[第二十九話、MilkyWay]


俺はステージ裏でミシェルを待っている間、備え付けのモニタールームでイベントを眺める


「始めての方にこのコンテストの説明をするわねん♡このコンテストでは織姫と彦星がお互いの愛を再確認するためにバチイケになって相手を惚れ直させる為に行われていたとされる、行事を今風にイベント化したものなの!これからカップル達が続々とランウェイを歩くから、このカップルが最強ねんと思ったカップルに投票してあげてん♡もちろん選ばれたカップルは1年間の学食無料と永遠の愛が待っているわーん!後者の方は保証できないけど..ささ!始めるわよーん!まずエントリーするのは!こちらのカップル♡」


ケビン先生の合図で音楽はさらに盛り上がる、トップバッターで現れたのは…


「こちらは、初出場のお二人!シルベスター&キース、カップルよ!」


流石にシルベスターさんは人気があるなぁ..登場した瞬間かなりの声援が飛び交っている


キース先輩にも少なからずファンがいるのだろう、ガタイのいい男達が[キース可愛い]の弾幕を掲げている。やっぱサンクチュアリに入ってる人達って改めて凄いんだなぁ..と思った。


「もっと、自信あるように歩け」


「シルベスターさんは緊張しないんですか?俺結構ヤバいです..」


「だったら緊張をほぐしてやるよ」


そうシルベスターは言うと、キースの手を握る

仲良く手を繋ぎランウェイを歩く二人に会場の声援はヒートアップする。


「続いて登場するのはこちらのカップル!皆さんお待ちかね!最強で最高といえばこの二人よねん♡レイヴン&メリファ、カップル!」


名前を呼ばれた途端、地割れが起きるほどの絶叫が聞こえる、ステージ裏まではっきり聞こえるほどの叫びなんか聞いたことない


満を持して登場する二人意外にもレイヴンさんのイメージからしてスーツとかカッコいい感じかなって思ったけど、二人とも豪華な刺繍や模様が施された着物を着てそれはそれは妖艶でセクシーな雰囲気を醸し出している


「シルベスター達は手を繋いでいたな…私達もなにかするか?」


「フフ、そうねぇなにがいいかしら?」


「そうだなぁ、メリファこっちにこい」


レイヴンさんはメリファさんを抱き寄せ、そっと顔を撫でるとメリファさんの首をツーっと舐めた、しかも目線は客席のままで…


それを受け付けのモニターから見ているフェイが感想を述べている


「うひゃー今年のコンテスト偉い派手やなー、流石にこれはエロすぎちゃいますか..」


「やるわね、レイヴンとメリファ…これこそMilkyWayの奇跡ね!」


「全然意味わからんねんけど..」


さぁ!続いてのカップルはー?とケビン先生が進行を進めている、次は俺達の番なのに…ミシェルなにやってんだろ…


「お、おまたせ!ごめんね遅くなりました」


「襲いぞ、なに..や..って..」


織姫ミシェル、死ぬほど可愛いぃぃぃ!!なにこの可愛いさ!?え!?俺の息子が思わず反応しそうに..


「どうしたの?早くいこう」


「そ、そうだな..手繋いでいくか」


「え?//」


「お次のカップルちゃん達はー?なんて初々しいしいの♡1年生同士の可愛いカップルでぇす!ユウマ&ミシェル、カップルの登場よーん」


ステージに出ると、眩しすぎるライトに思わず目を細めてしまう盛大な拍手で迎えられ歩く流石にあの二組よりも人気はないが流石はミシェルといったところか男の先輩達から、あの子可愛すぎなどの声が聞こえてくる隣をふと見ると恥ずかしそうに歩いているミシェルを見て俺も可愛いなと思わず口にしてしまった。


その頃広場ではレイラとリンが見回りの仕事をさせられている


「はぁ!?ルナ先輩を誘ったけど人が多いのが嫌で断られたから来ないですってー!?なに言ってんのよ!ちょ、ちょっと」


一方的に通話を切られてしまったレイラ 


「ジョンこないって?」


「ルナ先輩に断られたから、ヤケ食いして帰るんだってー、アタシ達もそうしたいわよ…」


「たまにはいいじゃないこうして、みんなの安全を守るのもサンクチュアリの役目よ」


そうは言いつつも、やっぱりユウマと行きたかったリンはため息をつく


「ねぇリン二人であっちにあるゴブリンの鼻水ジェリーでコーティングされたリンゴ飴食べにいこうよ!」


レイラの提案でリンゴ飴屋に向かおうとしたその時、突然悲鳴が聞こえる。


レイラとリンは悲鳴のする方角に走り、状況を確認しにいくと、噴水の上に黒い鎧のアンデッドが立っていて周りの生徒達からハートを回収している


「待ちなさい!」


「なんだ?お前達?邪魔をするならお前達のハートもいただいてやろう!」


アンデッドはレイラとリンに大きな大剣で襲いかかってきた


「レイラ!私はこっちに回り込むわ!」


リンの言葉に了解と、うなずくとペンダントから戦鎚を召喚しアンデッドの大剣を受ける


レイラが攻撃を受けてるスキに、リンは腰に装備している短刀を抜き、アンデッドの首元狙い「はぁぁ!」と叫び力を込め首を切り落とそうとする。


だがアンデッドは「フンそんな攻撃効かぬ」と指を鳴らすと衝撃波を発生させ、2人を吹き飛ばしてしまう


そして二人を指差しゴブリンを召喚すると召喚されたゴブリン達は地面がえぐれるほどの水圧をした水鉄砲を持ち、襲いかかってきた


襲われてる二人を見て、ハハハと笑いアンデッドは会場のほうへと飛んでいってしまった。



ようやく長いランウェイを歩き終わり、ステージ裏に戻る緊張のあまり喉がカラカラだった俺はスタッフの人にもらった水を一気に飲み干した


「ぷはぁ~、緊張したー」


「ほんとだね、でも楽しかった」


「ミシェルなんかずっと可愛いって言われてたじゃん」


「そんなことないよ..」


「ホントに可愛いよ、だから自信持って」


「ありがとう、あ、あのね実は」


ミシェルがなにかを言い出そうとしたが、デッカイ声のケビン先生が次のカップルを呼ぶ声でかき消されてしまった..


「ごめん聞き取れなかった、なんて言ったの?」


「ううん、私トイレ行ってくるね」



「さぁ!お次が最後のカップルよーん!誰が予想できたでしょ、学園一の王子様と秀才メガネっ娘ちゃんのカップルを!レオ&ルーシー、カップルの登場よーん!」


キャーと叫び声が聞こえる、そしてすぐにキャーがギャァァァに変わったレオさんが登場したんだろうな……だって凄いんだもんあの人


「ハハ..凄い叫び声…どうした?ルーシー?」


「僕やっぱり、戻ります」


「え?ちょっと待てよ!」


ルーシーはプレッシャーのあまり、水色のマーメイドドレスの裾を上げ走り去ろうとするがレオに腕を掴まれてしまう


「離してください!僕なんかが先輩と並んだら水と油みたいになります!」


「なるわけないだろ!今日のルーシーもとても綺麗だ」


「ふざけないでください!僕をからかって面白いですか!?」


感情的になってしまい目に涙を浮かべるルーシーを見てレオは 

 

「なんでそうなるんだよ!からかってもないし!いつも感謝もしてるしそれにホントに綺麗だから綺麗だって言ってるだけだ、神に誓う」


レオのキザなセリフに思わず頬が紅潮してまうルーシーそして、ルーシーは体中に心臓の音が聞こえるほど緊張しながらもレオに想いを伝えようとする


「僕実はレオ先輩のことが、す、すす」


「レオくん、ルーシーちゃん!危ない!後ろよ!」


ケビン先生の声に反応し後ろを振り向くレオ、見ると黒い鎧のアンデッドがこちらに向かって大剣を突き出し襲いかかってきている


「ルーシーこっちにこい!」


ルーシーを抱き寄せ、小道具の一部として身につけていた、大きな盾を構える



アンデッドの大剣が盾に触れると、辺りにいた生徒達が吹き飛ぶほどの衝撃波が走る


「っく...なんだお前!」


「やるな、白きナイトよ…我が名は黒きアンデッド、楽しんでいるところ悪いがお前達のピュアなハートいただくとしよう!」


その言葉を合図に空から一斉にゴブリン達が舞い降り、生徒達を襲い始めた


「みんなー!逃げるのよ!」


ケビンはみんなを守るために星の形をした魔弾を詠唱しゴブリン達を倒していく


ユウマも突然の状況に、ステージに戻りゴブリン達と戦闘を開始する。


アンデッドは盾を蹴り上げると二人を真っ二つにしようと大剣を横に振る



「させるか!」『ハイドロバースト!』レオは手をかざしアンデッドに強い水圧の魔法を唱え相手を吹き飛ぶし距離をとる。


「僕も戦います」


「一緒にあのアンデッドをやつけようか、お姫様☆」


キラーンとルーシーにウィンクをするレオにこんな状況化でも相変わらずのレオを見て少し緊張が和らぐのをルーシーは感じた。


吹き飛ばされ、ステージのセットに打ち付けられるアンデッド…まだまだこれからといったところだろう、すぐに体勢を立て直し2人に襲いかかる


ルーシーは『フリーズスパイク』と唱え、氷柱を飛ばす、が「そんな弱い攻撃効かぬわ!」と大剣を軽々と振り飛んでくる氷柱を砕いていく


レオもアンデッドと同じようにペンダントから大剣を呼び出し、アンデッドと交戦する。


鉄と鉄が激しく交わり、互いに隙を見せることもなく巨大な刃が交錯している。


「小僧なかなかやるな」


「そちらこそ!俺の剣技と互角なんて相当な使い手だ」


激しく戦っている二人を眺め、なにかできないかと考えるルーシー


(あいつの動きをとめるには…そうだ!僕の氷の魔法で動きを止めれば…)


「先輩!僕がアンデッドの動きを止めます!」


ルーシーはそう叫ぶと、上級魔法を放つために詠唱を開始する。


『凍てつく力を呼び起こし、鋼の如き鎖となり。 寒冷の力を凝縮せよ。 氷の結晶よ、我が意志に従い、敵を拘束しその動きを封じよ!フロストチェイン』


周囲の温度が急速に下がり、氷の結晶がアンデッドの周りを舞うすると地面から太く頑丈な氷の鎖が次々と現れアンデッドの腕に巻き付いた


「こんなもの!力ずくで!」だがアンデッドの力虚しく鎖は一本として千切れることはない


「無駄です、僕の最大級の魔力をこめましたから..レオ先輩!お願いします!」


「任せろ!これで終わりだぁぁぁ!アクアブレイカー!!」レオの大剣に水がまとい、レオは力の限りをつくしアンデッドを2つに引き裂いた


アンデッドは悲痛の叫びをあげ、塵となってしまった


「どんなもんだ!」


ルーシーの方を向き親指を立て、グッド!といつものキラースマイルと一緒に笑ってみせる


突然のアンデッド襲来にも関わらず、あっという間に一人で、いや2人でか..片付けてしまうなんてやっぱり先輩達は凄いな


そしてボロボロのステージのままだがせっかくだからとケビン先生はステージにみんなを集め今年の優勝者を決めるための結果発表を行う


「こんな状況だけどこんなときこそ明るくよね♡今年の織姫と彦星はー?」


ドュルドュルドュルドュル…とドラムロールが流れ、そしてバンっとスポットライトが当たる


「優勝者はレオ&ルーシーの2人よーん♡おめでとうー!」


観客達はキャーと黄色い声援を2人に贈る


「まぁ今年は仕方ないな、アンデッドを倒したのはレオとルーシーだ」


「フフ、そうねレイヴン私達はゴブリンしか倒してないもの」


「おめでとう、レオ俺様から素敵なプレゼントを送るよ、フハハ!」


「い、いや遠慮しとくよ..」


「ルーシー凄いじゃん!最強にカッコよかったし最高に綺麗だよ」


「ありがとうキース」


「ではお姫様再び俺とランウェイを歩いてくださいますか?」


「はい!」  


こうして、今年の織姫と彦星はレオさんとルーシー先輩になりました。


つか、ミシェルなにか俺に言おうとしてたけど、なんだったんだろう..結局帰り道に聞いてもなんにもないよって言ってたけどあれは絶対隠し事してる顔だ、まぁでも言いたいときまで待ってるか


[おまけ]


ズンズンズンズンと音楽が流れ煌びやかなミラーボールが回っている、飲み物を一気飲みしたりエドワードの水魔法で自作ウォータスライダーをつくり、楽しく遊んでるのは……


「最高でござるー♪」


「次はボクが滑るココ」


すっかりどんちゃん騒ぎをしている星獣達だ


キースの星獣セレが騒がしい外を眺めながら、少し不安になる


「なんか外が騒がしいちゃろ、なにかあったのかな?」


不安そうにしているセレにローザの星獣ティアがこう言った


「大丈夫ざます!どうせ騒ぎ過ぎの人間の喜びの声ざますわ」


「今夜はオールナイトぎゃ!」


「ここのリーダーはあのレイヴンにょ、ほんとマヌケなレイヴンだにょ」


レイヴンをバカにするミシェルの星獣アイシャにホッパーはどういう意味かをたずねる


「アイシャ、マヌケってどういう意味ルー」


「クスクス、もしかして知らないにょ?マヌケはカッコいいって意味にょ!ほらホッパーもあたちに続いて言ってみるにょ」


「アイシャちゃん..ホッパーに嘘ついたらダメにゅ」


「エシャ!静かに!するにょ!」


騙されたホッパーはすっかりアイシャに教えてもらった言葉が気に入り、大きな声で連呼している


「マヌケ!マヌケ!レイヴンのマヌケルー!」


「ホッパー面白そうなことしてるピィ!ワタシも一緒に言うピィ」


いつの間にか星獣達は輪になり恐ろしい言葉を唱和している


「「「マヌケ!マヌケ!レイヴンのマヌケ!」」」


ケラケラ笑っていると、低くい声が突然背後から聞こえてきた


「お前達ー?えらく楽しそうではないか?こんなにギルドを散らかし、よほど怒られたいようだな?」


「レ、レイヴン……ご、ごめんだぎぁ」


「全員!!1週間外出禁止だぁ!!」


次回[第三十話、三人のヨ〆その1、風の剣姫]                                                     


       

             


                          


           


      


                    


             


 

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