[第二十二話、テスター募集中]


6月25日


朝のニュースで梅雨入りしたとお天気お姉さんが教えてくれた、空は灰色の雲に覆われ、まるで重たい毛布が広がっているようだ、時折雷の低いゴロゴロという音が聞こえ、ホシノ先生はその度に窓から外を見ては「嫌な季節ね」と言う


あれから、とくになにもなく1ヶ月が過ぎなんだか平和ボケしそうなぐらいに毎日が平和だ


「ユウマ、お昼学食食べに行こうよだって今日は」


「あぁわかってる、あの日だろ?」



そう週に一度食堂では、学生にとにかく大人気のチキンカツサンドが販売される、しかも決まって週の中頃、もちろんただのチキンカツサンドじゃない、だってここは魔法世界だし鶏肉の代わりに、食用のグリフォンが使われている、このグリフォンがまた絶品だ、普通の鶏肉よりもジューシーで、その衣にはドラゴンスパイスと呼ばれる特別な香辛料が使われていてる、スパイスに使われているのは実際のドラゴンではなく、そういう名前の花からとれるエキスをソースとして使っているピリッとした辛さにやみつきになる学生達が後を絶たない、俺もジョンもその中毒者の一人だ


「おい、何故俺まで着いてかないといけない」


「まぁ、そう言うなよミケロスお前だってここのチキンカツ好きだろ?」


ユウマの言葉に返すことができず、ジョンとユウマに引っ張れながら食堂に連行される。


「うそ」


「そんなことって」


「週に一度の楽しみが〜」


ジョン、ミケロス、ユウマの順番に完売の文字を眺め落胆していく3人


「残念だったな、もうちょい早かったら買えたのに」


チキンカツを美味しそうに頬張り、食べているのはイケメン代表レオ先輩だ


「先輩その袋に入ってるのって」


「これ?チキンカツだ」


「お願いします、分けてくださいもう、かれこれ2週間もチキンカツにありつけてないんです」


俺はすぐに頭を下げ、チキンカツをほしいと乞う


「あげたいけど、これはルーシーとペンドルトンの分なんだ、悪いな!」


じゃあなとウィンクをキラーンと俺達に向け、食堂を去っていってしまった


「ユウマ、ジョンお前達、朝俺に言ったよな?今日は絶対チキンカツ食べれるからと」


よほど食べたかったのだろう、腕を組み指をトントンしながら俺達に詰寄る


すると、背後からヴィジュアル系バンドのような声で立ち往生している、俺達3人に話しかけてきたのは


「お前ら、なにこんなとこで突っ立てる?」


「あっシルベスター先輩、僕達チキンカツを買いにきたんですがもう来た頃にはなにもなく、途方にくれてるところでした..」


「ふーんそういうことか」


なにか、思いついたシルベスターさんはニヤっと口角をあげ俺達に袋を見せつけてきた


「お目当ての探し物はこれだろ?」


育ち盛りの男3人、そんな光輝く物を見せつけられ、冷静になることなんて到底不可能


「もしかして、それを俺達に?」


ゴクリと生唾を飲み、イエスと一言言ってもらえるのを、淡い期待をしながらシルベスターさんに問いかけた


「ちょうど3つか..譲ってやってもいいけど..そうだなぁ」


「な、なにか条件が?」


汗がタラーと頬に伝い、目の前のチキンカツから目を話を離さず条件を聞くジョン


待ってましたと言わんばかりに嬉々として声で俺達に


「お前達、俺様のテスターになれ」


 

放課後、俺達3人は魔術学研究所に呼び出された


本や資料が山積みになった一応客間っぽいところに案内してくれたキース先輩が  


「なにか飲む?ウーシンティーとエルフの月光茶しかいまないけど…」


そう言いながらエルフの月光茶と書いてある袋を手にしお茶を用意し始める

 

この人天然か...?


キース先輩がいれてくれたお茶を飲み、時間を潰しているとシルベスターさんが部屋に入ってきた


「来てくれたなテスター達よ」


「その呼び方やめてくださいよ」


「なんて呼べと?」


「俺の名はユウマだし、こっちはミケロスというんです」


そうか..と呟きミケロスに近づくシルベスターさん、ミケロスのネクタイをゆっくりほどき


「まずはお前からだな、たっぷり可愛がってやるからな♡」


「な、なにをする!やめろ!」


うぎゃゃゃ!!と断末魔の叫びが、研究所に響きわたる


「安心しろ、なにもしない」


叫んだミケロスの口を塞ぎ、ジト目で見つめイタズラな笑顔を見せる


「テスターと言ってもここで行わない、俺様とキースそしてユウマ、ジョン、ミケロスの5人で俺様達が管理してる森に一緒にいってもらう」


こうして、男だらけの森林探検隊が結成され俺達5人は森の奥深くに、進んで行く。


なんだか、嫌な雰囲気の森だな


「なんか嫌な雰囲気の森だなって顔してるでしょ?」


「ック、見抜かれたか」


「ユウマのことなんかすぐにわかるよ」


ジョンと話していると、背後でミケロスが叫んでいる、よく見ると沢山の木のツルに捕まったのかブランブランと振り子のように揺れている、するとミケロスは声を裏返しながら  


「おい!待ってくれ!俺を置いていくなぁ」



「すぐに下ろすから待ってて」


キース先輩は袖から杖を出し、ヒョイと杖を振ると宙吊りになっているミケロスのツタが動き、ミケロスは救出された


「もうそろそろ着くと?足が痛くてたまらんばい。」


シルベスターに文句を告げるリーナ


「だから、おば猫は来るなって言ったちゃろ」


「誰がおば猫だと!?」


「もう!2人ともこんなところで喧嘩なんかしないでよ、セレも余計なこと言わないで」


キースは喧嘩の仲裁に入るとセレを抱きかかえる


「ここか、みんなついたぞ」


シルベスターさんの言葉通り、ようやく目的地についた…


なんだこのバカでかい宮殿は


「シルベスターさん、こんな宮殿この前までありませんでしたよね?」


ジョンがシルベスターに問う


「何日か前、凄い大雨があっただろ?そのときこの近辺で地震が起き、地中からこの巨大な宮殿が現れたんだ」


「じゃあ中に入ろうぜ」


俺は腕をブンブンと回し中に入ろうとする、それを慌ててキース先輩が止める。


「そんなすぐに中に入れたら、誰も苦労してないって」


「お前達何故、テスターに呼ばれたか教えてやろう…答えはあれだぁ!」


シルベスターさんが指差す先にあるのは赤青黄のキノコが扉の前で並べられ、その横に看板でこう書かれている[ここのキノコ全部食べないと通れないよーん、でも1つは毒入りだよん。]


「キノコ?」


「そうだ、あのキノコをお前らが食え」


突然の出来事にミケロスが思わず口を開く


「なにをいきなり、言い出すかと思えば、ただの毒見に呼ばれたということか」


お断りと言った顔で、立ち去ろうとするミケロスをシルベスターさんはムチで捕まえ、あら不思議、亀甲縛りミケロスが出来上がってしまった


「おい!離せ!クソなんて格好させやがる」


「生意気な男は嫌いじゃないぜ?♡俺様のを食うか、あっちのキノコを食うかお前が選べ」


さらにミケロスの耳元に近づき


「俺様のを選ぶなら、口じゃなくて違う口にツッコんでやるけどな♡」


こちらからはよく聞き取れないが、ミケロスは恐怖で慄いている。


「ミケロスは、青いキノコ食べるんだって」


すっとんきょんな声でシルベスターさんは言うと、青いキノコをちぎりミケロスの口に放りこんだ


「んぐ♡、っハァ♡ちょ、シルベスターさん//もうちょっとゆっくり//」


縛られて食べにくそうにしているミケロスを俺とジョンはただ屍のように見ているだけだった


「あの、キースさん」


「どうしたの?ジョン」


「あそこに生えてるキノコって毒とかじゃないですよね?」


「死にはしないから安心して、ただ俺が知ってるかぎりあのキノコって、いやなんでもない…次はユウマの番だ」


「いぃー!俺!?」


すっかり意気消沈なミケロスを見てフハハハと笑い、俺の元に近づいてくるシルベスターさん


「お前は何色食べるんだ?」


「じゃあ、赤で」


「僕も同じタイミングで食べます」


俺とジョンはキノコをちぎり、深いため息をつき覚悟を決めて食べることにした


ジョンは一気に口に放り込むが、俺は躊躇してしまった


「早く食べろ」


「無理です」


俺の泣きっ面を見たシルベスターさんは何故か嬉しそうに近づいてくると


「俺が食わせてやろう」


そう言うと、ミケロスのように強引にキノコを口に押し込んでくる


激しい攻防戦が繰り広げられ、3分がたった…俺はまだ口にキノコを一口も挿れることはできない


そんな、やり取りをむぅっとした顔で見ていたキース先輩が我慢できなくなったのか


「シルベスターさん!俺が食べますから!俺にキノコを食べさせてください」


「お前正気か?ジョンもミケロスもなんにもなかったんだぞ?ということはこのキノコが毒キノコだ、それでも食べるのか?」


おい!なんで毒キノコって、わかってんのに食わせようとすんだよ!ボケ!!


「はい…食べます」


「わかった…じゃあ挿れるぞ」


あぁ…二人の関係がなんとなくわかった気がする..


レイヴンさんとメリファさんといい、ここのギルドの人達はなんてディープなんだろう


大きなキノコを口いっぱいに、ツッコまれなぜか嬉しそうにシルベスターさんを見つめモリモリと食べる


「体調はどうだ?」


「ハァ♡ハァ♡体調はまだ大丈夫です//」


どうやって確認をとったのかは知らないが、ズズ..と固く閉ざされていた、扉が開く


「よし、では中に入るか..俺様についてこい」


5人は宮殿の内部に入るため扉に近づく


すると、最後尾にいたミケロスが突然口を開いた


「なにか、後ろから音が聞こえるそれも大量に」


「え?音なんか聞こえ...」


ミケロスの言葉通り、ドドド..!と低く激しい足音のようなものがこちらに近づいてくる。


「みんな俺様の後ろに下がれ」


そしてあっという間に、ユウマ達は囲まれてしまった


「お前ら人間だな?」


囲まれてしまった正体不明の生物がなにか、俺は隣にいるジョンに小声で話しかけた


「コイツらいったい何者?」


「ケンタウロスだよ、ここ一帯の縄張りはコイツらの縄張りなんだ」


「そんなとこで、いつも活動してんのかよ」


「ケンタウロスとは争いをしない為の協定を結んだはずって先輩達からきいたんだけど」


「人間ならば食う」


何十体のケンタウロスが同時に弓を引き、俺達に狙いを定めてる


「シルベスターさん、コイツら..目が..」


シルベスターにケンタウロスの異変に気づいたキースだが、毒が回ったのかバタンと倒れてしまった 


「おい、キースしっかりしろ!そろそろ毒が身体に回ってきたな」


勇敢にも杖をだしたミケロスが一言 


「この状況どうするつもりだ」


「戦うしかないよな」


同じく、グローブをギュッと装着する、ユウマ  


「そうだね」


自分よりも数倍おおきな、グレートアックスを持ちどこか不安そうなジョン


キースが弱っている危機的状況、ユウマ達は果たして


[おまけ]


「最近出番がここだけしかない、ホシノ・オリビアです♪」


「同じく、ホシノ先生よりも出番が少ないガイ・バードラムだ」


「ガイ先生、私達がここにいるということは」


「そう!魔法遺産調査団の説明をするときがきたってことですな!」


「ではこのホシノからまずは説明させていただきますね」


魔法遺産調査団は、エンチャントレルム魔法学校内に存在する数多くのギルドの中でも注目を集めるギルドの一つです。このギルドは、主に古代魔法の研究を専門としており、古代の遺産や遺跡を探査し、その秘密を解明することを目的としています。とっても難しいことに聞こえるけど、そんなことないのよ♪


設立の背景

魔法遺産調査団は、失われた古代の魔法の知識を復活させるために設立されました。かつて存在した強力な魔法文明の遺産は、現代の魔法使いたちにとって貴重な研究材料であり、その発見と研究は新たな魔法技術の開発に大いに役立っています。


次はこの俺ガイが説明させてもらうな

 

 1. 古代魔法の研究

- 古代の呪文、遺物を研究し、その構造を解明する。これにより、現代の魔法技術に応用できる新たな知識を得ることを目指しているぞ。


2. 遺跡の探査

- 世界中に点在する古代魔法文明の遺跡を探査し、埋もれた遺物や魔法具を発掘します。これらの探査活動は、しばしば過酷な環境や危険な状況で行われるため、団員たちは高い技術と勇気が求められるんだ。最近ではケンザキなんかが、よく先陣を切って調査に励んでくれている


3. 魔法遺産の保存

- 発掘された遺物や呪文書は、適切に保存され、将来の研究のために保護されます。これにより、貴重な魔法遺産が失われることなく次世代に引き継がれんだ。

 


4. 魔法の歴史の再構築

- 古代魔法の研究を通じて、魔法の歴史を再構築し、現代の魔法体系に新たな視点を提供する。これにより、魔法の進化とその背景を理解する手助けとなる。これがなかなか、難しい


よって魔法遺産調査団は、古代の魔法の謎を解明し、現代の魔法界に新たな知識と技術をもたらす重要なギルドとなる。その活動は、エンチャントレルム魔法学校の名声をさらに高め、魔法界全体に大きな影響を与え続けていくことだろう。


「フゥー、本編よりも喋りましたなホシノ先生」


「みんなも是非入学したら魔法遺産調査団に入団してみてね!」


次回[第二十三話、最大級の最大級の最大級の最大級の]             


          

          


          


                                                 


 


                            


  


  

                              

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