[第十六話、二人目はさすがに聞いてない]
「いい?ジュリアちゃん…」
聞き覚えのある声…誰?
「ママはね――あなたのことをおもっ――」
なんだママか…じゃあこれは…昔の記憶?
私の家はいわゆる母子家庭..幼いころ遊び人の父親が幼い私とママを捨てた。父親の借金を肩代わりしていたママは借金の返済と生きるために朝から晩まで働き続けた、そんな頑張ってる姿のママを見て私はいつかママを私の力で幸せにしたいとそう思うようになった。
そんなある日、私が中学に上がったすぐの頃学校から帰るとママと知らないおじさんが家にいた、今でも覚えてる幸せそうに指輪を見つめているママの顔を…
それからすぐ、ママは新しいパパと再婚したパパはその当時会社を経営していて、すぐに私達は新しい家に引っ越しママは仕事を辞めた、幸せそうなママの顔を見てるだけで私は幸せだった。今まで仕事ばっかりで誕生日も祝ってくれなかったけど、パパと結婚してからはお金にも気持ちにも余裕ができ、ママは私の誕生日にサプライズで旅行に連れていってくれた、2人だけの旅行だったけどそれが人生で一番の誕生日プレゼントだったなと今でも思う
けどそんな幸せな日々も長くは続かなかった…
パパの会社が倒産し、生きるのが嫌になるぐらいの借金をまた抱えることになった。
ママはまた働きに出た、だけどパパは働くこともせず家でバカみたいに昼間から酒を飲み生産性のない人間と化した。
中学2年の夏、学校のテスト期間ということもあり、昼前には家に帰宅した私は部屋で明日のテスト範囲を予習していた。
この日私の人生でもっとも屈辱的で今でも思い出すと吐き気がするほどの出来事が起きる。
「勉強か..偉いな..」
集中していた私はパパがノックもせず部屋に入ってきたパパに気づかず気持ち悪い声で私の耳元で囁いてきた声にビクッとし全身に鳥肌が立った
「な、なに?勝手に部屋に入らないでくれる?あっち行ってよ」
普通の人間ならそこで、ごめんって謝って出ていくはず、なのにアイツはいきなり私の頭を掴み、酷く罵声を浴びせそのまま私をベッドに放り投げた
察しがいい人ならこの時点で気づくでしょ?
そう、私は父親にレイプされたの初めての相手がコイツだったのも最悪だけど、たった一回レイプされただけのに私は妊娠してしまった。
私はアイツに酷いことをされたと助けを求めた、だけどママは私を信じず、まるでゴミを見るような目で「汚い女」「お前が誘惑した」と罵倒の日々、部屋から出してもらえず暴力なんて毎日毎日、正直死にたかった、それでもママを嫌いになれなかった
どうしたら、私を見てくれるだろう?どうしたら私にまた優しくしてくれるだろう
私は自分にできることを必死で探した、そんな時ママに勧められた学校がエンチャントレルムだった、魔法の才能が多少あった私に「ママに許してほしいなら楽させて」と涙ながらに訴えかけられた。
ママのそばから離れるのは寂しかったけど、ママのためならと思い私は入学しそこでさらに学校で一番のギルド、サンクチュアリに入りママを喜ばせようと思った私は血を吐くほど努力した、また優しいママに戻ってくれるなら!その想いだけで私は頑張ることができた
1年生の冬、私はサンクチュアリからスカウトを受けた、すごく嬉しかったこれでママの自慢の娘になれたと……
次の日、ママは死んだ原因はアイツとお金のことで揉め事になりアイツがママを滅多刺しにした、あんなに綺麗だったママの顔は原型がないほどに顔面穴だらけになっていた。
ママの死を境に私は頑張ることを辞めた、好きな人のために可愛くなろうと努力してる女の子の彼氏を奪い優越感に浸ったり、真面目に勉強してる人達を見下したり、ただ頑張ることから逃げ出したかった、だって努力ってバカみたいだもん。
走馬灯のようにママのことや昔のことを思い出すのって死にかけてるってことだよね?だったらそれでいいよ…もうそれで…
「―――い!ジュリ――んぱい!」
必死な呼びかけに目を覚ますと、そこにはずぶ濡れになっているユウマがこっちを見てジュリアの身体を揺さぶっている。
「よかった…やっと目が覚めた」
「ここは?街はどうなったの?」
「街はほとんど沈んでしまってます、ここは多分レストランかなにかの屋上です。」
身体をふらつかせながらもなんとか立ち上がると、数分前はまだ煌びやかな街の景色だったのかと疑いたくなるほどに水で溢れかえっていた。
「ジュリアー!目が覚めてよかったじょ〜」
びぇーんと声を上げ、抱きしめろと言わんばかりに身体をスリスリさせてくるムニンの頭を撫でながら
「心配かけてごめんね、もう大丈夫だから」
「先輩!2人でアイツを倒しましょう!そして一緒に帰りましょう!」
ユウマの力強い言葉が重いと感じたジュリアは
「今更なにを頑張れって言うのよ」
「え?」
「私のことなんかなんにも知らないくせに!死なせてよ!楽にさせてよ!」
その涙をみてユウマは手を握る。
「そうですね俺は先輩のことなにも知りません、人に言えない辛いことがあるのは俺も同じです、だったら言わせてください少なくとも俺やサンクチュアリのみんなはアナタのことを知りたいとおもってるしアナタのことが大好きです!だから一緒に帰るぞ!」
その言葉にジュリアは思った、私のことなんか誰も好きじゃないと思ってた、私に近づいてくる人は全員、嘘にまみれた瞳で私を見ているそんな風にしかかんじられなかったけど、この人だけは違うと。
「ユウマ君のこと信じてもいいの?」
「もちろん!嘘だったらその糸で首を切り落としてください!(笑)」
ユウマの無垢なその笑顔に顔を紅潮させ下を向く。
「ジュリア!危ない!」
突然のムニンの叫び、振り向くと巨大な戟がジュリアを突き刺そうとものすごいスピードで飛んできた
ムニンはシールドを展開しギリギリのところで攻撃を防いだ
すると巨大化したサハギンキングは笑いながら
「フハハハ!お前を殺しお前の魔力をいただく!おとなしく死ね!」
三叉戟の先から高圧水を3本噴射し襲い掛かってきた
「ここから先は通さないじょ!」とシールドを大きくし2人を守るために攻撃を耐えている。
「くそ、なんて攻撃これじゃあ身動がとれない..」
ジュリアはこの状況を打開するために必死で考えていた、ムニンのシールドはあともって数分もない、ここにいるのは自分とユウマだけ、これしかない…ジュリアは考えぬいた結果
「ユウマ君お願いがあるの」
「なんですか?」
「私と契約してほしい」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「今は待ってる余裕なんてない!お願い!アナタに迷惑はかけないから」
ジュリア先輩本気なのか?だけど俺はもう仮契約しちゃってるから、それは伝えないと
「あのですね、先輩俺実は…」
「いいから、ごちゃごちゃ言ってる場合じゃないの」
ジュリアはそう言うと、ユウマの手を握りしめ深く深呼吸すると2人の足元から魔法陣が現れた
「ほんとに待って!」
「そんなに嫌?」
「嫌じゃないけど」
そんなうるうるした目で見られると断りづらい..
「ムニンのシールドもそろそろヤバいだろうし、イクよ...」
グッと距離を縮め呪文を詠唱するジュリア
「我が魂と汝の魂を繋ぎ、共に歩む力を授けよ。この契約により、我らの魔力は一つとなり、限りなき力を発揮せん。」
「ユウマ君…キスする場所どこがいい?」
「ど…どこでもいいです..」
「なによそれ、こういう時は男らしくハッキリしてよ」
「そう言ってもですね、俺ほんとは…」
緊張しているのかユウマの大事な言葉を遮るように、目をつむり頬に優しくキスをする。
唇が頬に触れた瞬間魔法陣から光が溢れ、ユウマの体も光始める。
(先輩の魔力が身体に入ってくる、リンとはまた違う感じがして気持ちいい..)
「次、ユウマ君の番だよ...」
動揺してるのか、目がキョロキョロして全然こっちを見てくれない俺も頬でいいかな?そのほうが無難だよな
「じゃあイきますよ」
同じく頬に優しくキスをする
(魔力が身体に入ってくるのってこんなに気持ちいいんだ……そんなに魔力を注がれたら..)
「っん、ユウマ君の魔力が入ってくる、ホントにダメ…離れて..」
初めての経験だからか、離れようとする先輩をガッチリホールドし先輩の身体に俺の魔力を注ぐ。
身体をガクガクと小刻みに震えさせている先輩、ヤりすぎたかな...そんなことを考えていると数秒ほどで魔法陣は消え、これで契約完了...?したのか?だけど2人目の契約は無理なはずだよな..
気持ちを落ち着かせるように何度も深呼吸し、落ち着きを取り戻したジュリアは
「これでアイツを倒せる!ムニン!神獣に進化してアイツをやっつけちゃって!」
サハギンキングに指を差した後ジュリアは呪文を唱え始めた
『星獣ムニンよ我の力を使い神獣に進化せよ』
詠唱通り、ムニンの身体は光輝きだし肉眼では目視できないほどの光をはなっている
「なにをしたこの、売女がぁぁ!」
力を強めシールドを突き破りジュリアに水圧がむかってくる!
手をクロスし受け身をとる体制になり目をつむるジュリア、だがサハギンキングの水圧はジュリアには届かなかった
「き、貴様ー!」
「ジュリアには指一本触れさせないじょ」
ジュリアが目を開けると、さっきまでただのシールドだったはずなのに、何故かピンク色した電気がシールドを纏っている。
「貴方、ムニンなの?」
ジュリアが問うのも無理はない、さっきまで黒くて小さいカラスだったムニンが黒いコートのような物を纏い、背中には大きな黒い羽が生え、ピンク色したショートヘアの男の子の見た目をしている。
「これが神獣のすがた..」
ムニンの変わりように呆気にとられるユウマ
「ジュリアをイジメた罰だきっちり償ってもらうじょ!!」
ムニンは手に魔力を溜め、目にも止まらぬ速さでサハギンキングの背後に周り
『ハートライトニングストライク』と叫び手をかざすとハートの形をした稲妻が身体に打ち込まれ、絶叫をあげ砕け散ってしまった。
サハギンキングが消滅したと同時に、黒い雲が晴れていき光が徐々にさす
「あぁ、やっと終わった〜」
力が抜けたジュリアはフニャとその場に座り込んでしまう。
ムニンは駆け寄り、ジュリアの頭を撫でると優しい言葉をかけた
「ジュリアはこれからも僕が守るじょ」
「ありがとうでもその姿で、じょはちょっとダサいかな(笑)」
「これはクセだから仕方ないじょー!」
バシバシとジュリアの頭を叩いたあと、ぎゅっと抱きしめる。
「まっなにはともあれ、これで一件落着かな」
「おーい!ユウマー!」
声のするほうを向くとジョン達が手を振っている。
ジョンはシュタっと箒から降りてきて、ムニンの神獣姿を見ると
「ムニンが神獣になってる…神獣になってるということは…ユウマ!貴様ー!裏切ったなー!」
先を越されたと思ったジョンは俺の身体を激しく揺さぶってくる。
「アハハ..悪いなジョン君、お先に体験したわ」
「ムカつく〜!レイラやケンザキさんにこのこと言ってやるー!」
「それだけは勘弁してくれー!」
こうして俺は2人目の仮契約をしてしまい、無事に?初クエストは成功に終わった。
[おまけ]
「ムニンの神獣の姿めっちゃカッコよかったルー」
「当たり前だじょ!」
「これからも同じ契約者の星獣同士仲良くしてくれルー!」
「手を差し伸べて握手求めてきても僕は握手しないじょ!ジュリアは僕一人で守るんだじょ!」
「おい、ホッパー1つ質問させてくれ」
「どしたルー?ユウマも握手したいルーか?」
「お前なにも感じないのか?そのほら例えばリンとかヤマトマル見て」
「ルー?」
「いや、なにもない!忘れてくれほら握手だ!」
「ルー♪ルー♪」
どうやら星獣は契約した相手をこっちから紹介しなければわからないと見た。
そのほうが都合がいい、ホッパーに二股してることがバレたら一瞬にして学校中に広まる...
次回[第十七話、Opportunities are equal」
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