[第二十一話、祝福の焔]
「応答なし...強行突破しましょう..」
アイアイサーと何匹ものゴブリンが返事をし、ゴブリン専用のミニブルドーザーにエンジンをかける
「突撃だー!」
「待ちなさい!!」
「誰!?」
「アタシの大事な家を取り壊そうなんて、そうはいかないわよ!愛と正義の最強爆裂美少女!レイラ・ノクターナルとはアタシのことよ!」
「同じく星獣界一のプリティバード、フレイアだピィ」
ブルドーザーのライトがいい感じに逆光になってるのを利用し、レイラとフレイアがノリノリで美少女などと言い放ち決めポーズまでしている。
「アンタもなにか言いなさいよ」
「あぁ、俺の名は!」
「そこまでだルー!正義のヒーロー野菜戦隊ベジタブルンジャー、真っ赤な色は新鮮な証!パプリカレッド参上ルー!」
こっちにもノリノリの奴がまだ残ってやがった..
どいつもこいつも、敵さん全員口がポカーンじゃないか..
「まさか、あなた達この前サミラ姉さんを邪魔した連中ね」
「そうだ!俺達はギルド、サンクチュアリだ!今ならまだ間に合う降参してここを去れ!」
「ちょっと!ユウマ、アンタなに敵にギルドの名前なんか教えてんのよ!このあんぽんたん!」
レイラに強めのチョップを食らった、自分だってさっきまで爆裂美少女とかなんとか言ってたくせに、流石に俺だって腹が立ったから、おんなじようにデコピンをおみまいしてやった
「痛ったー!女の子に暴力振るうなんて最低!」
「そっちが先に暴力ふるったんだろ!」
「アンタがバカな真似するからでしょ!」
「名乗るぐらい別にいいだろ!多分この前の戦闘でバレてるし!」
痴話喧嘩をただ見つめるアリヤ、そこに痺れを切らしたゴブリンが
「アリヤ様、今のうちにやっちゃいませんか?」
「そうね、魔物を使うわ」
そうアリヤは言うと、後ろから1人の人間を前にだした
それに気づいたレイラは
「あそこにいるのって!パン屋のおばちゃんじゃない!なんでそんなところに!?」
「助けてちょうだい、レイラちゃん...理由もわからず捕らえられてるのよ」
「もう遅いわ」
アリヤは淡々とした口調でそう言うと、指をパチンと鳴らし呪文を唱え始めた
『ピュアな心を黒く染めろ!ダークインパクト』
「この前と同じ呪文!?」
この呪文には見覚えがある..確かこの後..
「うわぁぁぁぁ!」
そうだ、パン屋のお姉さんの身体から綺麗なハートが現れ一瞬にして黒いハートに変わるんだ、その後の展開もこの前と一緒なら
ユウマの推測通り、パン屋のおばさんの周りを闇が包み込むと、その中から、無数のハエが湧き出て。羽音は次第に大きくなり、一点に集まっていく。その中心から、一匹の巨大なハエが現れた。普通のハエとは比べものにならない大きさの
「嘘..おばさんが魔物になっちゃった..」
「ハーエハエハエ、ワタシの相手はお前達か?」
「くるぞ、レイラ!」
ハエ女はうるさい羽音を鳴らし、ユウマ達に襲いかかってきた
『スチールスマッシュ』『ホッパーパンチ』
二人の息の合った連携技でハエ女を殴る、女は吹き飛ぶがすぐに受け身をとると、ゴブリン達にいきなさいと命令を下す。
「ユウマ戦っちゃダメよ!相手は人間なのよ!?」
「大丈夫だって、アイツを倒せたらパン屋のお姉さんは元に戻るから!」
なんとも言えないガバガバの設定に妙に納得したレイラはニヤっとし
「それなら思う存分戦えるわね!フレイア!」
「了解だピィ」
フレイアが呪文を唱えると、レイラの身体に魔力が宿ったのか、髪が少し発光してるのがわかる
「アタシの大技で全員ブッとばす!」
レイラはペンダントから戦鎚を召喚し、高く飛び上がると、うぉぉりゃゃ!と叫びゴブリン達のいる中心を叩きつけると、さらに『アビスフレイム』と呪文を唱え周りを一気に火の海にした。
「あいつが戦ったとこ初めてみたけど、凄まじい威力だな...」
「ワタシの支援魔法のおかげもあるピィ!」
レイラだけの手柄になるのは少し悔しいのか、俺の頭をツンツンと突いてくる。
「フフン♪どんなもんよ!」
こちらを見て、ドヤ顔で戦鎚をドン!と地面に置く、だがハエ女はギリギリ避けておりレイラに手を向けると
「ワタシがこれぐらいでやられると思うなよ!飛べハエ共よ」
無数の小さなハエがレイラに襲いかかるとあっという間にレイラは取り囲まれてしまった
「レイラー!」
「ちょっと!っつ♡どこ入り込んでんのよ!」
心配して叫んだのはいいが、正直ハエに攻撃されてるのか襲われてるのか、見てる分には全然わからん
「お願いがあるの♡このハエはアタシがなんとかするから、ッ//ん♡、ユウマは呪物をなんとか守って!」
「お、おう!わかった!」
ホッパーに行くぞと声をかけ、礼拝堂に向う
だがときすでに遅しだった...
礼拝堂はいくつものブルドーザーのせいでめちゃくちゃになってしまっており、アリヤと呼ばれている奴の手には禍々しい雰囲気がした箱が見える。
「その箱を渡せ!」
「嫌だといったら?」
「どう言われてもお前から箱を取り返す!ホッパー!俺に力を貸してくれ!」
「わかったルー!」『ホッパーチャージ!』
ホッパーに力も貰った..いける!俺一人でも上級呪文を出すぞ!
『鉄よ、敵を貫け!メタルスパイク!』
………………
あれ?ミケロスとの戦いのときには、出たのになんで今はでないんだ...?
アリヤはただ拳を地面に叩きつけるユウマを見て
「フザケてるの?お遊びに付き合う暇はないの、死んで」
指先をユウマに向け、『アリ・ナクシャ』と静かに唱えると、闇の魔弾が2発飛ぶ
(ダメだ..避けきれねぇ..)
目をギュッとつむるユウマ、だが身体に当たったと思ったがガキンと音がする。
目をあけるとそこには勇ましく戦鎚で魔法を跳ね返したレイラが立っていた
「なに地面に拳なんか叩きつけてんのよ」
「レイラ..あ、あのハエの魔物は?」
「あんな魔物にレイラ様が負けるわけないでしょ」
レイラは振り返ると、余裕そうな表情で俺にウィンクとピースを見せてきた
「なんだ、ハエ女ヤラれたんだ」
「アンタ!礼拝堂をこんなにめちゃくちゃにして!許さないわよ!」
でぇぇやぁぁ!と戦鎚を構え、アリヤを殴り潰そうと高くジャンプし狙いを定める
「大振りね、そんな攻撃だと私は倒せないよ猪さん」
そう、死んだ目でレイラが猪突猛進の如く突っ込んでくるのを嘲笑うかのように、皮肉を並べるとサーベルで攻撃を受け流した
向こう側に吹っ飛んでしまった、レイラだがすぐに体制を立て直し、手から炎の魔弾を飛ばす
威力は高いが、弾の速度が遅いのか全くといっていいほどアリヤに攻撃が当たらない
ユウマも応戦しようと、近づき殴りかかるが動きが早すぎるのかユウマの攻撃も避けられる
「しつこい」
風のような速さで動き、ユウマの心臓を狙い定める。
なんとかギリギリで避けたが、アリヤの身のこなしに翻弄される二人
「アリヤ様、人間を捕らえました!」
ゴブリンの言葉に視線を向ける二人、そこにはダガーを首に押し当てれた、マリアが捕まっていた
「マリア!アンタ部屋にいたはずじゃ…」
「ごめんなさい..お姉ちゃんの力になりたくて勝手に出てきたの..」
すると、アリヤが交渉を持ちかけてきた
「子供の命とこの箱どちらが大事?」
「そ、そんなの卑怯よ!」
「どちらか選んで、じゃないとどちらも奪う」
レイラの顔をチラっと見るとアイツもこの最悪な状況に動揺が隠せてないようだった
「レイラ、ここはマリアの命を優先しよう」
「それしか選択肢はないもんね」
「おい!アリヤとか言ったな、マリアを離してくれ箱は渡す」
「そう、なら箱はいただいていくわ」
そう言うとこの前出会ったサミラとかいう女とおんなじように、空間から裂け目が現れそこにスーッとこちらも見ずに入っていく
ゴブリン達も撤収作業をはじめ、俺達は呪物をあっけなく持っていかれてしまった。
「ごめんなさい!シスター、呪物を守ることができなかった」
「顔をあげてレイラ、いいのよあなた達が無事ならそれで」
「礼拝堂もめちゃくちゃになっちゃったな」
「アタシが責任持って直す、サンクチュアリに掛け合ってみるから」
「ありがとう..でもさっきの人達どうして魔王イクノシアを復活させようとしてるのかしら」
「確かに、だって1000年前に封印された奴をわざわざ今になって復活させるなんて」
シスターと俺はうーんと同じように手を組み考える
するとレイラがボソッと
「今年って確か...1000年の周期で訪れる月食の年じゃなかった?まさかね...」
「月食なんてただ月が隠れるだけの現象だろ?それと魔王復活が関係するとは思えないけどな」
「確かにそれもようよね」
すると、シスターリカがユウマとレイラに話しける
「せっかく帰省してくれたって言うのに、いきなりこんなことになってごめんなさいね..今日はもうゆっくり休んで」
俺達はシスターの言葉通り、休むことにした。
5月20日
ホッパーと2人で大あくびをかまし、朝食を求め下におりる
「おはよう、シスター」
「おはよう」
「ルー!」
「あれ?レイラは?」
「あっちで誰かと話してたわよ」
焼き立てのパンをほうばりながら、レイラの元に向かうとソサマで誰かと話しているのが見えた
「はい、ホントですか?ありがとうございます!失礼します」
「おはよう、誰と話してたんだ?」
「ケビン先生よここの礼拝堂の話しや呪物の話しをしたのそしたら礼拝堂はギルドが直してくれるって」
「それはよかった」
「いまの今まで寝てたの?パン食べてるけど歯磨きとかしたんでしょうね?」
「母親みたいなこというなよ、ちゃんと顔も洗ったよ」
「ふーんならいいわ、アンタ汚いから」
まったく朝から失礼な奴だな、だけど調子が戻ったようでよかった
するとレイラは
「着いてきてほしいとこがあるの...」
歯切れの悪い言い方でキョロキョロとする、俺はレイラについて歩く、着いた場所は昨日ゴブリン達に壊された礼拝堂だ
よいしょと木造のベンチに座り、レイラはなにも言わずジッと壁に立てかけられた十字架を眺めている
「ステンドグラスから日が差して綺麗だな」
「そうね...昨日言いかけた事があるでしょ?ほらイクノシアの事でそれしかできないからって..」
「あぁ、それがどうした?」
「それってさアタシにも言えることなんだよね、アタシって親もいないし物心ついたときにはもうここで暮らしてたしさ、だけどアタシにもイクノシアと一緒で小さな頃から魔法の才能だけは長けてたの、ずっとそれが自分の取り柄だって思って生きてきたからさ」
「ユウマとレイラなに話してルー?」
「ピィ!大きい声出さないでピィ!いま面白いところ!」
ベンチに座っている2人をコソッと覗いてる2匹
「だけどね、魔法学校に入学して最初こそはアタシより優れてる奴なんかいない!って思ってたのにリンやミケロスだったりミシェルも後はクルクルパーマのジョンだって..それにアンタも..凄い人ばっかりに囲まれて、サンクチュアリにも加入してドンドン自分に自信がなくなってきて、アタシいつかみんなからいらないって...またアタシを捨てた親みたいに...アタシ捨てられるのかなって思ったら毎日不安で...」
急にどうしたんだ?いつものレイラじゃない、いやここ最近はそうなんだけど、自身がないと下を向くレイラに俺は声をかけるとこにした。
「レイラは凄いよ、昨日だってガンガン戦ってたしそりゃあ普段は気が強すぎるけどさ、でも今回一緒にお前の故郷にきていつもと違うレイラを見て、なんていうか、その見る目が変わったっていうか」
恥ずかしそうにポリポリと頬をかくユウマ
レイラは目に涙をため、声を震わせながら
「じゃあアンタは...ユウマはアタシのこと見捨てたりしない?」
「しない、俺はずっとそばにいるよ」
「なにキザなこと言ってんのよ、さえない男のくせに」
涙を隠すようにユウマにチョップを下す。
なかなかに強いチョップをくらい、痛がっているユウマを見て少し笑う、そして頬がうっするとピンクになるのを感じ、ゴクっと生唾を飲むとユウマの手を握り
「もし、またアイツらが襲ってきたら次は勝てないかもしれない…だから、そ、その」
何故俺はいまレイラに手を握られている?そしてめちゃくちゃにレイラの顔が赤い…
待てまて、この状況もしかしてだけど
「アタシと契約してくれない?もちろん仮でいい」
やっぱりキターー!!
「ちょっと待ってくれ」
「ダメなの?」
うぅ..そんなうるうるした目で見つめられると断れない
「もしかして、心に決めた人がいるとか?」
「い、いやそんな人はいないけど」
「じゃあなに?」
レイラの雲行きが怪しくなってきた..2人も3人も一緒だよな..うん、一緒だ....ごめん!リン、ジュリア先輩
「わかった、なにかあったときのために契約しよう、てか俺でいいのか?」
「アンタがいいの//」
レイラなにか小さな声で言っているが聞き取れなく、え?と聞き返した
「もう//始めるわよ!」
俺の手をさらに強く握り
「我が魂と汝の魂を繋ぎ、共に歩む力を授けよ。この契約により、我らの魔力は一つとなり、限りなき力を発揮せん。」
レイラが呪文を唱えるとフワァと暖かな風と共に魔法陣が現れた
「じゃあ行くわよ、目瞑って」
俺は言われ通りに目をつむる、するとレイラの体温がドンドン近づいてきて
え?口元に柔らかい感触を感じ、慌てて目をあけた
(まさかの口元!?顔近..よく見ると可愛い顔してるな、それにリンと先輩とはまた違う魔力が身体に流れてきて気持ちいい)
(ユウマの魔力デカすぎ..こんなに魔力が身体に入ってくるのって気持ちいいの..//)
「リンとジュリアとも契約してるのに、レイラとも契約しちゃったルー」
あわわな顔で光輝く二人をみて漏らしてはいけない秘密を声に出して呟くホッパーにフレイアは聞き逃さなかった
「ホッパーいまの話しホントピィ?」
「ホ、ホパなにも言ってないルー」
「ちゃーんと聞こえたピィ!帰ったら詳しく署で聞かせてもらうピィ」
二人を包んでいる光が徐々に消えていく
「改めてよろしくな、レイラ」
「うん//」
こうして、俺達はレイラの故郷を離れエンチャントレルムに戻るための列車に乗る
駅のホームでマリアは最後に「大人になるまでもうすこしだから大人になったらお嫁さんにしてね」とませた事をいいウィンクをしてきた
シスターリカは「また、いらっしゃい」と笑顔で手を振る
呪物は悪い奴の手に落ちたし礼拝堂もボロボロになったちゃったけど、レイラの新たな一面も見れてよかった..けどなぜかレイラとも仮契約してしまった..帰ってからの事を考えると..いやもう考えない
とにかく、今回はこれで一件落着ということにしておこう...
[おまけ]
おや?なんだか星獣ちゃん達が楽しそうなことをしているよ
「さぁ、知ってることを話すピィ」
取り調べ机をバンと叩くフレイアとライトをクチバシで調節しホッパーを照らす助手のヤマトマル
「知ってることを全部話すルー...」
ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョ
「なにいぃ!じゃあオレっちのリン様にも手を出しとるっていうことッスか!?あの男は!?許せん!」
「ボクもう帰っていいココ?」
「ダメルー!ここにいてほしいルー」
「あんの野郎とっちめるでござる」
「ヤマトマル!やめるピィ、よく考えるんだピィ、ワタシ達、星獣の夢は?」
「神獣になることでござる」
「少なくともここにいる3匹は神獣になれるピィ!だから揉め事はよくないピィ」
「確かに..」
「だから、ユウマを脅して1人ずつ夢の神獣に変身させてもらうように脅すピィ」
「それはいい考えでござる♪」
「ルー♪ホパもカッコいい神獣に変身だルー♪」
「そうと決まればユウマを探すピィ!」
「「「おー!」」」
「なんかだいぶ間違ってる気がするココ」
よかったね、みんな
次回[第二十二話、テスター募集中]
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