0454:ミルベニ帰還
単独で南東諸国へ調査に向かっていたミルベニが帰還した。盛りだくさんだったようだ。
「つまり、ホムラ森域は西は吸血鬼、東はジェナンという騎馬民族国家の軍? に破壊され尽くされたってこと?」
「はい。元々、ホムラ森域の東は蛮族の領域でした。その向こうのメルゲィルズ森域は……蹂躙され、奪われ、森ごと……燃やされ朽ち落ちたそうです」
つまり……ジェナンはハイノルドの森の結界を打ち破ったということになる。
「そんなことが……」
「出来るのじゃ。ハイノルドが森に施している結界も……万能では無い。それこそ、森都のハイノルドの館を破壊され尽くせば……当然、森全体の結界は消え失せる。さらに言うと……多分じゃが……我が君……いや、モリヤ隊くらいの力があれば森の結界、森都の結界、さらに館の結界を打ち破り、破壊することは可能じゃろう」
「そうね~出来るわよねぇ~。そう。メルゲィルズが失くなったの~」
「……フリージアさんは……他の森域について知っていますか?」
「ん~あまり覚えてない~ノルドは他の森について本当に淡泊。多分~地図もあったと思うけど~どこいったかな~」
「ま、まあ、今はいいです。とりあえず、ノルドの居る森は……不可侵だと思っていましたが、そうでもないと」
「そうね~イリスちゃんくらいになれば1人でも~もう、止められないわ~無理ね~」
それはヒームより人口が減り続けているノルドにとって、あまり知られたくない情報だろう。
「あれ? なら、森都の無い……小さい森は?」
「ああ、そういう森は元々結界が弱いからな……侵入を気付く結界であって、侵入を防ぐ結界ではないな」
「じゃあ、昏き森は……」
「あそこも気付きの結界で狩人が警戒しているだけじゃな」
……結構危うい。まあでも今では、ハイノルドの居ない森というのがほとんどみたいだしなぁ。どこも一緒か。
「そして。その西? 西のオルゲン・ジナス帝国? 吸血鬼か」
「はい。こちらは……もう、どうにもなりませんでした。立ち寄れそうな場所は尽く調べてまいりましたが……見たところ、全ての市民が眷属化しています。魔物としての普通の吸血鬼ではなく。異常な力です」
「そして出た結論が……魔界九大伯爵の一人、「嫉妬」マルドミラン・ゴーリークがいるのではないか……と。ミルベニ予想」
「は」
まあ、そうだろうねぇ。この世界には吸血鬼という魔物が存在する。日光に弱く、棺桶で眠り、蝙蝠に変化したりするアレだ。特徴はほぼそのまま。牙を持ち、人間の血を吸うことで仲間を増やす。血を吸う際に同族にしようと思って吸うと同族に。使い魔と思うと眷属になるらしい。
「ですが……ノルドと同じく、その数は減り続けています。一人の吸血鬼が一生涯で仲間にできるのは二、三人。支配出来る眷属は大体、数十名。使い魔が多くて百名くらいでしょうか?」
「そうだな……真祖と呼ばれる古来から生き続けている根本になる強力な吸血鬼でその十倍くらいか」
ファランさんもさすが元ギルド支部長だ。魔物に関しては非常に詳しい。
「それで伯爵か」
「はい」
「間違いないだろうねぇ……門が開いた、繋がったと言っていたし。スライム伯爵が」
「「暴食」のアルバカイト・フェーセラーですね」
「つまり、オルゲン・ジナス帝国は……既に吸血鬼の国と化しているということか」
「はい。西隣のフェノナム連邦国とは大河を挟んでいます。なので無事なのですが」
「それは?」
「吸血鬼は……流れの強い川を渡ることができません。眷属も使い魔も。森へ入れないことは確認しました……多分種族弱点によって阻まれています。フェノナムへその力が及ぶことは……早々ないはずです」
「それってさ……その、吸血鬼伯爵が……川を飛び越えて連邦に行って~ってしたらどうなるの?」
「……大抵の吸血鬼は、蝙蝠に変異しても大きな川になると飛び越せないハズですが……伯爵級であれば……いやしかし……」
まあ、その辺の詳細な情報は無いか。
でも、それも放っておくことは出来ないよねぇ……。多分。今はまだ、遠すぎて手が出ないけどさ。なんだかもう、イロイロとありすぎて面倒すぎるなぁ。そもそも、おとぎ話レベルだった九人衆とかそういう人達は……この世界に恨み辛みが溜まってそうだからなぁ……。やりたい放題ってことなんだろうか?
「ふう……どうしましょうか? イリス様?」
「そういえば、ガギルの……約束の地、神に祝福された地かどうかっていうのは?」
「掘り尽くせぬ鉱石。沸き出でる神々の水。大雨や嵐も無く、風も狂わない。火の精霊は踊り、大地の精霊は踏みしめる。ガギルの約束の地はその奥へ。約束の地の奥深く。声も光も届かぬ奥深く。隠された希望は全てを叶える。約束の地は約束を破らない。一番深く。特別でなくていい。青い光となりて夜空をこえ、行くのだ……ですね」
ノルドの調査員はさらに東へ……ジェナンに遭遇したら即逃げるという方向で足を伸ばしたという。
「それ以外にもうひとつだけ。付け加えられました。行くのだ……の後に、「オバンド・ベルツヘルム・ニムア・スメルア」と続くようです」
「ん~と。オバンドは~神~ベルツヘルムは~永遠の地、ニムアは深淵~スメルアは……確か~成就だったかな~?」
「なんと! お姉様、その言葉は?」
「古代語~魔道具に使われている力ある言葉は~全部古代語なの~」
「魔術を使う際に使用する……呪文とは違うのでしょうか?」
「違う~魔術の呪文は~自分の中で構築していた術を~呼び起こす為のキッカケになる言葉~古代語だけど~なんていうか~省略されてるというか~短縮されてるというか~」
「つまりは……そちらが本来の古代語ということになるのですね?」
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