第3話
「さてお主、何をじろじろと見ておるのじゃ。見世物ではないぞ。」
「あああああああああ空様あああああありがとうございますぅううううううううううう。お手々すべすべですうあああああああああああ。なでなで、ペロペロ、はぁはぁ(恍惚とした表情)
「こらそんなに弄るでない」ビシッ!(鋭いツッコミの音)
突然の出来事で私の常識と日常が音を立てて崩れたのを感じた。イケメンが私より年下であろう(暫定)の少女の手を舐めて興奮している!?シリアスをぶち壊したその光景を唖然として眺めていると少女が立ち上がり近づいてきた。
耳元で「いい猫じゃな」と少女は囁く。あまりの美しさと香りに動けなくなり、私はびくりとして体を震わせると。少女がいつの間にか抱きかかえていた黒猫が私の頬を舐めてきた。その子を撫でていると名前を聞かれたので「もえ、です」と少しぎこちなく答えた。
少女はにかっと無邪気に笑い「よいなじゃの、もえ」と答えた。こんな事初めてだった。名前を褒められた。そもそも褒められたりしたことなんて両手で数えられるほどしかない。それも自分の努力とはあまり関係のない顔や髪だ。まあ今回も努力とは関係ないのだけれど少女に褒められるのは何だか不思議と心地よかった。
少女はソラと名乗りみゃむちゃんを撫でた。
私はソラに手を引かれさらに深い山の中へと入っていった。ソラは男の人みたいに強い力で少し手が痛かったが、一人で歩くよりも心強かった。しばらく歩くと優しい光がひらひらと浮いている池に着いた。それは蛍だった。今は7月なのに、しかも今時蛍が見られるなんてと目を輝かせて感激していると、ソラは誇らしげな顔で「ここは今、わしともえしかしらん。まあアイツは知っとるかもしれんがな。(後ろをちらっと見る)自慢の場所じゃ。決して誰にもゆうではないぞ、あでも紹介してからならまあ教えんこともないが。まあ一見さんお断りじゃ。」ところころと表情を変えながら話した。それは年相応な感じがしてとてもかわいかった。
私はこの景色を独り占めしたいソラの気持ちに激しく同意し、この場所は2人だけの場所にしたいななんて考えながら空にある星を湖越しに見つめていた。
そろそろ帰らなきゃと私がつぶやくと空は手をつかんで涙ぐんだ虹色の瞳で見つめてきた。まだ一緒にいたいようででももう門限を過ぎているだろうからいつ帰っても同じかと思い。一緒にいることにした。何よりこの子は私の数少ない友達だ。友達と過ごしたならお父さんもきっと許してくれる。きっと。
「この奥にわしの家があるんじゃが止まっていかんか?ココアもあるぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます