[第二十四話、疑うほうがずっとたやすい]
6月30日
リビングからベジタブルンジャーを見ているホッパーとモナークヤマトマルの3匹のはしゃぎ声が聞こえる
俺はというと寝室でポチポチとソサマをいじってる
今日は休みだから、どこにも行かずゴロゴロするんだ…
寝室に近づくトテトテ音、この足音ホッパーのやつだろうな…案の定ノックもせず開口一番ホッパーはこう言ってきた
「お腹すいたルー!」
「パンがあります」
「おにぎりがいいルー!」
「嫌です、ゴロゴロさせて下さい」
激しい攻防戦が繰り広げられ、果たして勝者は
「むーもういいユウマの隠してるお菓子食べるルー」
俺の勝ち!っておい!
「ッたくせっかくの休みだってのに、しかもヤマトマルとモナークまでここは託児所じゃないぞ」
ブツブツと文句をいいながらもおにぎりを握ってる俺…
「はいよ、食べたら帰れよ」
小さな手で自分達の顔ほどまである、おにぎりをモチモチと食べる3匹
「俺もなんか食うか..」
棚からカップ麺を品定めしていると、ソサマがピコンと鳴った
通知画面に表示されているのは俺とジョン リン レイラのグループからだった
レイラ[暇、どっか買い物いくわよ]
リン[どこに?]
ジョン[グレイスタウンにいかない?]
レイラ[さんせーい!じゃあカフェで集合ね!]
ユウマ[俺はパス]
レイラ[は?アンタに拒否権なんかないわよ]
ジョン[どうせ家でゴロゴロしてるだけだろ]
ユウマ[違うし、貴重な休息だし!]
既読がついたが返事が返ってこない…
あいつら俺のメッセージ既読無視しやがったな…
まぁ仕方ない、グレイスタウンに向うか
星獣達を『星獣お預かりします』のギルドに預け俺はグレイスタウンに向かった
マジカラビアから列車で二駅、古風なマジカラビアとは対照的に現代的で活気あふれる街並みが広がるグレイスタウンが見えてきたこの街は若者たちのトレンドの発信地であり昼夜問わず賑わいを見せてる、例えるなら渋谷のセンター街みたいなもんだな
「確か目的地のカフェってここらへん..だよな?俺元いた世界でも、陽キャが住み着く街ってどうも苦手だ」
「ユウマー!こっちこっち!」
ジョンがカフェのテラス席から手を振っている。
「ごめんおまたせ」
「おそーい!ドリンク奢りね!アタシ、フェアリーの甘露ミルク!!ホイップ追加で!」
「じゃあ僕は星屑ラテにしようかな、お願いしまーす」
何故5分遅れただけで俺が奢らないとならん雰囲気になっとるんだ..
「はーやーく行ってきなさいよー」
「はいはい、わかりましたよお姫様」
ここで断ってゴネられても困るから買いに行くか
「あっ私も一緒に行く」
「俺が買ってくるからいいのに」
「4つも一人で持てないでしょ、それに久しぶりに2人になりたいし...」
持てないでしょから、なにを言ってるのか聞き取れないが...まぁいいや
俺とリンはモダンな雰囲気の音楽が流れているレジに並ぶ
「俺は何にしよっかなー」
「今朝ヤマトマルがお邪魔してたのと、そのまま預かりギルドにまで連れていってくれてありがとう」
「気にすんなホッパーも毎日遊び相手ができて喜んでる」
「フフ、ユウマは優しいね」
口に手を添えクスクスと笑うリンに思わず見惚れてしまう、あれリンってこんなに可愛かった?
「な、なに//?顔変?」
「い、いや//なんでもない..」
何恥ずかしがってるんだ俺は、確かに久しぶりにリンと2人で話すもんな..
そんなこんなでレジでドリンクを注文し、ドリンクを受け取るとレイラ達のいる席へと戻る
「ほんとこのドリンク最高♡やっぱホイップのせてよかった♡」
「レイラって甘いの好きだもんな」
「な、なによその言い方!!太るって言いたいわけ!?」
「違うって、美味しそうに飲んでるから」
何気ないイチャイチャを見せられ、ズキンと心が痛む人物が1人
(ユウマとレイラいつの間にこんなに仲良くなったの?もしかしてだけどこの前レイラの故郷に一緒に帰ったときに何かあったの?まさか淫らなことが)
「どうしたの?リンじっと2人のこと見て」
「なんでもないわ、次はどこにいくの?」
続いて向かったのは最新のファッションアイテムが揃う服屋に足を運ぶ4人
「服かー、割と僕はなんでもいいタイプなんだよね」
「ジョンあのマネキン見てみろよ!まるでレオさんみたいなマネキンだ」
「このスカート可愛い〜いくらだろ?」
「ちょっと短すぎない?」
黒のスカートに赤色のラインが細くはいっているスカートを腰に当てるレイラとなかなかのミニスカートに若干引き気味のリン
「ねぇ、ユウマこのスカートどう?似合う?」
「可愛いじゃん」
「ユウマってこんな短いスカートが好きなの?」
「なに怒った顔してんだよ、スカートは短いほうがいいに決まってるだろ、な!ジョン!」
「しらなーい」
面倒ごとをいち早く察知したジョンはさっさとその場を離れる
「なによーリンだって今日短いショートパンツ履いてるじゃない」
確かにレイラの言う通り、リンの私服姿は初めてみるけど今日はなかなかに短いな
「こ、これは、そのジメジメして暑いから!」
「リンの私服初めて見たけど可愛いな」
ユウマのさりげない言葉にレイラが食らいつく
「そうなんだー!!ユウマはこういう服装の子がタイプなんだーへぇー」
「なんでお前まで怒るんだよ(笑)」
「じゃあ教えなさいよ、アンタの好みの服を!」
「俺の服の好みかぁ..」
短いスカートも捨てがたいな例えばジュリア先輩がピチっとムチッとしたタイトスカートを着てデートにきたらエロいなシンプルに谷間が見える服もいいなぁ、自分よりも背が低い女の子の谷間を隙あらば上から眺めるなんてのも最高だ
しばらく考えた結果
「大人系とか?」
なにをもってして大人系かはわからないが、とりあえず下心を隠そうと適当な事を言うユウマの回答に
「お、大人系!?ユウマって意外にも大胆?」
「そんなわけないでしょリン、こいつどうせ下心丸出しだから隠そうと適当なこと言ったのよ」
くそバレてたか..
「そんなわけないってーさぁ次行こう」
大根役者なら満点レベルの棒読みで次に行こうと2人を店から出す
とりあえずブラブラと街を散策していると、なにやら見たことある二人組が
「我が妹よもう帰ろう……手がちぎれてしまう」
「それくらいでヘコたれてるとまたユウマ君との勝負に...あれ?ユウマ君!?、こんにちは!リンさん達も一緒でお買い物?」
「おう!ミケロスとミシェルじゃん!そうなんだ俺達も休みだからブラブラしよってなってここに遊びに..ミケロス大丈夫か?」
俺の若干心配した顔に対して
「フ、フン!これぐらい朝飯前に決まってる」
「アンタ達ホントに仲いいわね」
レイラに兄妹仲を褒められ少し照れたような反応をみせるミシェル
「つ、次に行こうか..ミシェル...お兄ちゃんの手は限界だ...」
「そうですね!もう少し話してたかったけど、また学校でね」
そう言うと2人は去っていった
「さて、俺たちもそろそろ帰るか」
俺は後ろを振り向き3人に帰宅を促すが、ジョンの姿がない..すると少し離れた場所からジョンがこちらに手をふり
「おーい!3人ともこっちにきて!面白そうなイベントやってるよ!」
そう言われ、ジョンの元に着くジョンの言う通りなにかのイベントが行われている。
よく見ると看板にはこう書かれている、[最新の箒に乗ってみよう!]どうやら箒のキャンペーンが開かれていた
「さぁ!みなさんお待ちかねの!こちらの最新の空飛ぶ箒、なにが凄いかおわかりになりますか!?」
よくいるイベントマンが定型文を並べたような言葉で客達に質問を投げかける
「そうなんです!この箒なんといっても2人乗りが楽にできる凄い箒なんです!魔法使い同士で2人乗りをするとどうしても魔力のバランスが悪いと傾いてしまったりしますよね?それに一般人の方を乗せたとしても一人で二人分の魔力を使いながら飛ぶのは更に苦行なことです..ですがこの箒なんと!そんな問題をサラッと解決してしまう優れものなのです」
「へぇー箒ってそんな複雑なものなんだ知ってたかジョ..」
今日一番の目の輝き..ダメだこの男俺の話しなんか全く耳に入ってねぇ..
セールスマンはさらに箒の説明をすると、興奮冷めぬ口調でこう言った
「ここで2名様だけに特別にこの箒の素晴らしさを体験していただこうかとそんな幸運なお客様は..」
キョロキョロと辺りを見渡すセールスマン、幸運な客を見つけたのか狙いを定めるスナイパーのように手を突き出す
「そちらのポニーテールのお姉さんとお隣にいる銀髪のお兄さん!あなた達に決定いたします!」
は?俺とリン?周りのお客さん達からの盛大な拍手、いやいや待てまて俺は箒で飛んだことなんかないぞ!
「無理だって、箒で飛んだことないし」
「いいなぁーユウマ、僕に代わってよー」
「ずるーい!アタシもユウマと乗りたかった..」
「行こう、大丈夫だから」
リンに引っ張られ、俺は人生初めての飛行に挑戦する
「さあ、こちらへどうぞ。」と、セールスマンに微笑みながら手招きをされ
震える手で箒にまたがる俺と後ろで大丈夫だよと何度も声をかけてくれるリン
まずは深呼吸、そして足を地面から離す感覚ですると箒がふわりと上昇し始めた。その感覚は、足元から徐々に地面が遠のくような、不思議な浮遊感だった。
「や、やった..」
「初めてなのに凄い」
そんな上手くはいくはずもなく..俺とリンを乗せた箒は急上昇し、あっという間に目の前には俺がいつも通っているエンチャントレルム魔法学校が見える
「落ちる落ちる!」
「大丈夫、落ち着いて」
俺を落ち着かせようとぎゅっと後ろから抱きついてくれるなんて安心感、流石はリンだ
「にしても、さっきまでおんなじ目線だったレイラとジョンがもうあんなに豆粒のように小さいな」
「ねぇ、このまま少し飛んでかない?」
そうリンはイタズラな表情を見せると、箒が勝手にビューンと前に進みだした
「すげぇ..」
「あそこ見て」
リンの指差すほうを見ると夕陽が西の空へと沈み始めている、空は柔らかなオレンジ色に染まり、辺りを包み込む。光の筋が遠くの雲を金色に輝かせ、空の高いところから次第に濃い紫が現れ、空はまるで染料が滲むかのように色を変えていく。
「凄いしか言葉が出てこない」
「今日は楽しかったね」
「うん、こんな景色も見れたし絶対に元いた世界じゃ体験できなかった事だ」
「私もユウマと二人でこの景色が見れて嬉しいよ」
「え?今なんて?」
「もう降りるよ」
「もっとゆっくり降りてくれぇぇぇ!」
家でゴロゴロするのもいいけど、今日は遊びに出かけて正解だったなと思った1日であった
「あれって?」
仲良く空を飛んでる二人を見つけてしまったのは
「ミシェル、帰るぞ..」
「はーい」
(どうしてなんだろう、なにもないってわかってるのにユウマ君に女の子がいるだけでなにかあるって疑ってしまうな..)
「そこのお嬢さん悩みごとですか?」
人気の無い街の隅から話しかけられミシェルはその言葉に反応する
「誰ですか?」
「なに、怪しいものではないコン、じゃなかった..怪しいものではございませんよ、私はここで占い師をやっております」
深くフードを被り、紫の水晶玉を回しながら女は占い師と名乗る
「貴女恋してますね、それも叶わぬ恋コン」
「コン?」
「コン!コン!風邪がまだ残ってるみたいです」
「実は好きな男の子がいるんです、だけど私以外にもその人のこと好きなのかなって思うことがあって..」
「見たところ学生ですね?」
「はい、エンチャントレルムの魔法生徒です」
「おぉ!そこの生徒さんなら出血大サービスでこれを渡すコン!コンコン!咳が..」
そう占い師はミシェルに丸くて黒い水晶のブレスレットを渡してきた
「これは片想いの恋にうーんと効果バツグンのブレスレットですので、よかったら」
「でも、お兄様に知らない人から何か貰ってはいけないと..」
「そんなことでは恋も実りませぬぞ!もっと積極的になるのです!!」
占い師はそう言うとミシェルの手に強引にブレスレットを手渡す
「あ、あのありがとうございます、大事にします」
深くお辞儀をし、ミシェルはミケロスの元に戻っていった
「プププ、これで侵入は成功だコン♪」
[おまけ]
柔らかな間接照明、ムーディな雰囲気、ステージ上ではピアニストが甘美な旋律を奏でる
「久しぶりの休日だ」
「えぇ、しかも二人っきりで、こんなにオシャレなレストランがあるのなんて知らなかったわ、どこで情報仕入れたのかしらいつも無頓着なレイヴンなのに♡」
「っブ!、ゲホゲホ..無頓着とは失礼だな、ここのレストランはローザに教えてもらったんだ」
「ローザが?なら納得ね彼女はホントに不思議な人ね」
「今日は2人なんだ他の人の話しはやめてたまには2人の話しをしようメリファ」
「ねぇレイヴン、なんだがこのワインアルコールが強すぎない?私身体が火照ってきちゃったわ」
「いや、これはノンアルコールのワインだけど..」
「あら?そうなの?じゃあこの火照りはあなたのせいね後で火照りをしっかり鎮静してもらわないと♡」
そしてこのあと2人はめちゃくちゃ♡♡♡シた
次回[第二十五話、竜人族の村]
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