[第四十話、恋はあと少しで届きそうなのに]


「さぁ!もっと人々を混乱に落としれるのです!!」


「うなぎぃぃぃ!!」


「おっーほっほっほっ愉快愉快」


「あなた達!こんなところまで邪魔しにくるなんてよっぽど暇なのかしら?」


一番乗りに現場についた凛がダミアナを挑発する。


「あらまぁ誰かと思えば邪魔者さんではありませんか、今日こそはあなた方の首を持って帰り魔王様に褒めていただきますわ!やってしまいないさいリヴァイパイ!!」


うなぎぃぃぃとリヴァイアパイは叫び凛に襲いかかる


「俺が援護する凛はリヴァイアパイの首を狙え!」


「わかったわ!」


航はそう言うと弓の弦を強く引きリヴァイアパイ目掛け射る。風を纏った矢は一直線に相手へと迫り。その鋭い軌道は迷いなく、敵の腹部へと真っ直ぐに突き進む。「ガツン!」と鈍い音が響き、衝撃が敵の体を揺らす。矢の先端は肉を貫き、深々と腹に突き刺さった。


だが相手は伝説の妖怪リヴァイアパイ悲鳴を上げるどころかさらに雄叫びを上げ大口から一気に太く激しい水を噴射する


凛は相手の攻撃を身動きがとりづらい砂場にもかかわらず正確に相手の攻撃を躱しながら近づき高く飛び上がり力いっぱいに短刀を構え叫ぶ『剣崎流奥義・天墜一閃!!』相手の首に刃が入ると思ったが予想を遥かに超える身体のヌメりに刃がスルッと空振る。


「しまった..」凛がそう呟いたときにはリヴァイアパイの大きな尻尾が目の前に見え叩きつけられる寸前、だが凛の前に航が現れ盾で攻撃を防ぎその勢いに乗るように技を唱え『盾島流・守護裂弓シュゴレツキュウ』盾を弓へと変形させ、反撃の矢を放つ。攻防一体の動作で、相手に隙を与えず、確実にカウンターを決める。


そこにサミラが笛の音で二人を強く吹き飛ばした


「ナイスでしてよサミラさん」


「ありがたきお言葉です。」



「きゃあ!」


一緒に吹き飛ぶ二人だが航のほうが先に受け身をとり足に力を入れぐっと凛を受け止める。


「大丈夫か!?」


「ありがとう」


そこへ悠馬達サンクチュアリ一同が遅れて到着する


「凛!大丈夫か!?怪我ないか」


悠馬にがっしりと肩を掴まれ思わず顔を紅潮させ「大丈夫」と一言返す


「リヴァイアサンかリヴァイアパイか知らんけどよくも俺の凛を傷つけてくれたな!許さん!」


[俺の凛]その言葉にさらに下を向き恥ずかしがる凛と俺のってなによと言った顔で悠馬を睨むレイラとジュリア


「よしいくぞホッパー!」


「待て悠馬!ここは私達3年生だけで片付けさせてほしい」


「ダメですよ!俺だってヤラせてください!」


「これはリーダー命令だちょっとむしゃくしゃしていてな早くコイツらをぶちのめしたいところなんだ!」


そう指の骨をボキボキ鳴らしながらイラつきを隠せていない鬼神モードのレイヴンに悠馬は大人しく一歩下がる。


「凛悪いが伝説の魔物は跡形もなく消してしまう、神聖な生き物ではないことを確認しておこう」


「大丈夫だと思います..多分」


「よし...では3年生全員であの巨大なうなぎとオブキュラスの奴らを倒す!生きて帰すな」


各3年生が返事をするとメリファが支援魔法を全員にかけ魔力の威力を高める。


「ダミアナさんあの人達凄い気迫ですけれど、どういたしましょう」


「ありったけのゴブリンを呼びますわよ!さぁゴブリン達奴らを一匹残らず殺してしまいなさい!!」


ギギギ!と100を超えるゴブリン隊が一斉に闇の魔弾を唱え一気に放ってくるが、シルベスターは余裕な表情で俺様が出ようと前に立ち


「こんなくだらん魔法で俺様に敵うと思うなよ!全員骨ごと溶けていなくなるがいい!」『ヴァイパーズ・レイン』手のひらに浮かび上がる瘴気の球体が、まるで毒蛇の巣窟から湧き出したかのような力を帯びている。シルベスターが球体を握りつぶす瞬間、手から放たれる無数の酸の粒子が空中を舞い、ゴブリンに向かって降り注ぐ。小さな粒子はすぐに相手の表面を腐食し、次々に溶かしていく。どんな数の敵も、雨のように降りかかるこの酸の嵐から逃れることはできずあっという間にゴブリン隊を溶かしてしまった。


「まだよ!もっと突撃なさい!」


ゴブリン達は恐れることもなく飛びかかってくる。

「じゃあこの俺レオがいいとこ見せちゃおっかな♪」余裕のある声色で『ハイドロ・ラッシュ!!』と唱えレオが両手を高く掲げると、瞬時に無数の水のムチが空中に現れ。ムチは荒れ狂う波のように渦巻き、鋭くしなるごとに勢いを増す。レオが指を一振りするだけで、その水のムチは複数の敵に向かって疾風のごとく叩きつけ、圧倒的な水圧で敵をねじ伏せ、吹き飛ばす。ムチの一撃一撃は鋭く、連続して打ちつけられる攻撃から逃れることはできない。


エドワードもレオをサポートすべく口から水を吹き出し援護射撃をする。 


レオとエドワードがゴブリンとの戦闘をしているとアリヤがレオの隙をつき静かにナイフを突きつけようとするがローザが金属の鎧を纏った足でアリヤを力の限り蹴り上げる。


「いいとこ見せようと張り切りすぎじゃない?プレイボーイ」


「すまん!助かった」


勢いよく壁に激突し血を吐き苦しそうにもがくアリヤに駆け寄るサミラ


「凄い傷...後はお姉ちゃんが戦うからあなたは..」


「お姉ちゃんなんかに任せてられない...ぐはぁ!」


立ち上がろうとするが鈍痛が激しく上手く立ち上がれない。


「リヴァイアパイさん後は任せましたわよ..一旦撤退ですわ!」


ダミアナが二人のもとに近づき黒いゲートを出現させ闇の中に消えていってしまった。


「私達も魔力供給完了だな」


「アナタ激しすぎるわ...失神しそうだったじゃない」


「すまない」


そうイタズラに笑うレイヴン、リュカとマヤが神獣

に進化させてと二人に指示を仰ぐ


二人は軽く頷き手に力を込め詠唱を唱えた


「星獣リュカよ我の力を使い神獣に進化せよ」

「星獣マヤよ我の力を使い神獣に進化せよ」


リュカの足元に雷の魔法陣が現れ激しく雷が天から落ちてくるそして光に包まれ現れたのは見た目ほどの変化はないが普段の数倍身体が大きくなり黒いマントが雷の紋章のような物に変化した姿で現れた


マヤの足元にも魔法陣が現れ沢山の綺麗な蝶の大群がマヤを包み込みまるで蛹から美しい蝶に生まれ変わるように美しい女性の姿をした神獣に生まれ変わる。


いつもの甲高い声とは違い落ち着いた話し方で攻撃を仕掛けるマヤ


「まずは奴を捕まえてやるでち蟲王群舞陣チュウオウグンブジン」マヤは微笑み唱えると無数の蟲が敵を包囲し始める


「リュカやつよりも高く飛び上がれるか?」


「もちろんだぎゃ」


「よし!では任せたGO!」


リュカにまたがり光の速さで駆け抜け、リヴァイアパイの頭上まであっという間に到着すると


リュカを蹴り上げ宙に舞うレイヴン、蹴り上げられた勢いで蟲の大群に襲われている中に飛び込み爪を立て『雷霆爪烈撃ライテツソウレツゲキ』と技を放つ、爪に激電を宿し敵の頭、胴体、そして尻尾と次々に切り刻んでいく


宙に舞っているレイヴンがトドメの一撃をぶつけるようと力をため手をかざし詠唱を唱える『雷鳴轟く天の声よ、我に力を与えたまえ。雷神の波動』レイヴンの手から強烈な雷鳴のエネルギーが放たれ相手に直撃する!そしてリヴァイアパイはうなぎパーイ!と叫び朽ち果て灰と化した。


雷鳴の余韻が空に残り、リヴァイアパイが灰となって崩れ落ちると、砂が舞い上がり、渦を巻くように砂塵が立ち込める。薄暗くなった空の下、まるでその砂嵐が裂けるように、5人のシルエットが現れた。彼らは一糸乱れぬ足取りで前進し、砂塵の中をゆっくりと歩いてくる。


逆光に照らされた彼らの姿は影となり、5人それぞれが異なるオーラを纏っている。風が彼らの髪や衣をなびかせ、まるでヒーローたちが登場したかのような圧倒的な存在感を放つ。


「レオ先輩!カッコよかったです僕..」


ルーシーは笑顔でレオに駆け寄った。しかし、レオは足早に彼女を避けるように一言だけ告げた。


「悪い、ルーシー!後で話すよ!」


彼は振り返らず、そのまま急いで走り去っていく。


(早く刹那先輩の元に戻らないと…)


久しぶりに再会した、ずっと好きだった先輩。胸の中に溢れる想いを押し殺し、レオはただその背中を追い求めるように走る。心臓が速く鼓動を打ち、体中に熱が巡る。


(あの日、伝えられなかった想い…今度こそ――)


レオの胸の中に、熱く滾る想いが込み上げる。


「ハァ..ハァ..あれ?先輩?どこに行ったんだ」


周りを見渡しても刹那の姿はどこにも見当たらないすると休憩所の机に手紙が1枚置いてあるのが目に入った。


レオはその手紙に目を通す。そこには刹那の字でこう書かれていた。


『せっかく再会できたのにまた居なくなってごめんなさい...やっぱり他のみんなと顔合わせることはできないです。だけどもしレオがまた私に会いたいと思うなら明日の夜、会いたい待ち合わせの場所は天翔神社で...刹那より』



「今日はこれで終わりにしよう帰って風呂でも入って明日の天翔祭まで身体を休めるぞ」


レイヴンの言葉に一同が返事を返し波乱万丈な海水浴は終わりを迎えた。


一方その頃、負傷負ったアリヤを担ぎダミアナ達はオブキュラスに帰還していた。


「さぁ、もう大丈夫ですわ」


「うぅ..」


「おかえりなさい!どうだった!?ってアリヤ!!なにがあったの!?」


「ナディアちゃん落ち着いて命に別状はないから」


「なにをボサッとなさってるの!?ゴブリン達早くアリヤさんを手当てなさい!さもなくば首を切り落としますわよ!」


ゴブリン達はせっせとアリヤを運び治療室に向かって行く。


この状況に魔王はしばし考えていた。頭部さえ戻ってこればみんなに自分の魔力を供給できるのにとするとなにかを思いついた魔王は雛音にこう伝える。


「雛音よ昨日使ってたアプリには操り機能があると申していたな?」


「はい!一時的にですが人格をこちらで操ることができるコン」


「それを使い我の頭部がどこにあるか探し出しそやつに我らが持ち帰れる安全な場所まで届ける、というミッションをお前にさずけよう」


「コココン!?了解したコンであります!では早速...」


雛音は水晶玉の周りを手でぐるぐると回す、するとミシェルはその場に倒れこんでしまった。


「ミシェル!?大丈夫にょ!?」


リビングで突然倒れたミシェルに驚き身体を揺さぶるがうめき声をあげるだけで応答はない 


「これはまずいにょ..すぐにゴミミケロスに..」


「まって..」


「ミシェル!無事だったかにょ」


「うん...ちょっと目眩がしただけコン」


「なんか変にょ」


「コンコン!風邪引いちゃったみたい、えへへ」


「一応医務室に行ったほうがよさそうだにょ、あたちが連れて行ってあげるにょ」


「ありがとう、優しいコンね..ちが..コンコン!!」


アイシャと医務室までの歩く道中ミシェルはアイシャに質問を投げかけた


「アイシャってサンクチュアリの星獣とかと仲いいの?」


「仲いいって言うかみんなあたちの子分だにょ!どうしてそんなこと知りたいにょ?」


「実は噂で聞いたんだけど何でも魔王の頭部を持ち帰ったとかどうとか」


「それならサンクチュアリ内に大切に保管されてるの見たことあるにょ!七夕フェスの夜、星獣達でパーティーしたときにホッパーが見せてくれたにょ」


「私もそれが見たいなーでも今は誰もいないから入れないかな?」


ミシェルの言葉に誇らしげに両腕を腰に当てアイシャが話し出す


「星獣ルームから無断で入ることが可能にょ!ただミシェルはそこから入れないからあたちが中から鍵を開けてあげるにょ!」


「流石はアイシャだコン!」


「えへへへ、ていうかさっきからあたちの事呼び捨てだしコンとかもおかしいし本当にミシェルにょ?」


「正真正銘のミシェルだよ!さっき倒れたときに少し記憶が混乱したみたいで呼び捨てになってたけどもう大丈夫だよ!ほら元気いっぱいでしょ!」


両腕を曲げ足はガニ股で絶対にミシェルが普段しないポーズをアイシャに見せ元気100%だと証明してみせる。


「まぁいいにょ..だったらついてきて!ギルドまで案内するにょ!」


こうしてまんまと罠にかかったアイシャはミシェルを連れギルドに向う。


ギルドに着くとアイシャは「すぐに鍵開けるから待っててね」とミシェルに言い残し星獣ルームの隠し通路から侵入しあっという間に鍵を開けることに成功する


「ありがとう!アイシャちゃん」


「どういたしましてにょ」


アイシャはこっちだよと指をさしながら奥の部屋にミシェルを案内する。奥の部屋には白い布が被せてある箱が置いてあり、その布をめくると箱には『無断で持ち運び禁止』と書かれた紙がドン!と貼ってあるどうやらこれが魔王の頭部のようだ。


「ミシェルこれを見てどうするにょ?」


「んーとねこうするの」


ミシェルはアイシャを指差し『眠りにつきなさいスイートドリーム』と眠りの魔法を唱える、するとアイシャは瞬く間に深い眠りについてしまう。


「クスクス..これで魔王様の頭部はいただきコン」


こうして操られたミシェルの手によって魔王の頭部はオブキュラスの手に渡ってしまった。


「忘れてたアイシャも一緒に回収しないとバレるコン」


[おまけ]


「んー!今日の仕事はこれで終わりー!」


身体を伸ばし1日がやっと終わったと実感するホシノ先生


「ウチら教師に夏休みなんて物はありませんからねーやれやれ..」


パソコンで事務仕事をこなしながらボヤくのは研究所の顧問ライラ先生


「あちし達教師も忙しいけどギルドや部活なんかに所属してる生徒達も大忙しでしょうねん、特にサンクチュアリのメンバーなんかは」


仕事終わりのコーヒーをすすり机に腰掛けるケビン先生


「いやー生徒達全員感心、感心!そうだギルドと言えば確かサンクチュアリのメンバーは合宿中ですよね?なにも起きないといいんですがね..」


帰りの支度をしながらそう話すのはイケオジのガイ先生


「大丈夫でしょ!あの子達なら、多分..」


「なによーん!ホシノ先生あの子達が信じられないっていうのーん!?」


「ウチら教師の目がないところでの男と女ましてや青春ど真ん中..なにもないわけ、ないなんてことありません!」


ライラのトドメの一言に教師全員が不安になる。


すると勢いよく扉が開き意気揚々と職員室に入ってきたのは


「みなさん!お疲れ様です!今日は教頭先生が出張ということで私校長が皆さんのためにご褒美を用意しました!」


「あんらー校長先生じゃないん♡ご褒美というとん?」


「今からみんなで飲みに行きませんか!?もちろん私の奢りです!さぁ、みなさんさっさと片付けて飲みに行きますよ!」


「「「「はーい」」」」


次回![第四十一話、きっと制御できないロマンス]                                                                         

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