0450:魔道具師の現状

申し訳ありません。


更新順番を間違えておりました。本日二話更新しております。

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「で。魔道具ギルドの話だよ」


「ああ、申し訳ありません、モリヤ様。少々我を失ってしまいました」


 うん。パティ。気持ちは十分伝わったから……。ね。


「魔道具……ギルドは存在しません。これは当然です。なぜなら、現在魔道具師……という職業がありませんから」


「なんでなの~人気ないの~?」


 フリージアさんの紹介は済んでいる。この領では「召喚妃」オーベさんがスゴイというのは十二分に伝わっている。


 それこそ、オベニスに居る全ノルドから、敬意を持って丁寧な扱いを受けているのだから、例えヒームであってもその空気を感じないわけがない。「その」オーベさんが口調を変え、丁寧に扱っている人。つまり、フリージアさんは領主であるイリス様とはまた違った畏敬の目で迎えられている。


「はい、フリージア様。人気……どころか。そもそも、魔道具を生み出せる者がおりません。それこそ、修復出来る者も非常に数が少ないのが現状かと」


「え〜なにそれ〜」


「現在の魔道具はほぼ、迷宮産で、それを消費する事で成立しています。なので主な使用先は王侯貴族等の限られているのが普通です」


「でも、ここ〜」


「ええ。ここオベニスが異常なのです。領主館だけならば他領でも同じ様な物でしょう。裕福な貴族であれば、それなりに魔道具を揃えているのは普通かと思います。ですが、役場、商店、ギルド、職人街、さらには住民の居住区まで、都市全域に魔道具が完備されている等……あり得ません。下水処理場の大量の魔道具……アレ、いくらお金があっても買い揃えることが不可能かと」


 まあ、確かに王都を見てきたけど、酷いものだった。


 王城近辺、貴族街はともかく、それ以下の者たちの暮らす区域は糞尿臭がこびりついていた。

 オベニスは元々地下水路があり、そこに流す、落とす仕様だったので、初めてここに辿り着いた時、何とか俺が許容できる水準に収まっていたのだ。

 さらに地味にイロイロとやっている。地下水路は下水処理場を加えて、浄化の魔道具を多数設置の力技処理している。これによって、現在では全く臭わない。傭兵団の襲撃時に燃えてしまったので、スラムとか貧民窟が綺麗さっぱり無くなってしまったのも大きい。


 俺が来る前からイリス様が持ち出しで大氾濫から立ち直りかけていたとはいえ、都市区分での明確な格差は存在していたのだから。


「そうなの~?」


「そうですね。というか、臭いの嫌いなんですよ」


「いやよね~臭いの」


 でしょう?


「話を戻します。ですので、修理すべき魔道具は、大きな都市でも数十ということになります。設置されているのは領主館等の貴族邸宅ですね。なので魔道具職人は……というか、大抵が魔石の扱いに長けた魔術師、大工や細工師、商人が兼任していることが多いですが……一人居れば良い方です。王都では、王城の魔道具整備役の専任魔術士が一人。それ以外に三名くらい魔道具を扱う魔術士がいるそうです。ですが、王都でもそれだけです」


「そうなのね~」


 ということは……?


「つまり……さ。何の考え無しにフリージアさんに新しい魔道具を作ってもらったりしたら……」


「少量であれば……判明しないでしょうが……かつて無い魔道具で、しかもそれが戦場で役に立つ等の判りやすい効果を持ち、それが量産可能だということが知れれば……。しかもその原因が一人のノルドにあるとすれば。フリージア様を奪い合って……最終的には戦争になりますね。絶対に」


「なる?」


「なりますな」


「なりますでしょう」


「なるじゃろうな」


 全員一致か~そりゃなるか。まあ、なるわな。


「判った。では最重要秘匿案件で。うちが便利になるためだけにとか、ここぞという時の儲け案件として、こっそり進行して行くことにしよう」


「それが良いかと」


「フリージアさん、それでいい?」


「んーモリヤ殿?」


「はい」


 ガリエラ老の目が……いつになく真剣に光る。


「なぜ、オベニスは独立せぬのか?」


 ぎくっ! やべ。この人すげーな。


「独立ですか……そもそもそんなことは考えてもいませんが、正直、うちの領は何もかもが足りません。特に人材が……」


「あ~女が領主ってことで~?」


 その通りです。


「さらに、旧王家の嫌がらせもあって、領を運営する役人の数も全く足りていません。それこそ、有能な女性に第一線で働いてもらってギリギリなんとかなっているのが現状ですね」


「この時代も頭悪いわね~」


「ですね。というか、なんでこんなに女性を排除するのか。判りますか?」


「ん~私が生まれた時代も~こんなだったかな~国は違うのに~一緒ね~」


「まあ、そんな様なコトを仰ってましたしね……そうですよね」


 この世界の男尊女卑の時代は……はたしてどれくらいの年数続いているのだろうか? 少なくとも俺の知ってる地球世界に比べて長いはずだ。


 生物としての知的進化は……文明の進化スピードは……いや、その辺を考えるのはよそう。俺如きが考えたところで何か判明するワケが無い。


「まあでも~いざという時のために~イロイロ用意しておくんでしょ~? モリヤさん?」


「ええ、そりゃもう……」


「悪い笑いねぇ~」


「それを言うならフリージアさんこそ」


「くくくくくく」


「……二人は……腹黒いところが似ているのじゃな……」


 いえいえ、そんなことないですよ。



 


 

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申し訳ありません。


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