29.ギルドマスターへの報告(2名抜き)

 冒険者ギルドを目指していた俺達は、森を抜け街道へと辿り着いた。


 一度休憩を取り、再度移動を開始した。

 森の中にも道は有ったが、凸凹していた為走りづらかったな。

 街道はしっかりと石畳みが敷き詰められているので、走っていても足への負担が大分マシに感じられた。


 朝日と共に移動を開始したこともあって、昼前までには街の壁が見えて来た。

 ようやくこのマラソンもおわるのか⋯⋯。


 正直な話。

 狼の魔物と戦っている時や、ロックタートルを解体している時よりも。

 走っている時の方が一番大変だったな⋯⋯。


 街の壁が見えてからは、割と直ぐに門まで辿り着けた。


 門の前まで着いた俺達は、衛兵の指示により水晶に手をかざし。街の中に入って行った。


 ◇


 ああ、やっと帰ってこれた。

 2日しか離れていないが、森や岩場での野営のせいか。なんだか街の景色が久しぶりに感じた。


 人工物万歳。


「やっと着いたか」

「サッサと報告に行くか」

「そうだな、早く終わらせよう」


 流石に街に入ってからは走るのをやめ、歩いて冒険者ギルドまでの道を進んでいた。


 俺とシャロは歩きながら息を整え、後ろを着いていく。

 暫く歩いて、冒険者ギルドに着き。

 マルコさんが扉を開け中に入って行く、俺達も遅れずに着いて行った。


 ギルドの中に入ると、真っ直ぐに受付へと向かって行った。


「アイリ。ロックタートルについて報告があるんだが。上の人間呼んでもらっていいか?」


「ロックタートルについてですか?⋯⋯わかりました。少々お待ちください」


 マルコさんは簡潔に用件を述べる。

 アイリさん上の人間を呼びに裏へと引っ込んでいった。

 上の人間かぁ⋯⋯。バーコード頭のひとかな?。


「上の人間って髪の毛が少ない人?」

 シャロがストレートに言う。


「⋯⋯そうだ」

 渋い顔をしながらマルコさんが答える。


「本人には言うなよ?気にしているらしいから」

「はーい」


 まぁ、髪の毛は重要だからな。と云うか魔法でもその辺はカバーできないのか⋯⋯。

 話をしていると、奥からアイリさんが1人の男を連れて戻って来た。


「ロックタートルに何かあったと聞いたが?⋯⋯ん?其処の2人はハイゴブリンの時の子か」


「あ、ども」

 軽く会釈をする。

 意外にも顔を覚えられていた。そんなに日も経ってないから偶々覚えていただけかな?


「まぁいい。それで?何があったのかね?」


 直ぐに俺達から興味を無くしたようで、直ぐにマルコさんに向き直る。


「ええ。ロックタートルを狩りに行っていたのですが。そこで、体長が通常の個体の10倍ほどのロックタートルを発見しました」


「なるほど、10倍か⋯⋯」

 マルコさんの話を聞き、上の人間は口に手を当て何かを考える様な仕草を取った。


「数はどれ程いた?」


「数は1体だけでした。他にもいる可能性はありますが。帰還と報告を優先させてもらいました」


「⋯⋯ふむ。まぁ、妥当な判断か。よろしい、マスターにも報告する必要があるな。君達も来なさい」

 これからギルドマスターに会う事になったようだ。


「ところで。其処の2人は[ブロンズ]ランクだったか?何で一緒にいるのかね?」


「コイツラは荷物持ちとして、一緒に依頼を受けた子達です」


「そうか。なら君達は帰りなさい。[ブロンズ]ランクが居ても邪魔なだけだ」


 俺達はお邪魔なようだ、おのれハゲ⋯⋯。

 マルコさんが俺達に向き直り。


「すまないが、そういう訳なんだ。報酬の受け渡しは、夜にシャロの宿で渡すでもいいか?」


「⋯⋯まぁ、俺は問題ないです」

「ソラが無いならあたしもー」


 実際、俺達が居てもやる事なさそうだし。此処は素直に従おう。


「それじゃ俺達の、〈収納魔法アイテムボックス〉に入ってる魔物は渡してもいいですか?」


「そうだな、お前たちの分はアイリに渡しておいてくれ」

 そう言ってシルバーファングの4人は、上の人間に連れられてカウンター奥の階段を上って行った。


「ごめんなさい。あの人も悪気が有って言った訳じゃないと思うから」


「アイリさんが謝る必要はないですよ。実際、俺等はその魔物を実際に見たわけじゃないですから」

「そそ。気にしない気にしない」


 本当にこの人が謝る必要なんてないしな。


 俺達は〈収納魔法アイテムボックス〉内の魔物を取り出し、アイリさんに預けた。


「はい。では、確かに受け取りました。報酬貰ったら、一度私の所に来てね?」


「アイリさんの所にですか?」

 何でだろうか。もしかして食事のお誘いとか?⋯⋯来たかモテキ。


「ええ。自分よりランクの低い人と組んで、依頼が終わってから難癖を付けて約束の報酬よりも、ワザと少なく渡す人もいるのよ?あのパーティならそんな心配はいらないけれど、念の為に⋯⋯ね?」


 ⋯⋯なるほど?俺達が貰った報酬と、ギルドがシルバーファングに渡した報酬を比較してくれるって訳ね。俺のモテキはまだ到着してない様だ。


「そんな事して来たら、奥さん達に言いつけるから平気っしょー」

「フフ。それもそうね」


 ⋯⋯女性間のネットワークは怖いな、俺も迂闊なことは出来ないな。

 渡すものも渡したの帰るとしますか。

 シャロに、もう帰る事を告げアイリさんに別れを告げる。


「アイリさん、俺達はこれで帰りますね」

「じゃーねー」


 軽く頭を下げてその場を後にする。シャロは手を振りながら俺の後に続いた。


「あー。疲れた。宿のベッドで横になりたい」

 ギルドの扉を開け宿への道を歩いている途中で、そう口から零れた。


「だねー。あたしも疲れたー」


「少し休んでから夜はアレックス君の料理で打ち上げでもするかー」

「さんせー!」


 俺達2人はウェイウェイ言いながら、宿までの道のりをのんびり歩いていた。



 ある出来事が待ち受けている事も知らずに。

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