0459:フルミスリル製
ミスリルの剣は異様な切れ味を保ち続けていた。魔力が尽きるまで……それを使い続けていれば、刃こぼれもしないし、曇りもしない。血液や肉の脂がこびりついて鋭さが鈍ることも無い。
「これは……スゴい」
「ええ、予想以上ですね」
紅武戦闘班は本格的な訓練段階に突入した。訓練用の刃引きの剣では無く、実剣を使用し始めたのだ。訓練用の道場……というか、通称体育館に緊張が走る。
そして……紅武女子用の装備と言えば。俺の我が儘により、その殆どがミスリル製。
「申し訳ない、お館様。ここにいるガギルの技術が劣っているとは思わないが、ミスリル以外の珍しい金属は殆ど扱った事がないのだ。なので「掴む」までこれで勘弁してくれ」
と言われた。うーん。世界の常識から、多分かなりズレてると思う。が。まあ、俺もズレてるので良いかっていう。
「そもそもですね、装備全てがミスリル製っていうのは……聞いたことがありません。篭手だけとか、ミスリルのコーティングというか。それが限界なのです。超一流と言われている冒険者、騎士団長の装備ですら、総ミスリル製なんてあり得ません。あるなら迷宮品でしょうか……」
「更に言えば。鉄やその合金製の装備でも、ガギルの職人が作った物と、そうでない物で大きな差があります。仕上げや装飾が美しいだけではありません。武器であれば、切れ味は二倍。強度も二倍。作るのに技術が必要となる防具に至っては五倍以上と言われています」
「魔力を這わせないミスリル製の剣など、ただの柔らかい剣です。愚の骨頂。魔力の少ないヒームの戦士には使いこなせる代物ではないのです」
「魔力を這わしていないミスリル製の剣は……そうですね。普通の鉄の剣に比べて少々強いくらいでしょうか。それこそ、ガギルが作った合金製の剣なら、其方の方が強いでしょう。ですが。魔力を這わせたミスリル製、しかもフルミスリルの剣は……鉄や合金製の剣の数十倍は硬くしなやかだと言われています。防具など鉄の剣では傷すら付かない、と」
「さらに、ミスリル製の装備は非常に軽いことでも有名です。チェインメイルで全身を覆っても、同じ様なサイズの革鎧よりも軽いのですから。これも、魔力を這わせると……それよりも軽く……重さを感じなくなると言われています。これも迷宮品で……そうですね。王族や大貴族が装備しているのを見たことがありますね」
「まあ、モリヤ様は毎度のことですが、事、ガギル製の装備、及び、ミスリル製の装備に関して勘違いを為されていると思われたので説明させていただきました! お分かりになりましたか? その希少性が!」
「う、うん」
「ではっ!」
「なおさら、紅武女子の装備はフルミスリルにしないとだね。さらに、イリス様にオーベさんにファランさん、そしてモリヤ隊。嫁装備も全部ミスリルだな~。ドガルに発注しておこう」
「……何も聞いて下さらない。私の言葉など何一つ聞いて下さらない」
「やだなぁパティー聞いてるってばー教えてくれてありがとうね。聞いたから、こそだよー」
「……ブツブツ……」
それだけスゴイ装備ならなおさら、その装備に見合う者に持たせなければ意味がないじゃない。実用品なんだから。それこそ、忠誠のパラメータを上げるために与える武器じゃ無いんだからいいじゃん。
「くっ。それは……そう……なんですけ……ど……ね……そのフルミスリルの防具一式を売りに出しただけで……多分、この領の予算の十分の一はふっかけられるか……と……思うと……」
「んーお金はいまの調子で儲かっていれば、後はゆっくりでいいよ。マイナスになるコトはないと思うよ? 今後。魔道具も売り出すわけだし」
「そ、それは確かに! 素晴らしい、そうなんですが! そうなんですが!」
「それに、ほら。これ」
ガギル用の、なんじゃこれ、ただのとんでもない度数の酒、味とかよくわからんだろアルコール……なんていうか、マズいウォッカというか……の瓶を収納から取り出し、差し出した。
「とりあえず、今、すぐにあげられるのはガギル酒(一般にはそう呼ばれているらしい。まあ、外に流通されず、全てガギルの元へ納入されているからなんだろう)しか無いんだ。ごめんね」
というか、この酒が好きって相当だと思うんだけど。
「あ、あああ! いえいえ、す、すばらしい、さすがすばらしい、モリヤ様、ええ、そうです。そうですね。ミスリルだなんだっていう問題なんて、別にどうでもいいというか、ええ。いただきます。そして、今日はもう、帰っていいでしょうか?」
「……他にも報告があったんじゃないの?」
「そこに資料を置いてあります。それを見ていただければ問題無いかと。他に御用が無ければ退出、帰宅させていただきます。よろしいですか?」
「え、うん。君の部下とか、みんながいいなら……」
「はっ! ではっ! ありがとうございました!」
パティが瓶を抱えてあっという間に居なくなった。
……これで良いのだろうか?
残ったのは。俺とイリス様。紅武女子の面々は訓練として巻き藁みたいな物を立てて、それを断ち切る訓練を続けている。
「イリス様、あのミスリルの剣で通常の鎧……簡単に切れたそうですね?」
「ああ、凄まじかった。まるで……手応えが無かった。多分……鉄も肉も骨も……全て斬り裂くぞ? この剣は」
とりあえず……敵を強くしてしまう可能性があるから……フルミスリルは当然として、ミスリルを使用した製品は売りに出すのは止めようっと。
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