[第九話、初めての林間学習]


「おい、リン!あっちにゴブリンがいる!」


「いますぐ街から離れなさい!」


「ギギィ...」


ゴブリンはリンの言葉を無視し、リンに襲いかかかる


「くっ..!やるしかないのね、ユウマ下がってなさい。」


「お、おう頑張れよ」


ゴブリンに向かって走り出し。風が彼女の周りを纏い出す


『烈風』


リンは呪文を唱え風の刃を放つ


ゴブリンは一瞬にして真っ二つになったがすぐに別のゴブリンが襲いかかり、持っている棍棒で強く叩かれたリンは倒れてしまう


「ギギィギ!」ゴブリンが2発目の攻撃を繰り出すが、すばやく身をかわし、棍棒を避けた。


腰に下げている短刀で、ゴブリンに近づき。首元、目掛けて刃を横に振りゴブリンの首から血が吹き出した。


リンはゴブリンを次々と倒していくが、倒していく数よりも多くゴブリンが地下水路から湧き出てくる。数を減らそうと戦い続けているが、徐々に押され始めている。


「くそ!俺に手伝えることってないのか」


「若造!こっちへ」


声のするほうに視線を送ると、魔法具を売っているマーリンが小さく手招きをしている。


「なんすか、いま大事なところで」


「しぃー!こっちに気づかれたら面倒なことになる、お前さん武術は習ったことはあるか?」


「一応ボクシングやってました..」


「それならちょうどいい武器がある!これをやる!あの子と一緒にこの街を守ってくれ!」


「これって...」


魔法具の店主がユウマに渡してきたものは、黒いグローブのような形をしたナックルだった


「ありがとうございます!」


ユウマは走り出し、リンの元へと向った


(このままじゃ、数に負ける...ヤマトマルを呼ぶ魔力も、もう残ってない..せめてサンクチュアリがくるまで耐えないと)


「ギギ!」


一瞬のスキを見つけ棍棒を振り上げる、ゴブリン


「ヤバ!このままじゃ避けきれな...」


「おぉぉらぁ!!」


リンの視界には棍棒を持っているゴブリンに思いっきり殴りかかるユウマの姿、かなりの力で殴ったのだろう勢いよく吹き飛ぶゴブリン


「大丈夫か!?リン!」


「え?あ、ありがとう」



(ヤベェ..身体の震えが止まらん..下手したら死ぬかもしれないのがこんなに怖いなんて)


「ユウマ、ペンダントが光って...!」


「え?」


リンに言われ下を向くと俺のエーテルペントが光り輝いていて、それと同時に手に光がまとっているこれが魔法、なんだか不思議な感覚だ..


光が次第に失われる中、ユウマのナックルは徐々に銀色に輝き、鉄のように硬くなる。


「重!!」


いきなり鉄のグローブになったからなのか重すぎて腕が持ち上がらないユウマ


「手に集中して魔法をコントロールしてみて!」


「そんなこと言われたっていきなり、実戦で魔法を使えないなんて無理がある」


「危ない!ユウマ!」


ゴブリン達は一斉にユウマ目掛けて攻撃をしかける。


もはや俺の命はここまで……と思ったが

 

「フリーズスパイク!」


後ろから凛々しい女の人の声が聞こえたと同時に鋭利な氷柱ツララが複数、俺を通り過ぎゴブリン達の心臓にクリーンヒットした。


「もう大丈夫ですよ、二人とも後は僕に任せて。」


「あなたは..」


聞き覚えのある声、間違いないこの人ってあの時の委員長キャラの人だ


「ペンドルトン、いっきにあいつらを消し去りますよ」


「了解したロン!」『アイスペンブリザード』


黒い帽子とマントを着用している小さなペンギンの星獣が口をぷくっと膨らまし氷の冷気をゴブリン達に浴びせると、ドンドン動きが鈍くなっていくどうやら完全に固まるというよりは動きを制御する魔法のようだ


「いまロン」


ペンドルトンの合図に軽く頷きルーシーは水色の本を開くと魔力を溜め始め


(これだけのゴブリンをいっきに片付けるとなると上級魔法しか..だけど魔力供給してない状態での上級魔法は今のところ一回が限界、全員確実に仕留めないと僕がヤられる)


水色の魔法陣から輝きが増すと黒いスカートや髪がバサバサと動きそして大きな声で呪文を詠唱し始めた。


「氷の嵐よ、荒れ狂え!」『ブリザード・ストーム』


冷たい強風が吹き荒れ氷の粒が空中に舞い、ゴブリン達の周りはあっという間に吹雪に覆われ瞬く間にゴブリンは氷漬けになってしまった。


「す、すごい」


思わず声が漏れてしまうリン


かなりの魔力を使ったのかルーシーはその場でしゃがみこんでしまう。


「ルーシー、だいじょうぶかロン?」


「うん、平気ありがとうペンドルトン」


少しよろけながらも立ち上がりペンドルトンの頭を撫でながら 

 

「ペンドルトンもう周りにゴブリンの残党がいないか見回ってくれる?」


ペンドルトンはピシッと敬礼をすると周りの巡回を始めた。


「君たち大丈夫そうでよかった、改めて自己紹介します、僕の名前はルーシー・ノーザンライトよろしく」


僕っ娘のルーシー先輩が手を差し伸べ握手を求める。 



「ケンザキ・リンです」


「ハヤシ・ユウマです」


「なぜゴブリンが出現したのかわからないけど、ゴブリン達を食い止めてくれて助かったです。」


「おーい!ルーシー!無事か!?」


背後から男性の声がルーシーに心配そうに駆け寄ってくる。


「レオ先輩!問題ありません!無事ゴブリンを倒しました。」


「流石だな、よくやった」


笑顔でルーシーの頭を撫でる


イケメンはやることもイケメンだ、あんなん俺がしたら殴り飛ばされるぞ


「頭を撫でないで下さい!」


「すまん、ところでこの子達は?」


ルーシーがことの経緯をレオに話すと


「なるほど君たちも頑張ってくれたんだな、よくやってくれた自己紹介遅れたね、俺の名はレオ、レオ・デュークだ」


知ってますよ。チートキャラの人って覚えました


「後は俺達サンクチュアリでなんとかする、君たちは帰っていいよ、ご苦労様♪」


レオ先輩は俺達二人に労いの言葉をかけてくれるとルーシー先輩と足早に去っていった



 

「今日はなんか疲れた1日だったな。」


「ホント...だけど楽しかったあと、魔法使えるようになってよかったねおめでとう」


「これでようやく俺もみんなと一緒のスタートラインに立てたな!」


「フフ、まだ星獣を召喚できてないでしょ」


「そ、そっか(笑)それじゃあ!また明日」


「うん!また明日」


今日も色々とあった1日だったなー、なんかリンとの距離も心なしか近くなった気がする。帰って風呂でも入るか!


翌日

  

4月16日


「今日は皆さんに1週間後におこなわれる林間学習について説明します。」


「林間学習だって..」


「姉ちゃんが言ってたんだけどマジで地獄らしいよ」


クラスメイトがザワザワしている。


「はいはーい私語はそこまでにして、今から2日間共にする班を決めたいと思いますので皆さん前にきて1人ずつこの箱からクジを引いていってねー」


ぞろぞろとクラスメイト達が列をつくり番号が書いてある紙をドンドン引いていく。


最後に残った班は4班残り2人、6班残り4人そして残ってるメンツは俺、ジョン、レイラ、リン、ミケロス、ミーシャかマジで頼みます神様


「次、ユウマ君からよ〜」


「よし、行くぞ!」


気合を入れ箱に手を突っ込み、その勢いのまま紙に書いてある数字を確認するユウマ達


「お、6か」


「僕も6だ!」


「最悪……6」


「6」


「フン..4か」


「4だって」


各々が番号が書かれている紙を確認しリアクションを取る

 

「それでは各自班になってくださいねー」


「ジョーン!」


「ユウマー!」


「お前と一緒で俺は嬉しいよ〜」


「僕もだよユウマ〜」


「アタシは最悪だけどね」


「レイラもリンもよろしくな!」


「フーンだ!」


「よろしくね」


(あっぶねー!ミケロスの野郎と同じチームじゃなくてよかったー!ミーシャはミケロスと一緒か可哀想にあんな兄と一緒は大変だろうな)


「私ドジで失敗ばかりするけど一生懸命頑張ります。」


「よろしくね!ミーシャちゃん」


「お前ら俺の足を引っ張るようなことはするなよ!」


「兄様そんな言い方よくないです。」


(神様どうかお願いです、この林間学習何事なく楽しい思い出として終わらせて下さい。)


同時刻


--ギルド『サンクチュアリ』--


「これは...」


「鋭いねー流石レイヴン」


「これをどこで見つけたんだ、レオ」


「昨日、ルーシーとゴブリン被害にあったカラビアの地下水路に隠されていた、おそらくこれでゴブリンを召喚したんだろ。」


「闇のギルド『オブキュラス』が動き始めたか..」


[ミニコーナー]


「キャー♡レオ様待ってー!」


「毎日毎日、よく飽きないなあの子達」


「先輩こっちです!早く隠れて」


「キャー♡待って待ってー!あれ?レオ様は?」


「ふぅ...助かったよルーシーって、どうした?」


(あわわ..僕まで一緒にロッカーに入ってしまった...あぁ、ダメだ先輩の顔が近い、しかもこの中狭いから壁ドンみたいなシチュになってる!ホントに無理ですルーシー・ノーザンライト本日命日です。いままでありがとうございました)


「おい!ルーシー!返事をしてくれー!」


「なんかあのロッカーやたらとガタガタ動いてるロン、変なの」


次回[第十話、みんなで楽しい林間学習]

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