第31話 天火王の血を引く者

楚歌が森の中で冷小婵と無駄にスキルを使い続け、散々な結果を引き起こしたその直後、突如として空が異様に暗くなり、地面が震え始めた。彼は空を見上げて、何が起こったのか全く分からなかったが、どこからともなく流れ出る不穏な気配を感じ取った。


「師姐、何かが…」楚歌は言葉を飲み込んだ。


その瞬間、空に現れたのは、異常な光を放つ巨大な裂け目だった。その裂け目からは、恐ろしい気配が満ちており、どこか遠くから聞こえる呻き声がかすかに響いてきた。


「これは…何だ?」楚歌は足を止め、まるで引き寄せられるようにその裂け目に向かって一歩踏み出した。


冷小婵も警戒を強め、楚歌を引き止めようとしたが、彼が一歩踏み出すと、裂け目の中から突然、巨大な火球が飛び出し、彼に向かってまっすぐ進んできた。「おい、楚歌、何をした!?早く避けろ!」


「えぇっ!?」楚歌は目の前に迫る火球に驚き、慌てて身を引こうとするが、火球はすでに彼の周りに結界を張り巡らせていた。結界の中で動けない楚歌は、必死に手を振りながら叫んだ。「師姐!助けて!これ、どういうことだよ!」


「落ち着け!これはお前が何かを引き起こしたせいだ。」冷小婵は冷静に分析した。「お前のスキルのどれかが、時空を歪めて何かを召喚してしまったようだ。」


その時、結界の中で異様な波動が発生し、裂け目からさらに不気味な光が溢れ出してきた。突如として、目の前に現れたのは、天火王がかつて大婚の際に封印されることになったその結界そのものだった。だが、楚歌はその事実を全く知らなかった。


裂け目の中から現れたのは、天火王の変わり果てた姿だった。蛇の姿に変化し、封印されたままの彼の意識が、楚歌の近くで再び動き出した。


「な、なんだこれ…!?」楚歌はその光景に唖然とした。


その時、天火王の力が楚歌に何かを伝えたようだった。彼がかつて自らを封印するために使った護心蛇鱗が、奇妙な力を宿し、楚歌の身体を貫くように感じられた。


「お前…私の後継者だな。」天火王の声が楚歌の心に直接響いてきた。「お前が私の血を引く者として、この力を受け継ぐことになるのだ。」


楚歌は驚き、混乱しながらもその場に立ち尽くしていた。「僕が?まさか…!」


その瞬間、彼の周りで奇妙な結界が広がり、天火王の力が楚歌の身体に流れ込んだ。それと同時に、楚歌は天火王の血を受け継いだことにより、彼の命運を変えるような力を目の当たりにすることとなった。


だが、その力は同時に呪いのように彼を支配していく。天火王の封印と、彼の未婚妻素影の暗計が引き起こした悲劇が、楚歌に重くのしかかることになったのだ。


「この力が…どうしても解けない…!」楚歌はその場で膝をつき、苦しみながら呻いた。「どうしてこんなことに…」


そして、天火王の最後の意志が楚歌の心に響き渡った。「お前がこれを解く時、真実の力を見つけるだろう。だが、今はただ耐えろ。」


その瞬間、楚歌の目の前に現れたのは、天火王の血を引く者として、彼が背負うべき運命の道標となる運命の子供だった。それは、天火王が生前に望んだ希望の一端であり、同時に絶望のような存在でもあった。

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