[第十九話、安らぎとかYES癒されとか]


5月19日


ふわぁぁと大あくびをかまし、教室のドアをあけるなんだかクラスの視線がこの前と違う…


「お、おはよう」


言葉をつまらせながらもこちらを見てるクラスメイトに朝の挨拶をする。


「おはよう、怪我は大丈夫なのか?」


丸刈りのクラスメイトが俺の体調を気遣ってくれているので、俺は大丈夫だと答えるとそれを合図にワラワラとみんなが俺を囲みだした


「ミケロス君との試合カッコよかったよ!」


「ミケロス相手にあそこまで、できるなんて俺もなんか勇気もらった」


ヒーローインタビューさながらの囲みに俺は動揺しつつも、内心めちゃくちゃ嬉しかった


俺は1人ずつ質問や褒め言葉にすっかりドヤ顔で答えていると


「おい、ドアの前でたむろするな邪魔でしかたない」


散らばれと言わんばかりの表情でミケロスはクラスメイトをシッシッと払い除けていく、ユウマの前にピタッと止まり、指をユウマに突き刺すと


「今回は負けたけど、次は絶対に勝つ!」


と言って自分の机に座り、プイッとふてくされた顔で授業の準備を始める。


「すっかり有名人だね、ユウマ」


「おぉ!ジョーン!久しぶり、会いたかったぜ」


心の友ジョンとの久しぶりの再開に嬉しくなり、ついついハグを求めてしまった


「いきなりハグなんてやめてよー恥ずかしいじゃないか、退院おめでとう」


恥ずかしそうにしているジョンを見てさらに俺は強く抱きしめる。


俺達も席につき、授業の準備をしていると教室に入ってきたリンが俺を見つけるなり、少し嬉しそうな顔をして話しかけてきた。


「おはよう、身体もう大丈夫なの?」


「大丈夫だよ心配かけた」


「ほんとだよ、ミケロスと一緒に倒れるんだもんびっくりした」


リンと笑いあって話していると、ミシェルとレイラが2人で教室に入ってきた、ミシェルも俺を見つけるなり嬉しそうに駆け寄ってきてなにやらゴソゴソとカバンを物色しながら 


「ユウマ君おはよう、退院できてほんとによかった、あのこれよかったらお兄様のお見舞いに行ったときユウマ君にも渡そうと思ったんだけど目を覚ましてなかったから…よかったら食べて」


そう言って、渡してきてくれたのはお菓子の袋詰めだ、どれも美味しそうなお菓子ばかり……と思ったけどここにもひときわ存在感をはなつ、お菓子がいやがる…そう鼻水ジェリーだ..


やっぱりこの世界の住人の舌はオカシイ...


「ありがとな、美味しくいただくよ!鼻水ジェリー以外..」


俺は少し言葉を濁しながらも感謝をのべた


「レイラおはよう、ずっと看病してくれてありがとな」


「どういたしまして」


あれ?いつもなら、もっと誠意を見せて礼を言いなさい!とか言ってみせるのに今日はなんだか元気がないな…


ガラガラと教室のドアが開き、ホシノ先生が入ってくる


「皆さんおはようございます今日もいいお天気ね、あらユウマ君退院おめでとう」


「ありがとうございます」


にこやかにこちらを見てホシノ先生も俺の退院を祝ってくれたので、俺は軽く会釈をした。


授業開始のチャイムが鳴り、今日からまた俺の学園生活はスタートする。


先生が黒板に字を書きながら、説明してくれているが…流石に1週間休んだからか、なんにもわからねぇ..

        

俺は説明している内容をレイラにヒソヒソと小声で教えてもらうために話しかける


「レイラ、全然授業わかんないんですけど..ノートとか少し見せてくれませんか?」


俺の言葉に、はいっと素直にノートを貸してくれる、あれれ?今日やっぱこの子変だな...


人格変わった?なんかいつものレイラと違うから調子が狂う、だが素直に貸していただいたノートに俺は目を通しなんとか授業を乗り越えた


「やっと今日の授業終わったー…」


「お疲れ、僕今日なにもないからマジカラビアで一緒にラーメンでも食べにいかない?美味しいお店知ってるんだ!ユウマの退院祝いもかなえて、リンとレイラもどう?」


いつの間にか俺が入院してる間にケンザキさん呼びからリンと下の名前で呼ぶほどの仲になっていることに少し驚いたが、そんなことより久しぶりのみんなでの飯とこの世界にもラーメンがあるのに俺はワクワクしていた。


「うん、私も今日は調査団のほうもサンクチュアリの仕事もないから一緒に行く、レイラはどうする?」


「アタシぱーす」


そう言ってレイラはツインテールを揺らし教室を出ていった


「なぁ、今日のレイラ変じゃね?」


「今日っていうかここ2.3日前からあんな感じだよ」


「あいつが!?どうなってんだよ」


「そんなこと僕に言わないでよ、早くラーメン食べに行こうよ」


ジョンはラーメンが早く食べたいのか、話しを切り上げようとする。


「ごめん!俺も今日パス!2人で行ってきてくれじゃな!」


自分の口からこんな言葉が出るなんて思わなかった、看病してくれてた恩もあるけどそれよりいつもと違うレイラを放っておけなかった



まだ遠くに行ってないはず…俺はレイラを追いかけるために夢中で走った。


「あっ!いた」


職員室の前で誰かと話してる?あれはホシノ先生か

俺はレイラに追いつこうとさらにダッシュしたが、ホシノ先生と話し終えたのかレイラは角を曲がってしまった。


「先生!」


「元気そうね、でも廊下は走っちゃダメよ?」


「レイラとなに話してたんですか?」


「んー学校辞めるって言ってたけど..」


「なにぃぃ!」


先生の爆弾発言に驚き、俺はすぐさまレイラを追いかける


「あっ!ちょっとまって!んもう..冗談だったのに」


どこだ!どこに行った!思ったよりも足が早いのか俺が迷ってるのか知らんがどこに消えたんだよ


すると、向こうからフェイ先輩と金髪ロングストレートのルナ先輩が歩いてくる、俺はけわしい顔で二人に話しかけた


「あの!レイラ見ませんでした!」


「へ?見てへんなー、ルナ見た?」


「駅のほうにいった」


ルナ先輩はボソッと俺にレイラが歩いていった方向を指で指して教えてくれる。


「ありがとうございます!」


理由を聞き出そうとしてきたフェイ先輩、だがいまはそんなこと話してる余裕なんかない俺はさっさとその場を離れる。


全力で走っていくユウマをジーッと眺めフェイが一言口を開く 

 

「青春やな」


「青春...」


ホントのホントに学校辞めちまうなんて、なんで一言相談してくれなかったんだよ!


そんな事を考えながら、全速ダッシュで駅に向かう


「ハァハァ…退院してから、初日でこんだけ走るなんて俺ってなんてバカ..」


呼吸が乱れ、滝のような汗を拭い駅を見渡すとやっぱりレイラがいた


「レイラー!」


大声でいきなり名前を呼ばれ、ビクッと肩をすくめ辺りを見渡しようやく俺と目が合うと少し驚いた顔で


「こんなとこでなにしてんのよ!」


「それはこっちのセリフだ!どこ行くんだよ」


「どこでもいいでしょ、ほっといてよ」


すると、電車のアナウンスが流れる


---まもなくセレナヴェール行の列車が発進します---


「そろそろ行かなきゃ..じゃあね!」


レイラはアナウンスを聞き荷物を再度持ち直すと、少し寂しそうな目で俺を見つめ、駅に向かって歩き始める


「レイラ待ってくれ!」


急いで俺も切符を買い、レイラと同じ列車に乗り込んだ


「ギリギリ乗れた〜」


「なに勝手に乗り込んできてんのよ」


「学校辞めるってホントか?」


「はぁ?誰がそんなこと言ったのよ」


「ホシノ先生」


「辞めるわけないでしょ、バカじゃないの?」


そこでようやく気付いた俺はホシノ先生に騙されたんだと、レイラは肩を震わせてケラケラと笑っている。


「じゃあなんで列車に乗ったんだよ」


「故郷に帰るだけよ」


そう言うと、頬杖をつきまた心ここにあらずといった顔し窓から景色を眺める。


そして列車に揺られ俺はレイラの生まれ故郷に向かった。


 

--同時刻、ギルドオブキュラス--


「はいはいはい、今日のハート回収してきたコン」


雛音ヒナネが赤くてキラキラしたハートをズタ袋からバラバラと出し、[魔王様のための魔力はここ♡]と書いてある測りに乗せると今回、回収されたハートは50個ですと測りが喋りだしモヤモヤとした黒い塊が光る


「おかえりなさいませ、雛音さん」


「ただいまー結構ハート集まったんじゃない?」


そうポンポンと測りを軽く叩き、エヘンとドヤ顔する。


「早く魔王様にお会いしたいですわ」


そうクルクルと髪を指で巻き、ソファに腰掛けるダミアナ


「ねぇねぇ、ダミアナさん魔王様ってどんな方なの?」


「フフ、教えてさしあげますわ魔王様は美しく、冷酷でとてもお優しい方ですわ」


アラビア三姉妹の次女ナディアに魔王イクノシアのことを聞かれ嬉しそうに話しをする。


「そっかぁ!早く魔王様にお目にかかりたいな」


「みんな、見て」


いつも無口なアリヤが黒いモヤモヤを指差している。


するとモヤモヤが喋りだした


「ふわぁぁ〜よく寝た、ここどこだ?身体が動かんなぜ?」


「「魔王様!」」


もやもやは突然名前を呼ばれビクッとした


「もしや、お前達さきほどのオレの言葉きいていたのではないか?あくびをかまし、よく寝たなんて聞かれていたら魔王失格だ..」


なにやらブツブツと念仏のように独り言を唱えている、しばらくブツブツと言ったあと魔王は改めて話しだした


「ゔぅん!そこにいるのはダミアナと雛音か?」


「はい!そうでございますイクノシア様」


「ずっとお会いしたかったコン」


「グハハ、嬉し涙を流すほど我に会いたかったと言うのか!」


二人は「はい!」と涙を流し忠誠心を誓うために膝をつき祈るように黒い塊の前に頭を垂れた


続くようにアラビア三姉妹も同じように忠誠心を捧げる


「長き眠りから我は覚め!新たにこの世界を闇に覆い尽くすときがやってきた!」


イクノシアがそう言うとたちまち空は暗黒の雲に覆われ、雷が鳴り響く


「ところで、我の肉体は?」


「イクノシア様の肉体は世界各地にバラバラに封印されておりまして、わたくし達もつい最近封印から目覚めたばかりですのでまだ1つも見つかってはおりません」


「それにこの前も人々のピュアなハートを沢山奪おうとしたらサンクチュアリとかいうギルドに襲われてしまいそこからは静かに気配を消しながらでしハートを奪えないコン」


「困ったものだな..なにか手掛かりはあるのか?」


「お初にかかります、私はアラビア三姉妹の長女サミラと申します、私達のほうで調べた情報ですと1件イクノシア様の肉体が封印されている場所をみつけました」


「それはどこにある?」


「アリヤちゃん、説明して」


サミラの言葉に少し緊張しながらも前に出てきたアリヤは魔王にこう言った


「魔王様の生まれ故郷であるセレナヴェールにあります」


[おまけ]


「ペンドルトンぎゅー♡」


「やめてロン!」


「いいなぁ..オレっちも綺麗なお姉さんにぎゅーってされたいでござる」

 

「ふーん私じゃダメなんだ」


ジュリアに可愛がられているペンドルトンをうらめしそうに見つめるヤマトマルに対して冷ややかな目で見つめるリン


「そ、そんなことないっス!じゃなかったリン様が一番でござるけど…ござるけど…たまにはいいなぁーって」


「ペンドルトンってモチモチしてて気持ちいい、もっとぎゅーってさせてー♡」


「コラー!ペンドルトン!ジュリアをたぶらかすなんて許さないじょ!このこの」


ムニンはツンツンとペンドルトンの頭を何度も突く


「しょ、しょんなこと一度たりともしゅてないロン!」


「二人とも私のために喧嘩はやめてー」


「なにこの茶番劇..行くわよヤマトマル」


「はぁ~い、いいなぁ..オレっちもあの柔らかそうな完熟ピーチに包まれたいなぁ」


次回[第二十話、センチな世界観に浸ってみたいもの]                                           


                                                                   


                                       

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