38.ダイアウルフとの戦闘
俺とアナスタシアは、氷のドームの中で昼食を取っていた。
かまくらみたいだな。
氷の中なのに寒さも全然ない。
魔法の氷ってこんな感じなのか⋯⋯。
ハンバーガーを食べながら氷を観察する。
そんな俺の様子を見ながら、アナスタシアもハンバーガーを頬張る。
「宿でも食べたけど、コレ美味しいね。」
唇の端にマヨネーズを付けながら、アナスタシアが絶賛する。
気合い入れて作った甲斐はあったな。
俺はハンカチを出し、唇の端の汚れをふき取ってあげる。
耳が少し赤くなっていた。
照れてるんだろうか、可愛い奴め。
食べ終わり少しの休憩を挟み、移動を再開する。
◇
「んー。あっちから4匹来るね」
アナスタシアが突然立ち止まり、ある方角を指差した。流石[
ランク、索敵も簡単にやってのけるのか。
剣を鞘から出し。
指刺した方角を見るが⋯⋯、わからん、音も全然しないし。疑う訳じゃないが本当に来る?
「ん?」
無言でチラッとアナスタシアの方を見るも、ニコニコと微笑みを返されるだけだった。
俺のレベルが低いから、分からないだけなのかな⋯⋯。
30秒程してガサガサと云う音がし始めた。
アナスタシアは相当広い範囲を索敵出来るのか⋯⋯。
音が大きくなり、現れたのは前回遭遇した狼の魔物だった。
マルコさんに教えて貰ったが、名前はダイアウルフと云うらしい。
そのダイアウルフが4匹現れた。
ダイアウルフは茂みから飛び出すも、直ぐには襲い掛かってこず、唸り声を上げながら身構えていた。
理由?アナスタシアさんが後ろから威圧感を出してるせいだ。
背中越しにビリビリ感じる。
正面に対しているダイアウルフは、もっと感じているだろう。
どうしよ⋯⋯。
睨み合いが続く。
ダイアウルフも動かない。
わかるぞー、獲物が居たと思ったら、バケモンが居た。みたいな感じだろう。
どうしたらいいか、分からなくなっているんだろうな。
俺もギルドの訓練所で、筋肉モリモリマッチョマン3人組と模擬戦をする時はそんな感じになる。
意味わからんのが何故か、1対1で始めたのに最後には3対1になってる事だ。
しかも俺が、ギリギリ対応できる位まで手加減してくれている。
訓練になるから良いが、割と絶望感有るんだよな。
明確に手加減してるのがわかるし、生かさず殺さずな感じがして生きた心地がしない。
⋯⋯そんな事は今はどうでもいい。
目の前のダイアウルフをどうするかだ。
試してみるか。
⋯⋯集中する。
魔法を使う際。
着弾地点だけを意識し、魔法陣を発動する位置の指定を視界の外に置く。
合っているか分からないが今はそれでやってみよう。
感覚だけでやるしかない。
4体か⋯⋯。
いけるか?4つ同時の発動。
いや、やってみせる。
眼前のダイアウルフ4匹の足元に4つの魔法陣をイメージする。
位置は大まかでいい。
当たりさえすれば良い、くらいの考えでいればいいだろう。
⋯⋯今だ。
「〈
発動するのは、今だという感覚を得た。
直ぐに呪文を唱え、魔法を発動させる。
4つの黒く輝く魔法陣が、ダイアウルフの足元に浮かび上がる。
直ぐに、黒く長い棘が魔法陣より飛び出す。
ダイアウルフは魔法陣が浮かび上がった時点で回避行動に出ていた為。
直撃が1匹。掠ったのが3匹という結果になった。
直撃を受けた1匹は腹から背中に棘貫通し、その場に縫い付け動かなくなった。
残りの3匹も、足に掠ったのが1匹、腹に1本刺さったのが1匹。
完全に回避できたのが1匹と、結果が分かれた。
⋯⋯出来た。
4つの魔法を発動させる事が出来た。最も同時に発動することは出来なかったが、順番に発動する事は出来たな。
フーっと一息つく。
何となくだが精神的な疲れだろうか?そんな感じの疲れを感じる。
ダイアウルフが明確な敵意を俺に向けて来た。
本番は此処からか。
剣を握る手に力を込め身構える。
「〈
突然ダイアウルフの周囲に、青い魔法陣が浮かび上がり、氷の鎖がダイアウルフ達に巻き付き、拘束した。
⋯⋯はい、そう云うパターンね。
集中するあまりに、アナスタシアが居るのを忘れていた。
4匹を俺1人で対処するものだと、決めつけてしまっていたな。
「フフフ。良いね、ソラ。すごく良いよ」
なんかテンション上がってるしぃ。
「1匹ずつ解放するから、対処お願いね」
「⋯⋯わかった」
アナスタシアは、残りの3匹を俺への訓練用と考えた様だ。
1対1なら問題なくいけるだろう。
俺は剣と盾を握る手に力を込める。
手を向けずに魔法を使うやり方を覚えた以上、左手はしっかりと盾を握っているべきだろう。
1匹の氷の鎖がバキンと砕けた。
ダイアウルフは一直線に突っ込んで来た。
口を大きく開き、鋭利な牙をギラつかせながら、迫り来る。
右手に握る剣を強く握り、ダイアウルフ目掛けて力強く1歩を踏み出し、大きく開かれた口目掛けて、剣を思いっきりに振りぬく。
刃が口を切り裂き、ダイアウルフを押し返す。
おお、すごい。切れ味が前の剣と段違いだ。
押し返され、地面に転がるダイアウルフは体勢を戻そうとする。
その隙を見逃すわけにはいかない。即座に呪文を唱える。
「〈
地面に黒く輝く魔法陣から無数の棘が飛び出し、ダイアウルフの体を貫き一度、大きく体をビクつかせ動かなくなった。
残り2匹。
「次行くねー」
バキンと氷の鎖が壊れ。残りの2匹が解き放たれる。
⋯⋯やってくれたな、こいやぁぁああ!
盾を目の前に構え、腰を落とし衝撃に備える。1匹は盾で防ぐとして、もう1匹はどうしたものか⋯⋯。
あ、エンチャントを試してみよう。唐突に思いついた。
手に入れたのが昨日の事だし、検証も何もしてないが、ぶっつけ本番でやるしかないな。
剣に魔力を込める。
刀身が黒く変色していき、光さえ呑み込むような漆黒へと変わって云った。
よし。正直どんな効果があるかわからんが、やってみるしかないか。
2匹のダイアウルフが迫り来る。
そのうちの1匹を盾で受け止め、突っ込んで来たもう1匹目掛けて、下からすくい上げる様に剣を振るう。
スパッとダイアウルフの顎から頭に掛けてを両断した。
返り血がベチャリと掛かったが、それ以上に驚いた。
⋯⋯!?。力を入れていたとは云え、あっさりと両断したことに驚いた。
流石に呆けている訳にはいかず、直ぐに最後の1匹の首目掛けて剣を振り下ろす。
これもあっさりと切り落とせた。
えぇ⋯⋯。なにこれぇ。エンチャントってこんなヤバイの?怖いんだけど。
あまりの切れ味にドン引きしている俺を、アナスタシアが労う。
「お疲れ様。これ位ならソラでも対処できるね」
「お、おう」
当然だが[
だからだろう、出来る事へのラインが大雑把なんだろうな。
対処する本人の実力を抜きにしても。
アナスタシア的に、俺の戦闘の評価はダイアウルフを4匹同時に、対処できる位のラインで設定された様だ。
それ貴方の手助け有りで、倒したんですよ?
とは言え、今回の戦闘で新しい魔法の使い方や、エンチャントの効果が少しわかった気がする。
⋯⋯エンチャントについては要検証だな。
ダイアウルフの死骸を〈
「それじゃあ。先に進もうか」
「⋯⋯そうだな」
俺達は先を進むべく歩みを進めた。
余談だが。
俺はこの後ひどい目に合う事になる。
タスケテ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます