第5話 中年サラリーマンの初恋 その②
わかなちゃんは実は「若菜」さんだった。わかなだけを覚えていて
下の名前だと思っていた。下の名前は「愛」だった。
わかなちゃん改め、愛ちゃんと呼ぶようにする。
愛ちゃんは年長の途中で、理由は知らないが引っ越しをする。
そのことをまったく知らなかった俺は愛ちゃんといつも通り遊んでいた。
幼稚園から帰ってきて公園で遊ぶ約束をしていた俺は愛ちゃんの家まで
迎えに行った。
「あら、こんにちわ。今日もいっしょに遊ぶの?」
大仏パーマの愛ちゃんのオフクロさんが笑顔で迎えてくれた。
「愛、早くしない、もう待ってるよ」
出てきた愛ちゃんはやはり可愛い。
ロリコンではないが、背は同い年の子と比べたら少し高く大人っぽい感じである。
髪の色も少し茶色かかったロングで顔の雰囲気もフランス人形というか、外国人風
で、よく笑う子だった。
手は繋いでいないが、手を繋いでいるような距離感で2人でエレベーターを待っていた。愛ちゃんの家は5階で9階からエレベーターが降りてきて一度7階で停止する。
「たぶん、今日だ。間違いない、降りてくるエレベーターに必ず乗っているはず」
後悔しかないのでその日のことは鮮明に覚えていた。
この降りてくるエレベーターにひとつ年下の女の子2人が乗っているはず。
この2人と会ってしまうことで今後の人生が大きく変わってしまうのだ。
「この子たちと会わなければ良かったのに。そうだ、階段で降りれば良かったんだ。
失敗だ!会ってからではなく、会わなければ良かったのだ!」
「愛ちゃん、階段で行こうよ」
俺は愛ちゃんの手を引っ張った。
「え、もうエレベーター来るよ?」
急に引っ張られてびっくりしているが、エレベーター前からは動かなかった。
「階段で行こうよ!」
思わず大きな声を出してしまったが、すでに遅し・・・
「チーン(こんな音だな、昔のエレベーターは)」
エレベーターが到着してしまった。
やはり今日なのだ。やっぱりこうなるのか・・・
予想通り2人の女の子が乗っていた。
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