ニンカツその二十七「雪冠蘭の君」
「倒すのが惜しいなー」
「でも怪物だからなあ。
「シン・萬川集海で、できるだろ?」
「できるけど、触手なら《オレたち》も生やせるからな」
そんな呑気な脳内会議をしている《オレたち》の前で、ローパーは相変わらず粘液に濡れた女体を弄んでいる
貴族令嬢にして女騎士という極上の獲物に夢中なのか、触手を蠢かせ、テリーヌの魔力と体液を貪り続けるローパー。
今更ながら周囲を見渡すと、床に転がる
「ビフの死体だ。ローパーの死骸も」
首に索条痕があり、華美な
「何度も怪物に襲われたな。だが最後まで諦めず戦った。最後はローパーに絞殺されたか」
側に落ちている
「ローパーが獲物を締め殺すなんて、よほど抵抗したんだな」
「え? そうなの」
「ああ、よほど飢えてるか危険を感じない限り、ローパーは獲物を捕らえ、嬲るだけだ。女なら体内に卵か種を産みつけ、男なら枯れるまで搾り取る」
「卵か種? ローパーは動物だろ?」
「収斂進化だよ。刺胞動物と食虫植物、それぞれにローパーと呼ばれる怪物が居るんだ。だから卵を産むヤツと、種を蒔くヤツがいる」
「じゃあコイツは?」
「刺胞動物の方だな。根じゃなくて足盤があるのが見分けるポイント。植物の方の代表的なヤツは」
「
「驚いた。良く知ってたな。いや、マーリールゥ先生の補習か。やらしいヤツ」
「んははははは。って笑ってる場合じゃねえな。そろそろ覗きは止めて、テリーヌを助けない?」
「そうだな。邪魔も入ったことだし!」
密かに壁を伝い、背後の天井から虎視眈眈と《オレたち》に食いつこうとしていた怪物の頭蓋骨を、後ろ蹴りの一撃で粉砕する。
「
「エロいエグいし完璧じゃねーか。でも名残惜しいが退場してもらうぜ」
肩を怒らせコキコキ鳴らし、両手に鉤爪を伸ばし、《オレたち》はテリーヌに絡みつく触手を切り刻んだ。
ーーぐじゅぷっ! ぢゅぶぉおおっ!
獲物を奪われ、斬り飛ばされた断面から毒々しい紫色の体液を撒き散らして暴れるローパーだが、既に多くの触手を失っては、《オレたち》の敵ではない。
ーーブギュブブブッ!!
筒状軟体生物の胴を輪切りにして、容易く息の根を止めた。
「やけに簡単だなあ」
「相性勝ちだな。毒に耐性がある《オレたち》でなけりゃ今頃、テリーヌみたいに見境なく発情してるはずだ」
人間体の時ならともかく、
「さてと、お嬢さん。大丈夫かい?」
「《オレたち》怪しい者だが、敵じゃない。助けに来た」
「報酬しだいだけどな」
(は? 何言ってる? 報酬だって?)
(今の《オレたち》は彼女の同級生じゃない。迷宮で出逢った怪人だ。タダで助けるなんて不自然すぎるだろ!)
(ああ、報酬目当ての方が、信用されやすい状況か。でも気が引けるなあ)
床に倒れ伏した女騎士の白い尻の谷間が、何とも目の毒で。
初々しさ、凛々しさ、豪華絢爛さ。全てを兼ね備えた希有な美体だ。
その背に白い翼があれば天使と、黒い尾があれば淫魔と見間違えただろう。
「はぁ、はぁ……ほうしゅう、しだい……?」
「そうだ。望みを言え。叶えてやろう」
「……
だが今の彼女は清純な天使ではなく、淫欲を知り翼を折られた堕天使。
誇り高き騎士が自分から足を開き、正体すら知らぬ怪人に恥部を晒け出して。
「ココの疼きを止めて下さいっ! ダメなのです。はしたないと分かっていても……ココの奥が熱くて堪らなくてぇ!」
散らされた純潔の証は、とうに花弁を濡らす糖蜜に洗い流されて。
牝の悦びを刻まれた百蘭が、物欲しげに雌しべを疼かせ、息づいている様を、指で広げて披露する令嬢騎士。
「ど、どうかお情けを、貴方様のお情けを私に下さいませ! 後生ですからぁっ! 何でもしますからぁっ!」
貴種血統の肉質に依るものか、それとも怪物の媚毒と這い回る触手に、秘めた素質を開発されたか。
彼女の純白の裸体は爛熟し、ふわふわとろとろの肉感で、女性美あふれる優美な曲線を、揺らし振るわせる。
(すげえ。なんて綺麗なピンク色だ)
(飛び込んだら埋もれそうなカラダだよな。すごく柔らかくていい匂いがして、絶対気持ちいいぜ)
肌が焼かれる程に熱く凝視する視線を感じ、女騎士はようやく気づいた。
ローパーを容易く引き裂き、彼女を助けると言い放った怪人が少年だと。
「ああっ、
色欲に狂うまま、子供と知らず誘惑してしまった罪悪感が、惑乱した心を苛む一方で。
罪深い背徳感に目覚めたカラダは、雪原のように白く清らかな背筋を震わせ、雪崩じみた絶頂にあえなく崩落する。
「いやぁっ! わ、わたくしっ! イッてしまうっ! 見ないで、見ないでぇっ! あっあっあっ! あ~~っ!!」
ひときわ高く泣き叫び、女騎士は蜜と媚毒に濡れそぼった白亜の肢体を弓なりに仰け反らせ、言葉と裏腹に己の痴態を《オレたち》に見せつける。
「あはぁっ、はぁっ、くふっ、んんんぅっ! ダメですわ……火照りが収まらない……もっと欲しくて、疼いてぇ……っ」
放心した顔と紅潮した裸体を無防備に晒し、綺麗な形のへその下を、両手で撫でさすりながら。
テリーヌは羞恥と後悔に顔を歪め、銀髪を振り乱し、再び哀願する。
「ああ、お願いしますの……お嫌ならいっそ、いっそのことぉ、殺して下さいませぇっ! お願いですわぁ!」
高貴で魅力的な女体が《オレたち》を欲っして懇願し、それでいてなおも矜持を保とうと死を願う様は、狂おしく愛おしい。
(まさに咲き誇る大輪の蘭だな。『雪冠蘭の君』とはよく言ったもんだ)
(雪冠蘭って?)
(《オレたち》の世界で北極星に当たる、極北の星座にちなんだ白蘭のコト)
優美で力強い大輪の花を、愛でるか踏み躙るか、どちらも選べる全能感と征服欲、強烈な加虐衝動を掻き立てられて。
「さぁ」「どうする?」
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