[第十四話、初回クエスト]


よぉ、俺っちはマジカラビアに住み着いてるスリのネズミだせぇい


なんでぇ、いきなり俺っちが話しだしたかって?

俺っちはこれから戦場に出向くのよ、それがここマジカラビアの裏通りに面してる


幽玄ユウゲンの隠れ道にある酒場『ダークエリクサー酒場』に今まさに足を踏み入れるところってわけさ今日はどんな食べ物が眠ってるか腕がな…!


「あらヤダ、汚いネズミを踏んでしまいましたわ」


さっきまで意気揚々と話してたネズミはあっけなくもあの赤いドレスを着たツインテールの女にブチュっと踏まれてしまった…世の中とは世知辛いものだ


女は鼻歌まじりで古い酒場のドアをあけ、コツコツと高いヒールを鳴らしながら酒場内を歩いている


酒場全体は酒と汗の匂いが充満しざわめきと怒声が絶えず、まるでいつ喧嘩が始まってもおかしくないような雰囲気が漂っている、カウンターでは、無愛想なバーテンダーが疲れた顔で注文を取り、荒くれ者たちがカードゲームをしながら怒号を飛ばし、拳を振り上げる姿も見られる。


テーブルの間を機嫌よくツインテールの先を指にクルクルと巻き付け鼻歌を歌い歩く女を、周りの人間達は気にも止めない


「イカサマしやがったなこんちくしょう!」


荒くれ者の男がひょろっとした男を投げ飛ばした、ひょろ男が投げ飛ばされた先にタイミング悪く女が近くを歩いており、女にぶつかってしまう


ひょろ男はすぐに立ち上がり女に手を差し伸べ


「大丈夫か?すまんな嬢ちゃん」


「いえ、お気になさらずに」


自慢の鎌で殺してやろうかと思ったがすぐに謝ってきたので、女はまた歩き出そうとしたとき


「おいおい嬢ちゃんよ、何すましてやがんだ?ここはガキが来るとこじゃねぇよ」


ひどく酔っているのか、ひょろ男を投げ飛ばした男は意味のわからない事を言い、うざ絡みをし始める


「なにかご用ですか」


「だぁから、お前のそのすぅかした態度が気に入らねんだよ」


「誰に話しかけているのかわかっておりまして?」


「お前に決まってるだろぉ!この…!」


男はなにかを言いかけようとしたが、言葉よりも先に男の首が床に落ち、ドクドクと血が首から大量に流れている。


「お酒の飲み過ぎは身体によくなくてよ、ゆっくりお休みなさい」


突然の出来事にさっきまでのガヤガヤとした空気は一瞬にして凍りついた空気に変わった


すると、2階から


「ひゃー、また派手にやったねダミアナ」


「女狐さん、お久しぶりですわ」


「もうみんな集まってるよ早く登ってくるコン」


オレンジ色した尻尾が4本、髪はボブ、身体は人間のようだが顔は狐のような顔した妖怪が柵に手をかけ、ダミアナに登ってくるように促した


ダミアナは、いまいきますわと笑顔で返すと後片付けもせず2階の部屋に入っていった


「遅いコン!完全に遅刻だコン!」


「すみませんわ、雛音ヒナネさん」


どうやら狐の女は雛音と言う名前らしい。


「この方達は?」


「オブキュラスの新しいメンバーで魔王様復活を望む人達だコン」


3人の女達がダミアナの前に来るとさっそく1人口を開き始め 

 

「よろしくお願いします、サミラと申します。」


えらく落ち着いた声で挨拶をしてくれたのはアラビア風の衣装を身にまとい、黒髪、長髪ストレート、毛先に緑のメッシュが入っている女性


「ウチはナディア!よろしくね!」


サミラとは対象的に元気よく挨拶をしてくれたのは同じくアラビア風の衣装を着ており、黒髪サイドポニーテールに毛先には黄色いメッシュが入っている


察するにあともう一人挨拶をしてくれる少女も含めるとこの人達は三姉妹なんだと理解したダミアナ


「よろしく…アリヤ…」


黒髪ミディアムボブ、毛先は赤色のメッシュ、2人より声のボリュームが小さいところを見ると人と話すのが苦手な印象を受ける。


「わたくしはダミアナと申します。」


「もちろん存じあげております。なにせ私達の憧れの人ですから」


「早く魔王様を蘇らして世界を破滅に導こうよ!」


「そう、焦らずとも直にそうなりますわ、雛音さん魔王様のご様子はどうですか?」


「まだまだ、封印がガチガチすぎて意識すらも呼び起こせないでいるコン」


「でしたら、まずは魔王様の意識から呼び起こすことに致しましょう」



――ギルド、サンクチュアリ――

 

「では、2年生のみんなから紹介する、新しいメンバーに自己紹介を」


レイヴンがそう言うと2年生と思われる人達の自己紹介が始まった。


「僕の名はルーシー・ノーザンライトです、魔法遺産調査団副隊長です、よろしくお願いします」


メガネをかけて髪は水色、ミディアムボブ、僕っ娘


「はじめまして俺はキース・ウッドロー、魔術学研究所、副隊長を務めてます。よろしく」


髪は茶髪でクセ毛なのか、チラホラ髪がハネている、お姉さんがメリファさんなのは羨ましすぎるぜコノヤロウ


「うちの名前はヤン・フェイ言います!怪我したらうちの医学ギルドにおいでや!すぐ治したるさかいな」


何故に関西弁?それに2年生と思えないほど幼く見える、髪はアッシュグレーのボブか


「ルナ・ドレイクよろしく」


なんて美人さんなんだ、長髪ブロンドヘア、モデルみたいな顔立ち…それでいてクールい、いかん俺の性癖にぶっ刺さる


そのままの流れで次は3年生が自己紹介をしてくれた。 


「園芸委員で委員長を務めています、あとはサンクチュアリの副リーダーもメリファ・ウッドローです、よろしくね」


こんなお姉ちゃんがほしかったランキング1位をアナタに捧げましょう!


「魔法遺産調査団、隊長レオ・デュークだ!よろしく☆」


改めて見てもカッコいいなこの人、レイラもリンも顔を赤くしてやがる、まったく正直ものだな!人間ってのは!


「魔術学研究者、隊長シルベスター・ボサムだよろしく、お前達に一言俺様の実験台になってくれるテスター募集中とだけ言っておこう」 


肩まである髪、毛先は紫、しかも俺様…この人なんか危険な匂いがする…


「3年生にもう一人ローザ・パットン、2年生にジュリア・ペシュールが本日欠席となっている」


ジュリア・ペシュールって俺とジョンが迷子になった時、助けてくれたガーターベルトの爆烈美人のお姉さん…


神様どうもありがとうございます、また巡り合わせてくださって。俺とあの人はきっと赤い糸で結ばれて……


「こいつ、いきなりヘラヘラしだして気持ち悪いんだけど」


「仕方ないよ、レイラあれは発作みたいなものだ」


引きつっているレイラの肩をポンと叩くジョン


「以上で自己紹介は終わりだ、皆時間を取らせてしまったな」


挨拶が終わりみんなは、各持ち場に戻って行った


「さて、これで終わりなんだが、他のギルドや委員会に入ってないのはユウマ、キミだけだ」


「え?リンもレイラもどっかに所属してんのか?」


「うん、アタシは医学ギルド」


「私の家系は代々魔法遺産調査団に所属してるからそこに」


「そこで、一番暇なキミにさっそくだが、仕事を頼みたい…」      



マジカラビアから5分ほど歩いた場所に位置する、夜の賑わいが絶えない歓楽街『スターリット・ウェイ』わかりやすく言うと歌舞伎町みたいな街を想像したほうが一番早いだろう。


何故俺はこんな煌びやかな街に来てるかと言うと、俺のサンクチュアリでの初仕事がこの街でジュリア先輩が夜な夜な遊び回っているとの噂


「なぁホッパー、どう考えても俺達浮いてるよな」


「キラキラして綺麗ルー☆」


「ダメだ…ホッパーにきいた俺がバカだった、早く先輩を見つけよう」


俺はメイン通りを歩きながら、先輩らしき人を探すためにキョロキョロと辺りを見渡している。


沢山の人がいるメイン通りを抜けさらにまっすぐ歩いていると、俺の視界に入ってきたのは横並びに沢山のラブホテルがズドーンと非リアの俺に大ダメージを与えてきた


「…っく、強烈な痛みだ…」


「ユウマ!ユウマ!建物の上にデッカイ船が乗ってるんだルー」


「ここから離れるぞ、俺のHPがもう持たない…」


そんなことを言いながらホテル通りを後にしようとしたとき、ホッパーが指さしていたホテルからジュリア先輩ときったねぇ太ったハゲジジイが腕を組んで出てきた。


「隠れるぞ!ホッパー!」


先輩にバレないように街路樹に隠れ、少しだけ顔を出し様子を伺った


「今日はありがとう、始めましてなのにリリカちゃんの『聖水』まで貰っちゃって、おじさん嬉しいよ♡」


「そんなのお安御用だよ♡そろそろ行かないと電車間に合わないんじゃない?」


「そ、そうだねまた連絡するね♡じゃあねー」


おじさんはジュリアに手を振ると小走りで駅に向かって行った


「もう出てきていいよ、ムニン」


「遅いじょ、ハラペコだじょ!」


「ごめんごめん(笑)」


ピンクのリボンを頭につけ、更にピンクのスカーフやピンク尽くしの黒カラスはクチバシでジュリア先輩の頭をツンツンしている、きっとあのカラス先輩の星獣なんだろうな。


「話しかけるなら、今だ…ホッパーはここで待ってっていなーい!」


前を向くといつの間にかジュリア先輩に話しかけていやがる!ジッとできないのか、あのカンガルーは!


「始めましてルー!」


「やーん♡可愛い♡どこからきたの?」


「気安く、僕のジュリアに話しかけるなじょ!」


「ユウマも一緒ルー、ユウマー!」


「ユウマって?」


クッソー俺から話しかけて、キミはあの時の…って運命の出会いのようにするつもりだったのに..

帰ったら覚えてろよ…


「ども、お久しぶりです先輩」


「だれ?」


ズコー!


だよな…覚えてるわけないよな


「入学式のとき校長室を案内していただいた」


「あー!あの時の!こんなところで偶然だね♡」


「じ、実は…」


俺はここまでの経緯を先輩に話した。


「そういうことかーわざわざ迎えに来てくれて、ありがとう、でもせっかく迎えに来てくれたところ悪いんだけど、帰るつもりないから」


「どうしてですか?2年の先輩からも聞きました、授業にも全然出てないって…そんなんじゃ退学になっちゃいますよ」


「退学か、それでもいいかなって思ってる。なんか頑張るとかダサいなって思って。」


「そんな、せっかく一緒のギルドになれたのに…」


「そういうことだから、じゃあね♡」


先輩はそう言って俺の顔も見ずにペンダントから箒を呼び出してさっそうと飛び闇の中に消えていってしまった。


俺のサンクチュアリでの初クエストまさかの失敗?


 

「おまけ」


「新しい1年生実力者ばかりみたいですね」


メガネをクイッとするルーシー


「せやなぁ、ケンザキの嬢ちゃんにレイラちゃん言う子も凄いんやろ?」


「俺の研究所に所属してるジョンもなかなか頭の切れるやつだよ、俺の副隊長の座も危ないぐらい…」


「あの子はどう思いますか?」


ルーシーの質問にたこ焼きをハフハフしながらフェイが答える


「あふ、あーあのユウマっちゅう子?なんかさえへん男やな、なんで選ばれたんやろか?」


「謎だけど、なんか不思議な人…」

 

疑問形のフェイに対し、ボソッと銃の手入れをしながらつぶやくルナ

 

「ルナがそう言うってことはなんか持ってる男なんやろうな!」


「これからが楽しみです、どれ僕もたこ焼き1つください……熱!」


「俺の副隊長の座が〜」                                                  


次回[第十五話、あぁ愛しの先輩]                                                      

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る