[第三十一話、続・風の剣姫]


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「今日は引き返しはしない、私をバカにした罪は重い…いくぞ!お前達」


マントをバサ!っとひるがえし、意気揚々とレイヴンさんはダンジョンに入っていった


バカにしたもなにも、俺達が勝手にきて勝手に落ちただけなのに..


「ユウマ、ホパに続いて歩くルー!」


小さな身体で昨日俺が作ってやった特製マントをレイヴンさんのようにひるがえしトテトテと入っていった、それに続きリュカやヤマトマルも、ぎゃ!ござる!と続く


「私達だけでも、しっかりしないとだね..」


「それな」


「ユウマ..昨日のことなんだけど」


「ほんとごめん!あのときの俺どうにかしてた」


「ユウマ、リン!なにを話し込んでいるさっさと行くぞ!」    


昨日のように入口付近でまた穴に落ちては困るのでレイヴンさんは金に物を言わせるがごとく近くの魔法具屋で買った一番高い『なんでもすぐに固めてしまう瓶※ただし液体のみ』を昨日落ちた穴にポタポタと1滴ずつ落とし、穴を塞いでいく


「レイヴンさんその瓶ほんとに大丈夫なんですか?」


「大丈夫だ、なにせ2万ルーメントまでした代物だからな」


熱心に穴を埋めてるレイヴンは置いといて薄暗い辺りを見渡す、流石ダンジョンだ……オークが一匹、二匹、五匹は目の前にいる…って!もう目の前にオークがいる!!


「なんだぁ?お“まえだぢ?ここはおレラのナワバリだぞー」


『ホッパーパンチ!!』


まだ話してる途中にも関わらず、ホッパーは流れを完全に無視!そしてありがた迷惑なパンチをお見舞いしやがった。


「ナイスパンチだルー!」


「ナイスパンチなわけあるかい!あの..大丈夫ですか?オークさん..」


い“ででででと鼻を押さえ、近くにいる同じオークに血が出てないかと聞く


「どうだ?血ででるがぁ?」


「あ“ぁぁぁ、鼻血ででまずね」


「やっでぐれだなー!ごんぢくしょうー」


殴られたオークは近くにある、椅子を持ちホッパーに叩きつけてやろうと振り下ろす、があのホッパーがシュッシュッっと素早く回避、流れるように顎の下を狙い『ホッパーパンチ!アッパーver』をドカーンと食らわせた。


「ホッパーいつの間にそんな動きができるようになって..」


「エヘヘ、ユウマが強くなるとホパも強くなるこれ鉄則だルー」


ぶっ倒れたオークをそばで見ていた、別のオークがおぉぉ!と啖呵たんかを切り襲いかかってくる、それを聞いた他の連中も一斉に襲いかかってきた。


転生直後に襲われたオークと互角以上の戦闘を見せるユウマにリンも後に続き見事な剣さばきで首を切り落としていく。


「ご、ごい“づら“……づ、強い..姉ざんを呼ぶ」


一匹のオークが下げていたカバンからソサマを取り出しどこかにダイヤルを回し始めた



地下奥深く……


「ここにそのサンクチュアリとかいうギルドがくるのはホントなんだろうね?」


「だからこうして依頼してるんだよー」


元気な声色で取り引きをしているのは魔王の手先であるアラビア三姉妹の次女、ナディアだ


ナディアに手渡された黒いハートをコイン投げのように手遊びしながらオークの女ボスが姉御口調で話す。


「こんなアイテムを使わなくてもあたしなら一瞬で捻り潰せるよ」


「余り奴らを見くびらないほうがいいと思うなー」


「まぁ..一応もらっておこう..」


すると、ソサマが鳴る画面を見ると子分からだボスは不機嫌に舌打ちをすると。しぶしぶ電話にでる


「なんだ?今いそが..」


「だいへんです!何者がわがりまぜんがいぎなりおぞっでぎで!ぐぁぁ..!」



「もしもーし!?返事しろ!」


「まさか..もうアイツラが..?」


「あたしは子分を助けに上にあがる!」


「まって!私にいい考えが..ゴニョゴニョ..」

 


「コイツらかなりしつこいな..ユウマ、リン!ここにいる奴らを全部倒していると魔力が尽きる下に降りて目的の物を探そう」


「私が道を塞ぎます!」 


リンが風の魔法で天井を狙いオークとの間に壁を作り下に降りるためにレイヴンのもとに集まる


「よし..ここの階段から降りれる行くぞ!」


そうレイヴンが言い階段を降りようとしたとき何かがこちらに重低音を響かせ向かってくる気配がした、すると遠くから巨大なドリルで岩を粉々に粉砕し突っ込んできたのは地下深くにいたボスオークだ


「なんだ!?あのバカでかいドリルは!ミ◯タードリ◯ーかよ!!」


「ユウマ呑気にツッコミなどいれてる場合か!走れ!」


レイヴンの合図に皆それぞれ星獣を抱きかかえ一気に階段を駆け下りる、だが巨大なドリルをもったボスオークは大きな声で笑いながらドンドン近づいてくる


地下2階、3階と追い回されなんとかオークを撒き呼吸を整え辺りを見渡すと目の前にキラキラ輝く箱が見える


「ハァ..マジでキツすぎだろ...」


「なんとか撒けたみたいだね..あそこにある箱って」 


「あぁ...目的のブツだな..」


ようやく呼吸が落ち落ち着き汗を拭ったリンが箱に近づこうとする


その時、またしても重低音が聴こえてきた今度はリンの目の前から現れ勢いのままリンを巻き込もうとする


「リン様危ない!」


ヤマトマルに引っ張られなんとか巻き込まれずにすむ


巨大なドリルの回転が止まりドリルの後ろから現れたのは後頭部だけ生えている髪を束ねでっぷりとした体格の女のようなオークが姿を見せる


「お前達がサンクチュアリの人間か?よくも子分達を可愛がってくれたね」


「お前がここのボスかなんだ思ったより弱そうだ」


レイヴンの煽りになんのそれと言ったような声でボスが耳をほじりながらこう言った


「弱そう?その言葉そっくりそのままお返ししてやるよ!」


ボスは粉々になった細かい岩を魔法の力で浮かせ、「岩石無限弾!」と叫びながら、ユウマたちに向けて100を超える岩を一斉に浴びせた。大きな音が響き、土煙が舞い上がる。やがて土煙が少しずつ晴れていく中、ボスはその光景を見て目を疑った。先ほど放った岩が、雷の力によって空中に浮かんでいたのだ。ボスは「ありえない…」と思わず呟いてしまった


「残念だったな雷のフィールドを展開した..お前の岩石なんたらという技も私の前では無意味だ」


雷の力で髪が逆立ち体中からバチバチと音が鳴っているあまりにも主人公ムーブが過ぎるレイヴンさんを見て俺は思った。この主人公一応俺なんですけど..


そして、レイヴンは雷の力を蓄えた岩を反撃するように、相手に向かってぶつけた。ボスはかなりのダメージを受け、苦しそうに声を漏らしながら、腰辺りをゴソゴソと探り始める。やがて取り出したのは


「やってくれるじゃないか..アイツにもらったこのアイテムを使ってお前達をこのダンジョンに埋めてやる!!」


「あれは!」


リンが指差すほうを見るとボスの手には黒いハートが見えるその黒いハートを口に放り込み勢いよく飲み込むするとボスの身体はみるみると大きくなりレイヴンの攻撃を受けた傷も綺麗に治ってしまった


「ハハハ!これはいい!力が溢れそうだ」


「まさかオブキュラスが絡んでいたとはクソ..メリファがいれば魔力供給できたものを..」


魔力供給..そうだ!いまの俺達なら魔力供給が出来る!いや待てよ..だけどレイヴンさんの前でするとなると契約してるのがバレてややこしく


「ユウマ!魔力供給よ!」


「へぇ!?い、い、今でしゅか!?」 


リンの言葉にレイヴンさんがマジかって顔してる!そりゃそうだよ..だってまさか俺とリンが契約してるなんて思ってもみなかっただろうに..


「お前達..いつのまに」


「林間学習でチューしたルー」


「ホッパー余計なこと言うな...」


「やることやってるだぎぁ」


レイヴンさんとリュカは呆れ顔でこちらを見ている..ええい!そんな顔でみるな!!


「ま、まぁ魔力供給できるならアイツを倒せなくもないな、私とリュカが時間を稼ぐお前達は..その..早くキスをしろ..」


言いにくそうに言うなら言わないでくださいよ!

 

  

両手を握り見つめ合ういつものように魔法陣が足元から現れ温かい光が二人を包む


「なんか久しぶりだね//」


「林間学習以来だもんな...じゃあ今日は俺からイクぞ」  


ぎこちなく近づくユウマに完全に目は閉じず少し薄目で待っているリン


唇と唇が優しく重なり..お互いの魔法が相手の身体に入っていく…


(ユウマとキスするのいつぶりだろ..あの時よりもドキドキしちゃってる..でも、でもなんか気持ちいいけど複雑な気持ちまで入ってくる感じ..)


(うぉ..リンの唇柔けぇ..ずっとこうしていたい)



「チョロチョロとハエのように邪魔だ!」


オークボスと激しい戦闘をくり出すレイヴンとリュカだが戦闘の連続で魔力が少なってしまったのだろう相手は怯みもしない


ボスに足を掴まれ思いきり投げ飛ばされ壁にぶつかってしまったレイヴンは意識を失ってしまった。


魔力供給が終わり状況を確認し周りを見るとレイヴンが倒れていることに気がつく


「レイヴンさん!」


すぐさまレイヴンに近寄るユウマそしてホッパーと目を合わせ


「ホッパー!神獣に変身だ!!」


「ルー!!」


「星獣ホッパーよ我の力を使い神獣に進化せよ」


ホッパーの身体を光が包み込み神獣に進化する、進化したホッパーはオークに素早く近づき強いパンチをくり出す


「ヤマトマル、あなたも進化よ」


「待ってましたでござる!」


「星獣ヤマトマルよ我の力を使い神獣に進化せよ」


リンの言葉が終わりヤマトマルの足元から魔法陣が現れ光が包むと同時に激しい風が巻き起こり綺麗なエメラルド色の羽が無数に舞いその中から白く大きな翼と長い尻尾が特徴的な神獣に進化したヤマトマルが現れた。


「これが神獣でござるか!かっくぃぃッス」


念願の神獣に変身できテンションが上がったヤマトマルはホッパーとオークが戦っている戦場に参戦する。  


「ええぃ!うっとおしい!!一気に片付けてやるよ!」


オークはそう言うと二匹をドリルでなぎ払い吹き飛ばすと地面を激しく掘り進める、すると地面から水が吹き出す。


「リュカ!レイヴンさんを頼む」


リュカにレイヴンさんを任せ俺は目的の箱目掛け走るがそれを邪魔するようにボスが空けた穴から一匹の子分が邪魔をしてこうようとする。

 

「今はお前と戦ってる場合じゃねぇんだよ!」『ギガント・アイアン・パンチ!』と魔法を唱え。グローブが鉄の手甲へと変化し、そのまま勢いよく走り込んでオークをぶん殴り、吹き飛ばす。


「よし…箱はゲットだ」なんとか箱を手にしたが水はドンドンかさを増し気がつくと腰にまで水が浸かっていた。


戦いを続けるホッパーだが流石に体力が持たないのか先ほどよりも動きが鈍い


「さっきまでの威勢はどうした!」


「負けないルー!」


(なんとかして俺もホッパーの近くまでいかないと..どこかよじ登れる壁は..)

 

そう思ったとき上からリンの声がした


「ユウマ!迎えにきたよ!ヤマトマルの背中に乗って」


大きくなったヤマトマルの背中にリン、レイヴンさんそしてリュカが乗っている


リンの手を掴みヤマトマルの背中に乗りボスの近くに向う


ボスの重い一撃で吹き飛ばされたホッパーかなりのダメージを負ってしまい吹き飛んでいる最中神獣から星獣に戻ってしまった。


ヤマトマルの俊敏な飛行でホッパーの元に近づき吹き飛ばされたホッパーをユウマが上手くキャッチする。


「ごめんルー ホパたおせなかったルー」


「後は俺達がなんとかする、よく頑張ってくれた」


どうすればアイツを止めれられる?水..そうだ!レイヴンさんが必死に汚物が溜まっていた穴に落としていた液体..あれを使えば


「リン、作戦があるんだ聞いてくれ」


相手に作戦を聞かれないように耳元で囁くように伝える。 


「それでホントに勝てるの?」


「任せろ!」


グッと親指を立て笑うユウマを信じ、わかったと頷くとヤマトマルにこう伝えた


「ヤマトマルあなたの一番強い技を使ってヤマトマルに続いて私も魔法で追撃する。」


「了解したでござるよ!」


頷くヤマトマル、そして翼を大きく羽ばたかせ『千鳥』と叫ぶと自分よりも大きな風の刃を起こした。


それに続きリンも詠唱を唱える『天を突き、地を貫け!風よ巻き起こり、全てを呑み込め!風巻天柱フウマキテンチュウ』手をかざし風の竜巻を巻き起こす


ヤマトマルの風の刃で水を両断し大量の水が宙に舞うそこにリンの竜巻で巻き込むユウマは最後の仕上げにレイヴンの懐から瓶を取り出し瓶ごと激しい竜巻に投げ込むと、水がドンドン固まっていきボスオークは瞬く間に固まり巨大な石像と化した


「やった!やったぞ!リン」


「私達だけで勝てた!」


「いぇーいでござる♪」


「ルー♪ルー♪」


「一件落着だぎぁ」


 


しばらくしてレイヴンが目を覚ます


「ん..すまない気を失っていたようだ」


「お怪我はありませんか?」


「あぁ…なんとか、あのオークは?」


「見てください!レイヴンさん俺達でアイツをやっつけたんですよ」


そこには大きなオークが固まって石像化しているその姿を見たレイヴンは少し笑いこう言った


「成長したなお前達」


「へへ、あっそうだ!箱の中身開けましょう」


ユウマが箱を開けるとそこには一枚の紙が入っていてそこにはこう書かれていた[魔王の身体は風の国]


「風の国?どういうヒントだこれ」


ユウマはちんぷんかんと言った顔をしている。


書かれているヒントを見たリンは呟いた


「風の国ってもしかして風華国フウカコクじゃないかな」


「そこは確かリンの故郷だったな」


「はい、だけど私はそんな言い伝え聞いたことがないです。」


「まぁヒントも見つかったし今日はこれで帰りましょうよ!戦いすぎてお腹すいたし」


「ホパも疲れたルー」


「そうだな、では帰るとするか」


そして俺達はダンジョンから抜け出し帰りの列車に乗りシルフィードに帰る


「エルフの人達も喜んでたね」


「だな、まさかあのダンジョンがエルフの人達が過去に湧水として使ってた場所だったなんて」


「綺麗な飲水になるまでは当分先だろうけど村の人達も感謝していたし一件落着だ」


「ほんとに今回は大変だったね色んな意味で」


すっかり緊張がほぐれ仲睦まじく話すユウマとリンにレイヴンは2人に言葉を放つ


「まだ問題は解決してないようだが?お二人さん」    


「いやぁ〜まぁその成り行きっていうか〜な!そうだよな!リン」


「そ//そうなんです!けしてしたかったらしたわけではなく..あれは事故みたいなもので..」


「そんなノリで契約するのは..まぁいいだろう..みんなには黙っておいてやる、そのほうが都合がいいのだろう?」


「助かりますレイヴン様」


ありがたやーと手を合わすユウマ


時間はすぎ疲れていたのかいつの間にか全員寝てしまっていた、だがリンだけが目を覚ます


「ヤダ..いつの間にか寝てた」


見渡すとみんなが寝ているのを見て笑みが溢れる、隣でリンにもたれかかり寝ているユウマの顔を見てリンは独り言を呟いた


「よほど疲れてたのね、フフ..少年みたいに寝てる久しぶりに一緒にお仕事できて嬉しかったな...ユウマ大好きだよ」  


[おまけ]


「オレっちの神獣姿めちゃくちゃカッコよかッスね」


「うんうん!ホパも惚れ惚れしたルー」


「お前たちまだまだヒヨッコだぎぁ」


「なにをー!?やるかこのやろうでござる」


「受けて立つだぎぁ!」


「ホパも参戦だルー!!」


「お前達!!車内で騒ぐな!」


「いっつもレイヴンさんに怒られてるな..お前ら」


次回[第三十二話、俺の嫁その2、桃色の艶姫]  


                                                


 


                      


   

   


  

     

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