第6話 廃田スタリのポニーテールの中
学級会の翌週、文化祭へ向けて本格的にクラスが動き始めた。
朝、高校前の交差点で信号待ちをしていると、後ろから級長に声をかけられた。彼の名前は佐藤ハルトだが、役職名で級長と呼ばれている。
「よう、
「おはよう、級長。行けるよ」
「じゃあ
そこへクビキちゃんが割り込んできて、級長を見上げて抗議する。
「えっ、スターリーいるのに、あたしは呼ばれないの!?」
「スターリー? よくわからんが今日の買い出しは<背の高い組>なんだよ。長いレールを買いに行くんだ。すまんな」
ルーブ・ゴールドバーグ・マシンの一部を、教室のカーテンレールを利用して高い位置に設置しようとしている。そのために高身長の生徒でグループを作った。それが<背の高い組>。雑な名称だ。インターハイ予選を控えているバスケ部員は加わらなかったので、級長・
教室に入ると、もうすでに装置の製作が始まっていた。机上で作れる小さなパーツから取り掛かるらしい。力仕事の苦手な生徒が数名、手を動かしていた。
その中に
「
級長が声をかけると、彼女は申し訳なさそうにこう言った。
「すみません、私、放課後はほとんどお手伝いできないので、時間のある時にできることを、と思って……。もちろん、高い所の設置はがんばります!」
「おお、そうなのか。わかったよ。
そのやりとりを横で眺めていたクビキちゃんは、無表情でおもむろにスマートフォンを取り出し、静かに短くテキスト入力をする。
直後に
クビキちゃんは、
* * *
終礼後、買い出しに行くために昇降口で級長を待っていると、級長ではなくクビキちゃんがやってきた。
心なしかクビキちゃんのツインテールがしんなりと
クビキちゃんは元気のない口調で僕に話しかけてきた。
「ねえ、レイジ。今日のスターリーの髪型どう思った?」
「すごく似合ってたね。いつもよりかわいい」
「本気で言ってる?」
「本気だけど」
クビキちゃんは溜め息をついて、僕の認識を訂正してくる。
「あれ多分、おしゃれでやってるんじゃないよ」
「どういうこと?」
「スターリー、誰かに髪切られたの隠してる」
クビキちゃんがいうには、
「スターリー、大丈夫かな」
「今度クビキちゃんと
「放課後も土日もなかなか空いてないみたい」
「じゃあ、明日の昼ご飯いっしょに食べれば? クビキちゃん、いつも僕とばっかり食べてるから、たまには違う人とお昼行ってきなよ」
「そうだね、そうする!」
クビキちゃんはスマホでメッセージを打ち始める。たぶん相手は
そこに教室の掃除を終えた級長がやってきた。
「待たせたな、
級長は僕の横にクビキちゃんがいることに気付いて、そちらにも声をかけた。
「なんだ?
「あたしは部活! あ、ねえねえ、級長はアンケートのQ4、なんて答えた?」
「俺は『いいえ』だ。大学出たら、うちの道場を継ぐからな」
「そっか。意外と『いいえ』の人もいるんだね」
クビキちゃんは体育館へ行き、級長と僕はホームセンターへと向かう。
道すがら、級長の恋心を聞かされた。
「先に言っとくけど、俺さあ、
「だから級長は<背の高い組>を作ったのか。理解」
「違う! それは違う!」
「じゃあ、違うってことにしとく」
軽く笑った僕とは対照的に、級長の口ぶりは沈んている。
「なかなか
「がんばれ」
タイミング悪いなあ、級長。ついさっきクビキちゃんに、昼休みを
そして僕まで
彼女の髪を切ったのは誰だ? そしてなぜ?
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