[第四十二話、天翔祭]
8/2
合宿3日目
今日は待ちに待った天翔祭だ、胸が高鳴る。窓の外を覗くと、青空が広がり、風が心地よく吹いている。祭りの準備に賑わう街の様子が見え、人々の笑い声や話し声が耳に届く。
「おはよう悠馬」
「おはよう、あれ?女子達は?」
「何人か下で浴衣に着替えてるよ、だけど凛は先に会場に向かったっぽいね」
「そうか」
結局昨日ギリギリまで考えに考え俺が決めたのは……
「すごく……すごくいいぞキース」
「ホントですか?なんか俺まで着ることになっちゃってこういう服初めて着るから少し照れくさいです」
「今すぐ脱がしてめちゃくちゃにシたい」
「ダメですよ!シルベスターさん、あっ♡ちょっと♡」
朝からお盛んなこった……
「悠馬!悠馬!早くお祭りに行くルー!」
「はいはい(笑)じゃあ支度したら向うか」
支度を終えみんなで会場につくと、天翔祭には朝から日が暮れるまで「天翔凧合戦」と呼ばれる壮大な凧揚げが行われている、各地から集まった凧職人たちや一般の人たちが、自らの技術と誇りをかけて、巨大な凧を揚げる準備をしていた。各町の代表が持ち寄った凧には、それぞれ異なる模様が描かれ、空に揚がった時には、まるで空に沢山の鳥が飛んでいるようだ。会場は広大な芝生広場で行われている、長い小川が穏やかに流れていて。そばには緩やかな坂がある、合戦が行われている反対の広場では屋台が縦にズラッと並んでいる。
「すっげぇ..」
「ホパも凧揚げしたいルー」
行こう行こうとホッパーは他の星獣達の手をとり凧揚げの会場にトテトテと足を走らせる。
「なんで全部鳥の形なんだろ」
「それは剣崎小十郎の星獣が燕だったという説から来てるからだ」
「航!」
俺に少し無愛想ながらも説明をしてくれた航の手にも燕の形をした凧が見える。
「凛は一緒じゃないのか?」
「残念だったな凛は浴衣に着替えるために帰ったところだ」
「なんだ行き違いになったのか」
「それより悠馬、俺と凧揚げで勝負しないか?この凧揚げで相手を決め勝負し勝つと勝ったほうの願いが叶うと言われてるんだ」
「いや、俺はパス」
「なんでだよ!やるぞ!」
「ん!」ともう一つ持っていた凧を俺に無理矢理手渡しなぜか航との凧揚げ合戦が始まった。
「こんなことしてる場合じゃないんだけど…まぁ時間あるからいっか」
二人は同時に凧を空へと放つ。凧が一斉に空に舞い上がると、鮮やかな色彩が広がり、まるで空を彩る鳥のようだ。航は手元の糸をしっかり握り、風を感じながら凧の動きをコントロールする。一方、悠馬も初めてながら糸を操り、自分の凧を高く引き上げようと奮闘する。
「今がチャンスだ!」航が声を上げ、凧を引き寄せながら一気に高く揚げる。すると、悠馬の凧も負けじと風をつかみ、二つの凧は空中で競り合う。周りの観客たちが集まり、興奮した声を上げながら二人を応援する。
風が強まると、凧同士が絡み合う瞬間が訪れ、二人は驚きの声を上げる。航は冷静に糸を引き、悠馬も必死で凧を操る。「負けるな、頑張れ!」観客の声援が響く中、二人は全力を尽くして凧を高く揚げる。どちらが勝つのか、期待と緊張が高まる。
すると、小さな凧が2人の凧の近くにユラユラと現れる。なんだこの凧!と思った悠馬は糸を辿ると視線の先には楽しそうに凧を飛ばすホッパーがこちらを見ていた。
「見てみてー!ホパの凧が一番高いルー」
「邪魔すんな!危ないからあっちにいってなさい!」
すると航も空を見上げなにかを言っている。
「ヤマトマル!そんな凧の近くで飛ぶな!絡まったらどうする」
「ひゅー♪凧避けゲーム楽しいでござる♪」
「ワタシもそれぐらいできるピィ♪」
すると航の星獣ユユがホッパーにこう言う
「もっと手首をひねると凧がグルグル回るガル」
ホッパーは適当な事を信じ手首をひねるとそりゃあそうだと言わんばかりに小さな凧は悠馬と航の凧に絡みつき虚しくも地面に落ちてしまった。
テンションがMAXに達している星獣達はそれを見てキャキャキャと手を叩きながら笑いその場から走り去ってしまった。
「なんだよあいつら…」
「これは引き分けみたいだな」
「それでいいっすよ..って待っていま何時!」
「ん?今は12時になるところだけど..」
航がそう言うと「悪い!また今度凧揚げしよう!楽しかったまたな!」と悠馬は足早に去っていった。
結局昨日俺は花火を一緒にみる相手を凛かレイラどちらかに選んだワケだけど流石に断った相手にも悪いと思った俺は花火は見れない代わりに昼は一緒に祭りを楽しもうと断った相手にメッセージを送った。
そして俺はいま大遅刻をかましそうになっている!待ち合わせ場所は天翔神社頼む間に合ってくれ!俺!
「いらっしゃい!射的一回100ルーメントだよ」
(ここは僕がルナ先輩にカッコいいところ見せて……きゃー♡カッコいいー♡ジョンくーんって言ってもらうんだ)
「お願いします。」
「ジョンあなた射的なんて出来るの?」
「はい!僕これでもゲームとか得意なんです」
「よし、いくぞ!」
と意気込んだジョンは、的に向かって真剣な表情で構えた。心の中で
「必ず当てる!」と念じながら引き金を引く。しかし、弾は的を外れ、おじさんに当たる。
「あぁ、すみません…」と赤面するジョン。次の挑戦。少し距離を取って再び構える。狙いを定めて放った弾は、今度は的の横をかすめて消えていく。
「ちょっと、遠すぎたかな…」とつぶやく。三度目の挑戦。少しずつ自信を取り戻し、的をしっかりと見据える。
「これこそ!」と思った瞬間、弾は無情にも地面に落ち、砂埃を上げた。「うわぁ…もうダメだ」と肩を落とす。
「ガハハ!お兄ちゃんドンマイだな!」
「ふぇぇん」
「今度は私が…」
一発目、弾は見事に的に命中。「すごい!」と周囲から歓声が上がる。
二発目、またもや的を射抜く。彼女の手つきは安定していて、無駄がない。
三発目、完璧に決まり、周囲は拍手喝采。ルナは静かに振り返り、「簡単だったね…」とジョンに言った。
「お姉ちゃん…すげぇな、ほら好きなの選びな」
「これにする」
ルナが指差したのは奇抜なオレンジ色の星の形をしたサングラスだ。
おじさんに景品をうけとり心なしか満足そうにサングラスを頭に乗せるルナ
(次こそ絶対いいとこ見せるぞ!)
そう固く誓ったジョンであった
「ハァハァ……す、すまん遅れました」
かなりの速度で走ったからか息が整うまで時間がかかる
「おーそーい!ちゃんと時間通りに来なさいよね!花火見るのはどこかの誰かさんに譲ってあげたんだから」
「ごめんごめん..ちょっと航と凧揚げしてて、でもちゃんとレイラとの約束忘れてなかっ……た……だろ..」
汗を拭い顔をあげると淡いピンクの浴衣にいつもはきっちりとしたツインテール姿のレイラではなく綺麗な髪飾りを身に着けたポニーテールのレイラが立っていた。
あまりにも可愛すぎる…
どことなくいつもより愛らしい
「な、なによジッとみて」
「ごめんあまりにも可愛いからつい..」
「さ、さぁ!行くわよ」
レイラと並んで歩く俺は、なんとも言えないドキドキ感に包まれていた。手を繋ぐべきか、繋がないべきか、心の中で葛藤していた。
「金魚すくい?なにそれ?」
「金魚っていう魚を網ですくうゲームだよ、破れるとそこでゲームオーバーだけどな」
「へぇー!面白そう行くわよ!」
その言葉に心が躍る一方で、俺はどうしても勇気が出なかった。レイラの手が、少し距離を置いているだけで、無性に繋ぎたくなる。
歩くペースが合わず、少しぎこちなくなる。
「えっと、金魚すくいどうする?」とレイラがちらっと俺を見上げた。俺は思わず視線を逸らし、「いや、あの…」と口ごもる。その瞬間、レイラが手を少し伸ばしてきた。俺の心臓がバクバクと音を立てる。レイラの指先が触れそうで触れない、微妙な距離。俺は思い切って「手、繋ぐ?」とつぶやいた。レイラは少し驚いたが嬉しそうに笑い、しっかりと手を繋いでくれる。その瞬間、俺の心は軽くなり、安堵感が広がった。「行こう、金魚すくい!」と、レイラの笑顔に後押しされて、屋台の前まで手を繋いで歩く。
おじさんが「いらっしゃい、いらっしゃい!」と声を掛けてくる
「おじさん2人ね!」とレイラが元気よく言う
レイラは金魚をすくおうと頑張るが、なかなか上手くいかない。
「あぁ、逃げちゃった!やるわねこの魚」
俺は綺麗な横顔に思わず見惚れてしまう。
次の瞬間、レイラが見事に金魚をすくった。
「やった!悠馬、見て!」と嬉しそうに振り返る彼女に
「すごい!さすがだ!」
おじさんは金魚を持って帰れるように袋に入れてくれようとしたがレイラは「こういうのはキャッチ&リリースだから」と断る。
「ほんとによかったのかー?」
「いいのよ、育てられる時間もないし狭い水槽なんかに閉じ込められるのも可哀想じゃない」
「それもそうだな」
「見てみて悠馬!りんご飴だってー♡美味しそう」
そう言いながら俺の手を引っ張り、フルーツ飴の前に向う
「いらっしゃい!あらー可愛い彼女さんね」
おばちゃんの口上手さにレイラは思わずエヘヘと愛嬌良く笑い
「お姉さん、私この大きなりんご飴がいい」
「まぁお姉さんなんて!じゃあとびっきり大きいのを選んであげるからね」と嬉しそうに特大のりんご飴を手渡してくれた。
歩きながら食べるのもなんだし凧揚げが行われている広場の人気が少なそうな場所で座り込みりんご飴を食べる。
「悠馬は買わなかったの?」
「りんご飴って全部食べれた記憶ないんだよなー(笑)」
「そう、だったら」
「ん!」とさっきまで舐めてた飴を俺の口元まで近づけ一緒に食べようと差し出してきた
「俺が舐めてもいいのか?」
「なによ舐めるぐらいで躊躇しちゃって、キスはするくせに」
そうイタズラに笑うレイラに確かにと思い少し飴をわけてもらうことにした。
「ねぇ…悠馬ってさ好きな人とかいる?」
「い、いきなりなんだよ」
「いるのかなって思って」
「んーいるかいないかで言うとどっちでもないんだよなー」
「はぁ?なによそのしょーもない回答一番望んでない回答よ」
「だってこんなクソみたいな人間に好きになられても迷惑なだけだろ(笑)」
ホントに幸せにできる人はレオさんや航とかああいう心も男らしい人じゃないとな
適当に笑ってやり過ごそうとした俺にレイラは言った
「迷惑かどうかなんて好き同士なら関係ないじゃない、アンタどうしてそういつも逃げ腰なのよ」
「どうしてって言われても、俺は前の世界ではずっとイジメられてきた人生だし…なにやっても上手く行かない..いやヤル気がなかっただけなのかも知れなかったけど、実は言うとさ誰かを本気で好きになったこともないから好きってわかんないんだよな、だからこんな俺に好きになられても迷惑だろうなって思って。」
「ダッサ」
「え?」
「ダサいって言ってんの!前の世界がなに?アンタいまはこの世界で生きてるんでしょ!?魔法の才能もなかったアンタが魔法も使えるようになって、それでサンクチュアリにも入れて、なのになんでそんなに自信なさげなわけ!?ちょっとは自信持ちなさいよ!このばかぁ!!」
「ちょ!まってアッパーだけは……!」
ブルラァァァァァ!!!っガハ…………!!
なんつうパンチ……失神しそうだ..
勢いよくレイラに花火のように高く打ち上げられる悠馬
「ご、ごめん!つい力が」
「だ、大丈夫でふ……」
すると俺の頭を優しく撫で
「自信持っていいのよ、アンタは十分魅力的なんだから..」
「ありがとう」
レイラとの楽しい時間もあっという間に過ぎ俺は次の約束相手に会うためにここでレイラと別れる
「今日は楽しかった」
「こっちこそ…行かないでって行ってもいくわよね」
「なんだよそんな寂しそうな顔するなよ」
「してないわよー!」
「また2人でどっかいこう」
「絶対よ約束だからね!」
[おまけ]
輪投げ屋では星獣達と一緒に楽しんでいるのは
「ン!ゴォォォォル!!流石は私ね」
「凄い凄い!ローザは最強ざます!」
「アルインも投げてみるロン」
「やってみるのだ…」
ポイッと投げるアルインだが上手く入ることができなかった
アルインの隣では器用に首を振りフェイの星獣リエルがポイポイ輪投げを入れている。
「リエルすごいルー!」
「こういうのは得意アルね」
するとようやく見つけたといった顔をしたフェイが現れ
「いたいた!ローザ先輩探してたんや」
「どうかしたの?ヒーラーガール」
「凛のおっちゃんが焼きそば売るの手伝ってー言うててそれやったらウチとローザ先輩の最強コンビで盛り上げたろうやないかと」
「ヒーローの血が騒ぐわね……いいわよ!ではレッツゴー!」
「ぼくちん達はどうしたらいいアル?」
「そやなーあっ!あっちにレイヴン先輩達がいるからあの2人に突撃しといで!」
次回![第四十三話、ずっと友達でいるのか?もっと特別になるのか?]
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