[第十七話、Opportunities are equal」

5月10日


本日の最終授業が終わったチャイムが鳴り、日直のミケロスが号令をかけるとホシノ先生はウキウキと足早に教室を出ていった。


「なんか、ホシノ先生嬉しそうだったな」


「彼氏でも出来たんじゃないのー?」


俺の言葉に小さな鏡で前髪を整え興味なさそうに答えるレイラ、席を立つとミーシャと街にあるオシャレなカフェにスイーツを食べに行ってくるからと目も合わさず手を振って教室を出ていく。


今日はサンクチュアリからの連絡もないし、帰ってゆっくりしようと身支度をしていると、ソスマから通知音がピコンと鳴る


画面を見るとレイヴンさんからのメッセージが映し出されていた


[頼みたい仕事があるすぐにサンクチュアリに来てくれ]と


 

「うぃーす、レイヴンさん来ましたよー仕事ってなんすか?」


扉を開けると円卓には俺から見て正面にレイヴンさんともう一人、茶髪のロングヘア、髪は綺麗に巻いている綺麗な女の人と白い羽、赤い尻尾、赤い髪というべきか小さなユニコーンのような星獣が茶髪ロングヘアお姉さんのお膝元でくつろいでいる。


なにやら会話をしていたようですぐに俺には気づかなかった二人


ようやく、レイヴンさんが俺に気づいたようで


「いきなり呼び出してすまない、ユウマだけはまだ紹介していなかったな」


「Hey!Hey!ボーイ、Youが噂のユウマね?よろしく私はローザ・パットンよ!それとこの子が…」


「星獣界で一番美しいティアと申すざます」


ローザさんは椅子から立ち上がると胸に手を当て、見た目とは裏腹に元気よく挨拶をしてくれた、同じく膝元から華麗に着地し赤く、綺麗な尻尾をユラユラさせポージングをとってくるローザさんの星獣ティア


呆気にとられている俺をレイヴンさんはハァ…とため息をすると


「ローザ、座ってくれユウマの口が開いたままだ」


「oops!それは失礼」


「ユウマもいつまでも口を開けてないで座れ」


「は!すみません、綺麗なお姉さんからは想像もつかない話し方でしたので」


「oh〜人を見た目で判断してはナッシングよ」


そんなつもりはないけども、流石にこれは予想できんだろう…


いつまでも要件が言えないと判断したレイヴンは咳払いをしユウマに話しかける。


「今日来てもらったのは、この資料を各ギルドや委員会に届けてきてほしくて呼んだんだ、私はこのあと単独でクエストに出なければいけなくてな、ローザに頼もうと思ったんだが…わかるだろ?では頼む」


そう言うと俺の返事も聞かずさっさと部屋から出ていってしまったレイヴンさん……


10秒ほどお互い顔を見合わせ、俺はとりあえず大量の資料を持ちローザさんに行きましょうかと声を掛けまずは魔法遺産調査団にむかった。


「ねぇ?ボーイ質問してもいいかしら?」


「なんですか?」


調査団に向かう道中ローザさんは俺の顔をジロジロと見つめ、なにか勘づいたかのように


「Youの魔力変わってるわね、身体に流れてる魔力が1つじゃないのよ…なにかこう2つ3つまるで、何人ものガールフレンドがいるような」


「ななな、何いってんスか!?ローザさんって変わった人ですよね〜」


ワタワタしながら両手で抱えている資料を落としそうになるユウマ


「私の勘違いかしら?だけど不思議な感覚なのは間違いないわ」


「他愛ない話しをしていたらあっという間に調査団につきましたね〜、先輩ドア開けてもらってもいいですか?」


仮契約を二人と交わしたなんてバレたらややこしくなると思った俺はなんとかローザ先輩の気を紛らわそうと話題を変えようと必死になった


「oops!すぐに開けるわね!お邪魔するわー!!」


ローザは大きな声で調査団の扉を開けた


足早でユウマの元に資料を取りにきてくれたルーシーが一言


「静かにしてください、今古代の魔法をしめした石絵を調査中なのです。」


「すみません、これレイヴンさんからの資料です。」


どうもと資料を受け取ると扉に手をやり、閉めようとするルーシーだが、ティアとホッパーの声が何故かギルドの中から聞こえてきた。


「まぁ!この石絵見事なザマス!」


「なにが描いてあるんだルー?」


「この絵は魔法の起源を示した絵でごわす。昔は今のような火魔法や水魔法みたいな魔法はなく、一人の魔法使いが色んな種類の魔法を使いこなせた時代を描いた絵でごわす。」


何故にごわす?とツッコミたくなるのは置いといて、甲羅に小さな羽があり青くて亀のような星獣がホッパーとティアにゆっくり言葉で説明をしている。


「エドワードの言う通り俺たちの祖先様はこの絵のように沢山の魔法を器用に使えたんだってさ、俺が器用に女の子を扱うみたいにね☆」


2匹にウィンクするレオ


「おーい、二人とも次行くぞー!」


「ユウマにローザ、どした?珍しい組み合わせで」


「Hey、プレイボーイ今日はこのボーイと一緒にキューティガールのレイヴンに仕事を頼まれたのよ」


「ユウマもご愁傷様なこった(笑)」


「そう言うなら代わってくださいよー」


「まぁ、せいぜいローザの子守頼むわ(笑)そうそう次魔術学研究所に向うなら傘用意しとけよ」


レオ先輩はいつもの如くキラースマイルを見せ、意味深な事を告げると扉を閉めた。


「ホッパー勝手に入ったらダメだろ」


「ごめんルー、でもティアが行こうって誘ってきたから」


「人のせいにするでザマスか!?そんなことだとベジタブルンジャーのパプリカレッドにはなれないザマスよ!」


「それはダメだルー」


なんだよそのベジタブルンジャーっていつもホッパーが見てる朝の戦隊モノのことか?あれベジタブルンジャーって言うんだ


「Me達、目的の地魔術学研究所に着いたわよ、私が扉開けるわね」


ローザさんはそう言うと、扉を開けてくれた手には傘を持って


レオ先輩の言ってることはどうやら正しかったみたいで扉を開けた瞬間、ドス黒い煙が部屋中に充満していて、火災報知器が反応し部屋は一瞬にして水が降り注いだ


すると奥の部屋から黒い物体が2つ出てきて部屋中を駆け巡っている。 

 

「んにゃゃゃ!濡れたちゃろー!」


「水は嫌いっちゃ言っとるやろ、あのメガネ女!何回やりよるったい!」


「みんなー大丈夫ー?ゲホゲホ」


この声はまた失敗したのかライラ先生…


「セレ、リーナさんこっちで拭いてあげるからこの部屋に避難して」


ずぶ濡れになりながら、黒い物体を抱きかかえ別の部屋に入っていく、同じギルドの先輩キースさん


「なんだぁ?お前ら、っゲホ、なにしにきた」


「相変わらずの惨劇ねシルベスターボーイ」


「シルベスターさん俺たちこの資料を渡しに来たんです」


「あっちに避難部屋があるからキースにでも渡してきてくれ、先生お前またやってくれたなー!」


シルベスターさんはさっきキースさんが入っていった部屋を指差し入るように指示してくれると、ライラ先生を怒りに奥の部屋に向かっていった。


「資料届けにまいりましたー」


俺の言葉に大きめのバスタオルとドライヤーで黒い物体を乾かしているキースさんがこちらに気づき、部屋に招いてくれた


黒い物体はどうやら黒猫だったみたいで、プルプルと身体を震わせていた


「ユウマにローザさんお疲れ様です、すみませんこんな状況なのでなにもお出しできませんが」


「キース!早く身体を乾かしてばい」


黄色い目、2つの尻尾、博多弁の黒猫がキースさんを呼ぶ 


「はーい、いま行きまーすリーナさんが呼んでるからまたね」


そう言うと引き続き乾かす作業に戻っていった


「ローザさん、あのリーナさんって呼ばれてるのも星獣ですか?」


「そうよ、シルベスターボーイの星獣ね、あの子だけ、さん呼びされてるのは他の星獣達よりもちょっぴり大人だからよ、ちなみにあっちにいる緑色の瞳をしてる黒猫はセレといってキースの星獣よ」


セレはこちらの話しに気づいたのか近寄ってきて


「リーナは大人じゃなくて老猫ちゃろ」


その言葉が聞こえたのかシャーと声を荒げ


「どの口がいっとると!?この小娘!」


にゃにゃにゃ!と猫同士の喧嘩がドタバタと開始するやいなや首を横に振り、まったくといった顔で止めに入るキースさん大変そうだな……ここも


研究所を後にし、やっと最後の園芸委員に俺達は向かった。


階段を上り長い通路を歩いてると左腕にむにゅっと柔らかな物があたり、ほのかなピーチティーの香りがするそして俺の耳元に甘い声で


「なにしてるの♡私の王子様♡」


振り向くとその距離30センチ!!声の正体はジュリア先輩だ


「せ、先輩近いですよ//」


「えー?ダメなの?」


ダメじゃないけど..先輩のやらかい夢と希望が俺の腕にむにゅむにゅと当たってる


「久しぶりじゃない?キューティピンクガール」


「ローザさん!お久しぶりです」


「ちゃんと登校するようになったのね」


「はい♡ユウマ君のおかげで」


「知ってるわよ、2人でこの間魔物をやつけたんでしょう?ナイスよ!」


「そうなんです♡それに私達ー」


「あわわ!先輩なんでここにいるんですか?」


「え?なんでってユウマ君見かけたからひっつきにきたんだよ♡」


あっぶねぇ..もうすこしで契約してることバレるとこだったぜ…


なんとかジュリア先輩をこの場から撒こうとローザさんに話しかけようとした瞬間、俺の右側から馴染みのある声が聴こえた


「ジュリア先輩にローザ先輩とユウマ?こんなところでなにしてるの?」


ひぃぃ!剣崎の凛だぁぁ!


「俺はただ、レイヴン先輩に頼まれてこの資料を」


「私はボーイと一緒に頼まれたのよ」


「私は、ユウマ君を見つけたから」


「それでどうしてこんな状況になってるの?ジュリア先輩ユウマが嫌がってますよ、離してください」


「嫌がってるようには見えないけどなー♡ねぇー♡」


「は、はい…」


「はぁ?ユウマ嫌なのなんなの?」


「違うこれには理由が」


「ユウマ君が嫌かどうかなんてリンちゃんに関係なくない?」


「大アリです!だって私達…」


「なんかさ!今日暑いよな!」


「な、なに?いきなり?」


「汗拭いたげるね♡」


さっきから冷や汗が止まらん…ジュリア先輩が拭いてくれてるこの状況がこんなにも嬉しくないなんて!リンの視線が怖い…


クソ..あっちで楽しそうに遊んでる星獣達に今すぐなりたい...


「ボーイを取り合うのはおやめなさい、ガール達」


「取り合ってません!私は!」


「そうですよ!ユウマ君と私は」


あぁもうダメだ...


すると、背後からまたしても新たな声が


「なんだこの気持ち悪い絵は」


皮肉たっぷりに感想を述べてきたのはいつも嫌みばかりのミケロスだ


「ハヤシ・ユウマ、お前はこんなことをするためにサンクチュアリに入ったのか?」


「ユウマ君、誰?この子?」


「ピンク髪のおばさんは黙ってろ、おいなんとか言えよ」


おばさんと言われ、よほどショックだったのかエーンと涙を流しダッシュで去っていくジュリア先輩


「お前をみてると虫唾が走るんだよ……なんの努力もしないでサンクチュアリに入りやがって..」


ミケロスのこんな顔初めてみたいつもは人をバカにするような顔しかしないのに、今の顔は完全に俺を殺そうとしてる目になっている


「なんとか言えよ?チヤホヤされて女とヤるためにサンクチュアリに入ったんならさっさと辞めちまえ」


俺の胸ぐらを掴み、いまにも殴りかかってきそうだ


「ち、ちょっと落ち着きなさい!ミケロス!」


「いや、いいんだリン」


「林間学習でのクソ教師の褒美が1年間学校の箒貸し出し許可なんてくだらん褒美のために俺は1位になったんじゃないんだよ、なんの評価もされてないお前らとくにユウマがサンクチュアリ入りできたことに俺は毎日毎日憎悪しか湧いてこない日々を送ってることに気づいてるか?」


「気づくわけないだろ、それに俺だって努力してないわけじゃない!」


「お前の努力なんかただのゴミなんだよ!俺の気持ちも知らないで、俺と勝負しろ勝ったほうがサンクチュアリに入る、それとも女の尻に隠れるか?」


「勝手に決めるな!俺だけの問題じゃ…」


「いいんじゃない?責任は私がとるわ」


ローザは2人の話しを聞き、ミケロスの提案を了承した。


「待ってください!ローザさん!レイヴンさんもいない状況でそんなこと決めてもいいんですか!?」


「愚問ねサムライガール、レイヴンもこの場に居合わせてたらきっと同じことを言うでしょう…」


「明日の放課後東の広場に来い、そこでお前をボコボコにしてやる」


「ボーイ達の熱き戦い痺れるわね、Opportunities are equal、機会は平等に」


こうして俺はミケロスとサンクチュアリ在籍をかけて戦うことになった。


[おまけ]


教えて!星獣のこと!


「皆様、星獣のこと知りたくないですかルー?ホパ知りたいルー!今日は専門家の方達に来てもらってるんだルー!」


「始めまして専門家のセレちゃろ」


「同じく星獣界1美しいティアザマス」


「リーナです、よろしくばい」


「エドワードと申すでごわす」


「さっそく星獣の説明してもらうルー!」


「「「「「チェーケラ」」」」」 


「まずはセレが説明するちゃろ、星獣は、魔法使いを支える存在として知られており、魔法使いにとって非常に重要なパートナーちゃろ。



星獣を初めて召喚する際には、次の呪文を唱える必要があるちゃろ:「星獣よ、我が前に現れ、その力を貸し給え。」この儀式により、星獣は魔法使いの前に姿を現し。2回目以降の召喚では、単に「来たれ◯◯」と唱えるだけで星獣を呼び出すことができるちゃろ。」



「お次はワタスィが説明するザマス星獣の姿は召喚者である魔法使いが選ぶことはできないザマス。彼らの魔力や魂の特質によって決まり。星獣は人型や動物型など、多様な姿をしてるザマス。


魔法使いが死亡するまたは魔力の源であるペンダントが完全に破壊されて魔力を全て失った場合、星獣も同じく消滅するザマス。そのため、魔法使いと星獣は一心同体の関係にあるザマス。」


「次はワシが説明するったい、星獣は魔法使いと一緒に戦ったり守ったりできるけん、基本的には戦闘力はあまり高くない。星獣は主にサポート役として機能し、魔法使いを補助するっちゃ。ただし、星獣が神獣に進化した場合、その力は飛躍的に増大して、魔法使いを上回るほどの戦闘能力を発揮することができるばい。」


「最後はおいどんが話すでごわす星獣は、魔力供給によって神獣へと進化することができるでごわす。神獣に進化した時、その力は圧倒的で、魔法使いの能力を飛躍的に高めるでごわす。神獣の力を得ることで、魔法使いはもっと強力な魔法を使えるようになり、神獣自身も強力な戦闘力を持つ存在となりますごわす。


星獣は、魔法使いにとって忠実な守護者であり、パートナーでごわす。彼らの存在は魔法使いの力を支え、時にはその命を守る重要な役割を果たし。星獣の力を最大限に引き出すためには、魔法使いとの絆が不可欠でごわす。」


「以上で星獣の説明は終わりちゃろ」


「4匹で説明する必要もないばい」


「まぁ、そう言うなでごわす」


「初登場からの分量は大いにこしたことはないザマスよ」   


[次回、第十八話、うなれ!激闘漢の戦い]      


                        


    


                                     

         


    


  

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