[第十二話、初めての経験だったのに♡]

アリの数は減ってはいるが、長期戦になっているせいかユウマ達の魔力も次第に無くなってきていた


「ハァ..ハァ..結構倒したけど..まだいるのかこのアリ」


「そう..みたい..私もあと2発撃てたら上等ってところ」


「しつこいルー」『ホッパーパンチ!』


フラフラになりながらも、アリにパンチをぶつけるホッパーだが魔力がそこを尽きているのかコツンと音がするだけでアリは微動だにしていない


アリの大群の背後からグラトニーペタルが待ってましたと言わんばかりに姿を現し触手を伸ばすと俺とリンを掴み宙に浮かせた


「なにすんだ!離せ」


「やだ、パンツ見えちゃう」


俺とリンは脚を掴まれ逆さにされてしまう、リンは突然の事に動揺しながらも下着が見えないようにスカートを両手で抑えている。


「ユウマ、リン今助けるんだルー!」


小さな身体でクソでかい魔物の足を必死に殴り続けるが、ハエを払うかのように脚でホッパー蹴り飛ばすと憎たらしくプシューと鳴きやがった


こんなときに嫌なことを考えるとつい当たってしまうのがフラグというものだ..


グラトニーペダルの蕾だと思っていた部分は口だったみたいで、俺達を食べようと触手を口に持っていき、俺達はあっけなくも口のなかに放り込まれてしまった


ご機嫌になったのか、軽い足取りで森の中に帰っていくグラトニーペタル


「待て...まだ戦えるんだルー...」




「ーーッパー..、ホッパー!」


誰かに呼ばれた気がしたホッパー気を失っていたのか目を開けると


「よかった目を覚ましたココ」


「うぅ..ユウマは..?」


「それはこっちのセリフッスよ!リン様達はどちらに行ったでござるか!?」


「ユウマ達は魔物に食べられて、ホパが助けようと戦ったけど負けてしまったルー..」


「大丈夫ココ、きっとユウマ達は無事ココ」


ホッパーは申し訳無さそうな表情でモナークに抱きかかえられ状況を皆に説明する。


「恐らくグラトニーペタルでしょうね、この近辺で凶暴な花の魔物は奴しかいませんから」


教頭のマーシャルが魔物の詳細を皆に説明する。 


「もし捕まったとしてもすぐに食べることはないでしょう、ホシノ先生は生徒達と私は教頭先生と手分けて探しましょう」


ソフィアの言葉に全員が「はい」と返事をし二手に別れユウマ達の捜索が始まった。



「フフフ♡探してますわね、先回りして二人の状況を見に行きましょう」


赤いドレスの少女はコウモリに化けると森の奥へと姿を消す。



どこかに頭でもぶつけたのか頭痛がする。

ここはどこだ?目を覚ますと体が粘液まみれになっていて、なんか臭い


重い体を起こし目を開けると辺りは真っ暗だった、「リン」と呼ぶが応答がない両腕を突き出すと確かにリンが目の前にいる


もしかして俺達まだアイツの中にいるのか?


「うぅーん..」


リンも同じく起きたみたいだ。


「え?ここどこ?」


「アイツの口の中だな」


「ベタベタする..」


「怪我はないか?」


リンの身体を触り怪我がないか確かめようと手を伸ばす。


「きゃあ!どこ触ってんのよ!」


むにゅっとリンのたわわな部分を触ってしまった、慌ててごめんと謝るが時すでに遅しリンの足が俺のジュニアにクリーンヒットする。


「おぉぉぉ、そこは良くないよ..」


「アナタが悪いんでしょ!そんなことより暗いと厄介ね」


リンは下級呪文『ルクス・クラリオ』と唱えると指先から小さな光が現れ辺りを照らしてくれた


ようやくお互いの顔を目視できる…って顔近!

思ったよりも近いリンの顔に予想以上にドキドキしてしまう、イカンイカン…黙っていると空気が重いなにか話さんと

  

「これいつ消化されるのかな?」


「そんなの知るわけないでしょ」


「俺が中から突き破ってみる!」『スチールスマッシュ』


呪文を唱え、口の中を突き破ろうとしたが思いのほか硬くビクともしない


「アハハ..ダメみたいだ、おわっと!」


魔物は中で俺達が動き出したのに気付いたのか激しく身体を揺らし始めた


俺達は口の中でもみくちゃにされ、しばらくの間激しい揺れに耐えようやく揺れが収まる。


「ご、ごめん上に乗っちゃってるねすぐ退けるね」


気づくとリンとの距離はほんのわずかなぐらいに迫っていて慌てて下がろうとするが


「あれ?後ろに下がれない」


「そんなことないって、あれ?ほんとだ..」


「しかもなんかさっきより周りがヌルヌルしてきてる」


確かにさっきより何故か空間が狭くなってヌルヌルしてきてるってこれ消化し始めたんじゃないんですか!?


「なにかここからでる作戦はないんですかね!ケンザキさん!」


「そんなこと私に言われたって、靴から煙が..」


リンの足元を見ると溶け始めてきたのか白くて細い煙が靴から出ている


「なにかなにか方法は!そうだ!」


なにかを閃いたのか、リンの表情が変わったが、すぐに顔が真っ赤になってしまった。


「どした?顔赤いぞ?なにを思いついたんだ?」


「ま..」


「ま?」


「魔力供給で魔力を増幅させればここから出れるんじゃないかと思って...」


あぁ、そうか魔力供給かでもそんなことより言いにくそうに、身体を動かしながら話してくれるせいで、俺のジュニアが刺激され、こんなときになんだが元気になりそうだからやめてほしい..


「それしかないなら、リンがいいならシよう」


「え?」


「ダメ?」


「嫌じゃないけど..」


「たった1年だし、リンならこれぐらいのピンチにならない限り必要なさそうだから大丈夫だろ」


「そういうことじゃないの!ただ..」


この悶えかた、お主もしや初めてだな..


「は、初めてなの..」


「別に口にしなかったらいいだろ?」


「そ、そうよねそれなら安心した」


もしかしてキスする予定だったの?


「じゃ、じゃあ始めるね」


俺の上にまたがった状態のまま、俺はリンの手を握りしめるとリンが契約の呪文を唱え始めた


「我が魂と汝の魂を繋ぎ、共に歩む力を授けよ。この契約により、我らの魔力は一つとなり、限りなき力を発揮せん。」


俺の背中に魔法陣がホワっと現れ、リンは頬を紅潮させ俺に質問してきた。


「ど、どこにキスすればいい?」


「ほっぺでいいよ」


軽く下を向き息が荒くなるのを感じた、俺はこの状況に少し、いやかなり興奮していた。


こんな死ぬかもしれない状況で最後にキスできるのがほっぺだなんて、あまりにも虚しすぎるできれば最後に口にムチュっとあわよくば大人のキスを...


こういうシーンでのあるある、捕食した生物が動いて間違えてキスをしてしまうそんな状況になってくれたら..


どんどんリンの顔が近づいてくる..

何故か突然、魔物が動きだしリンの体制が崩れ


「....んぅ//!」


完全に始まりました、キスです俺はリンのファーストキスを奪ってしまいました。


(誤ってキスしちゃった..待ってなんでこの人こんな濃厚なキスしてくるの!離れようにも、狭くて離れられない!でもこれが魔力供給なのね、気持ちいいってきいてたけど確かに気持ちいいかも...)


すると眩しいくらいの光に包まれる二人。



 

「レイラ!ホシノ先生!アイツじゃないですか!?」


「あの魔物よでかしたわジョン君、でも様子がおかしいわね..」


「なんか蕾の中から光が見えるわよ!」


フルフルと震えるグラトニーペタルの蕾の中から竜巻が巻き起こり、魔物は竜巻に巻き込まれ上空から落ちてきたときには見るも無残な姿になっていた。

 


「おーい!みんなー!」


ユウマがみんなに呼びかける。


「あっ!ユウマだ」


「ユウマー!ルー!ルー!」


「やめろってくすぐったい(笑)」


主人が戻ってきて嬉しいホッパーはユウマに抱きつくとペロペロと顔を舐め喜びを表した。 


「ねぇ、さっきの竜巻ってリンが出したの?」


レイラは驚くような顔で、リンに質問する。


もちろん仮契約したとは言えなかった2人は上手く誤魔化そうと話しを合わせようとした。


「そ、そうなの実は試しに上級魔法唱えてみたら上手く発動できて、きっと火事場の馬鹿力ってやつねそうよね!ユウマくん」


「お、おう!いやーリンさんがいなかったら危なかったなーありがとうな!」


「なんでさん呼び、くん呼びしてるの?なんか2人変だな」


怪しいと言わんばかりに目を細め二人を見るジョン


「二人とも無事だったのですね。」


「教頭先生..すみませんでした!」


「ケンザキさん、なにも謝ることはありません、よく切り抜けましたね。」


タイミングよく、校長と教頭がきてくれたおかげで仮契約をしたことはなんとか誤魔化せそうだ、ナイス!


「二人も戻ってきたし、戻ってカレー作りの続きをするわよー♪」


ホシノがおーっと手を挙げユウマ達もそれに続き手を挙げ、皆は会場に戻る。



「あーあーもうちょっとで魔法使いの新鮮なハートを頂けましたのにでもいいですわ、今度はこうはいきませんから、全てはあの方の復活の為に」


よほど今回の失敗に腹が立ったのか大きな木の上でピクシーの足を折りながら瞬きもせずユウマ達をジッと見つめる謎の少女



時間はとっくに制限時間を過ぎていたが

緊急事態ということもあって、今回は大幅に遅れての完成だったが各班なんとかカレーを作り終え審査が開かれた


「んー♡このカレー絶品ね。」


「ミシェルさんのチームが作ったカレーですね、これはお店に出せますよ。」


「フム、これは誠に美味です。」


3人はそれぞれ点数の書いたボードを掲げ


「先生が95、校長先生が97、教頭先生が99、凄いじゃない!高得点よ!」


流石ミシェルのいるチームだ、きっとあの子が全部調理したんだろうな、くぅ…彼女にほしい!


「兄様やりましたね」


「フン!当たり前だ」


続いて最後のチームは俺達だ絶対美味しいはずだなんていっても死闘を繰り広げたあとのカレーだからな


「「「いただきます」」」」


さっきまで笑顔だったはずの3人が口にカレーを含んだ瞬間、キャラなんて関係なしにブゥゥゥ!とカレーを全員吐き出した


「おい、嘘だろ..」


「僕達のカレーが吐かれるほどマズいだなんて」


「なにかの手違いよアタシ達も食べてみましょう」


「そうね」


「「「「あむ」」」」、ブゥゥゥー!


不味い不味すぎる、カレーをこんなに不味く作ったのは生まれて初めてだ..なにをどうやったらこんなに不味くなるのか知りたいほどに


結果はもちろん全員0点


結果今回の林間学習の優勝はミシェル、ミケロスチームの勝利となった


各自洗い物をして、全員の点呼が終わり

バスが出発する頃にはもう夜だった


「今回もなんか色々あったな」


独り言を言ってる俺に、リンが耳元に近づいてきて


「仮契約したことはみんなにはナイショね」


そうだ俺達は二人の秘密を作ってしまったんだ


神様これから、なんにも起きずに平和に過ごせますように。


バスの中皆が寝静まった後星獣達はヒソヒソとなにやら話しているご様子


「もしかしてホパの拾ってきたキノコがダメだったルー?」


「そんなこといったらワタシがレイラの鞄から勝手に出したドラゴンの火吹チョコかもピィ」


「オレっちの特製ユニコーンの体液でコーティングしたドライフルーツかもしれないでござる」


「ボクが入れたかぼちゃ腐ってたかもしれないココ」


そう犯人はコイツらだ


[おまけ]


「きゃーお野菜が勝手に動く」


「貸してみろ!こんなこともできないのかバカな妹め」


「兄様、お米を炊いてる土鍋から黒い煙が!」


「まったく、俺がやるどけ!」


「きゃーお皿を割ってしまいました」


「もういい、ミシェルは鍋でも混ぜていろ!」


テキパキと動くミケロスを同じ班のクラスメイトが


(以外にミケロス君のほうが頼もしいんだね..)


「フフ、兄様いつもありがとうございます。」


次回[第十三話、何でも屋実行部!?]


 

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