22.シルバーファングの戦い
俺とシャロは、朝一でマルコさんと合流し他のメンバーを待っていた。
その間、マルコさんの悩み相談的な事をしつつ、包んでもらった朝飯を食べていた。前日アレックス君に仕込んでおいた、新しいレシピを早速活用してくれたようだ。
門の周りに人が増えてきた位の頃に他の3人がやって来た。
「よお、待たせて悪いな」
大柄な体形のハルクさんが代表して声を掛けてきた。
「何時もの事だから構わんよ」
マルコさんが軽く手を上げ応える。
「おはようございます」
俺は直ぐに立って挨拶をする。
シャロは座ったまま挨拶を交わす。
「おはようございまー」
「おはよう。相変わらずソラは礼儀が良いな、冒険者でそんな奴あんまりいないぞ?」
まぁ俺の常識は元の世界寄りなので、この世界の常識とは大分違うんだろうな。
「よし!全員揃ったし改めて依頼の確認だ」
マルコさんが全員を近くに来るよう手で指示した。
「今回の依頼はロックタートルから鉱石を取る依頼だ。俺達4人が狩って、ソラとシャロが解体して鉱石を取り出す。目的地までの道中は俺達4人で魔物を狩る。この内容であっているな?」
マルコさんより改めて依頼内容の確認を行われた。事前に聞いていた内容と同じなのでこの説明が依頼を受けるか否かの最終確認なのだろう。
「俺は問題ありません。シャロも問題ないよな?」
俺は一度シャロに確認をし、依頼内容に問題無いかどうかを問いただす。
「あたしも大丈夫ー」
「よし」
マルコさんは、俺とシャロの承諾の答えを聞き頷いた。
「それじゃ、各自用意はいいな?問題ないなら今から出発だ」
「「おー!」」
シャロと俺が拳を上げそれに応える。
「よし!ついて来い!」
マルコさんが踵を返して、街の外に通じる門に向かって歩き出す。
「なーにカッコつけてんだか」
とシール氏
「面倒見てる奴を連れてくのは初めてだから気合入ってるんだろ」
アル氏が付け加える。
「ハッハッハ。なら、気合入れてくぞ!」
そう言ってハルク氏が発破をかける。
「レッツゴー!」
それに呼応するようにシャロも元気よく歩き出す。
俺はそのまま付いていく。
そうして俺達は門をくぐり街の外へと繰り出した。
◇
門を潜り街の外に出た俺達は、そのまま街道を進むことになった。
「今のうちに説明しておくぞ。暫くは街道沿いに歩いてあの山を目指す。ロックタートルの生息地はあの山の中腹辺りにあるからな」
マルコさんがそう説明をしてくれた。
なるほど。マルコさんが指さした山は街からも見える位大きい山だった。
という事は今から山登りもしなきゃいけないのか⋯⋯。
人生初の山登りは魔物退治が目的地の山登りであった。
そうはいっても、昼頃まで街道を道沿いに歩くだけで終わってしまった。
「そろそろ休憩にするか」
朝から歩きっぱなしでやっと休憩になった。
この世界のレベルシステムのお陰で、ココまで歩いてもそこまできつくは無かった。
それだけ俺の身体能力が向上しているのだろう。
日本に居た頃の俺なら、開始30分でダウンしていただろう。
街道から外れ固まって座る。
「これ。俺が作ったんで良かったらどうぞ」
俺は〈
「おー、いいのか?初めて見る形だな」
「それねー、こう、齧り付けばいいんだよ」
そう言ってシャロが大口を開けて齧りつく。
「おお、うまいなこれ」
他のメンバーにも概ね好評だった。
昼食を済ませ、少し休憩した後移動を再開する。もう暫くは街道を道なりに行くとの事。
結構な距離を歩いたが疲労はそんなに感じなかった。レベルアップの際に身体能力が少しあがる為、疲れも出にくくなっているのだろうか。
先頭を歩いていたマルコさんが足を止め、森を指さす。
「よし、そろそろ森の中に入るぞ」
森の方を見ると、一部道のようになっている箇所があった。
恐らくそこから目的地に向かうのだろう。
そして、そのまま森の中を進む事となった。
◇
森の中では、歩く順番を決めてから進むことになった。
先頭はシール、次にマルコ、アル、シャロと俺。最後にハルクという順番になった。
要は、俺とシャロを直ぐに守れる様にする為だ。荷物持ちとして参加している為、戦闘は基本シルバーファングが請け負うことになっている。
とはいえ、俺達も駆け出しとはいえ冒険者の端くれ、甘えてばかりでは居られない。
自分の身は自分で守らなければならない。
その事を伝えると。
「出来る範囲で対処してくれればいいさ」
笑いながら返された。
この人達からしたら、俺達はまだまだヒヨっ子なのだろう。心のなかでピヨピヨ鳴きながら着いて行く。
しばらく森を進むと、シールさんが何かに気づき、止まるよう指示してきた。
「あっちからなにか来るな」
進行方向の左斜め前を指差し、弓に矢をつがえた。
森の奥から複数の何かが、ガサガサと音を立てながら迷うことなく俺達に向かって接近してきた。
「構えろ!俺、シール、アルは迎撃。ハルクは2人を守れ。ソラとシャロは後ろを警戒。無茶はするなよ!」
マルコさんから指示が飛び、直ぐに全員が武器を構え。戦闘態勢に入る。
森の奥から接近して来た複数体の魔物は、狼の様な見た目をしていた。大型犬位のデカさがある。
狼の魔物が姿を現すと同時に、シールの放った矢が先頭を走る1匹の眉間を貫いた。
糸が切れた人形の様に前のめりに倒れ、後続の勢いを殺す。
「〈
アルが構えた杖の先端に、緑色の魔法陣が浮かび上がり、打ち出された魔力を帯びた風の刃が狼の魔物を襲い、体を真っ二つに両断する。
これで残り4匹まで減った。
その内の1匹に、シールの矢が突き刺さり、数が減る。
マルコが前に駆け出し、飛び掛かって来た狼の魔物に剣を振り下ろし、空中で切り伏せる。
直ぐ傍に居たもう1匹には、下から切り上げ首を跳ね飛ばした。
最後の1匹はアルの〈
凄いな。
俺は心の中で今起きた戦いを賞賛した。
[
「なんだ。俺の出番は無しか」
そうハルクさんが零す。すると俺達の背後から音が聞こえて来た。
「っシャロ!」
直ぐに後ろを向く、それよりも早くシャロは反応していた。
「任せてー」
茂みから飛び出して来た狼の魔物を盾で受け止めた。衝突の鈍い音が響くも、シャロは体勢を崩さずに持ちこたえていた。
「〈
直ぐに狼の魔物に手を向け呪文を唱える。
狼の魔物の足元に黒く光る魔法陣が浮かび上がり、漆黒の棘が突き刺さる。
「おっ?そりゃ!」
棘に体を貫かれた狼の魔物は、空中で固定されている状態になっていた。
その隙をシャロが見逃さず、即座に斧を脳天に叩き付け、息の根を止めた。
不意を突かれたが何とか2人だけで倒せた。
というか〈
レベルが上がっているからだろうか。
その辺の原理は良く分からないので今は無視することにし、シャロとハイタッチを交わす。
「イエーイ!」
「おいおい。本格的に俺の出番無いじゃないか」
ハルクさんの愚痴を聞きながら、他の3人と合流する。
「⋯⋯もしかして俺達が対処できるか見てました?」
正直に思ったことを聞いてみた。
かなり離れた位置でも察知していたシールさんが、背後の魔物に気づいていなかったとは思えなかった。
「すまんすまん。お前達もいずれはこれ位簡単にこなさなきゃならないんだ。その練習だと思ってくれ」
「ああ、シャロもよく受け止めたな。タンクとしては良い仕事だ」
「一匹後ろに回り込んでいるのは気づいていたがな。これも経験よ」
「俺はソラの闇魔法のが気になるな。初めて見る奴だったな。あとでどんなのか教えてくれ」
案の定そういう事だった。
褒められたから良しとしよう。
俺達は倒した魔物の魔石を素早く回収し先を目指し、歩み出した。
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