュリア先輩…」


「悠馬くんの気持ち聞かせてほしい」


「俺は...」


その時レイラの言葉が頭をよぎった『自信持ちなさいよ』確かに今もジュリア先輩の気持ちからまた逃げようとしてた自分に腹が立つどうして俺はいつも逃げ腰なんだろう…こんな自分は嫌だ、だけど先輩のこと嫌いじゃない..かと言って大好きかと言われると違うなんて答えればいいんだ


するとジュリア先輩はいきなり俺の手を自分の胸に当て緊張した顔でこう言った


「一番じゃなくていい..一番じゃなくていいから、私を抱いて」


「先輩なにをいきなりダメです..ってうわ!」


俺があたふたしてるのもお構いなしに俺を引き寄せそして押し倒すと上にまたがり顔を近づけてくる


「ダメならどうして逃げないの?」


「そ、それは」


「ねぇ..私が契約する時どうして口じゃなくて頬にしてほしいって言ったかわかる?」


「わかりません」


「本当に好きな人と契約なんて決められたルールでするんじゃなくてお互いの気持ちが重なり合ってから初めてキスがしたかったの悠馬くんが私を嫌いなら今すぐ私を突き飛ばして、そうじゃなかったらこのままキスして」 


そのとき、外で花火の音が鳴り始め、ふたりの耳にも響いてくる。俺はジュリア先輩の唇に自分の唇を重ねた。



「遅いなー、悠馬なにしてるんだろ.. 」


なんどもソサマを確認しては悠馬からの連絡がないか確認する凛、いつもと違いポニーテールではなく髪を下ろしている自分を早く彼に見せたいと思っているのに..


やがて花火の時間になり一発目の花火が上がる。


 

床がきしみ、艶っぽい声だけが聞こえる、悠馬の汗が彼女の身体に滴り落ちる、蔵の小さな換気窓からは明るい花火の光が漏れ、暗い室内を時折照らし出す。その光の中で、ジュリアの白く透き通った肌が一瞬浮かび上がり、花火の明かりが肌に反射している。浴衣は乱れ、肩や肌が露わになっている。



あぁ……凛怒ってるかな..ごめん…ごめんな



[おまけ]


月日が立ち聖子と誠司はお付き合いすることになる。


聖子のバイクの後ろに乗りいつものようにドライブをする2人


「アンタさー!魔法使いだろ?アンタも高校は風華学園に行くのか?」


「僕は……」


「なにぃ!?なんも聞こえないよー!」


2人はいつものように街の景色が見下ろせる山に到着する。


「さっきなんて言ったの?」


「僕はシルフィードという街にあるエンチャントレルム魔法学校に行くんだ」


「はぁ?なんでそんな遠い街の学校に行くんだよ」


「聖子も知ってると思うけど僕は剣崎の名を受け継ぐ人間...剣崎は代々そのエンチャントレルム魔法学校に通い立派な魔法学校いになることとされてるんだ!だから…寂しいけど行くしかないんだよ」


すると聖子は持っている竹刀で誠司の頭をパシっと叩き少し悲しそうな顔してこう言った


「なんでもっと早く言ってくれなかったのよ..アタイだって心の準備ってもんがあるのにさ」


「ごめん……僕も考えるのが嫌でずっと口にできなかった」


すると誠司はポケットを探り始めるとなにか小さな箱を取り出しその箱を聖子の前に差し出す。


「魔法学校を卒業したら僕と……いや俺と結婚してください!」


バシ!「痛!」


「中坊のくせにプロポーズとか早いんだよ!そ、それにそんなこと..や、約束できないね!アタイは遠距離恋愛なんてできるタイプじゃない!」


突然のプロポーズに顔を真っ赤にさせ完全に動揺しているのが見てとれる。


「そ、そんなぁ〜」


「ただし!1つ条件がある!この条件を飲めるって言うならアタイはその、なんだ//……アンタと結婚とかしてやってもいいよ...?」


「なんでもするよ!さぁ僕にその条件を教えて!」



--時間は戻り現代--


アルバムを眺め思い出に浸っている聖子


「ここでお父さんにプロポーズしてもらったのよねー♡あのとき出した条件いまだに守ってくれてるおかげで凛が産まれて幸せな家庭を気づけたこと本当に感謝してる」


すると聖子のソサマにメッセージが届く確認すると誠司からのメッセージだった


誠司「もうすぐ花火が始まるよ今年は大変賑やかな花火になりそうだ早く来ておくれ」


聖子「わかったわ、すぐに向うわね!お父さん愛死天流わ」


誠司「俺も愛死天流よ」



そう聖子が出した条件とは愛してるという文字を愛死天流と変換し死ぬまで使い続けることだったのだ。



次回![第四十五話、阿離我拓ありがとう風華国]

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