[第二十六話、厨二病ホイホイその名はドラゴン]
7/6
あれ?俺いつの間にか寝てた?
「起きたのだ...」
最初に目があったのは、ルナ先輩の星獣アルイン
「ここは?」
見渡すと見たこともない建物、中の作りは木の枝で作られている、言うならばステレオタイプの民族が暮らしてる家の作りに似てる
「あっ、ユウマおはよう!」
「おはようジョンここどこ..?は!思い出した!俺達昨日クソデカドラゴンを見て叫んだあと、そのまま記憶がなくなって..ということはここはドラゴンの胃の中か」
「なわけあるかい」
スパーンと気持ちの良い音で俺の頭を叩くジョン
「ここはヴァーゴの谷なのだ...」
モジモジと口に手を抑え、一言言うとまたパタパタと何処かに行ってしまった..
「とにかく外に出よう、ここは凄いよ!」
俺はジョンに手を引っ張れ、部屋を出るとそこには思わず息を呑むような景色が広がっていた。深い谷底に、豊かな緑に包まれた世界が広がっている。谷の両側は切り立った崖に囲まれており、険しい岩肌と豊かな樹木が織りなす風景はまるで自然の要塞のようだ。太陽の光が谷の底に射し込み、木々の間から差し込む光が幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「すっげぇぇー!」
「フフ、元気なお目覚ね」
「おはよう..」
思わず大きな声が出る、とそれに気づいたメリファさんとルナ先輩が朝の挨拶をしてくれた。
「おはようございます!昨日は途中で気を失ってすみません」
「構わないさっそくだけど、みんなこっちに来て」
ルナ先輩の案内のもと、少し険しい階段を登る俺は歩いてる道中で竜人族を見かけた今まで気が付かなかったが竜人族の大半の人達は俺達と違って耳が尖ってること、そして見ず知らずの俺達に興味があるのかこちらを見てくるそぶりはあるが話しかけてくる気配はない..
年寄りの竜人だろうか、俺に近寄ってくると荒々しい声でこう言ってきた
「お前達!この村は神聖な村であるぞ!汚らわしい人間が来ていい場所ではない!さっさと立ち去れ!!」
いきなりの罵倒に俺は頭が混乱した、なぜこの老人は怒ってるんだろ?そう思ってるとルナ先輩は年寄りの竜人に
「おじいさん心配しないで、この人達の事は私に任せて..なにかあったら私の責任でいいから..辛い思いさせてごめんね」
と年寄りの竜人を慰めている、しばらくして落ち着きを取り戻したのか何も言わずその場を去っていった
「嫌な気持ちにさせてごめんなさい、あの人も悪気はないの」
「いや、いいんですけどなんであんなに怒ってるんですか?」
「それは..私達竜人族はその昔魔王の奴隷にされ、そのせいで人間達から酷い差別を受けてきたから..」
「どういうことだ?」
「この話はまた後で、今は魔王の頭部が先..」
俺の話を切り上げるルナ先輩の顔はいつもより悲しい顔していた。
登り続けること10分..
「や、やっと着いた」
「もう僕歩けない..」
「メリファーもう歩けないでち..」
「はいはい、抱っこね」
長い階段をようやく登りきり、地面に倒れ込むユウマ達
息を切らしながらも、目的の場所に目をむけるとそこにはあまりにも大きすぎる建物がドーンとそびたっていて、あまりの巨大さに声を失うユウマ
すると、大きな鉄の扉がゆっくりと開き目の前に現れたのは昨日ユウマ達の前に現れたドラゴンだった
ドラゴンは低くしゃがれた声で
「よく来たな、ようこそヴァーゴの谷に」
抱きかかえてるマヤをおろし、メリファはドラゴンに深々とお辞儀をするとお礼を言葉にする
「お招きくださり感謝します、私はエンチャントレルム魔法学校ギルドサンクチュアリから参りました、メリファ・ウッドローと申します。こちらの2人は同じくギルドのジョン・ミラーとハヤシ・ユウマです」
メリファは手際よく自分と2人の紹介をドラゴンに話す、それに続きジョンとユウマも深々とお辞儀をした。
「そんなにかしこまる必要もない..お前達がここに来た理由はわかっている...だが今すぐは渡せぬ」
「どうしてなの?パパ」
どこかものが悪い言い方をするドラゴンに質問をなげかけるルナ
「えぇぇぇ!パパって..あのこの人がルナ先輩の..」
「ごめんなさい、話してなかったねこの大きなドラゴンが私の父、グレニドラ・ドレイクこの谷の長」
俺とホッパーはルナ先輩の父親がこんなバカでかいドラゴンだと知って驚きを隠せず二度見しては、驚きの声をもう一声あげた。
ジョンやメリファさんに後で聞いたら2人は俺が起きる前にルナ先輩から説明があったらしくどうやら知らなかったのは俺とホッパーだけだったみたいだ...心臓に悪いて
愉快そうにルナパパは笑うと、魔王の頭部をすぐに渡せない状況を説明してくれた
「実はな..魔王の頭部をよこせと言う輩がいてな」
「オブキュラスと名乗ってなかった..?」
「オブキュラス?そんな名は名乗ってはいなかったが..実はこの村では何百年と続く戦争というべきかもう喧嘩というべきか、続いておってな」
ルナパパの言葉になにかを察したルナ先輩
「そやつらの名はバイクラートカゲといってだな..少々荒くれ者なんだ」
ルナパパが詳しい説明をしてくれようとしたとき、パラリラパラリラと何処かで聞いたことあるような音が谷の外で流れている
その音はあっという間に谷の前に到着し沢山のトカゲ達がバッタをバイクに改造したのだろうバッタ型のバイクにまたがっていてブォンとエンジンをふかし大きな音をたてている。しばらくして親分らしきトカゲが拡声器を使い、一方的に話しだした
「グレニドラ!早く魔王の頭部を俺達によこしな!さもなくばお前達の村を襲い子供や年寄りを食うぞー!」
「アイツ..好きに言わせておけば調子にのって..」
「やめなさい、ルナいま下手に刺激をあたえてはダメだ村の人達が巻き添えになる」
銃を構え頭を撃ち抜こうとするルナ先輩を止め、ハァとため息を吐くルナパパ
暴走トカゲ達のほうをよく見ると、1人浮いてる奴がいる..
「トカゲさん達、早くこんな村襲ってはどうですの?それともあなた達では弱くて襲えないとかではありませんでしょうね?」
「ツインテールの姉ちゃんよ、俺達と竜人族の仁義なき戦いはそう簡単なことじゃないんだよ!それに俺達のほうが強い!だからかつて最強と言われていた竜人族がすぐに戦ってこない唯一の証拠だ」
「そう、ならいいですわ期限は明日まで、ですわよ?それを過ぎたらお前達の命ないと思え」
ダミアナは闇の裂け目を生み出しスーッとその中に入っていった
「やっぱオブキュラスが絡んでたんだな」
「あれが噂のオブキュラスの1人?」
「アイツは初めてみるけど、あの帰り方はそうです」
メリファに説明をするユウマ
話すこと内容が終わった暴走トカゲの親分は「野郎共撤退だー!」と叫びまたパラリラパラリラとうるさい音を鳴らしながら帰っていった
「こういうことだ、わかっただろ?いまお前達にこの頭部を持っていかれてしまってはワシらの村は壊滅だ..」
「でも、竜人族って最強の種族ではなかったのですか?」
ジョンの素朴な疑問にルナパパは歯切れが悪そうに話す
「い、いやその確かにワシらは戦いでは最強だが、その実は..」
「「戦うのが怖いー!?」」
「ドラゴンなのにルー」
「ココ」
「でち」
「そんな目でワシを見るなぁ..」
俺達の目線にあれだけドッシリとした巨体の持ち主が小さく丸まっている、これでは威厳もクソもない
「これはワシからのお願いなんだが..バイクラートカゲ達をやつけてはくれぬか?」
こうして、俺達は当初の目的である魔王の頭部を持ち帰るだけのはずだったクエストがいつの間にやら、暴走族トカゲをやつけるクエストまで追加されてしまった
「戦うっていってもさーどうやってあんな強そうな奴らと戦えって話しだよなー」
「ホパがいるから大丈夫だルー」
「その言葉は頼もしいが、お前だけでどうにかできるわけないだろー赤ちゃんカンガルーのくせにー!」
ホッパーを捕まえコショコショとくすぐりホッパーをイジメるユウマ
「くすぐったいルー、やめてルー」
「まてまてー!」
広い廊下を一人と一匹で走っていると、二人は知らない部屋に迷い込んでしまった
「ここどこルー?」
「書物庫かな?」
見たところ書物庫かなにかの部屋だろうか、辺りを見渡すユウマ、キョロキョロとしていると金の額縁の中に綺麗な女の人の写真が飾られていた
「この人ルナ先輩似てるな」
「私のママよ」
「レイラとおんなじ出現パターン!びっくりしたー」
「??」
「いやいや、なんでもないです..」
「ママはねとっても気高くて、みんなの憧れの人だった..パパは見ての通り争いとか苦手な人だからあんな調子だけどママはこの村のために沢山戦ってそしてみんなが笑って平和に暮らしていけるようにっていつも願ってた..」
そう話しながら母親の写真を見てるルナ先輩の顔はまだ母親の死を受け入れられないそんな目をしていた。
「私はそんなママの気持ちを胸に竜人族としての誇りを忘れず、戦い続けたい..だから今回のバイクラートカゲとの戦いもここで終止符をうってみんなを安心させてあげたいと思ってる」
「うわぁーん、いい話すぎるー」
「うわ!ジョンお前いたのかよ、それにメリファさんまで..」
「ごめんなさい、盗み聞きするつもりはなかったんだけど出るタイミングを見失って、ルナちゃん私達も精一杯頑張るわ、だから一緒に頑張りましょう」
鼻水をヂーンとかみ、涙を服の袖で拭い少しカッコつけた顔してジョンもルナに言葉をかける
「僕もルナ先輩のように強くはないですが..僕も先輩のために、ために..うわぁぁーん」
やっぱダメだったみたいだ..ジョンらしい(笑)
やがて夜になり
「よし、準備オッケーだな」
グローブをギュっと装着し、みんなが待ってる場所に向かうユウマ
するとルナパパこと、グレニドラがユウマを呼び止める
「そこの若いのちょっと」
「どうしたんすか?」
「こちらから今回の依頼を頼んでいたなんだがあの子に魔法を使わさんでほしい」
「どうしてですか?」
「ワシら竜人族の歴史は知っておるか?」
「いや、あまり詳しくは..」
「まだ時間はあるワシの話でも聞いていってくれ」
ルナパパは俺に竜人族の歴史を語ってくれた
竜人族、古代の戦争の時代において奴隷のように扱われた種族であり、その強大な力から兵器として利用されてきた。竜人族は普段はおとなしい一族で争いを嫌い魔王にその力を見出されるまで自分達がここまで力があることを誰一人として知らなかったそれぐらいに平和を好む一族だと、魔王と戦争をしていた激動の時代のことを魔法戦争と呼ぶらしく、その魔法戦争のために竜人族達は魔王に意志を操られ、捨て駒のような扱いを受け続けていたそうだ。
禁じられた魔法、竜魔法を使えるのはもちろん竜人族だけ、だがその竜魔法を自分のものにしたいと思った魔王イクノシアはある実験をする
竜人族からの魔力の供給、そう魔力供給という儀式は元を辿れば竜人族から魔力を奪い取るための儀式の一環にすぎない、それが何故ここまで世界中の魔法使い達が使えるようになるまでの儀式になったのか、それは魔王を封印した3代魔法使いの2人デューク・シルバークロウと剣崎小十郎が恥をしのんで、当時の竜人族の長に頼み、自分達にも竜人の力を分けてほしいと申し出たからだ、長は竜人の力を分け与えるかわりに2人にこう言ったそうだ、世界を救うことが条件だと
そして二人は見事魔王を封印し、世界を救うことができた、だが人々は竜人族達を称えることもなくそればかりか竜人族は魔王の手下だと言い出し、ただ言いなりになっていただけという事実を知らず、竜人族は1000年の時がたってもいまだに差別に苦しめられている。
「なるほど、でもそれとルナ先輩が魔法を使っちゃいけない理由になるんですか?」
「ワシらの力は強大故に、普段は魔法の消費を抑えてはいるが、今回のように普段よりも強い魔法を使うとなると、自我が保てるかわからんのだよ、ルナの母親のように..」
「だからルナ先輩、お母さんのようにって言ってたのか」
「普段はおっとりしている子だが、あの子も母親ゆずりの強い持ち主の子だ..自分の命に代えてもなどと思うだろう..だからどうかよろしく頼む」
ルナパパは大きな体で俺に深々と頭を下げてきた、ルナ先輩やこの村のためにも死ぬ気でやるしかないな、と思ったユウマであった。
[おまけ]
「ルナ先輩、なに食べてるんですか?」
「ん、マジックスパイダーの姿焼き」
「ひぃ!」
「いらないの?」
「い、いい、いりません僕はそんなの食べれません」
「美味しいのに..」
「そ、そんなことより先輩、髪がぐしゃぐしゃです」
そう言って手ぐしでルナの乱れた髪を直すジョン
「/////」
「先輩?どうしたんですか?」
「やっぱり、食べて//」
グイッと蜘蛛の姿焼きを口に放り込まれ
「□※$※✕○:$※:」
次回[第二十七話、ドラゴンちゃんとメガネくん]
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます