104.教会に挨拶

 いやー、昨日は疲れた。

 魔物との戦いとは、違う疲労感があるな。


 俺は2時間程度だが、あれをアレックス君は毎日だもんな、飲食は大変だな。


 あの後、4人で遅めの夕食を取って今後の予定を話し合った。


 確か、目的の街までは乗合馬車で4日だから⋯⋯、往復で8日か。

 目的のイキリマクリタケとかいう、キノコがどれ位で採れるかだな。


 下手したら、1日滞在ですぐ帰る可能性もあるのか。

 鉱山都市の出稼ぎよりも、早く帰ることは出来そうだ。

 アナにもまた何か、お土産買う時間を作れるだろうか。

 その街を治めている、貴族の評判が良くないのも不安要素か⋯⋯。


 まぁ、それに関しては、ゲバルト派の力を借りれたから何とかなるか?もしかして、余計な問題起きたりしないよな?信じるぞ⋯⋯。


 アナにも、また暫くこの街を出て行くと伝えたし、アウラお嬢様に関しても、アナから伝えて貰える事になった。


 出発は明日の朝イチ。


 大体の準備は終わったから、アイリさんからイキリマクリタケの写しを貰いに行くかな。


 俺はシャロを引連れ宿屋を出た。


 ⋯⋯イキリマクリタケ。

 精力剤の材料という事で、今回依頼が来た訳だが。

 名前がストレート過ぎてな⋯⋯、もうちょっと、柔らかい名前に出来なかったのだろうか。


 ⋯⋯採れる量次第では、1つくらい拝借しとくか?

 いや、別にそれを使わないとダメな訳じゃないが、いつか使う日が来るかもしれないし⋯⋯。


 そんな邪な考えをしている内に、冒険者ギルドへと着いた。


「アイリさーん」

 シャロがテテテと、受け付けに居るアイリさんの元へと駆け寄る。


「2人共、おはようございます」

「おはようございます、アイリさん。例のキノコの写しを貰いに来ました」


「イキリマクリタケの写しですね。えーっと、この辺に⋯⋯、ありました。はい、どうぞ」


 一応ぼかしたんだが⋯⋯。

 受け付けだから、正確に物事を伝える必要が有るんだろうな。


 俺はアイリさんから、1枚の紙を受け取った。

 ふむふむ、コレがイキリマクリタケか。


 見た目は⋯⋯、モザイクが掛かっている。

 絵なのにな。

 うーん、どう見てもチン⋯⋯。だからモザイク込みで書かれてるのか?

 これだと見つけるの大変なんじゃ。


「あの、アイリさん。この絵だと分かりずらいんじゃ」

「いえいえ、その絵の物を探せばいいので大丈夫ですよ」


 うーん、もしかして見たらすぐわかる感じなのかな。

 アイリさんもこう言ってるし、素直に従うか。


「わかりました。では、明日の朝イチで出発しますね」

「ええ、気をつけて行ってきて下さいね」


 アイリさんに別れを告げ、冒険者ギルドを後にした。


 ◇


 さて、やる事も大体終わったな。

 宿屋に戻ろうかと思ったが、シャロがあることを言ってきた。


「そう言えばさー、一応教会に挨拶はしないでいいのー?」


 ⋯⋯教会に挨拶か。

 一応、ゲバルト派の首飾り借りるわけだし、挨拶くらいはしておいた方がいいか。

 行きたくねーなー。


 行くか⋯⋯。


 俺はシャロを引き連れ、教会へと向かった。


 ◇


 ドレスラードの街にある教会は、街壁の近くにあり、教会所属の孤児院が隣にある。


 ゲバルト派は、孤児を積極的に受け入れており、孤児院の運営にそれなりの力を入れている。


 運営費に関しては、ゲバルト派所属の神父やシスターが、冒険者としても活動しているので、そこから資金を得ている。


 それ以外でも、孤児院出身の大人達から資金援助などがあったりするので、割とゲバルト派は頭のおかしいだけの宗派では無い。


 それは分かる。

 孤児院を運営していて、魔物に親兄弟を殺された子を、引き取って育てている事も知っている。

 とても立派なおこないだと思う。


 この光景を見るとなぁ⋯⋯。


「「「「やあ!」」」」


 教会の横にある孤児院には、広場のような所もあり、そこに丸太が何本も地面に突き刺さっており、その丸太に向けて子供達が棒を叩きつけていた。


「その一撃に、魔物への恨みを込めなさい!」


「「「「はい!神父様!」」」」


 ゲバルト派の孤児院では、よく見る光景の様で。

 日や孤児達に、魔物を殺す術を教えているという。


 まぁ、中には家族を魔物に殺された子も居る訳だから、そこら辺の子供と比べても気合いの入り方が違う。


 魔物が普通にいる世界を生き延びる為には

 、これ位の事は当たり前なのかな⋯⋯。


 そんな光景を横目に、教会の扉を開けた。


 ◇


 扉を開くと、テレビ等で見た事のある風景が広がっていた。

 元の世界では、教会なんて行ったことがないので、どれくらい違いがあるのかなんて分からんが。


 入口付近から長椅子がいくつも置かれており。一番奥に、演説するのに使うような机が1つ、その横の壁沿いにはピアノが1つ。

 そしてさらに奥には、壁にステンドグラス、そして石像で出来た神様?の像が中央に置かれている。


「へー、中はこうなってるんだな」

 俺はそう呟いた。何度か前は通ったことはあるが、中に入ったことは無かった。


「あたしも久しぶりー」

「最後に来たのはいつなんだ?」


「えー?うーん?多分5歳とか?」

「それだけ期間が空いてたら、久しぶりではないだろ」


 シャロは5歳で、加護の有無を調べる行事から来ていないようだった。


 まあいいか。

 取り敢えず、お年を召したシスターさんが居るので、その人に声をかけることにした。


「あのー、お聞きしたいことがあるのですが」

「あら、どうされました?」


 おばあちゃんだが、腰も曲がっておらず、なにか独特な威圧感のあるシスターさんだ。

 俺は若干気圧されながら、マリアさんについて尋ねた。


「えーっと、マリアという名前のシスターさんは、いらっしゃいますか?」

 俺がそう言うと、シスターさんはジッと俺達の全身を見ると、こう告げた。


「貴方達が⋯⋯、マリアから話は伺っています。何でも私達の宗派の力を借りたいとか」


「はい、それで一応御挨拶に伺ったのですが⋯⋯」

「そうでしたか、あの子は幼少期より過酷な人生を送っている子なので、どうか仲良くしてあげてくださいね」


 ⋯⋯過酷な人生か。

 アナ程では無いだろうし、邪険にする気もないから問題ないな。俺は答える前にシャロが答えた。


「もちろーん!任せてくださーい」

「シャロもこう言ってますし。それに、それ位で付き合い変えるつもりは無いですよ」

 そう言ってから気付いたが、完全に仲間にする流れな言い方になったな。


「そうですか。いい仲間に出逢えたようですね。これも創造神様のお導きでしょう」


 シスターさんは手を胸の前で組み、祈りを捧げる仕草をした。


「あ、そうだ。マリアさんに、明日の朝イチに乗合馬車に来るよう、伝言をお願い出来ますか?」

「ええ、構いませんよ」


 引き受けてくれるみたいだ。良かった良かった。


「それでは、俺達はこれで失礼しますね」

「さようならー」


「ええ、さようなら。貴方たちに、創造神様のご加護がありますように⋯⋯」


 俺達は、教会を後にした。


「「「「キエエエアアアアアア!!」」」」

 孤児院から、打撃音と共に奇声が聞こえて来た。


 ⋯⋯うん、頑張れ。


 宿屋に戻って、早めに寝よ。


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