31.ロックタートル狩りの打ち上げ

 ゴーンゴーンゴーンと、鐘が3回聞こえて来た。


 微睡ながらも。

 鐘の音が聞こえてから暫くして、ドアを叩く音が鳴り響く。


「ソラー!起きてー!」


 何時もの様に、モーニングシャロが機能した様だ。


 ん⋯⋯。

 寝ぼける頭で体を起こし、ドアを開ける。


「どうかしたかー?」


 欠伸をしながらシャロに何の用か尋ねる。


「何の用って。もうマルコさん達下に居るよー?」


「⋯⋯マジか!寝ててすっかり忘れてた」

 俺は直ぐに自分に〈清潔魔法クリーン〉を掛け。


 急いで食堂まで駆け下りた。

 既に席についていた4人に声を掛ける。


「すいません。遅れてしまって」


「おお、来たか。俺達も、さっき来たばかりだから気にしなくていいぞ」


 空いている席に座り、ギルドマスターへの報告の結果を聞くことにした。


「そう言えば、あれからどうなりました?」


「ああ、調査の為に、何人か送ってくれるんだと」

「後は結果待ちだな」

「あのハゲは、相変わらずだったけどな」

「ここ2年で、急激に髪の毛が減ってるらしいぞ」


「大変でしたね」


 4人にねぎらいの言葉を投げかける。

 ⋯⋯そう言えばシャロは何処行った?

 シャロが着いて来ていない事に気づき、周りを見回すも見当たらない。


「シャロ知りません?」


「ソラを起こしに行ったが、会って無いのか?」


「いや⋯⋯、起こされたんですけど、てっきり後ろに居るものと思ってたので」


「最初からソラ1人だったぞ?」


「あれー?」


 何故か着いて来ていないシャロに疑問を浮かべる。何処行ったんだアイツ。


「ん?来たぞ」


 丁度階段の方を向いて座っていたハルクさんが、シャロを見つけたようだ。

 俺も階段の方に顔を向ける。


「お待たせー!もう1人追加でもいいよねー?」

 そう言ってシャロが引っ張って来たのは⋯⋯。


[白金プラチナ]ランク冒険者のアナスタシアだった。


 俺は直ぐに4人の顔色を伺った。

 全員信じられない物を見た。という表情をした後、天を仰ぐ。

 俺のやる事は一つだ。


「キャロルさん!酒を5つお願いします!強い奴!」


 酔わせて判断力を鈍らせる。勿論俺も付き合う⋯⋯。


 ◇


 酒が届き。

 シルバーファングと俺が一気に飲み干す。

 俺の隣に座った。

 シャロとアナスタシアは、その光景を不思議そうに見ていた。


「もう乾杯してるの?あたし達が来るの待ってよー」


 シャロが不満を漏らすも、4人はそれどころじゃない。

 とは言え、紹介しない訳にはいかない訳で⋯⋯。


「こちら、[シルバー]ランク冒険者のシルバーファングの方々です」


 アナスタシアに向けて4人を紹介する。


「そしてこちらが、アナスタシアさんです」


 シルバーファングの4人に向けて、アナスタシアの紹介をする。

 一瞬の静寂が支配する。


「マ、マルコです」

「ハルクです」

「シールです」

「アルです」

 4人が自分の名前を告げぺこりと頭を下げる。


「アナスタシア=ベールイと言います」

 アナスタシアも微笑みながら名を告げる。


 俺達の紹介の合間に、シャロがキャロルさんに注文を済ませていた。

 直ぐに追加の酒がやって来る。全員が酒の入った盃を手に持つ形になった。


「それじゃぁー!かんぱーい!」

 シャロの元気な乾杯の音頭に、全員で盃を打ち鳴らす。


 直ぐに5杯の盃が空になった。


「キャロルさん追加お願いしまーす!」

「皆、そんなにお酒飲みたかったのー?」


 シャロが笑いながら俺の背中を叩く。


「フフフ。2人とも楽しそうだね」


 そうこうしていると料理も届き始めた。


「あー。そ、そうだギルドマスターへの報告って具体的にどんな感じでした?調査は出るみたいですけど。他に何か言われたりしました?」


「え?ああ、そうだな、なんて言われたっけ」

「あれだ、⋯⋯ほらあれ」

「実際に居たら報奨金が出るだっけか?」

「いや、バーコードがハゲでなんかあれだ」


 酔いが回って来てるな⋯⋯。

 シルバーファングの4人はもう駄目だ。


「何かあったの?」


 アナスタシアの透き通る様な声が響く。


 シーンとなるので俺が代わりに説明をする。

 シャロは飯を頬張ってて喋れないからな。


「ロックタートルを狩りに行った時に、10倍くらいの大きさのロックタートルが居たんでね。その事をギルドに報告したんだよ」

「そうなんだ」


 俺達がこの二日間で起こった事の簡単な説明に、アナスタシアは頷いた。


「⋯⋯このこと話して大丈夫でしたか?」


 言ってから気づいたが、守秘義務みたいなのが有る可能性を失念していた。


「いや、別に問題ないぞ」

「誰にも言うな、とも言われてないしな」

 急に素面にならないで頂きたい。キャロルさんに追加の酒を注文する。


「って事は近い内に、そのロックタートルの討伐依頼張り出されるかもね」


「もしかしてアナが受けたりする感じ?」


「うーん。その時はソラに道案内してもらおうかな?」


 微笑みながら告げる言葉に。

 俺は実際にそうなるんじゃないかと思ってしまった。


 その後、聞いた話だが。

 シルバーファングの4人は酔いつぶれ。

 シャロの親父さんに店の外に転がされたという。


 俺も酔いつぶれていたので、部屋に運んでくれたらしい。


 そうして、ロックタートル狩りの打ち上げは終わりを告げた。

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