0449:貴方の好きな物

 そもそも、魔道具ギルドって……あるのかな?


「そのようなギルド、あるわけがありませんよ、モリヤ様」


 こわ。何もそんな言い方で言わなくても。


 最近、パティ(パトリシアさんの略称)が怖い。まあ、領運営の実務面を丸投げしてるからね。大変なんだね、そうだね。うん。ごめんね。

 普通の領なら彼女の力量的にそんな負担じゃ無いと思うんだけど……普通じゃないからね。うち。


 内政全般のその多種多様さに関して言うと、通常の領政業務の数倍になってそうだ、と聞いた。パティの部下から。それを能力はあるとはいえ、実務経験の少ない「女性」中心でこなしているのだから、どうしょうもない。


 役人仕事してて、女だからとバカにされたり、やりにくいトラブルも多いみたいで。何とかしないとなぁとは、思っている。

 イリス様っていう「女性」領主の治める領でそれはなぁ……っていう。表向きはね、他領よりもかなり減ってるらしいけどね。差別。逆に裏に回ると陰湿になるんだよね……。

 

 顔合わせの会食の次の日。俺の執務室に、パティとシエン(シエンティアさんの略称)とガリエラ老に来てもらった。会議用のテーブルを囲んで座ってもらう。


 そして……張本人のフリージアさんとオーベさんはソファに座っている。だらけている。明らかに。


「飲みすぎなんですじゃ、お姉様は」


「だって〜あれはダメよ〜美味しすぎるもの。忘れてたって、デザートの後にあんな物を出してくるんだもの」


 申し訳ない。カツカレーには水だろうと思って氷水はふんだんに用意してたんだけど、すっかりそのままデザートへ進み、ケーキと紅茶におちついてしまった。


 で、ケーキを散々食い散らかして、そろそろ散開の段階で。


「あ、乾杯してなかった」


 と、気付いた。さらに言ってしまった。


「こんな機会だから、特選したブランデーでも空けようかと思ったのに」


 まあ、ええ、そりゃね。目を輝かせたのはフリージアさんとガリエラ老だ。


 因みに。


イリス様:それなりに飲む。が、次の日に響きそうな位に飲むと、即寝てしまうタイプ。自分からベッドに行くので面倒がない。


ファランさん:酒よりも甘い物のタイプ。多分、飲めば飲めるのだが、理性が働いている感じ。


オーベさん:バランスタイプ。多分、一番良い感じに飲み食いする。甘い物をつまみに飲む。


ミスハル:酒飲めず。甘い物もあまり好まない。その分というと変だが、激辛好き。食事の際、さりげなく自分専用の辛い調味料を持参しているらしい。


モリヤ隊:別にミスハルを特別扱いしているワケじゃないのに分けたのは。残り全員底無し。性格なんかは結構違うのに、全員底無し。そして、甘い物を筆頭に旨いモノに目がない。中身は田舎のオバちゃん説は健在である。妻だけど。


 我が愛しの妻達の趣向品傾向はこうなっている。


 まあ、二人が余りにも目を輝かせるので当然、酒は空けて、注いだ。


「ガリエラ老も飲みすぎです。お歳をお考えください」


 年齢差孫娘クラスの関係だが、副官の様になっているシエンに怒られるおじいちゃん。くくく。威厳台無しだ。


「すまん……いやだが、あの酒は……」


「お酒を嗜まれるのは問題ありません。飲み過ぎて次の日にまで影響が出るのは、大人として慎まなければという話です」


「……」

 

 ぐうの音も出ない。二日酔いで頭が痛いのか、頷きながら頭を振る。


「モリヤ様っ?」


 え、あ、はい、ごめん、パティ。すいません、集中して無くて。


「昨日、卸したお酒。完全な新酒だそうで」


「え? あ、う、うん。そうだけど?」


 ゲンズバーグから貰った、深みが出始めた一本だ。ちょいとろみがあって、じんわりと熱くなる。鼻に来る揮発性の刺激も強いので、少量を少しずつ飲む。ブランデーっぽいのでそう名付けた。因みに、味は、前の世界のクオリティに、遥かに及ばない。そりゃね、仕方ないよね。


「なぜ、私を呼んでいただけないのですか!」


 え? そっち? 


「ガギルほどではないですが! 下賜される酒だけが楽しみで働いているのに!」

 

 そ、そうなの? あれ? パティ? あれれ? よく見れば、涙目……か。マジか。怒りと悔しさでイッパイでとんでもないことになっている顔なのか?


「なぜ……なぜ……」


 あ、うん、ごめん、判ったよ……見繕うよ。酒造所の管理は俺がしてるもんね。そうね。つい先日まで酒関係はガギル用のあの……薬用アルコールかっていうレベルの酒しか飲める物は無かったのだ。

 やっと、ここまで辿り付いたというか、まろやかで風味が出てきたわけで……別に意地悪しているわけじゃ無い。ゲンズバーグの凄まじいまでの執念が無ければ、ココに辿り付くのは無理だった。まだ大量生産に至っているわけもなく、こうして領主館の食卓に供出するのすら、やっとなのだから。


 まあ、そんな感じだったので……正直、部下の趣味趣向にまで気が回らなかったのだ。


「いや、しかし、モリヤ様。あの酒も、売りに出せばとんでもないことになりますぞ? 自分は神の酒を口にしてしまったのかと思いましたからな」


 そんなに? いやいや。さすがに無理でしょう。


「モリヤ様……」


 ギリギリと握り拳が! ああ!


「分かったから。同じ酒を一本、あげるから」


「はい! では、今日の議題を!」


 そう。会議、始まってないよ。まだ。というか、パティ……そんなに……だったのね……。知らなかったよ……。




 


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