第6話 中年サラリーマンの初恋 その③
この2人と会わなければ・・解っていたはずなのに。今日のことは計画していたが、
会ってしまうのが前提だった。そもそも会わない計画を立てるべきだった。
過去の今日の出来事はこんな感じだった。
この2人の女の子は愛ちゃんと同じ団地に住み、幼稚園もいっしょの1歳年下の年少さんだった。本当にこの1日しか俺は遊んだ覚えがないし、たぶんこの日が愛ちゃんと遊ぶ最後の日であれば間違いなく今後遊ぶことがないだろう。
この後、愛ちゃん含めた女の子3人と俺で公園で鬼ごっこをする。
この2人は愛ちゃんが大好きなんだろう、俺のことにはまったく眼中になく「愛ちゃん、愛ちゃん」うるさかった。それも嫌だったのかもしれない。
そこに同じ幼稚園で1歳年上の小学1年生になった同学年にはめっぽう弱いが年下には強い「クドケン」とその取り巻き同い年の「てっちゃん」と「あっちゃん」がやってくる。
「おんなの中におとこがひとり♪おんなの中におとこがひとり♪」
クドケン率いるもてない男の子たちが歌い始めた。
そんなの気にしなければ良かったのだと今は思うが、当時はそれが恥ずかしくして、
「別に遊んでないよ。遊ぶ人がいなかったから遊んでやっただけだ。」
いや、今思えばそうとうひどいこと言ってないか、俺。
「じゃあ、いっしょに遊ぼうぜ」
「あたりまえじゃん」
俺は愛ちゃんを残してその場を離れてしまった。俺はちらっと振り返ったが
愛ちゃんは茫然として立っていたような気がするようなしないような。
その日をきっかけに俺は愛ちゃんと遊ばなくなった。それどころか会話した記憶さえ
ない。いつのまにかその関係に慣れてしまっていた。
夏休みが終わり、「若菜愛ちゃんはお父さんのお仕事の関係で引っ越しをしました」
と先生に告げられた。
最後に別れの言葉も「あの時ごめんね」とも言えず。
先生に手紙を書きたいといえば連絡先を教えてもらえたのに、愛ちゃんと話すのが怖くてそのままにしてしまった。
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