23.やえい!

 ロックタートルを目指し。街道を抜け森の中を進んでいた俺達を突如、狼の魔物が襲撃して来た。


 シルバーファングの面々と共にそれを撃破し、更に森の奥へと歩みを進める。


 段々と森の中の勾配が上がって来た。

 目的のロックタートルは山の中腹辺りに生息している為、森を進みながら登山する必要があった。

 結構きつくなってきたな⋯⋯。


 それからひたすら森の中を進み続け、何度か魔物の襲撃を受けるもその都度サクッと撃退していった。


 森の中に敷かれた道を歩き続け。

 日も傾き始めた頃、森の中にぽっかりと開けた空間が現れた。


「よーし。ソラ、シャロよく頑張ったな。今日は一旦ここで野営するぞ」


 そこで歩みを止めたマルコさんからの号令が飛ぶ。


「はーい」

「わかりました」


 やっと本日の山登りが終わった⋯⋯。

 元の世界でも山登り何てしたことが無かったからかかなり疲れた。

 それに足場が斜めの状態での戦闘が、あんなに大変だとは思わなかったな。


「疲れたー!」


 シャロはそう言って地面にドカッと腰を下ろす。

 流石のシャロも山登りは堪える様だ。


「シャロ。休むのは野営の準備が終わってからにしろ」


 そう言いながら、マルコさんは〈収納魔法アイテムボックス〉から大きめのカバンを取り出した。


「ほら、お前らの分だ。俺達が昔使っていたやつで悪いが今日はそれを使ってくれ」


 そのまま取り出したカバンを俺達に渡した。


 渡されたカバンの中を確認すると、中には木の骨組みと大きめの布と毛皮で出来た毛布が入っていた。

 これを組み合わせてテントを建てる感じかな?


 取り合えずカバンから骨組み取りだしカチャカチャ弄る。

 シャロは毛皮の布団を取り出し身に纏う。


 2人でアレコレしていると、シールさんが寄って来る。


「ハッハッハ、ほら貸してみな、テントはこうやって建てるんだよ」


 シールさんは慣れた手付きで骨組みを組み立て布を被せ地面に固定する、完成した。


「こんな感じだな、やり方は分かったか?」


「はい、ありがとうございます」


 シールさんにお礼を述べ、居なくなっていたシャロを探す。あの野郎どこ行った⋯⋯。


「シャロならハルクとアルと一緒に薪を探しに行ったぞ」


 自分たちのテントを組み立てていたマルコさんが教えてくれた。


 その後マルコさんの指示により、焚き火用の穴を浅く掘る。

 この中に薪を入れて火を炊くという。片付けの際に土を被せるだけでいいので、何時もこのやり方でやっているそうだ。


 準備も終わったので暫く3人で休んでいると、森の方から薪探しに行った3人が戻って来た。


「ハルク何時もの頼む」


 マルコさんがハルクさんに何かを頼んだ。何時ものとは何だろうか。


「はいよ、〈石の壁ストーンウォール〉」


 ハルクさんが地に手を付き呪文を唱える。

 すると地面に魔法陣が浮かび上がり、ゴゴゴという音と共に石の壁が勢いよくせり上がった。

 高さが2メートル、横が3メートル位の石の壁が出来上がった。


 この石の壁でテントを囲むようにぐるりと設置した。


 俺とシャロがほえーっと見ていると、側に居たアルさんが説明を始めた。


「こうやって野営の時に周りを石の壁で囲めば、ある程度は魔物の侵入を防げるんだよ。あとは出入り用に一か所開けとくが、そこには焚き火の火を置いとけば牽制にもなるし、近づいてくる奴も見えるって訳だ」


「それに魔物除けの魔道具も使うからな、ここら辺ならこれ位対策しておけば魔物に襲撃されることもないさ」


 そう言ってシールさんが魔物除けの魔道具を取り出した。

 手のひら大位の四角い箱で、箱の上部にある蓋を開け、中に魔石を入れる。

 すると仄かに白い光を帯び始めた。


「コレの中に魔石を入れると、⋯⋯そうだな。例えばゴブリンの魔石を入れるとしよう、そうすると此処にゴブリンが住み着いてると、周りの魔物に錯覚させることが出来るんだよ。だからここら辺に居ない強さの魔物の魔石を入れると魔物除けの効果が出るのさ。逆にホーンラビットとか弱い魔物の魔石を入れると効果が無いな」


 シールさんの説明を聞き魔物除けと云うよりは、魔物の縄張りを一時的に作る効果のある魔道なんだなと思った。という事は⋯⋯。


「もしかして、入れた魔石の魔物が好物だっていう魔物が襲ってきたりします?」


 ようは自分の好物の匂いがしてきたらそこに近づいてしまう。的な事が起きるんじゃないかと思った。


「お、鋭いな。その通りだ」


 予想通りだったか⋯⋯。

 入れる魔石の種類と、周囲の魔物の種類を考えながら使わないといけないか。


「何度かマルコが適当に入れて、えらい目にあったんだよな⋯⋯」


 シールさんが遠い目をする。


 あったんだ⋯⋯。

 俺達も手に入ったらシャロには持たせない様にしよう。


 俺は心に誓った。


 2人でマルコさんを見る。


「なんだよ、2人して」

「お前の魔物除けでのやらかしを話してたんだよ」

「あれはまだ俺達が駆け出しだった頃の話だろ!」


 そうして2人は言い合いを始めたので、俺は焚き火を起こしているシャロの所へ向かった。


「どしたのー?」


「いや、俺達はうまくやろうなっと思ってな」


 焚き火の面倒を見ていたシャロの側に座り、決意を伝える。


「ふーん。それより夕飯はなに?」


「⋯⋯肉とキノコを串に刺した奴かな」

 ナチュラルに俺から食料を奪う気のシャロだった。

 各々で用意しようって話してたはずなんだがな。


「ハンバーガー?ってのは無いの?」


「あるけど⋯⋯お前自分で食事用意してきてないのか?」


 一応俺の方でもシャロの分は用意しておいた。

 〈収納魔法アイテムボックス〉に入れておけば腐る事は無いので、今回必要としなくても他の時に食べる事が出来るので、無駄にはならない。


「失礼な!ちゃんとお兄ちゃんに作ってもらったよ。あのハンバーガーってのが美味しかったから、また食べたいのー」


「しょうがないな~」

 自分が作ったものを褒められると嬉しいもので。

 チョロいだろうがこれは仕方ない。

 実際シャロは幸せそうに食べるので見ていて気持ちが良い。


 そうしていると、他の4人も焚き火の近くに寄って来たのでそのまま夕食を取る事にした。


 焚き火を囲み6人で、今日の事を話しながら時間が過ぎていく。


 ああ、なんだか冒険してるって感じだな⋯⋯。


 星空を眺めなら、俺は1人そう思い。

 改めて異世界に来たのだと実感していた。

 ⋯⋯何回目だろうかこのやり取り。異世界に来た実感を感じ過ぎだな。


「さて、それじゃそろそろ寝る順番を決めるか」


 マルコさんが言う。

 そうか野営をするんだから一度に全員寝るわけにはいかないか。

 魔物除けがあるとは云え、全員が寝ている最中に無防備な状態を襲われたら全滅するしな。

 俺はマルコさんの次の言葉を待った。


「で、今日はどうやって決めるよ」

「じゃんけんにするか?」

「ソラとシャロはどうするよ」

「あー、どうしようか」


 寝る順番を決める時ってこんな適当でいいのか⋯⋯。

 大丈夫だろうが少し不安になって来た。


「2人はどういう感じにしたいとかあるか?」


「どういう感じ⋯⋯。野営自体初めてなので、俺は皆さんの指示に従いますよ」

 こういう時はベテランに丸投げに限る。


「それなら最初に俺とソラとシャロで警戒するか。それでいいか?」


 マルコさんからの提案。

 俺に異論はない、他のシルバーファングの3人も頷いていた。


「いいですよー」

「俺もです」

 シャロも承諾したので提案通り受ける事にした。


 こうして初めての野営を過ごすこととなった。


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