26.緊急事態発生?

 丁度11体目のロックタートルの解体が終わったころに、残りの3人が戻って来た。


 マルコさんとハルクさんは返り血で鎧が所々赤くなっていた。


「おー、全部解体出来てたか。上出来上出来」


「甲羅剥がして、中身取り出すだけだしねー」


 こういう言い方だと簡単に聞こえるが。

 実際やってみると、甲羅が重くて剥がすのが大変だった。


 2人でタイミングを合わせて、一気に剥がさないと奇麗に剥がれないし。

 ナイフの入りが悪いと剥がれないしで、最初は少してこずったな。


「シャロはこう言っているが、実際どうだ?」


「結構大変でしたよ、特に甲羅を剥がすのが力要りますね」


 俺は素直に答える。

 胡麻化す必要も特にないし。


「ハハハ。だよな、俺等も最初は苦労したよな」

「あー、思い出した。そう言えばアルが甲羅を剥がす時に腰をやってたな」

「あれな⋯⋯。腰をやると人間の動きが出来なくなるからな⋯⋯」


 色々と思い出がある様だ。


「おじさんの失敗談みたい」


「俺等はまだ26だ!おじさんじゃないぞ!」


 マルコさんが吠える。


「え?」

 俺は思わずハルクさんを見る。目が合った。


「一応、俺等4人は同い年だからな?」


「す、すいません⋯⋯」

 目を反らすも、シールさんに肩に腕を回しガッと掴む。


「わかるぞー。ハルクは老け顔だからな。初対面で大体の奴が、アイツをリーダーだと思うんだよ」


「その癖コイツ。嫁さんが俺等の中で一番若いんだぜ。10歳も下なんだぜ?」


「ってことは⋯⋯16歳!?俺の一つ下か⋯⋯」


「いいだろ別に。向こうがそれでもいいと言うしな」

 はえー、俺も恋人ほしいな。素直にそう思った。


「そう言えば。お前は、魔女に目を付けられたんじゃないのか?」

 魔女?ああ、アナスタシアの事か。


「そんな仲じゃないですよ、出会ってまだ2回しか会ってないですし」


 あっちは見た目が良いし、何より[白金プラチナ]ランクだからな。

 俺みたいな男では釣り合わないってわかってますって。身の程は弁えますとも。


「マルコの奴が。仲良く飯食ってたって言ってたんだがな⋯⋯」


「ああ、飯なら食いましたよ。というかシャロも一緒でしたし」

「アナちゃんね!スッゴイ可愛いかったよ!」


「だよな」

 シャロに同意する。


「お前らはすごいな⋯⋯」

 アルさんに感心された。


「えへへへ」


 シャロがなんか照れてる。


「雑談はこれ位にして飯でも食うか」


「リーダーのマルコさんがそう言うなら従いましょう」

「だな、リーダーはマルコだしな」

「ああ、リーダーだしな」


「リーダーとハルクよ、いい加減鎧の血を落とせ。飯食うなら奇麗にしろ」


「「はい⋯⋯」」


 マルコさんとハルクさんが〈清潔魔法クリーン〉で体の汚れを落とす。


 俺も、一応〈清潔魔法クリーン〉で奇麗にしておく。これから飯を食べるなら清潔にしておかないといけないしな。

 シャロが一向に〈清潔魔法クリーン〉を使う気配が無いので、掛けてやる。


「あたしはそんなに汚れてないってー」


「念の為だよ、念の為」


 食中毒にでもなったら大変なんだし。

 ⋯⋯この世界、食中毒なんて言葉あるのだろうか。


 怪我や病気はヒーラーかポーションでどうにかなるみたいだし。

 そもそも、医療という分野が発展しているのかすら疑わしい。

 魔法で大抵の事はどうにか出来そうだし。


 利権的なのがあるのだろうか⋯⋯。

 俺は考えるのをやめた。やめやめ。


「ソラー、ご飯交換しよー」

 今日もシャロに飯を集られた。


 代わりにアレックス君の作った物と交換をする。

 アレックス君が作った物も、旨いんだけどなぁ。


 俺達は昼食を食べ、狩りを再開する。


「そう言えば。ロックタートル何体ぐらい狩れたんだ?」


「えーっと。11体ですね」


 俺は端に寄せてあるロックタートルの死骸を数える。


「11か⋯⋯。結構速いペースだな」

「確かに。狩ってる間はあんまりそういう事考えないからな」

「普段よりも密集してないか?」

「あー俺もそれは思ってた」


 俺等には分からない、何かを感じ取っているみたいだ。


「もしかして、ハイゴブリンの時みたいに何かあったんじゃないですかね?」

 俺の一言に4人がピタリと動きを止めた。

 ⋯⋯あれ?冗談のつもりなんだけど。


「⋯⋯可能性はあるか?」

「なくは無い。が、俺達はロックタートルの上位種を見た事ないしな」

「念の為。距離伸ばして偵察してみるか?」

「俺は良いと思うが。マルコとハルクはどうするよ」


 2人は無言で頷いた。


「よし。ちょっくら行ってくるわ」


 そう言ってシールさんは岩山に向かって走り出していった。


「冗談のつもりだったんですが⋯⋯」


「いや。実際ロックタートルが、これだけ密集してるのはそうそうないしな」


 ベテランの勘と云う奴だろうか。

 その後シールさんが戻って来るまでやる事が無いので、のんびりする事にした。

 のんびりしていると、シールさんが戻って来た。



「不味いぞ」


 不味いんですか⋯⋯。

 俺は天を仰いだ。

 冗談⋯⋯だったんだよなぁ。


「ロックタートルの変異種が居た」


 変異種?

 どこかで聞いた気がするが。

 どこだっけ⋯⋯、ギルドの講習会だっけか。


「どんな奴だった?大きさは?数は?」


 マルコさんがシールさんに尋ね。


「デカいのが居た」


 ロックタートルのでかい変異種がいたそうだ。

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