[第二十話、センチな世界観に浸ってみたいもの]


どれぐらい乗っていたのだろうか


気がつくと心地よい風が車内を吹き抜け、いつまにか眠ってしまっていた


「んぁ、俺寝てた?」


「寝てたわよデッカイ、イビキかきながらね」


「もう外も真っ暗だな」


「もうすぐ着くわよ、降りる準備しなさい」


レイラにそう言われ、俺は立ち上がり身体をんーと伸ばす、ペンダントが揺れてるのを感じた俺は今日1日ホッパーを外に出してあげてないことを思い出し、すぐにペンダントからホッパーを呼び出した


「ユウマのバカー!」


出てくるやいなや、俺に特大のアッパーを打ち込んできやがった


「ブルラァァ!!」


「なんでもっと早くだしてくれなかったルー!」


「ぎょ、ぎょめん」


ピィピィと殴られてる俺を見て笑うフレイア


列車はセレナヴェールに着き俺は駅の改札口を抜けるとレイラに今後の予定を聞く


「レイラ、もうすっかり夜だけどこの後予定とかあるのか?」


「予定っていうか、アタシは家に帰るんだけど」


「それって着いていっていいの?」


「ダメよ」


「お願いしますよ、レイラさん!」


「女の子に泣きつくなんて、男としてどうなの?」


レイラにそう言われたが、こんなどこかもわからん場所にホッパーと2人なんて絶対に無理だ!プライドはないの?なんて言われたがあるわけない!一緒にいて明日を迎えるほうが大事なんだ!!


俺の泣き落としが効いたのか、レイラは俺を連れていってくれるようだ


しばらく歩いてると、小さな街を抜け街灯だけがポツポツとある道を進むと大きな修道院が見えてきた


「ここって修道院だけど」


「そうよ、ここがアタシの家、祝福の光修道院よ」


立派な木造の大きな扉をあけると、中は礼拝堂になっていて美しい讃美歌とパイプオルガンが響いている


レイラは少し離れたところのイスに座り、子供達の讃美歌を真剣な眼差しで聴いている。


歌が終わると、1人の小さな少女がレイラに気づき嬉しそうに駆け寄ってきた


「レイラお姉ちゃーん!」


「久しぶり、元気にしてた?」


「うん!マリアね、お姉ちゃんが学校に行ってからすっごくお利口さんになったんだよ!」


いつもは凶暴でワガママなくせになんだか今のレイラはホントに聖母のような顔つきで女の子の話しを聞いてる姿に少しばかりドキッとしてしまった


ほかのチビちゃん達もレイラに気づいたのか、みんな嬉しそうにレイラのもとに駆け寄ってきた


すると、さっきパイプオルガンを弾いていたおばあちゃんシスターがレイラの元に近づいてくると優しい声で


「おかえり、レイラ長旅お疲れ様」


「ただいまシスターリカ」


「ただいまピィ!」


「フレイアもおかえりなさい、あら?そちらの男性は?」


「ホパはホッパーだルー!」


「お前が先に自己紹介してどうすんだよ、あの、始めまして俺レイラさんのクラスメイトのハヤシ・ユウマと申します」


「あーあの手紙に書いていた男の子ね」


「ち//ちょっと!シスター!余計なこと言わないで」


「秘密だったかしら?ごめんなさいね」


オホホとイタズラに笑らうシスター


「さぁ、二人ともお腹空いているでしょ?こちらにいらっしゃいご馳走を用意しましたよ」


俺達は食事をしにシスターリカの後をついて歩いた


「おいおい、なんだこの料理は!?」


「ヨダレが止まらんルー」


テーブルには肉や魚、大きなケーキまでもがズラリと並び俺とホッパーは思わずヨダレが垂れそうになる


「なにも、ここまでしなくていいのに」


「なにを言うのよ、自慢の娘が帰ってきたんだからここまでしないと神様にお叱りを受けるわ」


「レイラ…俺もう我慢できねぇ」


「わかったわよ、じゃあ手を合わせて」


「「「「いただきまーす」」」」


久しぶりのご馳走に俺とホッパーは口から食べ物が無くなるなんてないぐらいに、それはもう永遠と言わんばかりに食べ続けた


「ねぇねぇ、お兄ちゃん」


「にゃんだ?」


「お兄ちゃんってレイラお姉ちゃんの彼氏?」


ブゥゥー!!!口に含んでる食べ物を全て吹き出してしまった。


「ななな、そんなわけないだろ//」


「そそそそそ、そうよ!なに言うのよこの子は」


「だって、お姉ちゃん次帰ってくるときには結婚する相手を紹介するねって約束してくれたから」


「あれは冗談よそんなくだらないこといつまで覚えてんのよ//」


「じゃあお姉ちゃんの彼氏じゃないってこと?」


「そうよ!大体こんなさえない男が彼氏なんて絶対にお断り!」


「ふーんじゃあマリアの彼氏になって♪」


ブゥゥー!!またまた食べ物を吹き出してしまった


「ッゲホ、なに言い出すんだよ」


「だってお兄ちゃんカッコいいから」


こんな小さな子にカッコいいなんて言われてしまい、内心ちょっと嬉しいのを隠しレイラを見ると、どこが?と言ったような顔で俺を見る


「ユウマはモテモテだピィ」


「そうなのルー?」


「いつか修羅場になりそうだピィ、楽しみにしておこ」


そうフレイアは言うと、いちごをパクっと食べなにやらご満悦のようだ


最高の食事を終え、フゥーと一服していると、レイラがシスターに話しかける。


「シスターここが無くなるってホントなの?」


「えぇ、長い間この修道院は国のお慈悲でまかなえていたの、ですがここ最近国からこの修道院を立ち退くと言われてしまってね」


「それで、シスターは了承したの?」


「するわけないさ、ここには身寄りのない子供達も沢山いるしなによりこの国セレナヴェールにある唯一の礼拝堂だからね」


「だったら、アタシが国の偉いやつと直接話しをするわ!そのために帰ってきたんだから」


「ありがとうね、でも無駄だよここ数日人が変わったように話しも聞いてくれもしない」


「だけど、シスター!」


「今日はもうお休み、明日また考えればいい、私はもう寝るよお休み」


シスターリカは杖をつきながら、自分の部屋に戻っていったその後ろ姿は始めましての俺でもわかるほどに悲しい背中をしていた。


「さて、アタシはお皿洗いするからアンタはゆっくりしてて」


レイラの言葉に甘え、俺は荷物を部屋に起きに向かった


「なかなか綺麗だな、しかしレイラが修道院生まれなんてびっくりだ」


「しゅうどういん生まれ?」


ハテナマークで溢れかえっている顔のホッパーに説明をする。


「レイラには本当の親がいなんだよ、どういう経緯でここにきたのかは知らないけど、ここにいる子供達は全員親がいなくてここで育てられてるってこと」


「シスターリカはみんなの本当のママじゃないルー?」


「簡単に言うとそうだな、でもまぁ本当の親がいたとしてもその親がクズなら、みんなでこういうところで育ったほうが幸せなのかもな」


少し元いた世界の事を思い出した俺は黄昏れるようにホッパーに話しかける


話しかけるが……あいつがいない


「あれ?ホッパー?どこいった」


俺は部屋を出てホッパーを探す、するとホッパーは1枚の額縁に飾られた絵を見て、誰ルー?と指差してきた


「これ誰だろ?」


その絵は黒い角が生えており少し長髪で髪は茶色、鷹のような瞳をした青年が描かれてる


「この絵気になるの?」


「うわぁ!びっくりしたー脅かすなよ」


「そっちが悪いんでしょ、この絵ね3代魔法使いの1人イクノシア・シャドウレイヴよ」


「その名前って闇の魔法使いの?」


「そう、1000年前に世界の滅亡を企んだ、張本人コイツこの修道院生まれなの」


「じゃあこの国って」


「極悪人が育った国ってこと」


「じゃあ今もこの国はコイツを讃えてたりとか?」


「それはないんじゃない?アタシだって別にコイツのこと好きじゃないし、そりゃあ何人かは崇拝してる人はいるだろうけど」


レイラは俺にイクノシアのことを教えてくれた


イクノシアは生まれつき身体が弱く部屋から出れないほど病弱な子供だったそうだ、だが魔法の才能だけは誰よりもあったイクノシアは当時お世話をしてくれていたシスターの勧めで魔法使いになることを選んだそうだ、もちろん今みたいにエンチャントレルム魔法学校みたいな学校もなかった時代だから、全て独学でイクノシアは魔法を習得したそうだ


だが彼には一つ大きな問題があったそうだ、それは人を操り、苦しめ、支配する魔法、闇魔法を得意としていたこと


彼はその魔法で沢山の手下達を従え、当時最強と謳われていた部族竜人族を奴隷にし、この世界を自分のものにしようと企んでいた


そこで、イクノシアを止めるべくデューク・シルバークロウと剣崎小十郎という魔法使いがイクノシアを封印し脅威は無事おさまったというわけだ、だが完全に封印することが難しかった二人の魔法使いは、イクノシアの肉体を呪物としてあつかい世界各地に封印した


「じゃあ仮にバラバラに散らばった肉体を一か所に集め、イクノシアの魂を呼び覚ましたらまたアイツは復活するってこと?」


「そういうことになるわね、まぁそんな話し1000年前だしその間なーんも起きてないから、これから先もなんにもないと思うけどね」


「疑問に思うんだけど、どうしてここの修道院はイクノシアの絵なんて飾ってるんだろ」


「シスターから聞いた話しだけど、イクノシアって凄く優しくて面白い人だったんだって」


「ふーん、なんか後味が悪いというか、なんで闇の魔法使いになんてなったんだろうな?」


「自分にはそれしかなかったからじゃない?、きっと闇魔法以外の魔法が使えてたら違う未来だってあったはずよ、だけどそれしかできないから…」


レイラは下を向き、なにか言い出そうとしたがその場で言葉を止めた


「レイラ?」


「ほ、ほら!さっさと寝るわよ!明日は偉いやつにガツンと言ってやるんだから!」


そういいながら俺の背中を押し部屋に誘導しようとする。

 

突然、大きな揺れが俺達を襲った


「なに、地震!?」


「ホッパー!フレイア!机に隠れろ!」


揺れはかなり大きく、足に地がつかない感覚が襲う


すると揺れはピタリと止み、次の瞬間外から声が聞こえてきた


「あーテステス、音量これぐらいでいい?」


「バッチリです」


ゴブリンに拡声器の音量を確認するアリヤ 


「簡潔に伝える、ここの礼拝堂にある、封印されし呪物があると聞いたおとなしく従うなら誰も傷つけない、さぁいますぐ扉を開けて」


そう拡声器で死んだ魚の目をしながら、淡々と修道院に向って話している、アラビア風の服をきた髪型ショートカット赤いメッシュが入った少女が一方的に話を進めている。


「アイツ誰よ、何者」


「あの子は知らないけど、この前ジュリア先輩と戦ったときにいた子に似てる」


小窓から様子を眺めるユウマとレイラ


「二人とも、アイツよアイツが修道院を壊そうとしてるのよ」


シスターリカは恐怖に震えながら、ショートカットの女を指差している。


「アイツなにを欲しがってるの?呪物ってまさか」


「まだ伝えないでいいと思ったから言わなかったけど、ここには魔王イクノシアの呪物が封印されている箱が礼拝堂にあるの」


「じゃあアイツらはあれのためにここを壊そうとしてるわけ?」


「レイラ、外に出て戦おう!」


「ちょっとまってよ!いま外にでたら危ないわ、シスター、子供達を一か所に集めて」


シスターの部屋に集まった子供達、恐怖で震え涙を流す子もいる、レイラは部屋の隅に十字架を置いていくと祈りを捧げ呪文を唱える、すると白い結界のようなものが部屋を囲う、レイラは子供達に笑顔で


「この中にいれば、安全だからアタシがこの場所を守るからおとなしくここで待ってなさいよね」


「レイラお姉ちゃん行かないで!」


マリアはレイラの足にしがみつくと、グスグスと泣いてる、それに気づいたレイラはそっとマリアを抱きしめ


「大丈夫だから、アタシを誰だと思ってんの?」


「最強の魔法使い」


「そうでしょ?こんな敵1分で片付けてあげるわ!」


レイラはウィンクをすると、アタシに任せなさい!とだけ言い残し部屋を出ていった


「悪いわね、ユウマこんなゴタゴタに巻き込んじゃって」


「別にいいよ、俺もこの場所気に入ったし」


「だけど、彼氏にはしてあげないからね」


「別にいいですよー」


「それじゃ、いっちょやったりますか!」


「おう!」


[おまけ]


「ねぇ、フレイア本当にお兄ちゃんはレイラお姉ちゃんの彼氏じゃないの?」


「そうピィね〜、今はまだ違うピィ」


「今はってことはいつかはってこと!?」


「なんの話しルー?」


「レイラはユウマのこと好きだって話しピィ」


「ルー!?そうなのか!?」


「そんな驚くことピィ?」


「驚くルー!」


「遠征で男女2人絶対仮契約するピィ」


「それは無理な話しルー、だってもうジュリアと..」


「わぁぁぁ!ホッパーあっちにシスターの美味しいドーナツがあるぞー!食べに行こう!」


次回[第二十一話、祝福の焔]                                 


                            

                                                


                                      

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