第5章 向き合う時
「………広瀬。」
和士は広瀬の存在にきづいた。
「……なんでここに。」
「……結衣さん。」
シャーロットも広瀬の方を向いた。
二人は広瀬の叫びに足を止めた。
「……久しぶりね、和士君。」
広瀬は和士の目をジッと見つめた。
「……まさか、あなたとこんなところであえるなんてね。」
「……あぁ、あの日以来だな。」
和士は少し気まずそうに目を泳がせた。
「……うん、そうだね。」
広瀬はそう言い、俯いた。
「…和士君にお願いがあるの。」
「……お願い?」
「……シャーロットをこっちに引き渡して。」
広瀬はシャーロットを指さした。
「悪いがそれは出来ない。」
和士は率直に断った。
「…どうして、その子は残虐で悪い子なのよ⁉」
広瀬はそう言い、シャーロットを指さした。
「……関係なぇよ、そんなの。」
和士はシャーロットの前に出た。
「……どうしても。」
「……どうしてもだ。」
「………分かったなら。」
広瀬はポケットに手を入れ、ある物を取り出した。
「力づくで奪い取るまで!」
広瀬は魔法少女の変身アイテム『マジック・ブローチ』を上にかざした。
「ちょっ、結衣!」
「人前で変身は⁉」
城戸と恵は、広瀬をやろうとしていることに察し、止めようとしたときだった。
「変身!」
広瀬の叫びとともに『マジック・ブローチ』から光のオーラがあふれ出た、光のオーラは広瀬を包み込み、そして
「正義の魔法少女 ピュア・ピンキー参上!」
可愛いピンクの魔法少女、ピュア・ピンキーが現れた。
「なっ、マジか。」
「ピュア・ピンキーだったなんて。」
「人前で着替えるなんて、破廉恥だぞ。」バキッ
影崎に金的を蹴られた沢辺は失神した。
「……結衣。」
「あのバカ。」
城戸と恵は深く頭を抱えた。
「さぁ、私と勝負よ。」
ピュア・ピンキーは魔法で剣を出現させ、刃先を和士に向けた。
「……やっぱり、こうなるか。」
和士は一歩前に出た。
「……お前とはここで決着をつけないといけな。」
和士は腕を鳴らした時だった。
「ちょっと、まった~!」
突然、廊下に叫び声が聞こえた。
振り向いてみるとそこには
「…面白いことになっているじゃない。」
シャールが意地悪そうな笑みを浮かべてたっていた。
「シャールちゃん⁉」
「なんでここに⁉」
広瀬達は戸惑った。
「……っ。」
シャーロットは唇を噛み締めた。
「……こいつが例の。」
和士は強く拳を握りしめ、殺意の籠った眼差しを向けた。
「何の用だ。」
和士はシャールに向かって一歩前に出た。
「……ようって、決まっているじゃない。」
シャールはクスクスと嘲笑い
「その女を殺すためよ。」
シャーロットに殺意を向けた。
「さぁ、大人しくシャーロットを渡しなさい。」
シャールはそう言い、和士に詰め寄った。
「……そして、私の下僕となり忠誠を誓いなさい。」
高飛車な声で呟いた。
「悪いがそれは出来ない。」
和士はきっぱりと断った。
「俺はヤクザモンだからな。」
和はそう言い、シャールを威嚇した。
「はぁ、ヤクザ。」
シャールは噴き出した。
「社会から落ちたゴミが私に異議するなんて、いい度胸ね。」
シャールはゴミを見るような視線を和士に送った。
「ゴミ以下の奴に言われる筋合いはねぇよ。」
和士はそう言い、シャールを蔑んだ。
「口が悪いわね、あなた。」
「お前にだけはいわれたくねぇよ、アバズレ。」
「まぁ、いいわ、ヤクザ風情が魔法少女に勝てると思っているのかしら。」
シャールはピュア・プンキーの肩に手を乗せた。
「……大人しく渡した方が身のためよ。」
シャールは蔑んだ目で和士を見つめた。
「……その言葉、そっくりそのまま返してやる。」
和士はそう言い、ポケットからチェンジリングを取り出した。
「……大人しく手を引いた方が身のためだぞ。」
和士はチェンジリングを腕にはめ
「変身。」
リングから出る、光の帯が和士を包み込み
「……行くぞ、ピュア・ピンキー。」
和士は屑鉄仮面へと変身した。
「「「「……。」」」」
それを見た、ピュア・ピンキー達魔法少女組は驚愕し固まった。
「……うそ。」
「………屑鉄仮面。」
「和士君が………屑鉄仮面…………。」
ピュア・ピンキー達は戸惑いながら呟いた。
「……悪いが俺は手加減しねぇぞ。」
和士はそう言い、拳を握りしめ身構え
「死にてぇ、奴だけかかってこい!」
強く威勢を貼った。
「……上等じゃない。」
シャールは魔法を唱え、手から銃を召喚し握りしめた。
「……ヒーローモドキに本物の正義と言うのを見せてあげるは。」
シャールは銃口を屑鉄仮面に向けた。
「……さっさとこい、インチキ女。」
和士はシャールを挑発した。
「……始末しなさい!」
シャールの号令とともにピュア・ピンキーが屑鉄仮面にファイヤーボールを放った。
「……盾!」
右の前腕部の部分を盾に変形させ
ドン
ファイヤーボールを防いだ。
「……チャックメイトだな。」
シャールは拳銃の銃口をシャーロットに向けた。
嘲笑うかのような笑みを浮かべ、引き金を引いた。
「……させるか!」
屑鉄仮面はシャーロットの前に出て、防いだ。
「和士さん。」
「……シャーロット。」
屑鉄仮面は背中から煙幕を噴出し、目をくらました。
「引くぞ。」
屑鉄仮面はシャーロットをおんぶし
「……トランスチェンジ。」
屑鉄仮面は体を変形させ、バギーに変身した。
「……しっかり捕まれよ。」
バギーの運転席にシャーロットを乗せて、全力で廊下を爆走した。
「うぁぁぁぁ!」
シャーロットは悲鳴を上げながら、ハンドルを握りしめた。
「くっ、逃がすな追え!」
シャールはピュア・ピンキー達を引き連れて爆走するバギーを追った。
イナリ荘玄関口
外に出た、バギーは停車し
「……トランスチェンジ。」
バギーが変身し
「……場所を変えるぞ。」
バギーは赤いフォード マスタング シェルビーGT500へと変貌した。
フォワードマスタングの車内にシャーロットを乗せ、猛発進した。
「追うわよ。」
シャール達は魔法で背中に白い翼を生やし、空を飛び、屑鉄仮面を追いかけた。
千代田区
とある国道
フォワードマスタングこと屑鉄仮面は、猛スピードで国道を走っていた。
「追ってきてます。」
シャーロットは車の窓を見ながら、呟いた。
空を飛びながら、シャールとピュア・ピンキーが追ってきていた。
「……止まりなさい。」
ピュア・ピンキーが雷の魔法を屑鉄仮面に目掛けて打ってきた。
「くっ。」
屑鉄仮面は左に避けてかわした。
「死ねぇ!」
今度はシャールが拳銃を打ってきた。
「………よっと。」
屑鉄仮面はそれもあっさりとかわした。
「……いつまで、逃げるつもりなの。」
ピュア・ピンキーが文句を吐いた。
「ここで戦ったら、関係ない人を巻き込む。」
屑鉄仮面はそう言い、更にスピードを上げた。
「……カタギに迷惑をかけるつもりはない、どこか人のいない広い場所で戦う。」
そう言い、右に右折した。
「………あのくっ………和士さん。」
シャーロットが真顔で話しかけてきた。
「私にも戦わせてください。」
「………えっ。」
「………私このまま、逃げ続けたくありません、しっかりと決着をつけたいんです。」
シャーロットは熱のこもった目を和士に向けた。
「……分かった、一緒に戦おう。」
和士はシャーロットの覚悟を認め、受け入れた。
「…取り敢えず、広い場所を探そう。」
屑鉄仮面はボソリと呟くと、ナビを開き、広い場所を探した。
そして、指定した場所を見つけ、向かっていった。
逃走する、屑鉄仮面の後ろには
黒い車 車内
「……まったく、相変わらず派手にやっているな。」
「……ですね。」
城崎と壁島達、鉄火組が追っていた。
空中
「どこにいったのかしら。」
「分からないよ。」
魔法少女に変身した恵ことピュア・マリンとピュア・フレッシュこと城戸の二人が魔法で背中に翼をはやし、空を飛んでいた。
「……見つけて、加勢に行くわよ。」
「………えぇ、急ぎましょう。」
二人は辺りを見渡し、ピュア・ピンキー達を探した。
数時間後
港区立芝公園
港区にあるその公園は、東京タワーを囲むように作られた場所である。
その公園の芝生広場に屑鉄仮面が変身したフォワードマスタングが芝生のど真ん中で停車し、シャーロットを降ろした。
そこに二つの影が近づいてきた。
「どうやら、往生したようね。」
シャールは地面に降り、背中の翼が消えた。
「そうみたいですね。」
その後ろから、ピュア・ピンキーが降りてきた。
そして、シャールと同様に背中の翼が消えた。
「ここなら、広いし、大丈夫だろう。」
フォワードマスタングは変形し、屑鉄仮面へと戻った。
すると、今度は
「変身!」
シャーロットは魔法のブローチで魔法少女ピュア・ロイヤルに変身した。
真っ白でレースのかかったフワフワのウェディングドレスを着て、水色のウェーブのロングヘアをなびかせ、金色の美しい瞳でシャールとピュア・ピンキーを見つめた。
「どうやら、やる気の様ね。」
シャールはニヤリと悪い笑みを浮かべた
「シャーロットはシャールちゃんをお願い、和士君は私が。」
ピュア・ピンキーは屑鉄仮面の方に目を向けた。
「ふっ、まあいいは、引導を渡してあげなさい。」
シャールはそう言い、銃口をピュア・ロイヤルに向けた。
「あぁ、これで心置きなくやれるな。」
屑鉄仮面は拳を握りしめ、身構えた。
「はい、もう逃げません。」
ピュア・ロイヤルは魔法の剣を出現させ、握りしめた。
「行くよ、和士君。」
ピュア・ピンキー、も剣を魔法で召喚し、構えた。
「さぁ、戦闘開始だ!」
屑鉄仮面の宣言とともに、今ここで二人の命運を賭けた決闘が始まった。
「死ねぇ、屑鉄仮面!」
先に仕掛けてきたのはピュア・ピンキーだった。
屑鉄仮面目がけて、魔法の斬撃を放った。
「……甘い。」
屑鉄仮面は素早い身のこなしでかわした。
「今度はこっちの番だ。」
屑鉄仮面はそう言い、左腕をマシンガンに変形させた。
バババババ
銃口をピュア・ピンキーに目掛けて、連射した。
「シールド!」
ピュア・ピンキーが魔法のバリアを作りガードした。
「ファイヤーサイクロン!」
今度はピュア・ロイヤルがシャールに目掛けて、熱く燃える炎の槍を放った。
「させない、バリア!」
バリアを発動し、防いだ。
「ピュア・ピンキー!」
「分かった。」
ピュア・ピンキーは剣を振りかざし、ピュア・ロイヤルに目掛けて、向かってくる。
「……スパーキング!」
ピュア・ロイヤルは光の散弾を放った。
「マスター・ブレード!」
ピュア・ピンキーは剣を振り、直線の斬撃を放った。
斬撃はまっすぐにピュア・ロイヤルに向かってくる。
「ダイヤモン・ドシールド!」
ピュア・ロイヤルは光るシールドを張った。
バーン
シールドでピュア・ピンキーの斬撃を防いだ。
しかし、斬撃とぶつかると同時にシールドは砕けた。
「そこよ、ボルトマグナム!」
シャールはピュア・ロイヤルに銃口を向け、雷の弾丸を放った。
「危ない!」
屑鉄仮面がピュア・ロイヤルの前に出た。
「……くっ。」
屑鉄仮面は腕で手首を重ねガードした。
バリバリバリ
放電した電気は屑鉄仮面を襲った。
「………和士さん⁉」
心配し、ピュア・ロイヤルに声を掛けた。
「だっ、大丈夫だ!」
屑鉄仮面は歯を食いしばり堪えた。
「これで、最後よ!」
休む時間を与えず、ピュア・ピンキーは屑鉄仮面の真上に巨大な球体の炎を出現させた。
「……フレイム・ボール。」
ピュア・ピンキーの叫びと共に、巨大な炎の球体は屑鉄仮面に目掛けて、落ちて行く。
「シャーロット!」
ドン
屑鉄仮面はピュア・ロイヤルを突き飛ばした。
そして
バーン
屑鉄仮面にぶつかると同時に炎の球体は爆発し、爆風が響いた。
「……やったかしら。」
「いいえ、まだ、わかりません。」
二人は爆風を避けるために、魔法で翼を生やし、空を飛んで退避した。
やがて、爆風は収まり、周囲は砂ぼこりが立っていた。
「……どうやら、悪運がつきたようね。」
シャールは悪い笑みを浮かべた。
「そのようですね。」
ピュア・ピンキーはそう言い、爆発した場所に向かった。
「さすがの屑鉄仮面でも…………。」
「………なんだ、この程度からよ。」
ピュア・ピンキ―に言葉を屑鉄仮面に言葉が、砂ぼこりの中から聞こえてきた。
「えっ、生きてる!」
ピュア・ピンキーは戸惑った。
シャール「そんな、フレイム・ボールが効かないなんて⁉」
シャールは背筋がぞっとした。
「……俺も本気でやるぞ。」
やがて、砂ぼこりが晴れた場所には
「……イフリート・ナイト。」
屑鉄仮面は真っ赤な西洋の甲冑と兜を身に纏っていた。
「和士さん、すごい。」
ピュア・ロイヤルは目を輝かせた。
とある車道を走る車の車内
「なぁ、力也」
後部座席に座っている、城崎が運転席に座っている壁島に声を掛けた。
「はい、なんですか。」
「お前は、和士か魔法痴女、どっちが勝つと思う。」
この先はそう言い、キセルを吸った。
「俺は和士が勝つと思います。」
壁島は即答で答えた。
「どうしてだ?」
「はい、あいつの能力は協力だからです。」
「……適応変身能力か。」
城崎はそう呟き、煙をはいた。
「……えぇ、ありとあらゆる状況に環境、相手の能力に適応し、身体や能力を変換して戦う、チートすぎますよ。」
壁島はそう言いながら、ハンドルを切った。
「……そういや~、お前、和士との勝敗はどうだった。」
壁島はニヤリと笑った。
実は壁島は『アタナシア』の隠密諜報部隊の隊員で怪人である。
ちなみに矢島、天沢、多護も隊員である。
壁島力也は『長宗我部(ちょうそがべ)』という鋼鉄護衛怪人である。
ちなみにランキング順位は
怪人 長宗我部
ランキング評価
3位 頑丈そうな怪人
6位 打たれ強く強度が高い怪人
4位 しぶとくて厄介な怪人
16位 ヒーローの必殺技をくらっても大丈夫な怪人
14位 脇役そうな怪人
総合ランキング怪人 22位
評価は意外と悪くない。
更には、和士とこっそりと内緒で怪人に変身して、模擬戦を行った。
結果は57戦中 17勝40敗で壁島は負けていた。
「惨敗ですよ。」
壁島は少し苦笑いして言った。
「まぁ、あいつは喧嘩だけは強いからな」
城崎はそう言い、窓の景色を見上げた。
窓の景色には、港区立芝公園が見えてきた。
「着きました、親父!」
壁島は車を路肩に停車させた。
「おう、ご苦労だったな。」
城崎はそう言い、車のドアを開けて、公園に向かって歩いて行った。
「ふっ、久ぶりだな、喧嘩するのは。」
城崎はニヤリと笑みを浮かべ、腕を鳴らした。
城崎兵五郎こと万能対応怪人『龍狐』。
怪人名 龍狐
ランキング評価
1位 チートすぎる怪人
1位 ヒーローよりかっこいい怪人
1位 無敗の怪人
1位 別格の強さを持つ怪人
1位 人情がある怪人
総合ランキング怪人 2位
城崎「…さてと、行くか。」
城崎はそう呟くと公園の出入口に足を入れた。
城崎「…派手に暴れているな。」
城崎の耳に猛烈な爆発音が響いた。
その一方で、公園の奥では
「……はぁはぁ。」
「クソ、あの鉄くず野郎!」
ズタボロ姿のシャールとピュア・ピンキーが立ちすくんでいた。
そして、二人の前には、屑鉄仮面が二人に圧をかけるかのように立っていた。
「これでしまいだ。」
屑鉄仮面は手に持っていた、剣と盾を構えた。
「フレイム・アーマー!」
屑鉄仮面の身体が炎と高熱に包まれ燃えた。
「………ヒート・ブレイク。」
そして、剣から炎の斬撃を二人に向かって放った。
ドン
「きゃっ。」
「ぐはっ。」
斬撃をくらった、二人は弾き飛ばされ地面に倒れた。
「……勝負あったな。」
屑鉄仮面はそう言い、剣の刃に炎と熱気を集中させ渾身の一撃を二人に浴びせた。
バーン
斬撃の衝撃は強く、暴風並みの衝撃波が鳴り響いた。
「…ふぅ。」
屑鉄仮面は軽く深呼吸をした。
「…………。」
「……。」
シャールとピュア・ピンキーの二人は斬撃をくらい、屑鉄仮面が作った巨大なクレーターの中で失神していた。
「変身解除。」
隣にいたピュア・ロイヤルは変身を解除し、元の姿に戻った。
「終わりましたね。」
「………あぁ、そうだな。」
屑鉄仮面は通常フォームに戻り、クレーターの中を覗き込んだ。
「………じゃぁな広瀬。」
屑鉄仮面は失神したピュア・ピンキーを見た後、ボソリと言い残し背を向けて去ろうとした。
「……帰るぞ、シャーロット。」
シャーロットの手を引っ張って、帰ろうとした。
「おいおい、帰る場所もねぇのにカッコつけやがって。」
二人の前に城崎が立っていた。
「親っさん!」
「…………どうやら、終わったようだな。」
城崎はそう言い、屑鉄仮面の隣に立っているシャーロットの頭を撫でた。
「…それにしてもまた、派手にやらかしたな、和士。」
城崎はピュア・ピンキーとシャールが気絶しているクレーターを見つめた。
「………お騒がせして、面目ありません。」
屑鉄仮面は頭を下げて謝った。
「……気にすることじゃねぇよ。」
城崎はそう言い、軽く微笑んだ。
「……用も済んだことだし、約束通り盃をかわしてやるから、車になれ。」
「はい、分かりました。」
元気な声で返事をし
「……トランスチェンジ。」
屑鉄仮面は身体を赤いポルシェに変身した。
「乗って下さい。」
勝手にポルシェのドアが開いた。
「相変わらず便利な能力だな。」
城崎とシャーロットは車に乗って、鉄火組総本部へと向かった。
ちなみに、車で待っている壁島達は城崎が帰ってくるのを5時間も待って本部へとむかっていった。
その日、鉄火組に二人の優秀な子分が出来た。
翌日
和士とシャーロットが鉄火組に入った次の日の事、二人はいともたやすく、先輩である組員達と打ち解けていた。
鉄火組総本部
和士は仕事で旧家の軒下を箒で掃除をしていると
「……おい、日坂、車のワックスがけ終わったか。」
矢島が声を掛けてきた。
「はい、終わりました。」
和士は元気よく返事をした。
「そうかなら、それが終わったら、今度は書類整理を頼むから、事務所に来い。」
矢島はそう言い残すと、背を向けて去っていった。
一方その頃
旧家の廊下
「シャーロット、事務所の窓ふきは終わったか。」
中本が廊下の床を雑巾で拭いているシャーロットに声を掛けた。
「すみません、直ぐにやります。」
エプロンに身を包んだシャーロットは大急ぎでバケツの上で雑巾を絞った。
「……ゆっくりしろよ、慌ててやると汚れが残るからな。」
捨て台詞を吐くかのように注意し、その場を去っていった。
「はい、分かりました。」
シャーロットは汗を拭い、床に溜まっているほこりを拭き取った。
組事務所 事務室
「それで、あいつら真面目に仕事しているか。」
事務室のソファーに寝ころんで、テレビを見る城崎が向かいのソファーに座っている松人に声を掛けた。
「……はい、廊下にベランダ、玄関など手を抜かず綺麗に掃除しています。」
松人はメガネのフレームを上げて、かっこつけながら答えた。
「そうか、それならいい。」
城崎はそう言い、軽く微笑んだ。
「……そういやぁ、善治から何か報告はあったか。」
急に話題を変えてきた。
「はい、実は魔法少女のことでご相談が………。」
松人は深刻そうな顔で答えた。
「……なんでも、シャーロットにかけていたリバースとかいう洗脳魔法が解けたみたいです。」
「……ほう、それはつまり。」
「簡単に言うと洗脳が解けたということです。」
「……それはちょっとまずいな。」
城崎はそう言い、身体を起こし座った。
「えっ、まずい。」
松人は首を傾げた。
「……考えてもみろ、洗脳が解けたなら………。」
城崎が何か言おうとした時だった
ガラッ
「組長大変です!」
ボロボロ姿の綾部が慌てながら、事務室に入ってきた。
「どうした、順?」
「……あのへんな着ぐるみ達が正門の前に。」
順はそう言い、総本部の玄関口の方角を指さした。
鉄火組総本部の正門付近では、鉄火組の正門の門番をしている組員達とさっき刑務所を脱走したリコッタ達近衛部隊が揉めていた。
「いいから、中に入れるのじゃ!」
リコッタはそう言い、門番達に怒鳴った。
「ふざけんな、クソネズミ。」
「誰がお前らみたいな、変質者を入れるか!」
「コスプレがしたいなら、秋葉にでも行け!」
門番達はリコッタ達にツバを吐き、怒鳴り返した。
「入れろ、チンピラ野郎!」
バキッ
リコッタは門番の一人を殴りとばした。
「てめぇ、やりやがったな。」
ボキッ
それを見た、他の組員がリコッタを蹴った。
「やったな。」
リコッタは殴り返した。
「隊長に続け!」
「「おう!」」
他の隊員達がリコッタに続き、組員達に襲い掛かった。
「くっ、こっちも応援を呼べ。」
「了解!」
門番組員達は近衛部隊に対応するべく、増援を呼んだ。
「……死ねぇ、カスネズミ。」
「……それはこっちのセリフだ、刺青野郎。」
「……くたばれ、バカ犬。」
「……何をタンクトップ野郎!」
その後、矢島と壁島を筆頭とした鉄火組組員65人とリコッタの率いる近衛部隊12匹が正門の前で喧嘩が始まった。
そんな、騒ぎの中で一人の人物が歩み寄った。
黒い浴衣に身を包んだ白髪角刈りで腕を組んだ糸目の老人は鉄火組の副組長 陣川梅彦だった。
「おい、なんの騒ぎだ。」
陣川はズタボロの姿で地面に横になっている組員に声を掛けた。
「ふっ、副組長、大変です。」
「……どうしたんだ、ハロウィンの練習か?」
陣川は首を傾げた。
「いいえ、違います。」
組員は首を振った。
「……あのマスコット達が中に入れろと言うので、追い返そうとしたんですが、喧嘩を吹っかけてきて、抗争に。」
組員達は
分かりやすく説明した。
「ですが、めちゃくちゃ強くて……手を焼いて………いる………んです……うっ…。」
組員はそう言い残し、気絶した。
「はぁ、昼間にこんな、騒ぎを起こして。」
陣川はやれやれと肩を落とすと
「……仕方ないな。」
陣川は喧嘩をしている正門に歩み寄ると
ドンッ メキッ ボコッ
手刀で近衛部隊を数人失神させた。
「じっ、陣川さん⁉」
「どうして、ここに⁉」
矢島と壁島は戸惑った。
「おい、法治、力也!」
陣川は後ろにいる、壁島と矢島の方を向いた。
「さっさと追い返すぞ!」
陣川は指揮を取り、拳を身構え、また、近衛部隊に手刀を食らわした。
「……はい、すみません。」
「おい、お前ら陣川さんに続け!」
陣川に続くように、鉄火組の組員達は手刀、蹴りを近衛部隊にかました。
「こっ、これでもくらえ!」
焦ったリコッタは陣川達に手榴弾を投げつけた。
ドーン
「……一体なんだろう。」
事務所の窓ふきをしていたシャーロットは突然の爆発音に掃除の手を止めた。
「……おい、口を動かす暇があるなら、手を動かせ。」
天沢がシャーロットを叱った。
「すっ、すみません!」
シャーロットは慌てて、掃除に戻った。
「……まぁ、トイレ休憩くらいは目をつぶってやる。」
天沢はそう言い、シャーロットをフォローした。
「………俺も最初は便所掃除とかだったから、分からないことは俺に聞けよ。」
天沢は照れ臭そうに頬をかいた。
そして、組長室では
ドーン
組長室にも爆発音が鳴り響いた。
「何の騒ぎだ?」
「さぁ、また、矢島さん辺りが花火でもやっているんじゃないですか。」
城崎の命令で和士と城崎は将棋をやっていた。
「はい、王手っと。」
和士は将棋盤に音をたて、大きな一手をかました。
「おっ、やるな。」
城崎は眉間にしわを寄せた。
「……お前の手はキレがあっていいな。」カチ
城崎はそう呟くと将棋の駒を動かした。
ケーキ屋『アミューズ』
鉄火組総本部の向かいにある新しくできたケーキ屋さん『アミューズ』 表向きは洋菓子店だがその正体は魔法少女達の基地である。
「……今日も、大きな動きはありませんね。」
「えぇ、そうね。」
恵と城戸はこっそりと窓から鉄火組総本部を双眼鏡で監視し見張っていた。
「そういえば、シャールはどうなったの。」
「…確か刑務所送りになったって聞いたわ。」
城戸は壁にもたれ腕を組んだ。
昨日、シャールは屑鉄仮面にボコボコにされたせいで、『リバース』の魔法が解けてしまい、洗脳が消えたのだった。
そのせいで、目を覚ました広瀬達やリコッタ達は、本来の姫君は誰かを思い出したのだ。
そして、記憶を思い出すと同時にとてつもない罪悪感が広瀬達を襲った。
シャーロットに浴びせた、暴言に暴行、態度全て脳裏の奥にまであり、深く傷ついていた。
その傷は決して、簡単には消えないだろう。
「……ねぇ、結衣はどうしてるの?」
城戸は寂しそうな口調で呟いた。
「……結衣は病院で寝込んでいるよ。」
恵は苦しそうな口調で呟いた。
「……かなり、大きな傷を負ったみたいね。」
「……そうみたいだね。」
恵はそう言い、望遠鏡をのぞき込んだ。
「……和士くんはどうする、捕えるよういわれているけど。」
「…取り敢えず、彼の知り合いから聞き出そう。」
城戸はそう言い、ポケットからスマホを取り出し画面に映っている写真を見つめた。
「月村京志郎か。」
スマホの画面に映っている盗撮した月村の写真だった。
「おっ、リコッタさん達鉄火組の人達と喧嘩している。」
恵はそう言い、双眼鏡で見える近衛部隊と鉄火組の抗争に目を向けた。
「………なにやっているんだか。」
城戸は呆れて、肩を落とした。
夜、時刻は深夜10時の総本部の多目的室に複数の人影が集まっていた。
それも、鉄火組の幹部ばかりだった。
「……今日のイザコザはまずいんじゃないですか。」
月の光で照らされるスキンヘッドの男は、鉄火組の経理部長 冴島英輔である。
「俺もそう思います。」
綾部はそう言い、ボソリと囁いた。
「……情報だとあの着ぐるみ共、仲間を集めているらしいぞ。」
多護はそう言い、さっきスマホに送られた情報を見つめていた。
「これはまずいことになるな。」
矢島も頷き賛成した。
「このままでは、抗争は更に激化してしまいます。」
天沢はそう言い、メガネのフレームを上げた。
「どうします、陣川さん。」
中本は隣で岩に座っている陣川にふった。
陣川「速やかに排除するべきだ。」
陣川はそう言い、腕を組んだ。
「……今こそ、我々の力を見せつけるときなのだ。」
陣川は鋭い目で矢島達を見つめるのだった。
今ここにいる者達は、アタナシアの怪人達なのである。
冴島英輔こと鋼鉄野獣怪人『鎧熊』
総合ランキング怪人 18位
多護善治こと電撃鳥獣歌人『ラピッド・クロー』
総合ランキング怪人 13位
矢島法治こと完全武装怪人『アームズ・チェンジャー』
総合ランキング怪人 22位
綾部順こと火炎昆虫怪人『フレイム・ビートル』
総合ランキング怪人 26位
天沢松人こと水域支配怪人『ブルー・サーペント』
総合ランキング怪人 19位
中本常太こと建築支配怪人『城鬼』
総合ランキング怪人 15位
陣川梅彦こと吸血植物怪人『緋菫』
総合ランキング怪人 11位
全員評価が高かった。
「おい、何かっこつけてんだ、お前ら。」
あきれ顔をした城崎が多目的室にやってきた。
「そんなところでだべっている暇があるなら、さっさと寝ろ。」
城崎はそう言い、手に持っていた缶コーヒーを飲んだ。
そして、その一方で
鉄火組総本部 来客室
「……まったく、すごい本部だな。」
来客室にあるソファーに座った月村は周囲を見渡した。
月村の隣には松田と影崎が座っていた。
来客室は赤いジュウタンにレトロな家具などが置かれていた。
「鉄火組の総本部だから、当然だよ。」
和士はそう言い、月村達に缶コーヒーのお茶を差し出した。
「……それで俺に一匹なんのようだ。」
「……あぁ、実は………。」
月村は真剣な表情になり唇を動かした。
「……アタナシアからお前に復帰の話がきている。」
「……復帰か。」
和士は険しい表情になった。
「あぁ、昨日の魔法少女をやっつけたことが評価されて、復職しないかって話になったんだ。」
「………昨日の事が…。」
和士はボソリと呟いた。
「……復帰したら、前よりも上の役職で働けって言っている………願ってもない話だろう。」
月村はそう言い、お茶を飲んだ。
「やったな、和士、また、一緒に働けるな。」
月村は軽く微笑んだ。
「……悪いが少し考えさせてくれ。」
和士は頭を抱え込みながら、呟いた。
「……明日、返答する。」
「……そうか、分かったよ。」
月村はそう言い、立ち上がった。
「……しっかりと考えてくれ。」
松田と影崎を引き連れて、月村は部屋を出て行った。
「……復帰か。」
和士は深く深呼吸をし、天井を見上げた。
「…………考えとくよ。」
和士はそう言い、意地悪そうに微笑んだ。
翌日
鉄火組総本部の隣にあるケーキ屋『アミューズ』
今日も、城戸と恵が鉄火組を監視していた。
「今日も怪しい動きなしか。」
今日も城戸は窓に隠れて、双眼鏡で監視していた。
ちなみに恵は、リコッタ達の傷の手当をしていた。
控室
「イタタタ。」
包帯を巻かれてミイラになったリコッタは悲鳴を上げて暴れた。
「ちょっ、暴れないでください。」
恵は暴れるリコッタを取り押さえた。
「……おい、恵ちゃん、俺にも包帯を巻いてくれ。」
ソロは包帯を巻くよう、恵に命令した。
「ちょっ、自分でやって下さい、私は忙しいんですから。」
恵はきっぱりと断った。
今、控室には近衛部隊の半数が恵に包帯を巻かれミイラになって床に寝込んでいた。
理由は、昨日の鉄火組総本部の殴り込みである。
「………ところで恵、結衣の容態はどうだ。」
リコッタは改まって、恵に質問した。
「外傷は治りましたが、心の傷はまだです。」
恵は暗い顔を呟いた。
「まぁ、無理もないのじゃ。」
リコッタはそう言い、恵の肩に手を置いた。
「洗脳されていたとはいえ、俺達は姫様を傷つけたことにかわりはないのじゃ。」
リコッタは険しい口調で呟いた。
「……実はな、恵……俺は姫様を無事、王国にご帰還させたら、イングス公国を出て行こうと思うのじゃ。」
「えっ。」
「なっ。」
それを聞いた恵やソロは驚愕し、固まった。
「姫様を傷つけた責任は大きいのじゃ、だから、俺が全責任を取ってやめるのじゃ。」
リコッタは責任を感じているのか、覚悟を決めているようだ。
「……とにかく、今は姫様を助けることに専念するのじゃ。」
リコッタはそう言い、部屋のドアを開けて
「……俺にはもう、姫様に顔を合わすしかくなんてない。」
と言い残し、部屋を出て行った。
「……リコッタさん。」
恵は寂しそうな目で見送った。
「……感傷に浸っている場合か。」
バリアントが二人の頭を軽く小突いた。
「……はい。」
「すみません。」
二人は暗い表情で返事をした。
とある病院
病室の片隅にあるベッドで横になりながら、広瀬は氷りついていた。
戦友のシャーロットを傷つけ、更には好意を抱いていた和士を消そうとしたのだ。
その罪悪感は広瀬の心を深く縛り、苦しめた。
「……。」
呆然とした広瀬の思考は停止していたが
「……かず…し……くん。」
和士の名をボソリと呟いていた。
「……わた…し…どう…すれば…良かっ……たの………かな。」
ゴタゴタな言葉を呟いた時だった。
「……広瀬ちょっといいか。」
ソロが部屋に入ってきた。
「………ソロさん。」
広瀬は霞んだ声で呟いた。
「………あぁ、ちょっと、大事な案件だ。」
ソロは近くの椅子に座り、険しい顔をした。
そして、とうの和士はというと
歌舞鬼町にある高級中華料理店『爛漫(らんまん)』に
来ていた。
高級中華料理店『爛漫(らんまん)』の玄関口
「ふぅ、これでよしっと。」
『爛漫(らんまん)』でテイクアウトした中華料理弁当の入ったビニール袋を手に持って玄関から出てきた。
「……多護さんが食べるなんて以外だな。」
和士は独り言を呟きながら、総本部へと帰っていいこうとした時だった。
「日坂和士。」
誰かが自分の名を呼んだ。
つづく
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