35.アナスタシアと密着馬車移動

 ゴーンっと鐘の音が鳴る。


 今日は、朝の鐘の音よりも早く起きる事が出来ていた。

 何故なら今日からアナスタシアと2人で2-3日過ごすからだ。

テンションが上がるのは仕方がない、俺も男の子だ。

 身支度を整えた俺はドアを開ける。

丁度シャロが鼻歌を歌いながら階段を上ってくる最中だった。


「ふんふ~ん♪あれ、ソラ起きてたの?」

「ああ、今日はアナスタシアと依頼に行くからな」


「あたしは留守番だから、お土産宜しくね~」

「⋯⋯何をお土産にしたらいいんだ?」


「なんか⋯⋯。良い感じの物」

「無いだろそんなもの」


「まぁいいや。アナちゃん起こしてくるねー」


 シャロは俺の隣の部屋のドアを叩きに行った。

 俺は先に降りてよう。

 先に食堂へ向かい。席を確保しておく。


 少しして、シャロとアナスタシアが降りて来た。

 アナスタシアはシャロに手を引かれながら歩いており、昨日と同じ格好をしていた。完全に寝起きだなこりゃ。

 アナスタシアを席に座らせると、シャロは朝食を取りに向かった。取り敢えずアナスタシアに朝の挨拶をすることにした。


「おはよう」

「⋯⋯はざますムニャムニャ」


 朝は弱いのか。

 どうするか〈清潔魔法クリーン〉を掛けてあげるべきか。

 寝ぐせ⋯⋯すごいんだよなぁ。ライオンかな?


 どうしようかと考えている内に、シャロが朝食を持って戻って来た。


「アナちゃんまだ寝てるの?〈清潔魔法クリーン〉」


 ノータイムで〈清潔魔法クリーン〉を掛けやがった。

 〈清潔魔法クリーン〉を掛けられたアナスタシアはキラキラと光り、寝ぐせが凄い髪もストンと真っ直ぐなストレートに戻った。


「⋯⋯!?え、⋯⋯あ。お、おはよう」


 目が覚めた様で、みるみる内に顔を赤く染めていった。

 アナスタシアも目を覚ました事だし、朝飯を食べよう。


「いただきます」

「いただきまーす」

「い、いただきます⋯⋯」


 俺達は仲良く朝食を平らげた。


「さて、いつ頃街を出る?」

 アナスタシアに予定を確認する。昨日、アイリさんに今日出発するとは言っていたが。


「私が着替えたら行こうか。ちょっと待っててね」


 そういう事になったので、着替えが終わるまでそのまま待機することになった。

 シャロはサッサと何処かへ行ってしまった。自由だなー。


 ⋯⋯結構経ったぞ。女子の準備は長いと言うが。どうしよ、呼びに行くべきか。


 そう考えていると、階段を1人の少女が降りて来た。

 白いワイシャツに、短めの短パン。足には黒いニーハイと動きやすい格好をしてきた。

 白いワイシャツに薄桃色の髪の毛が映えるな。

 短パンとニーハイの間の太ももを眺める。良いものを見せて貰ったので褒める。


「似合ってるよ」

 彼女は少し照れくさそうにし。


「ありがと」

 短くそう呟いた。


 俺は鈍感系主人公では無いので、バッチリ聞こえている。


「それじゃ、行きますか」

「うん」


 俺達は街を出るべく、街道に続く門に向かった。


 ◇


 街を出る為の手続きをする為、列に並ぶ。


 その時、一人の男が近寄って来た。

 念の為。剣を何時でも抜けるように、柄に軽く手を乗せる。


「あのー。一応お聞きいたしますが、アナスタシア様でございますか?」

「ええ。そうだけど、あなたは?」


「コレは失礼しました。アナスタシア様を街道の途中まで載せていくようにと。冒険者ギルドより依頼されました。しがない御者にございます」


「聞いてないけど?」

「これはこれは、伝言が届いていないご様子で。一応、こちらが依頼書になっております。ご確認ください」


「⋯⋯ふうん。あのハゲてる人の指示?」

「ええ。おっしゃるとおりで」


「ソラはどうしたい?」


 アナスタシアが俺を見て尋ねた。


「そうだな。因みに罠の可能性は?」


「多分無い。書類は本物だし、罠が有っても問題は無いかな」

「なるほど。なら乗せてもらうか?」


「⋯⋯わかった。それじゃ案内して」

 アナスタシアは、御者に向き直り誘導するよう伝えた


「こちらでございます」


 御者の後を付いていく。


 ⋯⋯チラッ。アナスタシアに視線だけを向ける。

 なんか眉間に皺を寄せて、御者を睨んでいるっぽいな。

 罠の可能性を捨てられないのか⋯⋯。


 俺達は門の近くに止めてある、馬車の側までやって来た。結構立派な馬車だ。


「どうぞお乗りください」

 御者がそう言い。扉を開け搭乗を促す。


 アナスタシアが無言で乗り込む、俺もその後に続いた。


 中は向かい合った長椅子が二つ。中ってこういう風になってるんだー。この世界に来た時乗った馬車は、荷物を積むタイプの馬車だった為。こういうしっかりとした作りの馬車は初めてだな。


 俺が内装を見回していると扉を閉められ、御者は前の方に移動した。


 アナスタシアは先に座っていたので、俺は反対側の椅子に腰を下ろした。

 何故かアナスタシアが俺の隣に座り直した。

 こっちの席の方が良かったのか?


 少し横にズレてスペースを開ける。

 寄って来た。

 更に横にズレる。

 ⋯⋯もう壁際なんですけど。

 アナスタシアが体をくっ付けてくる。


「あのー。近くない?」

「ダメ?」


「⋯⋯ダメじゃないです!」

 ハゲ、お前は良い仕事をしたよ。


 森の入り口まで、俺達は馬車に揺られて他愛のない話を続けた。

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