[第二十五話、竜人族の村]


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「ほんとにその顔が魔王様のお顔なの?」


「もちろんだコン!こうして..こうすると..ほら!できたコン」


ナディアと雛音ヒナネがなにやらゴソゴソと作業をしているよう。


「じゃーん!魔王様のお顔(仮)完成だコン」


「うむぅ..我の頭を作ってくれるのはよいが何故に段ボール..?」


「いいお顔ですよ、魔王様♪」


2人が作業していたのは、魔王の仮の身体を作る作業だ魔王は嬉しいのやら嬉しくないのやら複雑な気持ちではあったが、とりあえず礼を言うことにした。


「ちょっとちょっと!お二人とも魔王様はこんな醜いお顔ではございませんのよ!?」


「ダミアナ..もうこれでよいのだ..これ以上触れるな」


そんな忠告も聞き入れないダミアナはスラスラと段ボールに筆をはしらせ魔王様の顔を作りあげる。


「こちらのほうが良いではありませんか」


「えーダミアナの作った顔なんか変だコン」


「確かに、なんかオジサンっぽい」


「なにをー!?2人とも許しませんわよー!」


大鎌を手に持ち、雛音とナディアの首を切り落とそうと追いかける、それを笑いながら逃げる2人そんな光景を段ボールで、できた目で見ている魔王がポツリと


「なんでもいいから早く我の身体探してきて..」



--ギルド、サンクチュアリ--


「今日集まってもらったのは他でもない、先日研究所のメンバーが謎の大きな遺跡を見つけた、そしてその後調査団の作業によってわかったことがある、ルーシー説明してくれるか」


キリリとした目つきでそう話すのは我らのリーダー、レイヴンさんだあのとき見つけた古い宮殿を後日、魔法遺産調査団の人達が古代の絵や遺跡を調べてくれていたので今日はその結果報告のためにギルドのみんなが集まってるというわけだ。


リンとレオさんがヨイショ、ヨイショとなにやら文字がびっしり書かれた黒板をどこからか持ってきたタイミングでルーシー先輩が席から立ち上がり、説明をし始めた


「結論から言わせていただきます、こちらの遺跡を調べたところどうやら魔王イクノシア復活について書かれていた建物ということがわかりました」


イクノシアという言葉にみんなが動揺する、その反応を見てメガネをクイッと直し、再び話し出すルーシー先輩


「遺跡は魔王が封印された跡に建てられたものです、魔王を崇拝し復活を望むギルドオブキュラスが拠点にしていた建物です、壁や石画さらに古い書物にはこう書かれていました。」


深く深呼吸し、長い文書を読み始める


「月が隠れるそのとき、我らの魔王イクノシア・シャドウレイヴは甦れり再びこの世に魔王が君臨するとき、空が荒れ草木は枯れ果て、人々は恐怖の渦に苛まれるであろう、と」


更にレオがルーシーの代わりに話し出す 

 

「月が隠れるときというのは1000年に一度月が隠れる月食という現象が起きるんだ、月食が起きるとなにがヤバいのかみんな知りたいだろ?」


「闇の魔法使い達の力が普段よりも強く凶暴になるってことでしょん?」


「ケビン先生..そこは俺がカッコよく言いたかったところです..」


先生にいいところを言われてしまい、ガクッと膝から落ちるレオ


「まさかと思ったけど繋がってた...」


独り言のように呟くレイラ、ケビンはその言葉に反応し問いかける。


「レイラちゃんのふるさとでの出来事とこれでガッチャンコするわねん♡」


「そこでだ、我々サンクチュアリはこれより世界各地に存在している呪物を見つけ魔法学校で厳重に保管しこの1年を乗り越えようと思う」


レイヴンの提案に不安そうに問う


「質問させてください、何故学生の僕達がそこまでしないといけないのでしょうか?世界には魔導機構もあります..」


その答えにローザが答える。


「アイスガール、確かに魔導機構はこの世界を運営している大きな組織よ。だけど貴女もご存知な通りこの魔法学校には偉大なる魔法使い達の結界のおかげで闇の魔法使い達は入ることすら許されないの、それならばこちらで大切に守り抜くほうが賢明な判断としたからよ、レイヴンに質問したのに私が答えちゃってSorry♡」


わかりましたと納得した顔をするルーシーにLet's do this!とグッドをしながら言う


「では先程の呪物を回収する話しなんだが、こちらでも探してはいるが現状なかなか見つからないだが1つ魔王の頭部をこの1000年間ずっと守ってくれている人達がいる」


レイヴンはそう言うとルナのほうを見つめ、続きを話し始めた


「ルナの生まれ故郷、そして最強の部族と謳われる種族、竜人族だ」


「えぇ!?ルナ先輩って竜人族だったんすか?」


「ユウマ知らなかったの?僕だって知ってる話しだよ」


「情報通のジョンと一緒にするなよ、それにあんまり話したこともなかったし..」


「ルナ先輩はこの学校で唯一の竜人族の学生だよ」


そりゃあ聞かれなきゃ答える必要もない質問なんだろうけどさ、だけどあの校長と一緒と思えないほど大人びてるから..まぁあの校長がロリすぎるだけなんだけど..


「そこでだ、今回の任務は君たちに竜人族の村があるヴァーゴンの谷に向ってもらいそこで、魔王の頭部を回収してきてほしい..もちろん今回の件は先方にはある程度話を進めてある、なので私から今回向うメンバーを決めさせてもらう名前を呼ばれたものは今日の夕方の便で竜人族の村に向ってほしい..では発表する...」



--ヴァーゴの谷行きの列車内--


「フフ、よろしくね」


「なんで僕なんだ」


「それは俺だって同じ想いだ」


今回の任務でのメンバーはメリファさん、俺ユウマとジョン、そして唯一の竜人族ルナ先輩と各星獣達何故にこのメンツ?


沈黙が長すぎるもうかれこれ15分も沈黙が続いてる...メリファさんは終始ニコニコしてるだけだし、ジョンはオロオロしてるし、ルナ先輩は外の景色見てる、俺か?俺が先人を斬ればいいのか!?


俺はメリファさんにさっきみんなで話していた魔王のことについて質問をする。


「メリファさん、さっきレイヴンさんが言ってた呪物を俺達で守るって話しあったじゃないですか?あれってなんで1年間だけ乗り越えようって話しになってるんですか?」


「フフ、知らないわ」


美しい笑顔から出てきていい言葉じゃねぇ!


バッサリと話しの枝を折られてしまって、どうしようと考えていたときか細くも綺麗な声でルナ先輩が話しだした


「闇が光を覆い尽くせるのは月食のときだけだから、そして今回の月食が丁度その周期に入るから..だからこの1年で魔王の復活を阻止できれば次はまた1000年後だから」


「あ、ありがとうございます」


「レイヴンさん達もそう言ってたじゃないかーユウマほんとに話し聞いてたー?」


ジト目でこちらを見るジョンに余りに壮大すぎる話しだからほぼ理解してませんと言えずに、つい聞いてたと即答で答えた。


するとジョンはルナ先輩に質問を投げかけた


「ルナ先輩、ヴァーゴの谷ってどんなところなんですか?僕噂ぐらいしか聞いたことなくて..」


その質問に少しイジワルそうに


「そうね、あなた達人間が来るとすぐに食べようとするそんなところよ」


「ひぃぃぃ!そんな恐ろしいところ俺行きたくないです!!」


「フフフ、そんなに恐ろしいところでもないわよルナちゃんはイジワルね、フフ」


徐々にさっきまでの凍てつくような沈黙が溶けていき和やかな雰囲気に感じてきた


ふと、隣の席に目を向けるとメリファさんの星獣マヤが3匹の星獣に読み聞かせをしている


「勇者はお姫様と幸せにくらしましたとさ、めでたしめでたしでち」


「勇者はなんでお姫様と幸せに暮らしたルー?」


「それはお互い好き同士だからでちよ」


「勇者がお姫様のこと好きって一回も言ってないルー」


「言ってなくてもそういう物語なんでち!」


「ホッパー マヤ、喧嘩はやめてカボチャチップス食べるココ、アルインもどうココ?」


「いただくのだ..」


「星獣達はいつでもどこでも元気だなーそういえば俺ルナ先輩の星獣初めて見ます」


そう言う俺に、ルナ先輩はアルインをこちらに呼び紹介してくれた


「私の星獣..人見知りで話すことが苦手なの..挨拶して」


「アルインなのだ...よろしく...」


ルナ先輩の星獣らしく黒い、子ドラゴンの見た目をしたアルインは俺の目も見ず軽く挨拶をすませるとまたホッパー達のもとにパタパタと飛び戻っていった、主人も星獣も人見知りだと大変だろうなぁ..

 


--間もなく列車が目的の駅に停まります--


列車のアナウンスが流れ、俺達はヴァーゴの谷があるとされる、もっとも近い小さな町の駅に着いた


「さてと、ここからはどうやってヴァーゴの谷に向かえばいいの?ルナちゃん」


ルナ先輩はこっちと言うとヴァーゴの谷に向うために歩き始めた


こっちに着いたときにはすっかり夜になっており、なんでわざわざ夜に歩く必要があるのか聞いたら、昼間ここら辺り一帯の温度が灼熱になるからだそうで竜人族の人達も基本は夜にしか移動しないそうだ


「にしても、昼間よりは暑くないって言うけどなかなかの熱帯夜だなこれ..」


「確かに..これはこまめに水分補給がいるね、モナークは大丈夫かい?」


俺とジョンはヒィヒィと根をあげてる横で何故か涼しい顔して歩いてる人が1人


「こんなことでヘトヘトになるなんて、そんなんだと将来の相手は見つからないわよ?フフ」


この人前々から思ってたけど、ほんとはレイヴンさんよりも恐い人なんだじゃね?


ふと、前にいるルナ先輩が立ち止まり


「ここで休憩にしましょう、谷まではまだ遠い..」


「足がクタクタだルー、ユウマペンダントに帰りたいルー」


「なんでぇ、ズルいぞホッパーだけ俺だって楽したいんだからな」


まぁ、確かに俺とコイツじゃあ身体の大きさも違うしまだ子供だもんな仕方ない休ませてやるか..


ホッパーをエーテルペントに戻し、水を飲んでいるとメリファさんの指にキラッとした綺麗な指輪が目に入り思わずメリファさんに指輪のことを聞いた


「メリファさん、その指輪綺麗ですね」


「これ?この指輪はねレイヴンと真契約シンケイヤクを結んだときにプレゼントしてもらった指輪なの」


「へぇーレイヴンさんが、気になってたんですけど真契約ってどうやって真契約したってお互いわかるんですか?」


「真契約は仮契約と違って永久にその人と添い遂げるから、シルフィードで言うとアルカナ役所に行って手続きして、その後教会でお互いの魂を結び合うの」


「それってなんだか結婚みたいですね」


「そうね、確かに結婚みたいなものね、どうしてそんなことが知りたいの?好きな子でもできたの?」


「いやいや//そんなじゃなくて、ただなんでだろうって思っただけです..」


3年生のみんな鋭すぎるだろ..


「ユウマ君は気を付けて相手を選ばないと、沢山の女の子を泣かせることになりそうだから、契約の相手は慎重にね?」


なんか見透かされてる気がする..怖いよ怖いよ..


俺はそろり、そろりとメリファさんから離れようと作り笑顔で歩く


すると突然、空から黒く巨大なドラゴンが俺達の前に現れた 


「「ギャァァァーー!!ドラゴンだぁーー!食べられるーー!」」


衝撃の出来事に腰が抜け目が飛び出るほど驚くユウマとジョン


砂煙が目に入らないように目を閉じ、すぐに目を開けるそこにいたドラゴンを見たルナが今日一番の声量で


「パパぁ!?どうしてここに!?」


[おまけ]


「ユウマくーん♡一緒に帰ろう♡ってあれ?」


1年の教室の扉を勢いよく開け、猫なで声でユウマを呼ぶのは2年のジュリアだ


「今日の夕方から、ユウマはルナ達と一緒に谷向かったって言ってたやん、話しきいてへんかったんかぁ?」


そう、ジュリアに呆れ顔で話すフェイ


「ほら、僕達2年のことを1年生のみんなが珍しそうにこちらを見てるじゃないですか、帰りますよ」


ジュリアの鞄を引っ張ろうとしここから去ろうとするルーシー


教室の前でワチャワチャしてる3人を見つけ近寄ってきたのは


「なんだ?ここは1年生の教室だが?」


顔をしかめ、腕を組み指をトントンとし生意気なことを言うミケロス


「あっ!キミは私に失礼なこと言った子だ」


むぅーと口を膨らまし、指を指すジュリア、それにミケロスはフッと鼻で笑うと


「おばさんにおばさんと言ってなにが悪い?おばさん達はさっさと帰れ」


ミケロスの心ない言葉に反論する事ができず悔し涙を流し教室を離れる3人


次回[第二十六話、厨二病ホイホイその名はドラゴン]                    

                                


                             



  


                              

           


        

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