34.新料理&新装備実装。

[白金プラチナ]ランク冒険者アナスタシアと共に、緊急依頼を受ける事になった俺は、3日分の食事を2人分作っていた。


 朝昼晩と三回食べるから⋯⋯。

 それを3日で2人分、合計18食作らないといけないか、結構大変だな。

 まぁ、アレックス君にも、手伝ってもらっているんだが。


 ハンバーグにサンドウィッチ、ハンバーガーを作って。

 更にポトフを作る。


 市場でソーセージが売ってたので、それを適当な野菜と一緒に煮込む。

 コンソメのキューブなんて物は無いので、塩と適当な香辛料で味付けをする。

 良い味になった。


 トマトを入れても良いが。

 この世界のトマトの味がする野菜は紫色をしているので、スープに加えると、色が紫色になるのでやめた。

 この世界、紫色の野菜多くない?


 ソーセージも余ってるので、ホットドッグでもついでに作るか。

 ソーセージに焼き目を付けて、切れ目を入れた長めのパンに挟む。

 ケチャップは無いからマヨネーズを付ける。


 ⋯⋯ん?此処に置いてたハンバーガーが1つ消えてる。


 辺りを見回すとシャロの後ろ姿が見えた。アイツか⋯⋯。

 今出来上がっている物を直ぐに〈収納魔法アイテムボックス〉に仕舞い込む。

 寝てたんじゃないのかアイツ⋯⋯。


 残りはホーンラビットを焼いたので良いかな。


 ◇


 食事の準備は終えたので、椅子に座り一息つく。

 そう言えば武器の進捗はどうなっているだろうか、不意に思いだす。

 夕食まで、まだ時間もあるし聞きに行ってみるか。俺は椅子から腰を上げて宿屋を後にした。


 ◇


 ヴィーシュさんの店の扉を開け、声を掛ける。


「こんちわー」


 店番にはヴィーシュさんが居た。


「ん?おお、ソラか。丁度いいちょっと待ってろ、カルマンの奴を呼んでこよう」

 俺の返事を待たずに、店の奥へと引っ込んでいった。


 コレはもしかして出来てる感じか?。

 暫く待ち、店の奥から2人が出て来た。カルマンさんが手に何かを持っている。


「待たせたな。ほれカルマン見せてやれ」


「ソラ君。君の剣と盾が出来たよ」

 そう言って、カルマンさんはカウンターに剣と盾を置いた。


「まずは剣の方から説明するね。種類としてはロングソードだね、長さは80センチで仕上げたよ。盾も持つならあんまり長すぎない方が良いと思ってね。ついでにエンチャントも付けといたから。剣に魔力を流すと、自分の属性を付与することが出来るようにしておいたから」


「続いて盾なんだけど。こっちの種類はタージシールドだ。前腕で盾を固定できるようになっているから、手の平は自由に使うことも出来るよ。こっちも剣と同じエンチャントを付けておいたから」


「おお⋯⋯。すごい」

 俺の語彙力が死んだ。実際に手に持ってじっくりと眺めてみた。


 歪みのない真っ直ぐな刀身だ。刀身の根元に文字が彫ってある。

 これがエンチャントって奴だろうか。

 柄も両手で握れるくらいの幅がある。

 両手でしっかり握ってみたが手にしっくりくる。すごい。


 盾も左腕に着けてみる、形は円形で湾曲してる。

 確かに前腕にベルトで固定されるので手の平が自由に使えるし、ちゃんと盾を握れる取っ手も付いていた。すごい。


「気に入ったみたいだな。出来はワシが保証してやる、大事に使え」


「ソラ君。今の僕の全力で作った物だ。使い潰してやってくれ」


「わかりました!」

 俺は2人に礼を述べ、店を後にした。


 よーし!明日からこの新装備と共に冒険だ!


 ルンルン気分で宿屋に戻る。


 ◇


 宿屋に戻った俺は、早速食堂でのんびりしているシャロに自慢した。見て見てー。


「ふーん?それが新しい装備?盾小さくない?もっと大きいのにしなよー」

「俺は動き回るから、これ位がいいんだよ」


「絶対大きい方が良いってー」

「デカい盾はお前の担当だろうに」


 タンクは防御力を上げる事が最重要なので、盾はある程度、大きくて硬い方が良いのだ。

 シャロ自身も身長の半分程の、大きさの盾を普段使っている。

 俺の盾の何倍も重量がある。


 そんなやり取りをしていると2階から、アナスタシアが降りて来た。


「2人で何してるの?」


 部屋着だろうか、灰色のシャツに短いズボンを履いており。

 白く細い足が見えた。うっひょー!。


「ソラが新しい剣と盾手に入れたんだってー」


「へー、もしかして明日の為に?」

「いや、これ自体は前に注文しておいたのが、今日出来てたってだけなんだよ」


「そうなんだ。見せて貰ってもいい?」

「勿論」


 俺は剣を手渡す。

 アナスタシアは剣を鞘から取り出しじっと見つめる。


「これ属性付与のエンチャント彫ってあるね。結構腕良いよ、これ」

「へー、カルマンさんが作ってくれたが。そんなに腕が良いのか」


「ヴィーシュさんのお弟子さんだっけ。今度、私のも頼んでみようかな」

 アナスタシアは剣を鞘に戻した。


「是非そうしてくれ。あの人も喜ぶと思うぞ?それはそれとしてなんだが。属性付与ってなに?」


「⋯⋯うーん。実際にやって見せてもいい?」

「御願いします」


 アナスタシアは剣を再度鞘から抜き、切っ先を上に向け魔力を流した。

 すると、刀身がみるみるうちに、薄桃色の氷で覆われて云った。


「おお~」

「おおー」


 俺とシャロが驚きの声を上げる。


「自分の持つ属性を武器にも持たせる事ができる。それが属性付与ね。私の場合は氷だから、こんな感じの見た目になっちゃうね」


「なるほど~。じゃあ俺は闇属性だからどうなるんだろうか」


「やってみればわかるよ?はい、返すね」


 俺は剣を受け取り。アナスタシアがやって見せた様に剣に魔力を流す⋯⋯。


「⋯⋯どうやって流すの?」

「⋯⋯フッ。フフフフフ。ま、魔法を使う時みたいにし、してみて⋯⋯フフフ」


 何故か笑いのツボに入ったようだ。


「魔法を使う時みたいにか⋯⋯。フン!」


 剣に魔力を流すと。刀身がどんどん黒く変わっていった。

 その刀身は黒く、一切の光を反射していなかった。そこだけ世界が黒く塗りつぶされている様に。その刀身を覗いた俺は、一種の不安を覚えた。漆黒に塗りつぶされた刀身の奥に、別の何かが居るのではないかと、その奥に4つの瞳が見えたような。そんな気がした⋯⋯。


「黒!ナニコレ黒すぎ!でもかっけぇ!」

 アナスタシアは黒く塗り潰された刀身を見て、身震いを覚えた。


「すごいねそれ⋯⋯。闇属性ってそんな感じになるんだね⋯⋯」


「かっけー!何それ超かっけーじゃん!」

 シャロはテンションが爆上がりしていた。


 俺はドヤる。


「どうよ~。黒い刀身とかかっけぇよな~。どんな効果あるか分かんねーけど、見た目が最高過ぎていいだろ~?」


「⋯⋯所でこれどうやって戻すの?」

「魔法を解除する時みたいにしてみて」


「うーん⋯⋯。フン!」


 徐々に刀身が元の鉄の色に戻っていった。お、戻ったか。よかったよかった。

 剣を鞘に戻し〈収納魔法アイテムボックス〉に戻す。

 そう言えば盾にも、同じのがエンチャントされてるんだっけか。


「フン!」


 こっちも黒くなった。剣よりも範囲が広いせいか、こっちの見た目ヤバいな。

 盾を体の正面に持ってくる。


「なんか体に穴空いてるみたい」

「だよな」

 満足したので、盾も〈収納魔法アイテムボックス〉に放り込んでおく。


「お前らそろそろ店、開けたいんだが?」


 もうそんな時間か。

 俺達は隅っこの席に移動することにした。


「2人ともこっちで、一緒に食べるか」


「はーい」

「ええ」


 席に着き、メニューを眺めていると。

 食堂に最初の客達が入って来た。


 キャリー亭。夜の部スタートです。


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