第5話

前回のあらすじ!!美容院に行くことになりました。

で、この状況。キラキラしすぎだろ。失明すんぞこれ。入る時に何しに来たんだこいつみたいな目でみられるんだ。あの場違い感が頭に浮かぶ。

せーのでいこう。そうだ僕たち陰キャは陽キャの時間をとってはいけないんだ。早く行かないと。

「せーの!」カランコロン

気まず。イメチェンしに来たやつみたいなってる。視線の暴力が痛い。


てか店員さん全員陽キャだよ...。陰キャはお呼びじゃないですね、すみません。

帰ろうとするとショートカットっぽい髪型の美人な女の人に話しかけられる。まじで女子の髪型多すぎて分からん。男子もだけど。長さとか基準わからんのよ。

「あのー11時ご予約の井上様ですか」

ぎこちなくうんとうなずく。いや、やべぇー。気まずすぎる。なにこの陽キャの権化みたいな人。もう無理嫌。帰りたい。ここで帰るとさらに目立つ。それがわかっているから帰れない。もう僕は陽キャの腹の中なんだ。

「私本日担当さらていただく、金沢です。よろしくお願いします。」

ものすごい優しい笑顔で話かけられる。僕はぺこりと頭を下げながら名刺を受けとる。これが陽キャの営業スマイルってやつか。

「髪型はどんなふうにされますか?」

髪型...。髪型ってなんだっけ、陽キャの人に話しかけられるとちょっと常識さえも真っ白になる。

「えっとーー」

僕の髪をさらさらと触り、店員さんが何やら向こうのほうにいく。

相変わらず髪質いいな。

「まだ決まっていないようでしたらこんな髪型はどうでしょうか。」

店員さんが本を渡す。

なんかよくわかんない単語ばっかり言われ説明をうける。

「な、なんか手入れが楽なやつってどれですかね。」

人生に一度しかない勇気を振り絞りまくり質問する。

「それならショートボブとかはどうですか?」

と言われ、本を見せられるが、もう僕の精神は結構どころじゃなく限界だった。

ほぼ見ずに頷いた。気まずい、早く帰りたい。気まずい、早く帰りたい。気まずい、早く帰りたい。あの安息の地マイルームへ。

そう思いながら、紙をチョキチョキ切られる。たまに店員さんから話しかけられるが、そこはコミュ障の見せ所。まじで会話続かない。気まずい...。陰キャにとっては地獄だよ。突き放すように暇つぶし用のタブレットを使い、ビーチューブをみる。


――――――――――――――――――――――――――――


「こんな髪型でよろしいでしょうか!」

ビーチューブで猫の癒し動画を見ていたら勢い良く話しかけられた。

鏡を見ると、そこには美少女。ちょっと叔母さん似の。

「えっとこんにちは。」目があったので挨拶をしてみる。返事はない。

「えっと、何してるんですか...?」店員さんが変な人を見るような目で見る。

「えっとこれが僕...。え、僕!?」もちもちな顔をペタペタと触る。

「え、僕っ子系美少女...?最高かよ。」自分の顔への驚きと小声で聞き取れなかった。

「えっと今なんていいm...鼻血出てますよ!大丈夫ですか!?」

「大丈夫だから...。っん!このアングル最高かよ...。」パシャパシャ。スマホで店員さんが写真を撮る。そうしていると、店員さんが椅子の足に引っかかり、バサッと僕の横に倒れかけた。

「あ、危ない!」僕が手を伸ばし支える。

「供給過多だよ...。僕っ子美少女に祝杯を...ふふふっ...」そういってとっても満足した顔で倒れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る