ネギを刻んだらぜんぜん綺麗に切れなかったショック
明鏡止水
第1話
趣味は貯金でした。
過去形です。
え? いま取り組んでいること?
節約です。本当は貯金は今でも趣味にしたいです。
え? あ、ハイ。そうですね。現状返済中でとても貯められませんし、過去の私が悪くて、それができない状態です。
ですが、後悔しておりません。数十万のドールを借金してお迎え。親戚にもお金を借りました。
はあ、なぜ、そうなってしまったか?
……、「夢」、ですかね……。
男のロマンとか女のロマンというと意味不明な釈明になってしまうかも知れませんが。
手を出してしまいましたね。ドールの世界に。
親戚まで道連れにして。
元々は本さえ読んでいれば生きていける、という。とある漫画の好きなキャラクターのセリフがガキの頃響いて読書を重ねてうつ病を和らげていました。
うつ病を和らげるためにいろんな物に手を出していましたが、その中にハンドメイドの小物作りやイラスト、園芸やドールへの興味があったのです。
賢くなれば馬鹿にならなくて済む。読書をすれば、父と真逆になれば。どれだけ違うかで私は私を保っていける。高校入学直後に病気になったので父に学校を退学させられそうになり、このままだと中卒にされるっ! という危機感と。中卒は頭が悪い、という偏見が強く、父への反抗心も途轍もなかった為より偏屈な精神を獲得してしまった。
単純に知識が増えて読書をすること、書物を読んでいる時間は永遠の知恵の泉の中で。
味わう世界やひたる読後感は人生を何本も幾重にも感じられる追体験と心地よい圧迫の感動なのです。
うつ病で不登校の自分の机に勉強の痕跡が無いことを当時の父は食卓を割れんばかりにぶっ叩いて毎日酒を飲みながら怒って日頃の鬱憤を私にぶつけていました。
入学して3日、4日で鬱で通えなくなったのに。
なぜ本人が誰にも高校の勉強を教えられもせずに。
塾にもお金がなくて通えずに自主学習で受験を乗り切った娘に。
休んでるんだから勉強しろと言えるのやら。
味方は学校が紹介してくれたメンタルクリニックの先生だけです。
期待しすぎだし病気への理解が無さすぎる。
親を殺したかった時期。
死んで欲しかった時期が確かに存在したのですが、お金なかったからかな。荒んでましたね。家庭。
父もブラック企業とか、私と同じでトモダチいない情報弱者なので、転職のノウハウも会社の評判も知らずに飛び込んであちちっ、というか。
飛んで火に入る夏の虫。
夏どころか四季を、転職を繰り返していた父。
お母さん、体で稼ぐから……、お母さんの稼いだお金で遊びにいくの? という疲れた母。
全くもって、思い返してはいけないパンドラの匣。
まあ、いま希望が残っているなら開けてもいいのかも知れない匣ですね。
あの頃はみんな家族が不幸せで仕方がないと感じて辛かったらしい自分に言うのです。母は。
ぜんぜん不幸せじゃないよ。
裏切りです。
不幸せなのは、私だったのです。
そして何より認めてもらえなかったのです。
私が今、不幸せだということを。
家族が不幸せで苦しいのに、その家族がそうではないと受け入れなければ思ってもいないという。家族のせいで、どれだけ苦しめられたか。
いじめでどれだけ同級生の死を願ったか。
明日には死んでますように。あいつが。あのひとが。
死にたい死にたい死にたい。
そんな頃から時は流れ、この間好きな作品のポップアップストアなるものに人生初めて行ってみました。
人生長生きすると婚期を逃し、ボーナスも人生で一度も貰ったことがなく、うんと年下に仕事を習う日が来る。
そんな日々の息抜き。
Xだとレアなグッズがあって素敵な空間! みたいな触れ込みでしたが。
スペース自体は本当にその階の一角というか、ちいさい。
これが、ポップアップストアかあ……っ!
タペストリーなどは部屋に飾っても仕方がないし。
ポストカードは、特に眺める機会も無さそうだし。
缶バッジは、付けるのにバッグを選ばなきゃだし。
痛バの作り方は知らないし、そんなに同じ絵柄のもので固める様子は、やってみたいけど周りのクオリティが凄すぎて始める前から断念してるし。
中途半端に始めて中途半端に集めて持て余す。
でも手放したくはない。
これが、物欲!
更にはその小さな売り場で、今とあるクレジットカードの会員になるとオリジナルステッカーとポストカードが特典として付きます、とな。
「クレジットカードはあんまり作るなよ」by父
……。
「つくります!」
特典に抗えなかった。
空しい父の助言。
しかし。広く流通していて通りやすいと噂のカードの審査に、明鏡止水、その場で落ちる。
……。
それまで真摯に対応してくださっていた店員さんのやるせない、どうしてくれんのじゃ、という空気。
何がいけなかったの……。
バッチリ欲しいのか欲しくないのかとりあえず珍しいらしいからと購入したグッズと共に、やっとこの歳になって乗り物恐怖症を乗り越えて、東京の路線もよくわからぬままGoogleマップの言いなりに乗り換える明鏡止水は、電車内で、ずっと沈んでいました。
なんでじゃ。
あれか。
他社からの借入の入力か。
正直に入力したもんな……。
それとも、勤続年数や収入の低さか?
信用問題か。
クレジット、いろんな図柄が選べて特典もさらにつくらしかったのに……。
なんだ、何が原因だったんだ。
オリジナルステッカー、欲しかったな……。
ホログラム加工のキラキラポストカードも貰えたらよかったのに……。
クレジットカード作ったら、代わりにあげますっていう割には、割りに合わなくないか?
欲しいけど。
でも、父の言うとおり、カードをやたら持つもんじゃないよな。
今回はしょうがなかったんだ……。
借金返そう……。
そのためには節約だよな。
しかし、過去の私が買い物をし過ぎる。
ネットで一番くじみたいのを引いてたり。
漫画全巻収納できるオリジナルボックスを記念に複数購入してたり。
今回だって交通費だけでも3千円は絶対いくし、3千円あったら外食できるし。
しないけど。
いや、父と弟が一緒ならバーミヤンとかでもいいから中華が食べたいし、好きだし、お寿司屋さんもいい。
交通費、既にチャージ済みでお小遣い帳に計上? してるとはいえ、罪深すぎん? Suicaとかの履歴を見ながら思う……。
靴下とかインナーを夏仕様のものに変えて暑さに備えて仕事の効率を上げることも出来たのに。
ほんの1万円ずつでも親戚に借金返しとけばよかったのだけど。
過去の私がね、やらかしてる。
とうとう届いた荷物の中身を確認したら部屋に収納せずそのまま段ボール箱で積んでた方が良くない?
という考えになってきた。
そんな私に両親は何も知らずにお弁当を買ってきてくれたり、車のガソリンを満タンにしておいてくれたりしてくれる。
多分毎月私が100均で買った水筒でスポドリや水出しのお茶を健気に持って出勤していく姿を見て、毎月コツコツ貯金してると思ってる。
と思う。
ちがうんだ。
お人形買っちゃったり親戚に借金したり毎月の支払い残高がすごい金額だったり、落ち着いたと思ったら過去に注文したものが今更興味が冷めた頃入荷してそれはそれで物珍しくてそのまんま封も切らずに保存したり。
完全にオタクこじらせてる。
人間、「拗らせる」とはよく言ったものだ。
「手」偏に幼児や幼稚の「幼」とな……。
そんな私の親孝行のあり方は、食欲しかない。
ナニソレ。
と思うだろう。
いや、でも、本当に、食欲なんだ……。
たとえば母が父の好物のモツ煮を作る、が。
その中に普通のこんにゃくの代用でアオサの入った緑の刺身こんにゃくを使ってしまう。
味は変わらない。
しかし、父はそれをよしとしない。
大鍋いっぱいに残されたモツ煮。
そのモツ煮のこんにゃくを消し去るのは誰か……。
私だ。
こんにゃくもモツ煮も好きだ。
いつもと違う具が取り除かれれば父もモツ煮を食べる気になるかも知れぬ!
いざ、刺身こんにゃく入りモツ煮ご飯!!
一味唐辛子山盛り!!
普段から卵かけご飯と鉄分入りウエハースで貧困と貧血を乗り越える私だ。面構えが違う。
人の作ったもんは、姿勢こそ悪いがもりもり食う。
ちなみにこの間5キロ痩せたと書いたがリバウンドした。
一時の心労か体重計の故障だろう。
私には、誰かのご飯やいただいたお野菜をズボラ料理にして食うしか、他に報いる力が無いのだ!
とりあえず次のお給料日で5万円親戚に返したい。
8月はさらに5万。
と、計算したところでサァッ、だ。
今後クレジットで引かれる金額と。
消費者金融の返済にあてる金額を引いた後の残金。
あぶない。
やばい、を通り越してお金の計算がザルなのである。なんせ借金が四捨五入したら100万円である。
……返すしか無い。しかし。あまり使わないでいても今後車検があるから9月とかに数万円出しな、とか(←私がオートバックスとかコバックにも行ったことがないから全部やってもらえる)言われると。
金がない。
稼いで節約してるのに、なんで?
となるに違いない。
かと言って安いところや今まで任せきりだった車の車検やらをいきなり自分で取り仕切るのは甘ちゃんの明鏡止水には、不可能なのである。
ハイ、ピンチ。
みんな、大人っていうものはな、学ぶ力が弱いと頭も心もなんでもやわいんだ。
弱いか強いか、賢いか愚かか。
なにが適切なあらわしかは分からない。
ただ言おう。
お仕事する人は偉い。
でも働かなくても生きていける人も偉い。
生きることや生まれること、死なないことが偉いんじゃない。
偉業や、偉人とは、ありのままで他人に迷惑をかけないことだ。
というと、人に迷惑をかけて生きている人はどうなの? この人は? あの人は?
「迷惑だなんて思わない!」
そんな人望を抱いてもらえる、無垢で真っ新な存在ならどうだろう。
「もっともっと偉くなりたい!」
そう思う向上心のある若者よ。
知ることだ。そして、行動すること。
できる限りで花丸だ。
私達は子供の頃から先生に花丸をもらってきたけれど。貰えなかった人もいるかも知れないけれど。
花丸はただの丸じゃない。
フラワーだ。お花だ。
蕾でも大輪でも、私達は生まれたこと、生きていることだけで迷惑になりたくはないし、ならない。
ネギを刻んだらぜんぜん綺麗に切れなかったショック 明鏡止水 @miuraharuma30
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