[第三十六話、手を伸ばそう恋の季節じゃないか]


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目覚まし時計の音が鳴り響く。いつもなら布団の中でぐずぐずと過ごす朝も、今日は少し違う。時計を一目見て、思わず飛び起きる。今日さえ乗り切れば、待ちに待った夏休みが始まるのだ。


制服に袖を通しながら、心の中では夏休みの計画が頭の中を駆け巡る。朝食のパンをかじりながら、窓の外に広がる青空に目をやる。空はまるで、明日からの自由な時間を祝福しているかのようだ。


「またこうして夏休みがあるなんて学生って最高..」


「今日はいつも以上にご機嫌だルー」


「当たり前だろなんて言っても夏休みだぜ夏休み」


家を出て、風が心地よく頬を撫でていく。道端の紫陽花が鮮やかに咲いているのを横目に見ながら、学校へと急ぐ。今日は特別な日だからか、いつもよりも足取りが軽い。


「おはようジョン君」


「今日はやけに機嫌がいいね、ていうかジョン君なんかやめてよ」


「おはようユウマ」


そう軽い口ぶりで挨拶してきたのはいつもは髪が決まらないのなんのとうるさいレイラだ、だがレイラも今日は特に機嫌がいい..だってそうだろう!!夏休みだもん!


「おはようユウマ」


「おはよう、リン」


「明日から夏休みだね」


「いやー夏休みっていいよな」


「でも夏休みだからって課題もちゃんとしなきゃダメだよ?それにギルドでの仕事もあるしね」


「リンちゃんよそんな細けえことは気にしないで楽しもうではないか」


教室のドアを開けると、いつも以上に賑やかな声が飛び交っている。窓際の席では、友達同士が集まり、夏休みの予定について盛り上がっている。「海に行くならどこがいいかな?」「やっぱりプールも行こうよ!」なんて話が飛び交い、みんなの顔には笑顔が溢れている。黒板の前には、授業の準備をする先生の姿が見えるが、その表情もどこか穏やかで、特別な日の雰囲気を感じ取っているようだ。


「皆さん1学期最後の授業を始めますよー、といっても夏休み中の課題を渡したりするだけだからその後はみんなで各自綺麗にお掃除をして予定通り半日だからもう少しだけ頑張りましょうね」


そして夏休み中にする課題を貰いみんなで教室をピカピカにしてあっという間に本日のチャイムが鳴るとみんな待ってましたと言わんばかりに帰って行った。


「全くーみんな慌てん坊さんなんだから☆じゃあ先生も帰るけど夏休み中なにかあったら学校にはいるから課題なりなんでもいいから相談してきてね☆でも先生のことなんか夏休み中思い出したりしないよねだって先生なんて所詮は先生でしかないもんね、そうだよね先生なんてみんなが休んでる間週5ううん週6で働いてクタクタになってひとり寂しい家に帰ってお酒飲んで酔いつぶれてればいいんだ。それがみんなの幸せなんだ」


だから先生それ誰も聞いてないって...


「さ、みんなでサンクチュアリに行くわよ」


「え?なんで?」


「はぁ!?今日はここ数日間の結果をまとめたミーティングでしょ?アンタ浮かれすぎて頭バカになってんじゃないの?」


「そんなことすっかり忘れてた..」


俺達4人は教室を出てギルドに向かおうとしたときミシェルが手に何かを持ちながら近づいてきた。


「ユウマ君、あのね夏休み中あまり会えないかもだけどよかったらこれ私の連絡先が書いてあるの暇な時間でいいから連絡くれると嬉しいです..」


「わかった!夏休み中に必ず連絡するよ!ミシェルも元気でな!ミケロスも風邪引くなよ」


「フン!お前に心配などされたくないわさっさと失せろ」


やっぱ嫌味なやつー


ミシェルとミケロスに別れの挨拶を済ませ俺達は再びギルドに向かった。


「では、今回のクエストのまとめを始めようと思うだがその前にみんなよくやってくれた。ありがとう」


レイヴンは感謝の言葉をギルド全員に向けるとすぐに話しを続ける。


「今回こちらで回収できたヒントが書かれた紙は2つその2つを組み合わせるとこういった文字ができた。」


『魔王の身体は風の国守り抜いてねーん』


文をそのままなんの躊躇いもなく読み上げる


レイヴンが躊躇いもなく読み上げたせいで少し声を震わせながらもリンが手を上げ話しだした


「風の国って風華国フウカコクのことですよね?風華国は私の故郷ですがそんな噂は一度も聞いたことはありません」


「だろうな..なにせ1000年前の話しだ」


「風華国にあるとするとやっぱり剣崎が守っているのでしょうか?」


ルーシーの問いかけにリンが答える。


「もしかすると私の父が何か知ってるかもしれません」


すると陽気な声でレオがこう言った


「んじゃあ、今年の合宿は風華国で決まり?」


「合宿ってなんのことですか?まさか何日間も山に籠もってビシバシ鍛えるとか..」


「違うよユウマ、毎年サンクチュアリでは夏休みに3泊4日の合宿を行うんだよ、ただ合宿って言ってもみんなで遊んだり自由に行動して英気を養うだけの旅行みたいなものだけどね」


初日から合宿なんて野球部とかがやるガチガチのハードスケジュールを想像したユウマだったが誤解を解くようにキースは丁寧に説明をしてくれた。


「では今年の合宿は風華国で決まりだなリン後で私と一緒にケビン先生の元にいこう宿の手配をしないとならない手伝ってくれ」


「それなら私の剣崎の家はどうですか?凄く広いので14人ぐらいならなんとかなりそうです..ただ雑魚寝になりますが」


うひょー!女子と一緒の部屋で寝れるとか最高のシチュエーションだろうがい!やっぱ夏休み最高


「ユウマ心の声漏れてんで、あんたアホやろ女子と男子は別にきまっとるやないかい」


やっぱ夏休み最悪


「ではこれにて今日は解散!明日からよろしく頼む」


レイヴンさんが最後の言葉を締めくくり今日のギルドの会議はこれにて終了


そして俺は予定のないジョンを捕まえジョンの部屋に強制的に上がり込み二人で明日からの合宿に向けての秘密の会議を始める。


「風華国ってどんな国なんだろうなー」


「いま風華国が紹介されてるページを見てるんだけどなんだか素敵な街だね」


「どれどれー?」


寝転がってる体制を起こしジョンのソサマを覗きこんだ、そこに映し出されていた街並みは俺が生まれた国と瓜二つだった


「日本だろこれ」


「ニホン?それってユウマがいた世界の国?」


「まぁ剣崎とか日本風の名前があるくらいだし納得はできるけどなー」


「へぇー風華国って出世の街で有名なんだね、見てみてちょうど僕達が予定している合宿の3日目に天翔祭テンショウサイっていうお祭りがあるらしいよ!」


「祭りかー!日本の祭りも風情があって最高だからそのなんちゃら祭もきっといい祭りに違いない!」


「天翔祭だよ、頑張ってルナ先輩誘ってみようかなー」


「誘え誘え!そんでキス以上のことしちゃえしちゃえー!」


「もうユウマったらー!気が早いんだから!」


「「アハハハ」」


「なんの話ルー?」


「わかんないココ」


8/1

 

昨夜は興奮のあまり全然寝れなかった..

おかげで目がギンギラギンだ


集合場所の風華国行きの改札前に着くともうすでに全員集まっていた。


「遅いですよ!」


やはりと言うかこういうときに一番最初に声あげるのはルーシー先輩なんだよな(笑)


「すんません」


「これで全員だな!星獣達は着くまでペンダントの中にいてもらう、それでは出発だ」


「おー!」


レイヴンさんが音頭を取りそれに続くように全員で拳を空に突き出す。


さぁ!楽しい楽しい合宿の始まりだぁー!


列車は2人一組の座席となっていて、各々が各自座り車内を楽しんでいる。


ジュリアとルナのペアが風華国のパンフレットを手に持ち楽しそうに喋っている。


「見てみてールナちゃん天翔祭だってー!1日中お祭りがあって夜には花火が上がるって書いてあるね」


「そうね」


「ルナちゃんは誰と見るのー?」


「一人でみる..」


「それは嘘でしょ、わかったーもう照れ屋さんなんだからジョンくんでしょ?ほらあっちで手振ってくれてるよ」


ジュリアにそう言われ視線を向けるとジョンは笑顔でこちらに手を振っている。


だが振り返すことはできず手に持っている昼寝用の小さな枕で顔を隠してしまった。


「ダメじゃん、ジョンくん悲しい顔してこっち見てるよ」


「そういうジュリアこそ誰と見るの?」


「私はもう決まってるよ♡ユウマくんと見るんだ」


ジュリアのユウマと花火を見る話しを耳にした後ろの席のレイラはジュリアに聞こえるぐらい大きな声で、


「あれー?おかしいなー?ユウマはアタシと花火見るとか言ってたのになー」


「ちょっとレイラ..煽ったらダメでしょ」


「いいのよこれぐらいしないとハエのようにしつこいんだから、ほらリンも何かいいなさい」


レイラに促されリンも同じように対抗するような事をなれない口調で話すが棒読みになってしまう。


「ユウマは私と見るって約束してたんだけど、おかしいなー?あの人夏休みで浮かれすぎて記憶飛んだのかなー?」                                 


するとジュリアはピョコっと座席の上から顔を出しこう言った


「さっき改札口でユウマ君と話したけど天翔祭のことなんにも知らなそうだったよー?適当な事言うのはやめようね♡2人とも」


笑顔でカウンターを仕掛けてきたジュリアにさらにレイラは詰め寄る


「勝手に一人で盛り上がるのはいいけど泣きを見るのはそっちのほうなんだからねー」


バチバチと花火よりも先に火花を散らす3人

それを優雅に眺めているのは

 

「あの3人何をバチバチとやってるんだ」


「フフ、ほんとねもうーレイヴンったらさっき食べたチョコが口についてるわよ」


メリファに口を拭ってもらいご機嫌そうなレイヴン


イチャイチャしてるのはレイヴン達だけではない


「シルベスターさん..向こうについたら俺イキたいところあるんです」


「ん?どこに行きたい?」  


「ちょ、話し聞いて..あっ♡こんなところでキスはダメですってば//」


「この車両は貸し切りだし誰も見てないって♡ほらこっちにこい」


「あーー♡」


こちらはガールズトーク中


「なんでレオ先輩と座らんかったんや!アホちゃう」


「声が大きいです!もう少しコソコソ話してください」


「ほなコソコソ話すわ。絶対に花火はレオ先輩と見るんやで?わかったな?」


「うぅ...誘うことなんかできないですよ」


「どアホ!去年の合宿忘れたんか?あの男3年のなんやいう女にごっつ夢中やったやろ?でも今年はライバルがおらへん!ルーシーやったらいける!ほらこっち見てるで手振っとき!」


アハハと笑いながらレオに手をふるルーシー


「可愛いわねアイスガール」


「ほんとに可愛い後輩だ」


「ただの後輩なの?」


「そうだけど?」


「プレイボーイまさかとは思うけどまだ」

 

「い、いやそんなわけないだろ..向こうはもう結婚したんだし..」


「そうよね..なんて悲しき恋なのかしら!プレイボーイもアイスガールも!」


「へ?ルーシーがなにって?」


「Oops!なんでもないわ!気にしないで!パッショーン!」


ルナに手を振り返してもらえず落ち込みながらユウマに話しかける。


「ルナ先輩やっぱり僕のこと嫌いになったんだよー!ねぇーユウマどうしよう花火なんか誘えないよ」


「ぐがーぐがー」


「ね、寝てる..せっかくの楽しい旅行なのに開始早々寝てる..」


果たして今回の合宿はなにが起こるでしょうか?


[おまけ]


「つまんないつまんないつまんないにょー!」


「どうしたの?アイシャちゃん?エシャお姉ちゃんがいるにゅ、楽しいことしようにゅ」


「エシャだけしかいない夏休みなんかつまんなすぎて死にそうだにょ」


「そんなこと言わないでにゅ..」


「どうしたの?エシャ?泣かないで..4人でどこか遊びに行こう」


「俺はいかんぞ」


「あたちもゴミのミケロスと一緒はお断りにょ」


「せっかくの夏休みなんかだら仲良くしてよ..そうだ!グレイスタウンに脱出ゲームが期間限定でオープンしてるんだって!4人で挑戦してみない?」


「なぜそんなつまらんゲームをこの俺が..っわ!」


「いいから早く行くよー」


次回![第三十七話、波乱な事がおきるかも!?]    


                

       

    

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