[第三十八話、愛と太陽が微笑む]


「ジョン一緒にこの辺り散策しよう..ぜ..」


反応がないただの屍のようだ...


多分一目散に何処かに行ったルナ先輩を見て撃沈したんだろう、モナークが付き添ってくれてるし今日はこのまま放っておくか


「とりあえず下に降りるかホッパー、一緒に行くか?」


「ホパはお師匠と遊びに行ってくるんだルー」


お師匠とは誰の事だと聞く、どうやらローザさんのことらしい..いつの間にホッパーの師匠になったんだあの人


なんだかみんな自由に行動するみたいだし

俺も懐かしさを感じに外に出向くか


玄関で靴を履き外に出ると目の前に俺より背が高くスラッとした男の子が立っていた。


黒髪で長い髪を束ねていて髪を結んでいるであろう白い紐がおくれ毛のようにユラユラと風で揺れている、服装はなんとも変わった武士のような格好をしており思わず何かのコスプレですか?と尋ねたくなってしまった。


「あの..どちら様でしょうか?」


すると俺の背後から声がする


「元気そうだね航その格好って風華学院の制服?」


男の子は凛を見ると一瞬嬉しそうな顔になったがすぐにムッとした表情に戻し再び俺を睨みだす


「紹介するねこちらは私のクラスメイトの林悠馬くん、悠馬こちらは私の幼馴染の盾島航」


この人が凛の婚約者か

俺は軽く会釈をする、だが相手は全く微動だに動こうとしない


「凛お久しぶりガル」


航の足元から現れたのは赤い法被のような格好をした小さなレッサーパンダが姿をみせる


ということはこの人も魔法使いってことか..


「ユユ!久しぶりだね、相変わらず可愛い♡」


久しぶりのユユとの再会に思わず駆け寄りスリスリと頬を擦り寄せている。するとようやく航が口を開いた


「なんでずっと連絡くれなかったんだ」


「ごめんごめん忙しくて」


航は上から下まで凛の制服を見ると


「スカートが短いなんか嫌だ」


「短いって言われても標準の長さだよ、航ちょっと背伸びた?」


凛が背くらべのように身長を手で測るとそれに反応するように、うんと無言で頷く


「凛ちょっと」


俺が凛の腕に何気なく手をやるとさっきまで地蔵のように動きもしなかった航が俺の手を掴み一気に俺を投げ飛ばした。


「いてて..なにすんだよ!」


「凛に軽々しく触れるな」


「話しかけただけだろ」


そんなやり取りを2階の窓から面白そうにこちらを見て実況しているのはフェイとローザの2人


「やっとるやっとる(笑)早速修羅場やな」


「ガールを取り合う2人のボーイいいわねまさに青春」


凛は心配そうに俺に近寄り怪我がないか確認してくれると航に強い口調で言葉を投げかける。


「久しぶりに会ったと思ったらいきなり初対面の人に乱暴してどういうつもり?なんなの?言いたことがあるならハッキリ言ってよ」


「ごめん..凛が心配で」


「いやいいんだ、こっちこそ悪かったよかったら仲良くしてくれると嬉しい」


きっと悪い奴ではないんだろう、確かに自分の婚約者が他の男に触られるのは嫌だろうと思うし盾島って剣崎の守り人みたいな話しも聞いてたから仕方ないよなと俺は思い航に仲直りの握手を求めた。


くぅー俺って大人!!


「改めて自己紹介させてほしい俺の名は盾島航、凛の...その..あの..こ、こんやく」


「お馴染みでしょ、変な言い方しないで誤解されちゃう」


ドキマギしながら言おうとした言葉を遮るようにお馴染みをやたらと強調する凛に少し違和感を覚えたが航もその言葉を聞きすぐに「そうだ」と言い直した。


「そうだ!俺今日ここに来たばっかりだから航と凛そしてジョン..はほっといてレイラと4人で何処か風華国を案内してくれよ!そうと決まればおーいレイラー」


できる男とはこういう事を言うんだぜ..俺レベルになるとこうして空気を変え楽しい雰囲気に持っていくことだって..


できなかった.…凛に生まれ育った町を案内してもらっている間この男はずっーと俺を睨んでやがる


「ねぇ、なんかあの航って子アンタのこと殺そうとしてない?なんかバカなことでもしたの?」


「するわけないだろ!身に覚えはございません」


レイラと俺はヒソヒソと航に聞こえないように距離を近づけ話す。


「ここが中学の帰り道に寄って帰ってた商店街です。まだ半年しか経ってないのに懐かしいなー、あっ大好きなコロッケが売ってる〜」


まるで子供のようにはしゃぎ馴染のあるコロッケ屋に向かい久しぶりの店のオジサンと楽しく会話している凛を見るとこの子はホントに愛されて育ってきたんだなと実感する。


凛の隣で航も楽しそうに話してるしやっぱ悔しいがあの2人お似合いなのかも


「あの2人カップルみたいよね」


俺の思ってる事をそのまま口にだすレイラに俺は相槌をうつと


「あの2人がカップルに見えてるなら今のアタシと悠馬もカップルに見えてるかな..」


「見えてるんじゃね、まぁレイラが可愛いから美女と野獣みたいにしか思われないと思うがな」


「かか可愛いとかい、いきなり何言ってんのよ//」


「ホントのことだろ?なに照れてだよ、あっわかった俺に言われて嬉しいとか?そんな褒められてもなんも出ねえよ」


「それはこっちのセリフじゃーい!」


ブルらぁぁ!!久しぶりのアッパーなかなかに強いっす...



その頃3年生は珍しく5人で行動を共にしている。


「星獣達のおもりはいいのか?ローザ」


「あの子達とこの風華の街をジョギングしようと思ったんだけどみんなで近くの公園に遊びに行ってしまったからいいのよ」


「なんか5人で行動するの久しぶりじゃないか?」


レオの言葉にレイヴンとローザは確かにと頷く


「キーちゃんのおもりはいいのシルベスター」


「義理の姉にそう言われるとなんだか気持ち悪いな」


「フフ、それはこっちのセリフ♡」


「メリファ、シルベスター喧嘩はよしてくれ..ほらあそこに風情のある雑貨屋があるじゃないか、みんなで入ろう」


レイヴンに続き風華の象徴でもある鳥が描かれた扇子やお揃いのアクセサリーが売れている店に入店する5人


「ねぇ、レイヴンこの扇子私に似合うかしら?」


「ああ、とっても綺麗だ一緒にお揃いにしようか」


「綺麗な翡翠色した指輪だな..キースにプレゼントでもしてやるか、俺様からのプレゼントに泣いて喜ぶだろうな...フハハハ!!」


「俺もなんかカッコいいピアスとかないかなー」


ピアスが並んでいる商品を見ていると見覚えのあるピアスを見つけるレオ


「これって刹那さんが着けてたピアスに似てる..」


「HEYHEYプレイボーイ、やっぱりまだ未練タラタラタランチュラなんじゃない?」


「そうかもなタラタラタランチュラかも」


「刹那先輩この街に帰ってきてるって噂よ」


「え?マジで!?」


「だけど会いに行くのはオススメしないわよ」


「わかってるよ..わかってるけどさー!」


「仕方ないわね私がお揃い着けてあげるわ」


「それはいい」


「SHOCK!!」



「はーいみんな笑顔笑顔せーの♡」


ジュリアの掛け声にフェイ、キース、ルーシーの3人が手にピースを作る


フラッシュがピカッと光るとこんな風に撮れたよとアナウンスが流れる


4人はプリクラを撮りに来ているようだ


「キース!ちゃんと目がん開きにして撮らなアカン言うたやん!」


「キースだけ半目になってますね」


「だってープリクラなんか普段撮らないし」


「ねぇねぇあっちで落書きできるよ!あっちに移ろう」


4人はトコトコと落書きブースに移りどう書くかを決めるのにワイワイと話している。


「悠馬くんラブ♡っと」


「あっそんなのズルいですよ、じゃあ僕もレオ先輩ラブ♡っと」


「じゃあ俺もシルベスターさんラブ♡っと」


「おいウチなんて書けっちゅうねん」


3人をヤクザの取り立てのような目つきで見るフェイに


「フェイちゃん好きな人とかいないの?」と煽るように聞くジュリア


「そんなんおったら..どんだけ人生楽しいか..」


「フェイなら可愛いからすぐに彼氏できると思いますけど」


「ホンマに!?ルーシーアンタいいやっちゃなー」


「でもちょっと口が悪すぎるのはよくないね」


「殺すでキース」


無言でそれだよそれ!とフェイに指を差しからかうキースに頭を軽くいや重く5発殴っておく


「ルナちゃんとジョンくん上手くいってるかな?」


「後はルナ次第でしょうね」


「頑張れー!ジョン!」


「いつでも恋の神様はあんたらの味方やからな!」



川のせせらぎが心地よい大きな木の下で腰掛けお互い無言のままのジョンとルナ

 

(これって僕から話せばいいのかなどうしよう...なに話せばいいかな..とりあえずなにか言わなきゃ)


「あのルナ先輩」


「なに?」


「風が気持ちいいですね..あっ!気持ちいいってそういう意味じゃないですよ!アハハ..」


「…………」


(僕のバカバカ!なに言ってんだよぉぉ!もう終わりだ)


「テンショウサイ..」


「え?」


小さく呟くルナに聞き取れなかったのか聞き直すジョンだが、何度聞いても聞き取れないので少し少しずつ近づく、気がつくとかなり近い距離まで近寄っていたジョンに気がつきビクっと身体をビクつかせ顔を埋めてしまうルナ


「あの先輩さっきからなんて言ってるんですか?声が小さすぎて聞こえなくて..」


「天翔祭..花火一緒に見たいって言ったの//」


「先輩……はい!僕も一緒に見たいです!是非一緒に見ましょう!いや見てください!」


必死なジョンに思わず笑みが溢れる。



「いやー!早い早いガルーー」


「もっともっと回してルー」


「いぇーいでござるー!」


「おらおらおらー!」


公園にある回転遊具を魔法の力を使い凄まじく早い回転速度で遊ぶホッパー、ヤマトマル、リュカそして航の星獣ユユ


「エドワード甲羅だけになってこの穴を綺麗に整えるでち」


「了解したでごわす」


「ぼくが後ろから押すココ」


「そげん押し込んだら山が崩れるばい」


リーナの予言通り完成間近の砂のお山がバサーと崩れてしまった。


「マヤーお山に飾るカッコいい木の枝取ってきた..ピィ……お山が」


「あーあどうせリーナの指示がわかるかったんちゃろ」


「なにをー!」


セレの煽りにいつものように噛みつきニャニャと猫同士の喧嘩が始まる。


「みなしゃん!もう帰る時間だロン」


「えーまだ遊びたいルー」


「ペンギンのくせに仕切るなじょ!」


「ペンギンは関係ないロン!もう夕方だから帰らないとレイヴンの雷が落ちてもいいロン!?」


その雷だけは余程嫌なんだろう、星獣達は仕方なく凛の家に戻る


「みんなレイヴンが怖いのだ..」


「ざます」 


各自時間通りに帰宅し、凛の母聖子の手料理を満腹になるまで食べその後1人ずつだったり2人でお風呂に入り気がつけば就寝の時間になっていた。


「では、始めます"In the land of Fuka, swaying rice stalks greet the rising sun"」


「だから英語で読まれたらわかるわけないやん!」


「ルー!」


ローザの読んだ句を見事に見つけバシッとカッコよく札を取るホッパー


「ちょい待って!なんでこの人に読ましたん!?わかるわけないやん」


「そのほうが面白いだろ?」


「レイヴン先輩も悪い人や...」


ローザさんに読ませてわかるわけないのは当たり前だがホッパーよ何故お前は唯一理解してるんだ?


フェイ先輩とキース先輩ホッパーにその他の星獣達でこの国伝統の百人一首で遊んでるのを観戦しているが読み手がローザさんだけに一筋縄ではいかなすぎて誰もわからないというカオス状況が起きている..


「勝者はホッパー!Youがチャンピオンよ!」


「ルー♪ルー♪」


謎の英語かるたの優勝はホッパーに決まりこれにてお開きとなった。


そして男子は男子部屋に女子は女子部屋に星獣達は一階の部屋に移動し眠りにつく


すぐに寝るはずもなく女子部屋ではガールズトークが始まっている。


「一番の後輩レイラから質問でーす」


レイラの質問に全員でなんですかーと答える


「好きな人はいますかー、まずは3年生の皆さんから」


「私はもちろん決まっている」


「えー誰なのー?」


「からかうな//わかるだろ」


「私鈍感だからわかんなーい」


「You達のイチャイチャはもうお腹いっぱいよ、そうね私はー」


珍しく言葉を詰まらせるローザに2年と1年が食いつく


「い、いないかな..」


「その反応絶対嘘だ」


「ローザ先輩僕達は誤魔化せませんよ」


「はよ答えてくだはれ」


2年組の3人に問い詰められるローザだがGood Nightと布団に潜り込んで逃げてしまった。


「もうー照れ屋さんなんだから..じゃあ私ジュリアにはいまーす!その方は」


「悠馬やろ」


「悠馬というクズ男ですね」


「そうなんだ」


「悠馬君はクズじゃないから不正解だけど好きなのは合ってるから正解♡」


ジュリアの発言に凛はレイラに近づき小声で


「私初耳なんだけど!」


「嘘でしょ?めっちゃわかりやすいじゃない」


「全然わからなかった」


「アンタってたまに天然よね」


続いてフェイが話し出すがいるわけもなく続くルーシーもローザと同じく布団に逃げ込みルナは自分の番になる前に力尽き眠ってしまった。


「後はレイラと凛だけだな」


「2人は誰が好きなの?お姉さん達知りたいな」


レイヴンとメリファがイタズラにそう言うと

レイラが顔を赤くさせ言葉を詰まらせる


「ア、アタシはその..誰が好きとかいなくて..強いていうなら」


「いうなら?」


「ユウ、じゃなかった..ミケロスかな?」


「ミケロスってあのミケロス!?」


凛は衝撃の事実を知り驚く


「そうなのよ実はねーはい!次凛の番!」


「え?私!?私はそうだなーいるけどみんなが考えてる人じゃないと思います。」


「あの航って子じゃないの?アンタ昼間凄く仲よさそうだったじゃない」


「航は好きだけどそういう好きじゃない」


「ここで吐き出しといたほうがええでほら言うてみ」


「んーと..性格は真っすぐで純粋でちょっと抜けてるし初めて会ったとき何こいつって思ったけどすぐに仲良くなって気がつけば好きになってた..名前は言えないけど現在進行系で恋してます//」


(凛ちゃんもミケロス君のこと好きなんだ..)


(アタシの好きな人バレなくてよかったーミケロスには悪いけど利用させてもらったわ、でも凛の好きな人って車内でも一緒になって煽ってたけどまさか..いやまさかね...)


レイラとジュリア以外は全員あの男、悠馬だと確信した。


1日目終わり 


[おまけ]


「はい、かき氷3つね」


おばあちゃんがヨボヨボ歩きで持ってきてくれたかき氷はそれはそれは巨大なる氷の塊であった。


「こ、これがかき氷ですの」


「お腹壊しそう」


「アリヤちゃん無理はしないでね」


まずは先輩からということでダミアナがスプーンに氷を乗せ口に含む


「こ、これは!頭がキーンとしますわ...新手の魔法かなにかでして..」


「ホントだでも美味しいね」


「火照った身体に染みる感じがするわ」


大量のかき氷をぺろっと食べ満足した3人

だが数時間後トイレに駆け込む3人の姿が...


次回![第三十九話、夏のせいにしていい?]                       

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