第4話 中年サラリーマンの初恋 その①

ようやく赤ん坊に戻ってから5年が経過し、幼稚園年長になった。

鏡に映る姿を見るが、覚えている自分そのまんまであった。

違うというのであれば、記憶がそのままなので算数どころか数学も

できてしまうし、漢字の読み書きもできるし、英語もある程度なら解る。

ただ、人には見せないでいる。「天才」と呼ばれてたりして期待されても困る。

大人の時の記憶があるだけで、それ以上何もしなければ、もはやそれ以上にはならないだろう。


よくよく考えれば、これは転生ではやはりない。転生もの特有のチート級のギフトを

もらっていない。魔法が使えるわけでもなく、透視能力や身体強化もない。

ただの「やり直し」である。いや、記憶が残っているだけでもありがたいのか。


テレビではアメリカ大統領が演説をしている。そうそうこの人覚えている。


「カーター大統領だっけ?」


ここまでは過去に経験した通りである。

ここで「やらかした」過去をやり直す一回目のチャンスがあるはず。

苗字は覚えていない、ただ「わかなちゃん」っていう美少女だったことは覚えていた。同じクラスにはなっていないのだけど、バスがいっしょで幼稚園でもよく遊んでいて、帰ってきてからもいっしょに過ごしていたのは覚えている。

俺の家の近くの団地に住んでいて、オヤジさんは見たことがなかった。オフクロさんが金髪のアフロっぽいパーマというか大仏パーマだった。


過去と同じようにわかなちゃんと毎日のように遊んでいた。俺はわかなちゃんのことが好きだったし、今思えばわかなちゃんも俺のことを好きだったと思う。

家で何の絵を描いたかお互い当てっこしたり、電信柱にゴムを縛ってゴム跳びをしたりしていた。初恋の子と結ばれる?そんな人生もありなのかも。



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