[第十八話、うなれ!激闘漢の戦い]


5月11日


砂埃舞う広場、風が強く吹きあれ、雷雲が空を覆う


「ユ、ユウマー!」


涙を浮かべ駆け寄るホッパー  


「所詮はそんなものか…やはりサンクチュアリに相応しいのは、この俺だな」


ミケロスは、はぁぁ!と力強く杖に力を込めると上級魔法を唱える


『闇に沈む夜の帳よ、地の深淵にひそむ暗黒の力を我が手に集え。無限の虚無から甦りし冷徹なる炎よ、黒曜石の如きその冷酷な輝きを持ちて、我が意志に従い、災厄をもたらす力を持て!火の玉よ、冥界の影を纏い、燦然と輝く闇の火球となり、敵を飲み込み、灰に帰せよ。オブシディアン・ファイアボール』


クソ…俺の人生ここまでか..


遡ること14時間前


「我ら!野菜戦隊ベジタブルンジャー!!」


「ンジャー!」


お決まりのキメゼリフがテレビから流れホッパーも同じようにベジタブルンジャーのポーズをテレビに向かって元気にやっている


「ホッパー朝飯だぞ」


少し甘めの卵焼きに、この世界にも一応味噌という発酵食品があるみたいで葱と豆腐の味噌汁、ちょい型崩れした三角おにぎりを皿に盛り付け朝食にありつく


「あむあむ、んーユウマの卵焼きは世界一ルー♪」


「味噌汁も飲めよ、お前の嫌いな葱だけどな」


味噌汁に手を伸ばし飲もうとしたホッパーだがルーと沈み気味に鳴くとチラッとこちらを見てきた


「そんなんだとベジタブルンジャーになれないぞ」


「おネギは悪の組織だからいいルー」


「昨日の放送で悪の組織から寝返って仲間になったネギグリーンがいるじゃん」


してやったりと言ったような顔でニヤニヤと美味しそうに味噌汁をすするユウマ


うわーと目を瞑りガツガツと味噌汁を味わうこともなく気合いで葱を完食したホッパーにユウマは笑顔で


「偉いぞーさすがは俺の星獣だ」


「正義の味方だからできて当然だルー!」


ユウマに頭を撫でられエッヘンと腰に手を当てながらドヤ顔でポージングをするホッパーを見つめ今日の放課後、ミケロスとの決闘を考えていた。


(どうしても、戦わないといけないんだよな..アイツかなり本気だったし死ぬ気でいかないと多分殺される)


ユウマは授業をしていても、昼食の時間でも、昼休みだろうと心ここにあらずといったような表情でボーっとただ窓を眺めている。


「今日のユウマおかしくない?やっぱミケロスとの対決?」


「多分そうだと思う、こんなユウマ初めて見る」


ヒソヒソとユウマを見ながら話すレイラとリン


「お兄様、今日のユウマ君との戦いやっぱり…」


「やっぱりなんだ?お前はあの男につくのか?」


「そういうわけではなくて..」


「つい最近まで魔法が使えなかった、ただの一般人に俺が負けるわけもない、俺に逆らったこと後悔させてやる」


(お兄様、かなり本気だユウマ君頑張って)


ミシェルもただユウマを眺め祈ることしかできないでいた。


放課後になり、ユウマは重い足取りで広場に向かう戦力の差、自分がもし負けたら、逃げ出したいそんな悪いことばかりを考えながらも目的地に着くと、ユウマの情けない顔をみたミケロスは開口一番、皮肉をユウマにぶつけてきた。


「なんだそのみすぼらしい顔は?辞めたっていいんだぜ?ただしその場合はお前の負けになるがな、周りを見ろよお前の負けを見ようと大勢のギャラリーが集まってきてくれたんだ」


辺りをみると、2年や3年知らないクラスの1年までもが野次馬しに集まってきていた


(みんな、俺を笑うためにきた奴らか..)


ユウマはプレッシャーに押しつぶされそうになり、今すぐここから逃げ出したいそう思い始めもした


この決闘を審判してくれる、レイヴンが広場に現れ下を向いているユウマに近づき声をかけた


「なにをそんなに怖がっている?」


「やっぱ俺できません」


「何故?」


「俺は戦う力もないしつい最近まではただの一般人だったし、それに…俺..アイツと争いたくないです。」


「私が何故ミケロスではなく、お前を選んだかわかるか?」


「いえ、わかりません」


「お前はアイツには持っていない強さがある、ジュリアを引き戻してくれたときもそうだ、確かに落ち込みやすいところもあるが一度やると決めたら最後までやり通しどんな状況でも諦めないそんなところが気に入ってるからお前を選んだ、立ち向かうと決めたならその命尽きるまで前を向いて歩け」


レイヴンさんの言葉に俺はハッとさせられた、元いた世界では皆から違うと否定されいつの間にか努力することもやめ、ただ生きてるだけの人間だった俺がこの世界にきてもう一度人生をやり直したいそう思い今日この日まで俺になりに頑張ってきた


「いい目をしているそれでこそユウマだ、アイツは強いだが負けるな」


「はい!」


「では、これよりギルド、サンクチュアリ在籍をかけた戦いを始める!ルールは簡単意識を失ったほうが負け二人とも用意はいいな、初め!」


レイヴンさんの合図とほぼ同時にミケロスは俺に杖を向ける。


『ナイト・エクスプロージョン!!』


杖先から黒炎の球体がユウマ目掛け放たれる、しかしミケロスの魔法は避けられてしまう、グッと足に力をいれミケロスの間合いに入りこむと『スチールスマッシュ』と唱え鉄化したグローブでミケロスを殴る、あと少しで顔面にクリーンヒットのところでミケロスも細身の剣、エペのような形をした剣でユウマの攻撃を受け流した


拳と剣が激しくぶつかる音が空をに響く。


「エシャ!」


ミケロスの呼びかけにはい!と返事をするとユウマの左頭部を狙いギリリと弓を引き、『ダークファイアーアロー』と黒い炎をまとった矢がユウマに飛んできた。


 

「っうわ!あぶねぇ…!」


「一瞬でも俺に背を向けると死ぬぞ!」『リヴィテーション』


ただの訓練用の魔法にもかかわらず、ユウマに浮遊魔法を唱え軽々と小石を持ち上げるようにユウマを浮かす


その勢いのまま地面に叩きつけ、さらに『ナイト・エクスプロージョン』と連続で魔法を詠唱しユウマに火球をぶつけた


ミケロスのコンボをもろに食らったユウマは「があ

!」と声をあげ意識が飛びそうになる


ホッパーも主に加勢するために『ホッパーパンチ』をミケロスにくり出すが、ヒョイと避けられ強く蹴り飛ばされてしまう


小さな身体で受け身をとり、さらに勢いのまま殴りかかろうとするが目の前にエシャが立ちはだかり、黒炎をまとった矢をホッパー目掛け射抜く


 

地面に倒れているユウマを見るや嘲笑を浮かべ



「所詮はそんなものか…やはりサンクチュアリに相応しいのは、この俺だな灰になって死ね」


『闇に沈む夜の帳よ、地の深淵にひそむ暗黒の力を我が手に集え。無限の虚無から甦りし冷徹なる炎よ、黒曜石の如きその冷酷な輝きを持ちて、我が意志に従い、災厄をもたらす力を持て!火の玉よ、冥界の影を纏い、燦然と輝く闇の火球となり、敵を飲み込み、灰に帰せよ。オブシディアン・ファイアボール』


「ユ、ユウマー!」


エシャとの戦闘を放り投げ、地面に倒れているユウマに駆け寄るホッパー


クソ……身体が動かねぇ、俺の人生ここで終わりか


諦めよう、そう思ったとき人だかりの中から声が聞こえてくる。


「ユウマー!ナルシストでシスコン兄貴に、なに簡単にボコボコにされてんのよ!アンタここで負けたらアタシに半年間学食奢り続けなさいよー!」


声のするほうに視界をむけるとそこには、大きな声でレイラが叫んでる。


「さっさと立て!このバカぁ!!」


そう言われたって、体はもう限界みたいだ

なんだホッパーまで涙なんか流しながら走ってきてるじゃないか…そんなんだとパプリカレッドになれないぞ…


雄叫びを上げ今ある最大限の魔力で唱えた呪文をユウマにぶつけようと杖を振り下ろす


メラメラと燃え盛る黒い火球がユウマに当たる、広場は砂埃が舞い、爆風が吹き荒れ、ここまでの戦闘になるなんて予想もしていなかったのだろう外野からかすかに悲鳴が漏れる


「ミケロス様流石にやり過ぎかもにゅ..」


「安心しろ死なん程度には抑えたつもりだ、これで死んだらそこまでの奴...」


そんなバカな..そんな顔をしたミケロス、それもそのはず確かにユウマに直撃したはず、それなのに目の前には鉄の壁がそびえ立っていた


フラフラと立ってるのもやっとの状況でユウマは


「俺だって魔法使いなんだ、使える魔法は1つじゃねぇ、それに..」


ユウマのペンダントが光輝きだす、さっきまでの魔力とは全くといっていいほどに力が増幅しているのを感じた


「お前、まだそんな魔力が残っていたのか」


「お前が本気できてくれたんなら、俺だって本気でイかせてもらう!ホッパー力を貸してくれ!」


ルー!とユウマの足にピトっと手を引っ付け『ホッパーチャージ』と唱えほんの少しだけユウマの魔力を強化する。


目をキリっとさせ『鉄よ、敵を貫け!メタルスパイク!』地面にガツンと拳を突き出すと、多数の鋭い鉄の棘がミケロスに向かって次々と地面から現れ襲いかかってきた。避けきれる体力がないミケロスはそのまま、簡単にユウマの上級魔法を食らってしまう


ドサっと地面に倒れ、身動1つとらないと判断したレイヴンは手を上げ


「この勝負、ハヤシ・ユウマの勝利とする!」


その瞬間、ギルドのみんなが一斉に歓喜をあげ、壮大な拍手がユウマに送られる。


「やったルー」


「あぁ、ありがとなホッパー」


ホッパーの頭を撫でやっと終わった戦いに安堵したのかそのまま気を失ってしまった。



「リエル、ユウマの調子どないや?」


「まだ気持ちよさそうに眠ってるアル」


なんだか声が聞こえる…この話し方はフェイ先輩だなそれとあとは誰だ?


まだ少し頭痛がするがようやく意識を取り戻した俺はゆっくりと目をあける


ここ…どこだ?保健室?


「あっ」


最初に目があったのは淡い茶色と白が混じった子犬


「おはようございます」


俺はその子犬にとりあえず挨拶をした


「フェーイ、ユウマが起きたアル」


「ほんまか!おぉ!おはようさん」


「ここはどこですか?」


「ここは医学ギルドの病室やで、ウチは医学ギルドと掛け持ちしてるからこの子はリエル、ウチの星獣や」


よろしくアルとこちらを向き挨拶をしてくれると、慌ただしくどこかにいってしまった


「フェイさん..ミケロスは?」


「ミケロスの坊っちゃんなら一昨日退院したよ」


「一昨日?」


「あんたあれから、1週間寝てたんやで」


嘘だと思いベッドの横に置いてある電子の卓上カレンダーを見るとそこには本当に5月18日としっかり刻まれていた


「フェイさんがずっと看病を?」


「ウチ違うよ、もうすぐ来てくれるんとちゃうか?ちゃんとお礼言っときやー」


ほなねーとニコニコ笑顔で手を振り病室を出ていくフェイ先輩、しばらくするとドアが開きタオルと着替えを持ってきてくれたのは


「あっ」


「あっ、じゃないわよ!起きてたんなら一言声かけなさいよ!」


俺の顔を見るなり、豪快に頭を叩いてきたのはレイラだ


「いや、俺だっていま起きたところで..どした?下なんか向いて」


「なんにもないわよ」


プルプルと身体が揺れてる、鼻もすする音がするし、もしかして


「泣いてる?」


「うるさーい!」


余計なこと言うんじゃなかった..起きてすぐの病人にアッパーを食らわすなんて、恐ろしい奴


「すっごくすっごく心配したんだからね!もう起きないかもって思ったもん..」


「ごめん心配かけた」


両の目にいまにもこぼれそうな涙をためたレイラを見ると申し訳なくなってしまい、反省の意味をこめレイラの頭を優しく撫でた


「触るなぁぁ!」


やっぱ頭を撫でるの不正解だったみたいです。


ガサツにタオルと着替えをドンと起き病室を出ようとドアに手をかけるレイラ、チラッと頬を赤らめゴニョゴニョと歯切れが悪そうに


「元気そうならよかった...あと戦ってるアンタ見てちょっとだけ見直したし、カッコいいって思った」


「ちょっとまって、もう一回ちゃんときか..」


ビシャンとドアをあけ俺の話しを無視するように出ていってしまった、俺の勘違いじゃないなら確かにカッコいいった聞こえたような...


まぁ、とりあえず腹減ったし着替えて飯でも食うか


こうして、俺とミケロスの熱き漢の戦いは一応俺の勝ちということで決着がついた。 


[おまけ]


「ったく..なんでアタシがこんな変態のお世話なんなしないといけないわけ!?」


「まぁまぁそう言わんとアンタも医学ギルドに入ってるんやから、それぐらいはしてもらわなねー」


「だからって私がユウマの身体を拭く必要がどこにあるんですか?フェイさん」


「それはーウチに言われてもなー、ほなお楽しみにー」


ニヤニヤとカーテンを締めるフェイ


「ちょっと!なにニヤニヤしてんのよ!」


うぅぅ//なんでアタシなのよ〜あの合法ロリ後で覚えてなさいよ


ボタンを外しシャツを脱がす、そして濡れたタオルで身体を拭く


意外と筋肉あるのね、もっとブヨブヨかと思ったわ


手際よくズボンも脱がし少し薄目になりながら下半身を拭き始める


ほんと、最悪..コイツわざと寝てるとかないでしょうね..ん?なんか硬いのが腕に当たって..%$#@@# 


「いやー!!ユウマのエッチぃぃ!!」


次回[第十九話、安らぎとかYES癒されとか]                                                

      


     

  


   


                                                    

 

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