25.通称[鉱石袋]

 ロックタートルの生息地に向かうべく、森の中を進んでいた。

 野営地から暫く歩くと、木の数が減り始め岩肌が見え始めて来た。


 そろそろ目的に近づいてきたのだろうか。足元もゴツゴツして歩きづらいな。

 俺以外はスイスイ歩いているから遅れない様に着いて行く。

 人が通れるような道は有るが結構きつい傾斜の所が多かった。


 暫く登ると丁度広場の様になっている所に出た。


「ふーっ。やっと着けたな」


「ああ、この岩場を登るのが一番堪えるな」


 つ、つかれた⋯⋯。


 どうやら目的地に着いた様だ。


 俺は思わずその場に腰を下ろして座り込む。


「つかれたー」


 隣にシャロも同じように腰を下ろす。


「暫く休んだら始めるか」

「そうだな」


「ちょっと周り見て来るわ」

「頼んだー」


 休憩することになったがシールさんは周りの偵察へと向かって行った。


 岩場をすごいスピードで登って行った。


 おお、すごいな⋯⋯。

 俺もあんな風に身軽に動いてみたいものだ。


「マルコさん、この後はどうするんですか?」


 少しの間、座って体を休める事が出来たので、この後の事を聞いてみる。


「ん?ああ、今のうちに説明しとくか。と言ってもやる事は簡単だ。俺達が1匹づつ狩る。その後シールがココに1匹倒すごとに持ってくるから、それをお前たちが解体するって感じだな」


「最初の1匹で解体の仕方を説明するから、分からないことはその都度聞いてくれ」


「わかりました」


 軽く流れを聞き暫くするとシールさんが戻って来た。


「結構近い所に何匹かいたぞ」


 近くに居るってことは、直ぐに俺達の出番が来そうだな。


「よし!それじゃお前ら行くぞ」


「「「了解」」」


 3人はシールさんを先頭にロックタートルを狩りに行った。


 さて。

 待ってる間に道具を出しておこう。

 俺は〈収納魔法アイテムボックス〉から解体用のナイフと手袋を取り出す。

 シャロも同様に道具を取り出し身に着けていく。


「そう言えばシャロはロックタートルって解体したことあるか?」


 シャロが経験者かどうか聞くのをすっかり忘れていた。

 経験があるなら分からない時は頼ろう。


「ロックタートルは無いかなー、お父さんなら有るかもだけど」


「お互い初めてか、頑張るしかないか」


 当てが外れたか。

 まぁいいや、お互い初めてだし覚えながらやるしかないか。


 遠くで何かの悲鳴が聞こえた気がする。

 今戦ってるのかな?ココからじゃ何も見えないからわからんな。

 砥石で解体用のナイフを研いでいるとシールさんが戻って来た。


「おう、準備は出来てるか?今から解体の仕方教えるからよく見とけよ?」


 そう言って〈収納魔法アイテムボックス〉からロックタートルを丸々1匹取り出した。


 でっか⋯⋯。思ったよりもデカいぞ。

 甲羅もゴツゴツしているが岩がくっ付いてるのか?


「見るのは初めてか?こいつが今回の目的のロックタートルだ。見た目通りデカいが解体はそんなに難しくは無いぞ。見てな」


 シールさんはナイフを取り出し、甲羅と皮膚の隙間に突き刺す。

 そのまま甲羅をぐるりと一周するようにナイフを入れていく。


「こうやって甲羅の隙間にナイフを入れて。甲羅を剥がせる様にするんだ。刃を根元まで入れると剝がれやすくなるからな。それでだ、ちょっと手を貸してくれ。こうやって甲羅を持って⋯⋯」


 言われた通りに、切れ込みを入れた甲羅に手を掛ける。


「で、思いっきり剥がす」


 甲羅を掴む手に力を入れ。

 思いっきり力を入れて、ひっくり返す様に上に持ち上げると。


 バリッと云う音と共に甲羅が剥がれた。

 そして内臓がこんにちわっしてきた。


「お、おおぉぉ⋯⋯」


 思わず変な声が出た。

 甲羅が身から剝がれた感触もゾワッとしたが、剥がすと直ぐに内臓が見えたので驚いた。

 血の匂いと内臓の匂いが漂い顔を顰める。


「ハッハッハ。すごい顔してるぞ。それじゃ続けるな~。ココに魔石があるから、周りの肉を削いで取り出してくれ。でだ、一番重要な鉱石が入った胃袋がこれだ」


 シールさんは手際よく魔石を取り出し、次いで鉱石の入っているという胃袋も取り出す。

 大きさは両手で抱えられるくらいの物だった。


「ほれ、持ってみな」


「あ、はいって重たっ!」


 シールさんは簡単に持っていたが、持ってみるとかなり重たかった。

 下手したら腰やってたぞ今の。


「皮を裂いて中身を水で軽く洗い流してくれ」


 言われた通りナイフで皮を裂くと中から石がゴロゴロ出て来た。

 これが鉱石?であってるか?思ったのとなんか違うな。

 もっとこう色がついてると思ったんだが。

 取り出した石をまじまじと見ていると。


「見た目は石っぽいが一応それが鉱石で、精錬したら質の良いのが出来るんだと。専門家じゃないから詳しくは分からんが」


「そうなんですね~」


 へー、この石を精錬するのか、やり方は知らないがどんなのが出来るんだろうか。

 俺が石をじろじろ見ている横でシャロはロックタートルの肉を切り取っていた。


「⋯⋯何してるんだ?」


 肉を切り取っているシャロに尋ねてみた。


「え?美味しいのかなーと思って一応」


 食えんのこいつ?

 確かに元の世界でも、亀を食えば精力が旺盛になると言われているが⋯⋯、あれはスッポンだけの話だろうか。

 他の亀にも、同じ効果があるとは聞いた覚えがが無い気がするが。


「いや、ロックタートルはシンプルに不味いからな?焼いたら硬くなって、とてもじゃないが食えたもんじゃないぞ、臭いし」


「えー、美味しくないのか⋯⋯」


 魔石や鉱石よりも食欲が優先なのか⋯⋯。


「ハァ⋯⋯」

 あからさまにガッカリしてる。


「帰ったらなんか作ってやるから元気出せよ」

 こんな慰めで元気が出るわけ無いが一応言ってみる。


「⋯⋯ハンバーガー山盛りで」


「あ、はい」


「じゃあ俺はもう行くぞ?魔石と鉱石を取った後の死体は端に避けといてくれ。後でアルが焼き払うから」


「わかりましたー」

「いってらー」


 俺達に解体の仕方を教えてくれたシールさんは仲間の元へ戻って行った。

 さて、取り合えずロックタートルを〈収納魔法アイテムボックス〉に一旦入れて端まで持って行こう。

 素手で持ち運ぶのは無理だしな。


 ロックタートルを端に移動し終えたので鉱石に〈水生成魔法ウォーター〉で水洗いする。


 ⋯⋯、〈清潔魔法クリーン〉の方が早いか?

 いや、鉱石も汚れ判定にされたら目も当てられんな。

 そういう意味で水洗いを指定したのかもしれないし。


 水洗いを済ませた鉱石を端に寄せて置く。

 そうしていると、シールさんがまた戻って来てロックタートルを置くと直ぐに戻って行った。


 こういう感じで進めていくのね。

 俺は何となく把握した。


「シャロ、始めるぞ」

 シャロに声を掛けて次のロックタートルの解体を始めた。


 ◇


「せーのっ!」 

 バリィ


 あれから、10匹位のロックタートルを解体していた。

 10匹も解体すると、それなりに慣れて来るもので、サクサク進める事が出来ていた。


 それでも匂いに慣れないな。

 血と内臓の匂いに関しては、他の魔物であっても慣れる事は無い気がして来た。

 そうしているとシールさんが11匹目を運んできた。


「ソラ、シャロ。これ解体したら一旦昼飯にするぞ。アイツらもこっち向かってるから」


 もうお昼か。

 そう思い上を見ると太陽?が、真上に来ていた。

 それじゃ、サッサとコイツを解体して休みますか。


 11匹目はシールさんも手伝ってくれたので、直ぐに解体することが出来た。

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