第6話 人類軍
【人類軍変異種対策部隊 京都方面戦闘指揮所内】
戦闘指揮所のモニタルームでは京都での戦闘の様子をリアルタイムで見る事ができる。今、そこには、司令官と数人の将校、そして新兵器を開発した科学者の一人である
「甕星博士、やはり戦闘用サイオニックスーツの力は圧倒的ですね。今回の作戦ではノーマル型9機を投入しましたが、初戦からここまでで、撃破されたのは1機、中破が2機だけです」司令官が新兵器の開発者に話しかける。
「サイオニックスーツは基本的に変異種と同じ力を持っているからね。いわゆるサイ能力、超能力だよ」
正確にいえば、サイオニックスーツは人類の発明品ではない。その基本原理は外宇宙から届いた通信で送られてきたものだ。甕星博士はその通信を解読し、サイオニック回路を人工シナプスに実装することに成功したのだ。
「巨大融合神も倒したとの情報を得ています。オオクニヌシ、タジカラオの2柱は撃破され崩壊した後、再出現は確認されていません。おそらく構成員のいずれかが死亡したと推測されています」
「巨大神と言っても所詮、偽神だからね。オニ、ヨモツシコメ、ニオウといった妖怪レベルの融合体と本質は同じだ。心に抱いたイメージの具現化に過ぎない。我々が対面している変異種は日本の風土で生まれたものなので、日本神話や仏教などに登場する超越的存在のイメージを具現化している。キリスト教圏なら天使、インドならヒンズーの神々が仮託される。融合する精神体の数が増えると指数関数的に能力が増強していくだけの事だよ」
「我々もサイオニックスーツによって神の力を手に入れたという事ですか?」
「神というのが万物の創造主を指しているのなら、それは違うだろう。サイ能力は物理的世界を精神で操作する力だ。この宇宙で起こる現象は全て、宇宙の境界面に書き込まれた情報のホログラフィックな投影なのだ。その情報を直接操作し書き換える事で現実である物理的世界を操作できる。いわば現実世界をチートする能力がサイ能力なのだ」
「なるほど、現実を心で操作できるなら、どんな事でもできるのでは?」
「原理的にはそうだが、情報の書き換えにもアルゴリズムの理解とエネルギーが必要だ。現状のスーツも頻繁なエネルギー補給をしなくては機能しないし、操縦するパイロットも長時間の連続搭乗はできない。破壊や肉弾戦ならともかく、高度な能力を発揮するには訓練も必要だ」
「司令官!」連絡将校が声を上げる「今、入った情報によると、撃墜したヘリに乗って逃走していたと思われる変異種に索敵マシンが接触しました。墜落を生き延びているようです。なお京都からの情報では逃走したのは三つの融合グループ、その中にはアマテラスとスサノオも含まれているとの観測です」
「いよいよ、あれを投入する時が来たようですね」
司令官は博士に言うと、将校に命じる。
「最重要目標だな。きわめて危険な融合体だ。ギガント級サイオニックスーツの京都への搬送を中止して墜落地点の近くに運べ。周辺の索敵を強化。目標を発見次第、ギガントを投入して敵を掃討せよ」
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