0464:龍

グアアアアアアアアア……


 低く……腹の底に直接振動を与えるような重低音。これは……威圧的な要素も加わっているのかな? ある程度鍛えていても足は止まるな。確実に。


 へぇ……竜ってあんな鳴き声なんだ……って三つ首竜は死霊だったからなぁ。元気無かったし。妙に。


 地上領主館の隠し部屋に跳んで、慌てて外へ出る。


 しかも……ああ、いた。上空だ。思っていたよりも蛇っぽい。でも手足結構太いし大きいし。竜じゃなくて龍とかナーガに近いのか。呼び名のフリガナは一緒だしな……。


 あ! 口元から火球? スゴイな。スゲーデカいな、おい! 尋常じゃ無いぞ。あれ。


號!


 撃った! ちっ! 火を防ぐ結界? とか間に合って……くそっ!


……


 って……防いでいる? ああ……そうか。さすが……。ファランさんが守ってくれてるのか。スゴいな。あの火球を防ぐのか……。


 いるのは……今もギルド支部か。まあ、あそこの方が指揮は執りやすいとは思うけど。ここ数日はあっちで仕事があるって……凄く運が良かったって感じ? 


 まあ、守ってくれているのなら。とりあえず、城門前に向かうか。アレだけ大きい魔物だ。木が多い所はあまり好きじゃないだろ。オベニスで拓かれてる場所って言ったら、城門前の新市街跡になる。ファランさんの結界もあそこはカバーしてないだろうし。


 ちゅーか……龍が攻め込んでくるのか~。こういうのちゃんと聞いてなかったな……オベニスの守りを再構築しないとヤバイか。いくら情報収集していても、未確認飛行物体=龍にいきなり襲われる……っていう事もあるんだな。うん。


「お館様!」


 いま現在この地に居るのはミスハル、モルエア、パルメス。アリエリとまだ休暇中だけどフリアラ、オルニアもいるか。情報部員の増加に伴い、俺の嫁たちにはもっと高度な情報収集及び威力偵察モドキをお願いしている。


 ただ、今は大規模に情報収集して、連絡員からの情報待ち状態で、モリヤ隊はほぼ待機状態だったのだ。


 戦力的に、これならなんとかなるか。余裕を持ってイリス様もいるし。オーベさんとフリージアさんは……地下で研究中か……この時間だと寝てるかなぁ~起こした方がいいんだろうな。本当は。使いを頼もう。


「ミスハル、アリエリ、フリアラ、オルニア。多分、イリス様が突っ込んで行ってると思うけど、とりあえず敵みたいだから周辺を固めてくれる? まずは、どの程度のモノなのかを知りたい」


「はっ」


「ちゃんと休めていないフリアラ、オルニア。二人は後方ね。無理せずに」


「モルエアとパルメスは俺と一緒にファランさんのところへ行こうか。多分、そろそろイリス様が仕掛けるハズだから」


「はい!」


「って、ああ。パルメス。地下のオーベさんとフリージアさんに声を掛けてきてくれるかな? 龍きてますって」


「はい! お館様」


「んじゃモルエア、行こう」


 ギルド支部のバルコニー部分。ファランさんはそこに立っていた。


「モリヤ、やばいぞ。アレは古代種の火炎赤龍だ」


「古代種……というか、アレも龍でいいんですね」


「竜種は大きく分けて二種。空種の「龍」と地種の「竜」だ。一般的なのは地種で、人里を襲ったり狂乱敗走スタンピードに絡んでたりするのはこっちだ。ワイバーンやヒドラ、こないだ死霊化したドラゴンゾンビもだな」


 頷く。


「で、今、襲ってきてるのが空種の「龍」だ。ヤツラは知恵がある。それに好戦的ではない。自らの意志でオベニスを襲う意味が分からない。多分、裏に何か居る」


「まあ、そうですよね。判りました。上空からの攻撃……防げますか?」


「昔は二発耐えられれば良い方だったが……いまはあの程度の火球なら大丈夫だな。が……それ以外の物理攻撃はピンポイントで止めるしか無いな。さっきも数回、食いとめたが」


「さすが。ということは……上からの攻撃は出来ない判ったら……正面から打ち砕く作戦に出ますかね?」


「どうだろうな……目的がわからん」


「……陽動かもしれませんね」


「アレが囮か? 火炎赤龍……ほどの力を囮にするとは……囮?」


 ファランさんに目線で合図する。感覚をリンクさせる……新市街跡の奥の方だ。ああ、そうか……別働隊……。


(イリス様? それは何と戦っているのです?)


(巨人だ! 強いぞ!)


 この距離ならパーティ機能がちゃんと生きている。念話も問題無く届く。


 巨人? きょじん……。


「ファランさん、イリス様、交戦中だそうです。強い巨人……って言ってます」


「……今のイリスが強い? ということは尋常じゃ無いぞ……それはつまりは、巨人の魔族……九大伯爵が一人……「憤怒」ガバラキア・モドンってことか」


「ミルベニとそんな話をしてたんですよねぇ~フラグだったかなぁ……」


「?」


 そうなると、龍はずっと上空から隙を狙って、居座ることになるな。それは面倒だな……。


「あいつ……叩き落としましょう」


「な? モリヤ?」


 風裂。俺が一番得意としている呪文だ。一番最初に使える様になる風属性の呪文なだけに、使い勝手は抜群だ。其の分、攻撃力、殺傷能力などは劣る。龍なんていう、魔物種でも最上級に位置する化物には傷を付けることも難しいだろう。


 だが。空に浮かんでくねくねしているあいつを……強引に移動させて……地べたに押しつけるくらいは……。


 無色の風裂が……無数に俺の頭上に留まる。


 千、二千、三千。ああ、もう、幾つ作れるのかも判らなくなってしまった。数えるのは諦めた。


 毎日訓練として、できる限り沢山作って、空、天空へ放つという行為を延々と続け、こなしている。それを……逆方向に向けて放つ。


「よし……いけ」


 ……数百の風裂が龍に当たった。一つの力はほぼ、それほど強く無く、大した当りで無くとも、それが数千。そして、さらに何度も断続的に襲いかかられたら。


 ……幾ら龍でも耐えられるのだろうか?










 

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